「訴えられた!」という経験をされる方は多くないかもしれませんが、誰の身にも起こり得ることです。突然のことで、「弁護士に依頼するお金がない」といった事態も予想できます。
このコラムでは、訴えられたけれどお金がない場合を想定し、弁護士なしでも裁判に臨めるのか、弁護士費用はいくらくらいか、経済的に余裕がない方へのサポートはあるのかなど、気になることをまとめました。
トラブルに備えるためにも、ぜひご一読ください。
1.訴えられたらまず何をしたら良い?
何らかのトラブルに巻き込まれ、訴えられてしまった場合、どうしたら良いか焦ってしまうかと思います。まずは、訴えられたときの手順を確認しておきましょう。
【訴えられたときの手順】
- 書類の内容を確認する
- 答弁書を作成する
- 答弁書を提出する
それぞれの手順を詳しく説明します。
1-1.書類の内容を確認する
訴えられると、裁判所から「訴状」と呼ばれる書類が届きます。慌てずに、封筒の中に入っている書類や中身を確認しましょう。封筒の中には、訴状の他に甲号証(証拠書類等、原告が提出した書類)や証拠説明書、口頭弁論期日呼出及び答弁書催告状など数種類の書類が同封されているはずです。
訴状や甲号証などには、訴訟に至った経緯や原因、それを裏付ける証拠などが記載されています。相手の主張や証拠はもちろん、答弁書の提出日や裁判期日はいつかまで確認しておくことが重要です。これらの期日については、口頭弁論期日呼出及び答弁書催告状に記載されています。
1-2.答弁書を作成する
書類の内容を確認したら、次に答弁書を作成します。答弁書とは、ご自身の主張を記載する書類のことです。答弁書はご自身で作成するか、弁護士などに代理で作成してもらいます。
答弁書には、相手の主張や請求に応答する内容を記載します。証拠に基づいてきちんと反論したり、意見を述べたりしなければなりません。弁護士や司法書士など法律の専門家の見解を参考にした方が良い場合もあるでしょう。さらに、答弁書の作成には細かいルールがあり、難易度が高いです。
1-3.答弁書を提出する
答弁書が完成したら、裁判所に提出します。提出期日が過ぎても無効にはなりませんが、口頭弁論期日より前に到着していなければなりません。
答弁書の提出は、郵送可能です。万が一、郵送では口頭弁論期日に間に合わない場合は、直接裁判所に持参して提出することもできます。
もし、答弁書を提出せず、口頭弁論期日に裁判所に出頭しなかった場合、相手の主張がそのまま認められてしまいます。例え相手の主張が一方的であっても、しっかり手順を踏んでご自身の意見を主張することが重要です。
2.弁護士費用が払えない!自身で裁判に挑むことはできる?
訴えられて弁護士に依頼するとなると、どうしてもお金がかかってしまいます。裁判は、弁護士なしでも進められるのでしょうか。
実は、「本人訴訟」という形でご自身だけで裁判に挑むことができます。ここでは、本人訴訟の詳細と、メリットとデメリットについてお伝えします。
2-1.本人訴訟はできる
本人訴訟は、弁護士や司法書士といった専門家なしで、ご自身だけで裁判を進める方法です。離婚問題や借金トラブルといった民事訴訟では、本人訴訟が認められています。ただし、犯罪行為が含まれる刑事訴訟では、本人訴訟のできないケースがあります。
裁判と聞くと弁護士などについてもらうイメージが強いかもしれません。しかし、司法統計の2020年度の報告によると、簡易裁判所において原告被告双方の本人訴訟は約74%を占めています。原告が弁護士や司法書士を選任した場合でも、被告の本人訴訟は約47%と、本人訴訟を選択している方は意外にも多いのです。
引用:裁判所(https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/019/012019.pdf)
2-2.本人訴訟のメリット
本人訴訟における最大のメリットは、弁護士費用を抑えられる点にあります。後述しますが、弁護士に依頼するとなると着手金や報酬金など、さまざまな費用を払わなければなりません。その金額は100,000円以上と高額です。
特に請求金額があまり高くない訴訟の場合、勝訴や相手との和解をしても、弁護士への報酬金などを支払えばマイナスになってしまう可能性もあるでしょう。
証拠が揃っている、内容が難しくないなど、弁護士の力を借りずに裁判が乗り切れそうなケースは、本人訴訟に向いています。
2-3.本人訴訟のデメリット
本人訴訟は、デメリットが多いことを頭に入れておかなければなりません。具体的には、以下のデメリットが考えられます。
【本人訴訟のデメリット】
- 法的な主張が理解しにくい
- 専門的な対応が難しい
- 手間やストレスがかかる
裁判を進めていく上では、法的な主張や理由の理解が重要です。法律知識が乏しいと、裁判が不利に進んでしまう恐れがあります。また、答弁書などの作成、証拠の揃え方など、専門的な対応も難しいでしょう。書類や手続きに不備があれば、裁判の進行の妨げとなってしまいます。
そして、膨大な時間や手間がかかってしまうのもデメリットです。法律知識や裁判経験のない素人が書類を作成し、裁判所で意見を陳述するとなると、まずは勉強やリサーチから始めなければなりません。それだけでも時間や手間がかかり、加えて不慣れなことが続くと大きなストレスにもなってしまうでしょう。
3.弁護士などに依頼する場合の費用相場は?
本人訴訟は、費用を抑えられるメリットはありますが、デメリットも多いことを紹介しました。そのため、訴えられたら弁護士などの協力を仰いだ方が無難でしょう。弁護士に依頼すれば、書類の作成だけではなく、裁判所への代理出頭、証拠や主張の専門的な判断をしてもらえるのです。
その分、弁護士へ支払う費用の捻出が必要になります。弁護士に依頼するとなると、どのような費用がいくらくらいかかるのでしょうか。
弁護士に依頼する際に必要な費用と目安の金額を紹介します。2004年に廃止となりましたが、日本弁護士連合会が弁護士費用の基準を定めた「(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準」という規定がありました。現在もこの基準を参考にしている弁護士が多いため、(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準をもとに紹介していきます。
3-1.着手金
着手金は、弁護士に依頼するときに支払うお金です。着手金を支払うことで、正式な依頼が成立します。ただし、交通事故に関する訴訟の場合は、着手金が必要ないケースもあります。
(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準によると、着手金の基準は以下の通りです。
経済的利益額 | 着手金 |
300万円以下 | 経済的利益額の8% |
300万円超~3,000万以下 | 経済的利益額の5%+9万円 |
3,000万円超~3億円以下 | 経済的利益額の3%+69万円 |
3億円超 | 経済的利益額の2%+369万円 |
表の報酬額は、民事の訴訟事件を想定しています。事件の内容によって金額が異なるため、目安として参考にしてください。ちなみに、着手金の最低額は100,000円とされています。
着手金は結果に関わらず返金されません。例え結果が不成功であっても、手元には戻ってこないのです。
引用:弁護士法人 川越法律事務所(http://www.kawagoe-law.com/pdf/fee201707.pdf)
3-2.報酬金
報酬金は、依頼した事件が成功した場合に支払います。完全でなく一部の成功であっても、その程度に応じて支払います。不成功(全面敗訴)の場合は支払いません。
こちらも(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準を参考に、報酬金の基準をまとめました。
経済的利益額 | 報酬額 |
300万円以下 | 経済的利益額の16% |
300万円超~3,000万以下 | 経済的利益額の10%+18万円 |
3,000万円超~3億円以下 | 経済的利益額の6%+138万円 |
3億円超 | 経済的利益額の4%+738万円 |
表の報酬額は、着手金と同様に民事の訴訟事件を想定しています。事件の内容によって金額が異なるため、目安として参考にしてください。
3-3.法律相談料
弁護士にトラブルを相談し、法的なアドバイスをもらう際に必要なのが、法律相談料です。相談時間の長さに応じて計上され、長ければ長いほど金額がかさんでいきます。法律相談料についても(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準に目安が設けられており、30分ごとに5,000〜25,000円となっています。だいたい、1時間10,000円のケースが多いようです。
3-4.日当
日当は、事務所以外で仕事をした際に発生する費用です。例えば、弁護士が裁判所へ行くまでにかかった交通費、遠方まで出張したときの宿泊費などが該当します。
3-5.その他
その他に切手代や印刷代などの実費、書類作成などの事務手数料といった費用も発生します。これらの費用に関しても、依頼主の負担となることを把握しておきましょう。
4.無料法律相談や法テラスを活用するのもひとつの手
前項でお伝えしたように、弁護士に依頼するとさまざまな費用がかかります。そして、その金額は決して安くありません。
「弁護士に依頼したい」と考えていても弁護士費用の捻出が難しいようであれば、弁護士事務所の無料相談や法テラスを活用してみる方法があります。詳しい内容を見ていきましょう。
4-1.弁護士事務所の無料相談とは
弁護士事務所によっては、「初回の相談は30分無料」「内容によっては相談無料」というケースがあります。通常であれば法律相談にはお金がかかりますが、限定的に無料で相談を受けてくれるのです。無料相談を活用すれば、費用の節約につながるでしょう。
ただし、指定時間を超えたり回数を重ねたりといった場合は、料金が発生します。依頼したい弁護士事務所がどこまで無料で対応してくれるのか、しっかり確認しておきましょう。
4-2.法テラスとは
法テラス(正式名称:日本司法支援センター)は、法務省が管轄しているトラブル解決の窓口です。トラブルの解決に向け、国民に法的な支援を提供してくれる機関となっています。
法テラスでは、無料で利用できるサービスや、弁護士費用の立て替えなどを業務の一環としています。そのため、弁護士費用の捻出にお困りの方にとって、心強いサポートとなるでしょう。
では、法テラスで受けられる具体的なサービスをお伝えします。
・情報提供
利用者が知りたい内容に応じて、弁護士会・司法書士会といった相談機関の紹介や法制度に関する情報などを無料で提供しています。「突然訴えられてどうしたらいいか分からない」「どこに相談すればいいか知りたい」といった方は、まず法テラスに問い合わせてみると良いかもしれません。
相談方法は、電話や面談が可能です。サポートダイヤルでは、研修を受けたオペレーターが応対し、必要な情報を提供してくれます。また、面談希望の場合は、お近くの法テラス窓口に問い合わせてみましょう。地方の法テラス事務所では、司法書士や社会福祉士などが直接利用者の応対にあたっています。
・民事法律扶助
民事法律扶助は、経済的に余裕がない方を対象に、無料の法律相談と必要な場合、弁護士費用などの立て替えをしてくれるサポートです。こちらのサポートは、民事訴訟に限ります。
民事法律扶助を希望する場合、以下の流れで手続きを進めます。
【民事法律扶助の流れ】
- 法律相談の申し込み
- 法律相談(無料)
- 審査
- 援助開始を決定
- 事件解決
まず、受付で相談の内容や収入、家族構成、保有資産などの確認を経て、法律相談を予約します。このとき、利用条件である月収や保有資産が一定額以下か、勝訴の見込みはあるか、民事法律扶助の主旨に適しているかなどが考慮されます。条件を満たしていない場合は援助が受けられないため、次に進めません。
法律相談でさらに詳しい内容を確認し、援助可能かどうか審査されます。審査により援助が決定すると、弁護士費用(着手金や実費など)の立て替えが開始。事件解決の結果を踏まえ、弁護士への報酬金を決定します。立て替えてもらったお金に関しては、原則毎月分割で返済していきます。
民事法律扶助を受けるには条件がありますが、高額な弁護士費用を一括で支払わなくて済むので、一時的な大きな負担を避けられるでしょう。
・その他
法テラスでは、情報提供や民事法律扶助の他にも、国選弁護等関連、犯罪被害者支援、司法過疎対策といったさまざまな業務を行っています。このように、法テラスはあらゆる法的トラブル解決のサポートに尽力している機関なのです。
5.弁護士費用保険制度やカードローンを利用する方法も
弁護士費用を賄うには、弁護士費用保険制度やカードローンで補う方法もあります。これらの方法についても把握しておけば、いざというときの安心材料になるでしょう。
最後に、弁護士費用保険制度とカードローンについて説明します。
5-1.弁護士費用保険制度
弁護士費用保険制度は、弁護士費用の全額または一部を補償する保険制度です。弁護士費用保険に加入していれば、法律相談料や着手金などが保険会社から支払われる仕組みになっています。
弁護士費用保険「弁護士保険」として弁護士費用に特化した保険商品をはじめ、自動車保険や火災保険の特約として販売されている商品があります。
弁護士費用保険の対象となるのは、自動車事故やストーカー被害、離婚トラブル、労働問題など多種多様です。日常で起こり得る法的トラブルが主な対象となっているので、万が一の備えとなるでしょう。
5-2.カードローン
急な出費や一時的な費用の備えとして、カードローンを利用するのもひとつの手です。カードお申込み、発行後は「弁護士費用を支払うのに、まとまったお金が必要」という急な出費にも速やかに対応できます。
セゾングループでは、「かんたん安心ローン」を提供しています。カードローンなら500万円まで融資が可能。全国のコンビニや金融機関に設置されているATMで利用できます。ATM手数料や振込手数料が無料になっているのも特徴です。
カードローンをお考えの際は、ぜひセゾンの「かんたん安心ローン」もご検討ください。
おわりに
このコラムでは、本人訴訟や弁護士費用の目安、経済的に余裕がない方のサポートなどについてお伝えしました。
ご紹介したように、弁護士に依頼するとなるとどうしても費用がかさんでしまいます。しかしながら、裁判を進めるには法律の専門的な知識や技術が必要なケースもあるでしょう。「お金がないから」と弁護士への依頼を諦めるのではなく、法テラスや弁護士費用保険、カードローンなどの活用を検討するのもひとつの手です。
思わぬトラブルの備えとして、ぜひこのコラムをお役立てください。