児童手当という制度を知っていても、具体的にいつまで支給されるかや、詳しい条件は把握していないという方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、児童手当について押さえておきたいポイントをまとめました。知識の差は、支給額にも反映されます。知っておいて損はありませんので、この際に児童手当の知識を深めていきましょう。
児童手当とは?
まずは、児童手当についておさらいしましょう。
児童手当は、0歳から中学生までの子どもがいる家庭に支給されるお金のことで、生活の安定と子ども達の健全な成長の支援を目的としています。
では、実際にどのくらいの金額が支給されるのか、所得制限はあるのかなど、詳細をチェックしてみましょう。
児童手当でもらえる金額
児童手当でもらえる金額は、子どもの年齢や人数によって異なります。以下の表をご覧ください。
子どもの年齢 | 1人当たりの児童手当支給額(月額) |
3歳未満 | 15,000円 |
3歳以上小学校卒業前 | 10,000円 (第3子以降 15,000円) |
中学生 | 10,000円 |
児童手当は、1人につき月額15,000円または10,000円が支給されます。
ただし、児童手当は毎月手元に届くわけではありません。毎年6月、10月、2月の3期に分けて4ヵ月分まとめて支給されます。
対象となる期間は、それぞれの前月分までです。例えば、6月には2月から5月分までが支給されます。
児童手当は高校生になる前までの児童が対象
前述しましたが、児童手当は高校生になる前までの子どもが対象となります。具体的には、15歳の誕生日から最初の3月31日を迎えるまでとなっています。
ここで生じるのが、誕生月による支給期間の差です。支給終了が一律で決まっている一方、支給開始は子どもが生まれてからの申請となるので、どうしても差が生じてしまいます。同じ学年の子どもでも、4月生まれと3月生まれでは最大11ヵ月分、金額にすると110,000円の差が発生します。
「みんな高校生になる前まで支給されるから、どの家庭も同じ金額がもらえるのかな」と思ってしまいがちですが、誕生月によって違いがあるということも把握しておきましょう。
児童手当には所得制限がある
児童手当は、全家庭がもらえるわけではありません。支給には所得制限が設けられており、児童手当の請求者が限度額以上の所得がある家庭は対象外となります。
所得制限は、扶養親族等の人数によって限度額が異なります。以下の表で具体的に見てみましょう。
扶養親族等の人数 | 所得制限限度額 | 目安の年収額 |
0人 | 622万円 | 833万3,000円 |
1人 | 660万円 | 875万6,000円 |
2人 | 698万円 | 917万8,000円 |
3人 | 736万円 | 960万円 |
4人 | 774万円 | 1,002万円 |
5人 | 812万円 | 1,042万円 |
「扶養親族等」とは、所得税法上での控除対象配偶者と扶養親族のことです。人数のカウントは前年の12月31日の状況で判断されるので、今現在の状況とは異なる場合もあります。
所得制限の判断は、児童手当の請求者のみの所得が対象です。請求者の所得と配偶者の所得が合算されることはありません。また、所得は年収から控除額を差し引いた金額です。なお、所得額は扶養控除が加算された金額となっています。
所得制限を超えている場合、特例給付として一律で1人当たり月額5,000円支給されます。しかし、特例給付は2022年10月から一部廃止されました。次項で詳しく説明しましょう。
2022年10月から特例給付は一部廃止に
2022年10月から、一定額以上の所得がある世帯への特例給付が廃止されました。
下の表を見ると、例えば子ども2人と配偶者を扶養している場合、扶養親族等の人数は3人となり、所得額が972万円を超える世帯が対象となることが分かります。この場合の年収の目安は、1,200万円です。
扶養親族等の人数による特例給付の所得限度額は、以下の表をご確認ください。
扶養親族等の人数 | 所得制限限度額 | 目安の年収額 |
0人 | 858万円 | 1,071万円 |
1人 | 896万円 | 1,124万円 |
2人 | 934万円 | 1,162万円 |
3人 | 972万円 | 1,200万円 |
4人 | 1,010万円 | 1,238万円 |
5人 | 1,048万円 | 1,276万円 |
所得制限と同じく、所得額は扶養控除が加算された金額となっています。児童手当の請求者が所得対象額を超えた世帯が、特例給付廃止の対象となります。
児童手当の注意点
ここまでで、児童手当の具体的な支給額や所得制限などについてご理解いただけたのではないでしょうか。しかし、児童手当にはもっと細かい決まりや条件があり、うっかりしていると受給が遅れてしてしまう事態になりかねません。
続いては、児童手当に関する注意点をお伝えします。
15日過ぎたら翌月分からの支給となる
児童手当の申請は、「15日以内」がキーポイントです。
児童手当は、原則として申請月の翌月から支給が開始されます。つまり、申請が遅れると支給開始が後ろ倒しになってしまうのです。
しかし、児童手当には「15日特例」という制度が設けられています。これは、子どもの誕生や転居した翌日から15日以内に申請を済ませば、月をまたいでしまっても翌月分から支給される制度です。
児童手当は、支給終了が一律で決まっています。できるだけ長い期間手当を受け取るためにも、15日以内の申請を心掛けましょう。
では、それぞれのタイミングについて詳細をお伝えします。
子どもが生まれたとき
児童手当は、子どもが生まれたら自動的に給付されるわけではありません。子どもが誕生したら、居住地の市区町村へ申請が必要です。
では、申請のタイミングが翌月になってしまった場合、15日特例が適用されるケースと適用されないケースをご紹介します。
【例】4月20日生まれの子ども
適用:5月5日までに申請すれば、5月分から支給
適用外:5月6日以降の申請になると、6月分から支給
このように、15日以内の申請かどうかで1ヵ月分差が生じることになります。
引っ越しにより住所が変わったとき
引っ越しで住所が変わった場合、転入先の市区町村へ申請しなければなりません。転居の場合も、子どもが生まれたときと同様に15日特例が適用されます。月末に引っ越し、申請が翌月になってしまっても、転入日の翌日から15日以内の申請なら、翌月分から受給可能です。
公務員になったとき、もしくは公務員を退職したとき
公務員の場合、居住地の自治体ではなく勤務先の各所属庁から児童手当が支給されます。そのため、公務員になったときは元の市区町村への受給資格消失届と、勤務先への認定請求書の提出が必要です。
反対に、公務員を退職したときは元の勤務先に受給資格消失届を、居住地の市区町村に認定請求書を提出しなければなりません。
これらの申請も、15日特例の対象となります。
留学する場合は書類の提出が必要になることも
海外に留学する場合、いくつか書類を提出します。
というのも、児童手当の支給は日本国内に住民登録がある子どもが対象であるため、海外に留学している子どもの児童手当を受給するには、以下の条件を満たさなければなりません。
【海外に住んでいる子どもの児童手当を受給する条件】
- 留学の前日までに3年以上継続して日本国内に住所を有していた
- 教育を受けることが目的で海外に住み、保護者と同居していない
- 日本国内の住所がなくなった日から3年以内
これらの条件を満たしていることを証明するために、留学の事実がわかる書類や、留学前の国内状況がわかる書類などを提出する必要があるのです。
中学3年生の2月・3月分はきょうだいの有無で支給時期が変わる
中学3年生の2月と3月分の児童手当は、きょうだいの有無によって支給時期が変わります。
具体的な時期を説明する前に、前述した「児童手当の支給は中学卒業時で終了」ということと、「児童手当は通常6月、10月、2月に支給される」ということを念頭に置いてください。
【中学3年生の2月・3月分の支給時期】
弟や妹がいる場合:きょうだいの児童手当と一緒に6月に支給
弟や妹がいない場合:4月に支給
このようにきょうだいの有無が考慮され、上記のスケジュールで支給されます。
両親の別居などは各ルールに応じて支給される
児童手当は、請求者に支給されます。では、事情があって両親が別居しているとどうなるのでしょうか。
【離婚協議中で両親が別居している】
別居していたとしても、生計が同じなら引き続き請求者に支給されます。しかし、生計が同じでないケースでは、子どもと同居している方が優先されます。その場合、別居監護申立書などの書類の提出が必要です。
【両親が海外に住んでいる(対象の子どもは日本国内居住)】
「父母指定者」として日本国内で子どもを養育している方を指定し、児童手当を給付してもらえます。
例えば、両親が海外勤務のため祖父母宅で子どもを養育してもらっている場合、祖父や祖母を父母指定者とし、父母指定者が児童手当を受け取ることが可能です。
ただし、父母指定者が給付を受けるには、指定された方が市区町村へ届け出なければなりません。
高校生は支給対象外だが子どもの人数には含まれる
児童手当は、高校生は支給対象外ではありますが、子どもの人数にはカウントされます。ただし、高校を卒業したら子どもの人数にカウントされません。具体例を挙げて説明しましょう。
【例】17歳(高校生)、14歳(中学生)、10歳(小学生)、8歳(小学生)の子どもがいる世帯の場合
子どもの年齢 | 数え方 | 児童手当支給額(月額) |
17歳 | 第1子 | 高校生以上のため支給対象外 |
14歳 | 第2子 | 10,000円 |
10歳 | 第3子 | 15,000円 |
8歳 | 第4子 | 15,000円 |
17歳の高校生は支給対象外のため手当はもらえませんが、子どもの人数にはカウントされます。そのため10歳の小学生は第3子、8歳の小学生は第4子となり、第3子以降となるのでそれぞれ15,000円支給されるのです。
違うパターンも見てみましょう。
【例】19歳(大学生)、16歳(高校生)、14歳(中学生)、10歳(小学生)の子どもがいる世帯の場合
子どもの年齢 | 数え方 | 児童手当支給額(月額) |
19歳 | - | 高校生以上のため支給対象外 |
16歳 | 第1子 | 高校生以上のため支給対象外 |
14歳 | 第2子 | 10,000円 |
10歳 | 第3子 | 15,000円 |
19歳の大学生は、高校を卒業しているため子どもの人数には入りません。したがって、16歳の高校生が第1子となります。以下、14歳の中学生は第2子、10歳の小学生は第3子に数えられます。
このように、高校生がいるかどうかで子どもの人数の数え方が変わるのです。
高校生が受けられる手当や支援はある?
児童手当は、高校生になると支給対象外になります。これは、ひとり親家庭や生活保護を受けている家庭であっても例外ではありません。しかしながら、高校生でも教育費はかかってしまうので、何か支援があるに越したことはないですよね。
ここからは、ひとり親世帯などの高校生が受けられる手当や支援をまとめ、現在の児童手当を巡る状況を紹介します。
2023年時点の高校生を対象とした手当や支援
高校生を対象としている手当や支援を紹介します。
【高校生が対象の手当・支援】(2023年現在)
- 児童扶養手当
- 児童育成手当
- 特別児童扶養手当
- 障害児福祉手当
- (母子家庭)住宅手当
- (ひとり親家庭)医療費助成制度
- 生活保護 など
児童扶養手当及び児童育成手当は、どちらもひとり親家庭を対象とした給付制度です。児童扶養手当と児童育成手当の違いは、所得制限の対象者にあります。児童扶養手当は受給者だけでなく、同居の扶養義務者が所得制限の対象となります。一方、児童育成手当は所得制限の対象者となるのは受給者のみです。
ひとり親家庭や母子家庭の場合、住宅手当や医療費助成制度の対象にもなります。また、自治体によっては高校の学費の補助や就学支援金の支給などを行っているようです。
特別児童扶養手当は、精神または身体に障害を有している児童を育てている家庭を対象に支給されます。障害児福祉手当の場合、重度の障害により日常的に介護の必要がある在宅児童が対象です。双方の手当とも、ひとり親家庭かどうかは問われません。
このように、児童手当がもらえなくても、高校生を対象としたさまざまな手当や支援があります。
立憲民主党が「子ども総合基本法案」を提出
2022年3月に、立憲民主党から「子ども総合基本法案」が提出されました。
この法案はチルドレン・ファーストを実現すべく、子ども関係の予算増額、子どもの貧困対策などを提案しています。その中に、児童手当の対象年齢を高校3年まで延長することが盛り込まれています。今後の動向や、続報を注視しましょう!
児童手当の使い道は?
最後に、児童手当の使い道について見ていきましょう。
生活の安定や子どもの健全な育成を目的として支給されている児童手当ですが、実際のところどんな使われ方をしているのでしょうか。内閣府が2018年11月から2019年2月にかけて行った「児童手当等の使途に関する意識調査」の結果をもとに、児童手当の使い道を紹介します。
子どもの将来を見据えた用途が7割程度
貯蓄や保険料、教育費などにあてていると回答した方がおよそ7割を占めました。
児童手当を活用し、学資保険をかけたり進学に必要なお金を貯蓄したりと、子どもの将来を見据えている方が多いようです。
また、塾や習い事の月謝など、教育のために使っている割合も高い傾向にあります。
子どもの生活費にあてる家庭も
服や日用品の買い替えなど、子どもの生活費にあてている家庭は22%でした。
子どもの成長は早く、新しく服や靴を買ってもあっという間に小さくなってしまいます。学校に通っていると、筆記用具やノートといった消耗品も頻繁に購入しなければなりません。傘や水筒などを壊してしまうこともあるでしょう。
このように、子どもに必要な物を揃えるには出費がかさんでしまうもの。そのため、児童手当を子どもの生活費にあてる家庭も少なくないようです。
使用用途を子どもに限定していないケースも
児童手当の使い道を子どもに限定せず、家庭の日常生活費として使っているケースは14.9%です。子どもの育成のための手当ですが、そもそも生活が安定しないと健全な育成につながりにくくなってしまいます。
「今月はちょっと生活費が苦しい」というときに児童手当があれば、生活が楽になることはもちろん、精神的な負担も軽減できるでしょう。
家庭の状況に合わせて活用されている
紹介してきたように、児童手当は家庭の状況に合わせてさまざまな用途で使用されています。
特に注目したいのが、家庭の日常生活費としているケースです。「冠婚葬祭が続いて出費が多い」「きょうだいの入学が重なってランドセルや制服を一度に用意しなければならない」といったように、いつもよりお金が必要なタイミングもあるでしょう。そんなとき児童手当が手元に届けば、大変ありがたいものです。
しかしながら、「児童手当は子どものために貯蓄したい!」と心に決めている方もいらっしゃるはず。児童手当には手をつけたくないけれど、一時的にまとまったお金が必要なときは、カードローンを検討してみてはいかがでしょうか。
急な出費でお困りの際は、クレディセゾンのカードローン「MONEY CARD(マネーカード)」を検討してみてはいかがでしょうか。
おわりに
本コラムでは、児童手当の対象年齢や支給額、所得制限、使い道など詳しく紹介してきました。児童手当を受給するには申請が必要であり、申請するタイミングによって支給開始時期が左右され、総支給額にも差が生じてしまいます。
また、児童手当のあり方はいつまでも現状のままというわけではありません。制度は変更されていくので、今後の動向も注視していきましょう。