「訴えられた!」という経験をされる方は多くないかもしれませんが、誰の身にも起こり得ることです。突然のことで、「弁護士に依頼するお金がない」といった事態も予想できます。
このコラムでは、訴えられたけれどお金がない場合を想定し、弁護士なしでも裁判に臨めるのか、弁護士費用はいくらくらいか、経済的に余裕がない方へのサポートはあるのかなど、気になることをまとめました。
トラブルに備えるためにも、ぜひご一読ください。
訴えられたらまず何をしたら良い?
何らかのトラブルに巻き込まれ、訴えられてしまった場合、どうしたら良いか焦ってしまうかと思います。まずは、訴えられたときの手順を確認しておきましょう。
- 書類の内容を確認する
- 答弁書を作成する
- 答弁書を提出する
それぞれの手順を詳しく説明します。
書類の内容を確認する
訴えられると、裁判所から「訴状」と呼ばれる書類が届きます。慌てずに封筒の中の書類などを確認しましょう。封筒の中には、訴状の他に甲号証(証拠書類等、原告が提出した書類)や証拠説明書、口頭弁論期日呼出及び答弁書催告状など数種類の書類が同封されているはずです。
訴状や甲号証などには、訴訟に至った経緯や原因、それを裏付ける証拠などが記載されています。相手の主張や証拠はもちろん、答弁書の提出日や裁判期日を把握しておくことも重要です。これらの期日は、口頭弁論期日呼出及び答弁書催告状に記載されています。
答弁書を作成する
書類の内容を確認したら、次に答弁書を作成します。答弁書とは、ご自身の主張を記載する書類のことです。答弁書はご自身で作成するか、弁護士などに代理で作成してもらいます。
答弁書には、相手の主張や請求に応答する内容を記載します。証拠に基づいてきちんと反論したり、意見を述べたりしなければなりません。答弁書は細かいルールに従って作成する必要があるため、予算に余裕がある場合は、弁護士や司法書士など法律の専門家の力を借りた方が良いでしょう。
答弁書を提出する
答弁書が完成したら、裁判所に提出します。提出期日が過ぎても無効にはなりませんが、口頭弁論期日までには到着していなければなりません。
答弁書は、郵送で提出します。万一、郵送では口頭弁論期日に間に合わない場合は、直接裁判所に持参して提出することも可能です。
答弁書を提出せず、口頭弁論期日に裁判所への出頭もしなかった場合、相手の主張がそのまま認められてしまいます。相手の主張に異議があるなら、しっかり手順を踏んでご自身の意見を主張しましょう。
弁護士費用が払えない!自分で裁判に挑むことはできる?
訴えられて弁護士に依頼する場合は高額な費用がかかってしまいますが「本人訴訟」という形でご自身だけで裁判に挑むこともできます。ここでは、本人訴訟の詳細とメリット・デメリットについてお伝えします。
本人訴訟はできる
本人訴訟は、弁護士や司法書士などの専門家に依頼せず、ご自身だけで裁判を進める方法です。離婚問題や借金トラブルといった民事訴訟では、本人訴訟が認められています。ただし、犯罪行為が含まれる刑事訴訟では、本人訴訟はできないケースがあります。
裁判と聞くと、弁護士などについてもらうイメージが強いかもしれません。しかし、司法統計の2020年度の報告によると、簡易裁判所において原告被告双方の本人訴訟は約74%を占めています。原告が弁護士や司法書士を選任した場合でも、被告の本人訴訟は約47%と、本人訴訟を選択している方は意外にも多いのです。
引用:裁判所(https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/019/012019.pdf)
本人訴訟のメリット
本人訴訟における最大のメリットは、弁護士費用を抑えられる点です。詳細は後述しますが、弁護士に依頼するとなると着手金や報酬金など、さまざまな費用を払わなければならず、着手金だけでも最低10万円程度、数十万円かかることも多く費用は高額です。
特に請求金額があまり高くない訴訟の場合、勝訴や相手との和解が成立しても、弁護士への報酬金などを支払うと赤字になってしまう可能性もあるでしょう。
証拠が揃っている、内容が難しくないなど、弁護士の力を借りずに裁判が乗り切れそうなケースは、本人訴訟を検討しても良いかもしれません。
本人訴訟のデメリット
本人訴訟は、デメリットが多いことを頭に入れておかなければなりません。主なデメリットは以下のとおりです。
- 法的な主張が理解しにくい
- 専門的な対応が難しい
- 手間やストレスがかかる
裁判を有利に進めていく上では、法的な主張や理由の理解が重要です。法律知識が乏しいと、裁判が不利に進んでしまう恐れがあります。また、答弁書などの作成、証拠の揃え方など、専門的な対応も難しいでしょう。書類や手続きに不備があれば、裁判の進行の妨げとなってしまいます。
そして、膨大な時間や手間がかかってしまうのもデメリットです。法律知識や裁判経験のない素人が書類を作成し、裁判所で意見を陳述するとなると、まずは勉強やリサーチから始めなければなりません。それだけでも時間や手間がかかり、加えて不慣れなことが続くと大きなストレスにもなってしまうでしょう。
弁護士などに依頼する場合の費用相場は?
本人訴訟は、費用を抑えられるメリットはありますがデメリットも多いため、訴えられたら弁護士などの協力を仰いだ方が無難でしょう。弁護士に依頼すれば、書類の作成だけではなく、裁判所への代理出頭、証拠や主張の専門的な判断をしてもらえます。
ただし、弁護士へ支払う費用の捻出が必要になるため、いくらかかるか不安を感じる方もいるでしょう。
そこで、ここからは弁護士に依頼する際に必要な費用と目安の金額を紹介します。なお、費用の目安については、2004年に廃止となりましたが現在もこの基準を参考にしている弁護士が多いことから「(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準」という規定をもとに紹介していきます。
着手金
着手金は、弁護士に依頼するときに支払うお金です。着手金を支払うことで、正式な依頼が成立します。ただし、交通事故に関する訴訟の場合は、着手金が必要ないケースもあります。
(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準によると、着手金の基準は以下のとおりです。
経済的利益額 | 着手金 |
---|---|
300万円以下 | 経済的利益額の8% |
300万円超~3,000万以下 | 経済的利益額の5%+9万円 |
3,000万円超~3億円以下 | 経済的利益額の3%+69万円 |
3億円超 | 経済的利益額の2%+369万円 |
表の着手金は、民事の訴訟事件を想定しており、事件の内容によって金額が異なります。例えば、調停事件・示談交渉事件の着手金の最低額は100,000円とされています。
着手金は結果に関わらず返金されません。例え結果が不成功であっても、手元には戻ってこない点に注意が必要です。
引用:弁護士法人 川越法律事務所(http://www.kawagoe-law.com/pdf/fee201707.pdf)
報酬金
報酬金は、依頼した事件が成功した場合に支払います。完全でなく一部の成功であっても、その程度に応じて支払うもので、不成功(全面敗訴)の場合は支払う必要がありません。
(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準を参考に、報酬金の基準をまとめました。
経済的利益額 | 着手金 |
---|---|
300万円以下 | 経済的利益額の16% |
300万円超~3,000万以下 | 経済的利益額の10%+18万円 |
3,000万円超~3億円以下 | 経済的利益額の6%+138万円 |
3億円超 | 経済的利益額の4%+738万円 |
表の報酬額は、着手金と同様に民事の訴訟事件を想定しています。事件の内容によって金額が異なるため、目安として参考にしてください。
法律相談料
弁護士にトラブルを相談し、法的なアドバイスをもらう際に必要なのが、法律相談料です。相談時間の長さに応じて計上され、長くなるほど金額がかさんでいきます。法律相談料についても(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準に目安が設けられており、30分ごとに5,000〜25,000円となっています。だいたい、1時間10,000円のケースが多いようです。
日当
日当とは、弁護士が裁判所に出廷したり出張したりした際に発生する費用のことです。交通費や宿泊費とは別に支払われます。
その他
その他に切手代や印刷代などの実費、書類作成などの事務手数料といった費用も発生します。これらの費用も依頼主が負担する点を把握しておきましょう。
無料法律相談や法テラスを活用するのもひとつの手
前項でお伝えしたように、弁護士に依頼するとさまざまな費用がかかりますが、その金額は決して安くありません。
「弁護士に依頼したい」と考えていても弁護士費用の捻出が難しいようであれば、弁護士事務所の無料相談や法テラスを活用してみる方法があります。詳しい内容を見ていきましょう。
弁護士事務所の無料相談とは
弁護士事務所によっては「初回の相談は30分無料」「内容によっては相談無料」というケースがあります。通常であれば法律相談にはお金がかかりますが、限定的に無料で相談を受けてくれるのです。無料相談を活用すれば、費用の節約につながるでしょう。
ただし、指定時間を超えたり回数を重ねたりした場合は、料金が発生します。依頼したい弁護士事務所がどこまで無料で対応してくれるのか相談前に確認しておきましょう。
法テラスとは
法テラス(正式名称:日本司法支援センター)は、法務省が管轄しているトラブル解決の窓口です。トラブルの解決に向け、国民に法的な支援を提供しています。
法テラスでは、無料で利用できるサービスや、弁護士費用の立て替えなどを業務の一環としています。弁護士費用の捻出にお困りの方にとって、心強いサポートとなるでしょう。
では、法テラスで受けられる具体的なサービスをお伝えします。
情報提供
利用者が知りたい内容に応じて、弁護士会・司法書士会といった相談機関の紹介や法制度に関する情報などを無料で提供しています。「突然訴えられてどうしたらいいか分からない」「どこに相談すればいいか知りたい」といった方は、まず法テラスに問い合わせてみると良いかもしれません。
相談方法は、電話や面談です。サポートダイヤルでは、研修を受けたオペレーターが応対し、必要な情報を提供してくれます。また、面談希望の場合は、お近くの法テラス窓口に問い合わせてみましょう。地方の法テラス事務所では、司法書士や社会福祉士などが直接利用者の応対にあたっています。
民事法律扶助
民事法律扶助は「経済的に余裕がない方」を対象に無料の法律相談、必要な場合は民事訴訟に限り、弁護士費用などの立て替えをしてくれるサポートです。
民事法律扶助を希望する場合、以下の流れで手続きを進めます。
- 法律相談の申し込み
- 法律相談(無料)
- 審査
- 援助開始を決定
- 事件解決
まず受付で相談の内容や収入、家族構成、保有資産などの確認を経て、法律相談を予約します。このとき、以下の項目がチェックされます。
- 月収や保有資産が要件をクリアしているか
- 勝訴を見込めるか
- 民事法律扶助の主旨に適しているか
条件を満たしていない場合は援助が受けられないため、次に進めません。
法律相談では、さらに詳しい内容を確認し、援助可能かどうか審査されます。審査により援助が決定すると、弁護士費用(着手金や実費など)を立て替えてもらうことが可能です。
弁護士への報酬額は、事件解決の結果を踏まえて決められます。立て替えてもらったお金に関しては、原則毎月分割で返済していきます。
民事法律扶助を受けるには条件がありますが、高額な弁護士費用を一括で支払わなくて済むので、一時的な大きな負担を避けられるでしょう。
その他
法テラスでは、情報提供や民事法律扶助の他にも、国選弁護等関連、犯罪被害者支援、司法過疎対策といったさまざまな業務を行っています。このように、法テラスはあらゆる法的トラブル解決のサポートに尽力している機関です。
理不尽に訴えられたときの注意点
突然、理不尽に訴えられたときに、注意すべき点があります。
1.無視をしない
訴状を無視することは、以下のような事態に陥ることがあるので、危険な行為です。
- 滞納から2〜3ヵ月経過すると、ブラックリストに登録される
- 欠席裁判となり、原告の主張がほぼ認められる
- 判決が確定すると、財産や給与の差し押さえが行われることがある
- 裁判所からの通知が自宅に届いたことで、家族に借金がばれるリスクもある
加えて慰謝料請求の場合、反省の態度が見られないとみなされ、結果として慰謝料が増額される可能性もあります。訴状の無視だけはやめましょう。
2.悪くないのに訴えられた場合は訴え返すことができる
不当な訴えだと感じたら「反訴」という形で反撃することも可能です。反訴を行う場合、反訴状を裁判所へ郵送もしくは持ち込みで提出します。
ただし、反訴を行うには、以下の要件を満たす必要があります。
- 本訴請求またはその防御方法と関連性がある
- 口頭弁論終結前に反訴状を提出する
- 本訴が係属する裁判所に反訴状を提出する
- 著しく訴訟手続を遅滞させない
反訴を行う場合は、報復目的ではなく、正当な理由と証拠に基づいている必要がある点に注意しましょう。
3.民事裁判で訴えられた際の逃げ得は刑事罰の対象になる
民事裁判で訴えられた際に逃げ得をするのは通用しません。
以前は、民事裁判で負けても、裁判を無視し続けると、実際に支払い義務を逃れられるケースがありました。これを俗に「逃げ得」と呼びます。
また、従来の法律でも「30万円以下の過料」が科されていたものの、債務が多い方にとっては、逃げ得のデメリットが非常に弱いといった指摘もありました。
しかし、2020年4月の改正民事執行法の施行により、民事裁判での「逃げ得」行為に対して刑事罰が設けられました。刑事罰の内容は「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」と、これまでよりも重くなったのです。
刑事罰が科せられると前科が付くため、公的資格の剥奪や履歴書の賞罰欄に記載が必要になることで就職が難しくなるといったデメリットがあります。
逃げ得をすると取り返しがつかないことになる可能性が高いため注意しましょう。
訴えられたときにお金を工面する方法
弁護士費用を賄う方法は、複数あります。これらの方法についても把握しておけば、いざというときの安心材料になるでしょう。
弁護士費用保険制度
弁護士費用保険制度は、弁護士費用の全額または一部を補償する保険制度です。弁護士費用保険に加入していれば、法律相談料や着手金などが保険会社から支払われる仕組みになっています。
弁護士費用保険「弁護士保険」として弁護士費用に特化した保険商品をはじめ、自動車保険や火災保険の特約として販売されている商品があります。
弁護士費用保険の対象となるのは、主に自動車事故などですが、ストーカー被害、離婚トラブル、労働問題などに対応している保険もあります。日常で起こり得る法的トラブルが主な対象となっているので、万一の際の備えとなるでしょう。
生命保険の契約者貸付制度
加入している生命保険の種類によっては、契約者貸付制度を利用できる場合があります。
生命保険の契約者貸付制度とは、加入している生命保険の解約返戻金を担保にして、保険会社からお金を借りられる制度のことです。
一般的には、解約返戻金の7〜8割程度まで借りることができます。例えば、解約返戻金が200万円ある場合は、最大で140万円〜160万円を借りて弁護士費用に充てることができます。
ただし、解約返戻金がつかない掛け捨てタイプの生命保険では、契約者貸付制度を利用できません。利用を検討している場合は、ご自身の生命保険で解約返戻金がついているか確認してみましょう。
クレジットカードでキャッシングする
クレジットカードにキャッシング枠が付帯している場合、利用可能枠が余っていればキャッシングができます。
ただし、キャッシング枠の設定金額はショッピング枠よりも少ない傾向があるため、弁護士費用の全額に充てることができないかもしれません。
また、すでにショッピング枠を多く使っていて、キャッシング枠の利用可能枠が少ない場合、充分な金額を借りられない可能性があります。
なお、ショッピング枠のみが付いているクレジットカードを保有している場合は、別途キャッシング枠の審査を受ける必要があります。
クレジットカードをまだお持ちでない場合は『SAISON CARD Digital(セゾンカードデジタル)』がおすすめです。セゾンカードデジタルは、国内初の完全ナンバーレスカードです。
クレジットカード番号はスマホのアプリに直接届けられ、プラスチックのカードにはクレジットカード番号が記されていません。また、最短5分で手続きが完了します。
これからクレジットカードを利用したいという方は、SAISON CARD Digital(セゾンカードデジタル)がおすすめです。
カードローン
急な出費や一時的な費用の備えとして、カードローンを利用するのもひとつの手です。カードローンの多くは利用目的に制限はありませんので、弁護士費用を支払うのに、まとまったお金が必要という急な出費にも速やかに対応できます。
セゾンファンデックスの「かんたん安心ローン」は80歳まで申し込み可能、最大500万円まで融資が可能です。全国のコンビニや金融機関に設置されているATMで利用できます。ATM手数料や振込手数料も無料です。
カードローンをお考えの際は、ぜひセゾンファンデックスの「かんたん安心ローン」をご検討ください。
おわりに
このコラムでは、本人訴訟や弁護士費用の目安、経済的に余裕がない方のサポートなどについてお伝えしました。
ご紹介したように、弁護士に依頼するとなるとどうしても費用がかさんでしまいます。しかし、裁判には専門的な知識が求められるため、自分で進めようとすると、多くの手間と時間がかかります。
「お金がないから」と弁護士への依頼を諦めるのではなく、法テラスや弁護士費用保険、カードローンなどの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
思わぬトラブルの備えとして、ぜひこのコラムをお役立てください。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。