求職中にスキルを身につけて、新たな仕事に挑戦したいと考える方は少なくありません。また、専業主婦(夫)やパート・アルバイトの方でも「手に職をつけて働きたい」と感じることはあるでしょう。一方で、スキルの習得には費用がかかるため、高額な授業料を理由に断念するケースも多々あります。
費用を抑えてスキルを身につけるには、国が提供する教育支援制度の活用が効果的です。なかでも「求職者支援制度」は条件を満たすと「職業訓練給付金制度」を利用でき、訓練を受けながら給付金を受給できます。
この記事では職業訓練給付金を受給する条件や金額を解説し、対象から外れた方でも利用できる教育制度も紹介します。就職に有利な資格を取りたい、安定した生活を送り充実した日々を過ごしたい方は、ぜひ参考にしてください。


職業訓練給付金を受け取れる求職者支援制度とは?

求職者支援制度とは、厚生労働省が雇用保険を受給できない方を対象に、無料で職業訓練を提供する制度です。
雇用保険とはいわゆる失業保険を指し、退職しても条件を満たさない場合は支給されません。なお、雇用保険の被保険者になる条件は以下のとおりです。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがある
雇用保険の被保険者に該当しない場合は、在職中でも求職者支援制度を利用可能です。
求職者支援制度の利用は、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- ハローワークに求職の申し込みをしている
- 雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者ではない
- 労働する意思と能力がある
- 支援を行う必要があるとハローワークが認めている
この制度の利用者でさらに条件を満たすと、職業訓練給付金を受給できます。
職業訓練給付金の受給条件
求職者支援制度の利用者で以下の条件すべてに該当する方は、職業訓練給付金の対象者になります。
- 本人収入が月8万円以下(税引前の給料・年金など収入全般)
- 世帯全体(同居または生計を一にする別居の配偶者・子・父母)の収入が月30万円以下
- 世帯全体(同居または生計を一にする別居の配偶者・子・父母)の金融資産が300万円以下
- 現在の居住地以外に土地や建物を所有しない
- すべての訓練実施日に出席する(やむを得ない理由がある場合でも支給申請の対象となる各訓練期間の8割以上出席する)
- 同一世帯でこの給付金を受給する者がいない
- 過去3年以内に偽りや不正行為で特定の給付金を支給されていない
- 過去6年以内に職業訓練給付金の支給を受けていない
なお「生計を一にする」とは、家族や同居人が収入や生活費を一緒にする状態です。別居中でも生活費が同一であることが確認されれば認められます。
職業訓練給付金の金額
条件を満たし審査に合格すると以下の給付金を受けられます。
手当名 | 給付金額 | 備考 |
---|---|---|
職業訓練受講手当 | 月10万円 | 要件を満たせば1ヵ月ごとに支給 |
通所手当 | 月42,500円(上限) | 訓練施設へ通所する費用。職業訓練受講手当の受給要件を満たさない場合でも、本人収入が月12万円以下かつ世帯収入が月34万円以下で他の要件を満たす場合は、通所手当のみ支給可能 |
寄宿手当 | 月10,700円 | 訓練施設へ通所するために寄宿(訓練施設に付属する宿泊施設やアパートなどに入居)する場合で、住居の変更が必要とハローワークが認める場合に支給 |
参照元:厚生労働省「求職者支援制度のご案内」
職業訓練の種類

求職者支援制度の職業訓練には、主に以下の種類があります。
主な分野 | 主なコース | 取得可能な主な資格 | 訓練後の主な就職先 |
---|---|---|---|
事務 | ・オフィスワーク基礎科 ・ビジネスアプリケーション基礎科 ・OA事務(表計算実務)科 など | ・日商PC検定 ・MOS ・コンピュータサービス技能評価試験 など | ・調剤薬局の事務 ・情報処理企業の秘書 ・法律事務所や税理士事務所の受付 など |
デザイン | ・WEBデザイナー養成科 ・WEBクリエイター養成科 など | ・ウェブデザイン技能検定 ・Photoshopクリエーター能力認定試験 ・Illustratorクリエイター能力認定試験 ・WEBクリエイター能力認定試験 など | ・オンラインショップ運営会社 ・スマートフォンアプリ開発会社 ・WEB制作会社 など |
IT | ・スマートフォンアプリケーションプログラマー養成(Java言語)科 ・WEBアプリケーションプログラマー養成科 ・ソフトウェアプログラマー養成(Python言語)科 ・ネットワークエンジニア科 など | ・PHP技術者認定試験 ・Oracle Certified Java Programmer ・Javaプログラミング能力認定試験 ・基本情報技術者試験 など | ・WEB開発会社 ・ソフトウェア開発会社 ・ソーシャルゲーム会社 など |
介護 | ・介護職員初任者研修コース ・介護福祉士実務者研修コース ・生活援助従事者研修コース | ・介護職員初任者研修 ・介護福祉士実務者研修 ・生活援助従事者研修 | ・医療施設 ・福祉施設 ・老人福祉施設 |
医療 | ・医療事務科 | ・医療事務技能審査試験 ・医療事務管理士技能認定試験 ・調剤事務管理士技能試験 ・医療事務検定試験 ・診療報酬請求事務能力認定試験 など | ・病院 ・歯科医院 など |
参照元:厚生労働省「求職者支援制度のご案内」
職業訓練は「ハローワーク インターネットサービス」で検索可能です。
ただし、希望するコースが必ず受講できるわけではありません。募集時期は通年であったり年に1回だけだったりとさまざまなため、申し込み前にチェックしましょう。
職業訓練給付金が支給されるまでの手続き・流れ
職業訓練給付金は居住地域を管轄するハローワークで、求職者支援制度の申し込みと同時に申請します。
申請から受給までの流れは以下のとおりです。
- ハローワークでの説明
- 訓練コースの選択
- 受講の申し込み
- 訓練実施機関による選考
- 就職支援計画の作成
- 職業訓練の受講開始・給付金の支給
申請にはさまざまな書類が必要になるので、忘れずにチェックしてください。
ハローワークでの説明
まずはハローワークで求職の申し込みをして、求職者支援制度の説明を聞きます。その際、職業訓練給付金を申請する旨を伝えましょう。
訓練コースの選択
職業訓練するコースを選択して必要書類を受け取りましょう。同時に職業訓練給付金の事前審査に関する説明も聞き、以下の書類を受け取ってください。
- 受講申込書
- 職業訓練受講給付金要件申告書
- 受講申込・事前審査書(安定所提出用)
- 職業訓練受講給付金通所届
これらの書類は事前審査の申請で必要なので、忘れずに保管してください。
受講の申し込み
訓練コースが決定したら、職業訓練給付金の事前審査と同時にハローワークの窓口で申し込みします。上記の書類に加え、以下の書類も添付して申請してください。
必要書類 | 詳細 | |
---|---|---|
番号確認書類(原本) ※いずれか1点 |
・マイナンバーカード ・通知カード ・マイナンバーの記載のある住民票(住民票記載事項証明書) |
|
身元(実在)確認書類 ※いずれか1点 |
・マイナンバーカード ・運転免許証 ・身体障害者手帳 ・精神障害者手帳 ・運転経歴証明書 ・旅券 ・療育手帳 ・在留カード など |
ない場合は以下のうち2点以上 ・公的医療保険の被保険者証 ・年金手帳 ・児童扶養手当証書 ・特別児童扶養手当証書 など |
所定の添付書類 (同居配偶者等の預貯金通帳を除き原本) |
・直近3ヵ月以内に交付された住民票謄本の写しまたは住民票記載事項証明書(世帯の構成および続柄が記載されたもの) ・事前審査申請日の前月に得た申請者本人および全ての同居配偶者等の収入を証明する書類(賃金明細書など。もしくは、源泉徴収票、市区町村が交付する所得証明書(額面が記載されたもの)など) ・申請者本人または同居配偶者等が保有する事前審査申請日の残高が50万円以上であるすべての預貯金通帳または残高証明(直近1ヵ月以内に交付されたもの) ・給付金の振込先となる通帳・その他、ハローワークが求める書類 |
参照元:厚生労働省「雇用保険を受給できない求職者の皆さまへ 求職者支援制度があります! 」
訓練実施機関による選考
申し込み後は訓練を実施する機関での選考が行われます。現地で面接や筆記試験などを受けてください。その際、受付印を押した受講申込書の提出を忘れないようにしましょう。
就職支援計画の作成
合格通知が届いたら、訓練開始日前日までにハローワークで「就職支援計画書」の交付を受けます(支援指示)。また、職業訓練給付金の事前審査が受理された方は、ハローワークで説明を聞いて以下の支給申請に必要な書類を受け取ってください。
- 職業訓練受講給付金支給申請書(訓練実施機関による受講証明を受けたもの。受講証明がない場合は無効)
- 就職支援計画書
- 給付金支給状況(支給記録)※あらかじめ交付を受けていない場合は不要
なお、支援指示の日程はハローワークから指定される場合もあります。
職業訓練の受講開始・給付金の支給
職業訓練中と修了後3ヵ月間は、原則月1回ハローワークが指定する日に職業相談へ行く必要があり、職業訓練給付金も同じ日に申請します。支給申請の際は以下の書類を提出してください。
- 上記のハローワークで受け取った書類
- やむを得ない理由で訓練を欠席(遅刻・欠課・早退を含む)した場合は、その理由を証明する書類(医師または担当医療機関の証明書など)
- 「寄宿手当」の支給を希望する方は、寄宿を開始したこと又は終了したことを証明する書類
やむを得ない理由に該当する場合でも、支給該当期間の8割出席が必要です。
なお、職業訓練給付金は申請から1週間〜10日前後で入金されます。
職業訓練給付金を受け取るメリット
職業訓練給付金を受給するメリットは以下のとおりです。
- 安定した生活ができる
- 職業訓練を受けるモチベーションになる
安定した生活ができる
職業訓練給付金を受け取ることで、生活費の支援を受けながら学習を進められます。
職業訓練校は朝から夕方まで約6時間の講義があり、宿題でさらに時間をとられるケースもあるため、パートやアルバイトなどをするのは難しいでしょう。
しかし、給付金を受給することで費用面の負担が軽減され、勉強に集中して取り組める環境が整います。その結果、効率よくスキルを身につけられる可能性が高まるでしょう。
職業訓練を受けるモチベーションになる
職業訓練給付金は訓練を受けないと給付されないため、継続するモチベーション向上につながります。
職業訓練校では未経験の科目を学ぶ機会も多く、モチベーションが下がり継続が困難になる場面もあるでしょう。
さらに、生活費捻出のためにアルバイトをすると体力的にも疲弊し、学習意欲を失う可能性もあります。
職業訓練給付金を受給していれば、これらの事態を回避し訓練を継続するために効果を発揮します。
職業訓練給付金を受け取るデメリット

職業訓練給付金は訓練を受けながら給付金を受け取れる制度ですが、デメリットの把握も重要です。
- 手続きに時間がかかる
- 給付終了後に負担がかかる
- 就職が先延ばしになる
手続きに時間がかかる
職業訓練給付金を受給するには、厳しい給付条件を満たし、さまざまな手続きを行う必要があります。また、給付金を受け取るまでに時間がかかる点も考慮が必要です。また、手続きに不備があると受給資格がなくなるので注意しましょう。
給付終了後に負担がかかる
職業訓練給付金の受給が終了しても就職先が決まらない場合、経済的な負担は避けられません。
そのためにも、早めに就職できるように職業訓練中もしっかりと就職活動をしましょう。
なお、就職先が決まるまではハローワークと連絡をとり、就職活動を継続する必要があります。連絡を怠って就職活動を行わない場合、給付金の返還を求められる可能性もあるため注意しましょう。
就職が先延ばしになる
職業訓練を受講すると就職が先延ばしになるため、早く働きたいと考える方にはデメリットになるでしょう。
一方で、受講中でも就職活動はできるため、修了後すぐに働けるよう環境を整えるのもひとつの方法です。
職業訓練給付金の審査に落ちた場合

職業訓練給付金を受給できない場合は、以下の方法で生活資金を工面できます。
- 生活保護を受ける
- カードローンなどを活用する
自分に合った方法を選択してみてください。
生活保護を受ける
職業訓練給付金の審査に落ち生活が苦しい場合は、生活保護制度の利用を検討しましょう。
生活保護制度は福祉事務所の生活保護担当窓口で申請可能で、受け取れる金額は世帯収入や居住地域などにより大きく異なります。
例:八王子在住・40代・男性・独身
- 生活扶助:78,600円
- 住宅扶助:53,700円
- 合計:132,300円
詳しい条件や金額は、お住まいの自治体に確認してください。
カードローンを活用する
職業訓練給付金の審査に落ちた場合は、生活費や急な出費に備えることが大切です。
セゾンファンデックスのかんたん安心ローンを申し込んでおけば、急な出費があってもATMからすぐに現金を借りられます。なお、カードの申し込みは、失職前かアルバイト収入のあるうちに行う必要がある点に注意してください。


職業訓練できる他の公的制度

求職者支援制度の利用条件に該当しない方は、他の公的制度を検討してみてください。
- 公共職業訓練(ハロートレーニング)
- 教育訓練給付制度
公共職業訓練(ハロートレーニング)
ハローワークの求職者で雇用保険を受給している方は、公共職業訓練を利用できます。受講料は無料(テキスト代は有料)で、申し込みの流れは求職者支援訓練と同じです。また、職業訓練中に雇用保険の給付を終えてしまう場合は、訓練を終えるまで給付が延長されます(最長2年間)。
この制度は、職業訓練を受ける前に雇用保険の給付期間が3分の1程度残っているのが条件で、支給内容は以下のとおりです。
- 基本手当:離職前の賃金に応じて変動
- 受講手当:1日500円
- 通所手当:上限42,500円
- 寄宿手当:1ヵ月10,700円(該当者のみ)
雇用保険の受給者で新たなスキルを身につけたい方は、利用を検討してみてください。
教育訓練給付制度
教育訓練給付制度とは在職中の方のキャリアアップを目指す制度で、教育訓練の修了後に受講費用の一部が支給されます。給付額や講座の種類は以下のとおりです。
訓練名 | 給付率 | 対象講座の例 |
---|---|---|
専門実践教育訓練 | 最大で受講費用の80% (年間上限64万円) | ・業務独占資格などの取得を目標とする講座(介護福祉士、看護師・准看護師など) ・デジタル関係の講座(第四次産業革命スキル習得講座など) |
特定一般教育訓練 | 最大で受講費用の50% (上限25万円) | ・業務独占資格などの取得を目標とする講座(介護支援専門員実務研修、大型自動車第一種など) ・大学等、専門学校の課程(短時間の職業実践力育成プログラムなど) |
一般教育訓練 | 受講費用の20% (上限10万円) | ・資格の取得を目標とする講座(社会保険労務士、Webクリエイターなど) |
※上記の給付率や上限金額は最新の情報を確認してください。
講座は約16,000種類あるため、自分の興味ある分野を受講できるでしょう。
参照元:厚生労働省「教育訓練給付制度」
職業訓練給付金に関するQ&A

ここでは職業訓練給付金についてよくある疑問点を紹介します。ご自身の悩みが解決するケースもあるので参考にしてください。
求職者支援制度を利用するにあたって実家暮らしであるかどうかは問われません。ただし職業訓練給付金の受給を希望する場合は、以下の条件に注意する必要があります。
- 世帯収入が30万円以下
- 世帯の金融資産が300万円以下
自分の収入が少なくても、世帯収入や世帯の金融資産が一定以上ある場合は受給できない点も押さえておきましょう。
世帯収入が40万円ある場合は、職業訓練給付金は受給できません。これは世帯収入が30万円以内という受給条件があるためです。
なお、給付金が支給されなくても職業訓練の受講は可能です。
おわりに
求職者支援制度は条件を満たすと無料で職業訓練を受けられる制度です。また、一定の条件に該当する場合は、生活の支えとなる職業訓練給付金を受け取れます。求職者支援制度を活用することで、生活費の不安を抱えずに安心して新たなスキルを身につけ、就職活動を有利に進めることが可能です。
もし求職者支援制度の利用条件に当てはまらない場合でも、公共職業訓練や教育訓練給付制度など、他にもスキルアップを支援する制度があります。ご自身の状況に合った職業訓練制度を積極的に活用し、キャリアアップへの一歩を踏み出してみてください。
新たなスキルの習得は、あなたの可能性を広げ、より充実した未来を切り拓く鍵となります。ぜひこの機会に行動を起こし、理想の働き方を実現しましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。