大学に合格したのに、ご家庭のさまざまな事情で大学入学金が払えないときは、どうすれば良いのでしょうか。合格発表後、数週間以内に20万円~200万円程度の入学金を支払わなければ、合格取り消しになり、大学に通えなくなるため早急に入学金の準備が必要です。
そこで本コラムでは「大学入学金を支払えない場合の対処方法」を、順を追って解説します。大学入試を控えた保護者の方や、今まさに大学入学金に困っている方はぜひ一度目を通してみてください。
大学入学金が払えない!まずは入学時に必要な金額をチェック
通常、合格発表後1週間から2数週間以内には大学入学金の支払いが必要です。
まず、大学入学金の相場を確認してみましょう。
国公立大学か私立大学か、また学部によっても大きく変わってきます。国公立大学の相場は国立が約28万円、公立が約39万円です。公立は大学が指定する地域に住んでいると10~20万円程度の優遇があります。学部によっての違いはありません。一方、私立は大学や学部によって異なります。
なお文部科学省の調査によると、令和5年度における私立大学の入学金の平均額は以下のとおりです。
私立大学の入学金平均額
文系 | 223,867円 |
理系(医歯以外) | 234,756円 |
医歯系 | 1,077,425円 |
参照元:文部科学省「令和5年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額(定員1人当たり)の調査結果について」
大学入学金が用意できず納付期限までに支払えない場合「合格の取り消し」となってしまいます。加えて、“滑り止め”として受験した大学も、本命の大学の合格発表の時期によっては、入学金を支払わなければなりません。複数の大学を滑り止めとして受験して合格した場合、それぞれの納付期限次第ではかなりの費用負担が必要になる可能性もあります。
入学金が払えないときの対策
それでは、大学入学金が支払えないと分かった時点で何をすれば良いのでしょうか。まずは以下3つの方法を検討してみましょう。
- 納付期限を延ばしてもらえないか確認
- クレジットカード払いに対応していれば払える可能性も
- 身内に貸してもらえるあてがないか探す
順番に見ていきましょう。
納付期限を延ばしてもらえないか確認
基本的には、大学側が定めた納付期限までに入学金を支払わなければ合格は取り消しとなってしまいます。しかし、大学によっては納付を「延滞(支払い日の延期)」で受け付けてもらえる場合や、一部を期限内に納め、残りを後日支払う方法「分納」ができるケースもあります。
どうしても納付期限までに入学金を用意できない場合は、一度大学側に問い合わせてみると解決手段が見つかるかもしれません。特別に対応してもらえるのは稀であることを念頭に置き、真摯に問い合わせ、対応をお願いしてみましょう。
クレジットカード払いに対応していれば払える可能性も
大学によっては、大学入学金の支払いをクレジットカード払いでも対応可能です。支払日にカードの口座残高からお金が引き落とされるため、最終的には入学金を用意しなければなりませんが、支払いを先延ばしにできます。
近年、国立大学の入学金や授業料の納付手段で、クレジットカード納付を認めている大学は増えてきています。対象校(86大学)の調査結果は下記のとおりです(複数回答)。
納付方法 | 入学金 | 授業料 | 検定料 |
---|---|---|---|
クレジットカード | 24大学 | 3大学 | 67大学 |
口座振替 | ー | 84大学 | ー |
振込用紙(銀行窓口払い) | 73大学 | 64大学 | 53大学 |
振込み用紙(コンビニ等銀行窓口以外払い) | 15大学 | 4大学 | 40大学 |
インターネットバンキング | 30大学 | 44大学 | 59大学 |
その他 | 36大学 | 36大学 | 48大学 |
ただし、ご自身のクレジットカードの利用限度額によっては決済が失敗する可能性もあります。あらかじめカードの利用限度額を調べてから、クレジットカード払いを検討しましょう。
身内に貸してもらえるあてがないか探す
親や兄弟姉妹、親戚に入学金相当のお金を貸してもらえないか、相談してみるのもひとつの方法です。借りる際は、必ず理由や返済計画について話します。これまでの信頼関係を裏切ることのないよう、借用書を作り誠意ある対応をしましょう。
仮に祖父母が健在で経済的に余裕があれば「教育資金贈与非課税制度」の利用も検討してみましょう(※)。教育資金贈与非課税制度は、子どもひとりあたり1,500万円までの教育費を、贈与税が非課税で渡せます。利用には条件がありますが、祖父母に資産がある場合は相続対策としても有効な手段です。
※2026年3月31日までの措置
参照:税務署|祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
大学入学金に奨学金は充てられる?
奨学金を利用して大学進学される方もいると思いますが、奨学金の受け取りは大学入学後のため、入学金には利用できません。大学入学金を賄う場合は、奨学金ではなく、国や銀行の教育ローンやカードローンなどでの資金準備が必要です。
ただし、奨学金の採用が決まっている場合は、労働金庫、通称ろうきんの「入学時必要資金融資制度」を使える可能性があります。
入学時必要資金融資制度は、日本学生支援機構の奨学金とは別の「入学時特別増額貸与奨学金」の申し込みで、進学前に入学金などの必要な教育資金、最高50万円が融資されます。
学費を準備する際、日本学生支援機構の奨学金と国の教育ローンがよく利用されます。奨学金と国の教育ローンを比べてみましょう。
日本学生支援機構の奨学金 | 国の教育ローン | |
---|---|---|
ご利用者 | 学生本人 | 主に保護者 |
世帯年収(所得)の上限額 ※( )内の金額は給与所得者以外 | 第一種奨学金(無利子):803(552)万円以内 第二種奨学金(有利子):1,250(892)万円以内 | 扶養する子ども0または1人:790(600)万円以内 扶養する子ども2人:890(690)万円以内 扶養する子ども3人:990(790)万円以内 ※子どもの人数が増えるごとに世帯収入の上限額が100万円ずつあがる |
受け取り方 | 毎月振込 | 一括でまとめて振込 |
ご利用可能額 | 月額1~12万円 | 一括でまとめて振込350万~450万 ※子どもひとりあたり上限350万円まで。 自宅外通学・海外留学など条件によって上限450万まで可能 |
ご返済期間 | 最長20年 在学中は返還を猶予(無利息) | 最長18年 在学中は元本据置が可能 |
募集期間 | 決められた募集期間 | いつでも可能 |
参考元:日本政策金融公庫「国の教育ローンと奨学金の違い」
教育ローンの詳しい内容は、次の章でご紹介します。
教育ローンを検討してみる
これまでご紹介した方法で大学入学金が用意できないとき、教育ローンも検討してみましょう。ここでは2つの教育ローンをご紹介します。
第一に検討したいのは国の教育ローン
まず考えたいのは、一般的に「国の教育ローン」といわれている、日本政策金融公庫の「教育一般貸付」です。います。無担保・無利子で子ども1人当たり最大350万円を借りられる、唯一の公的教育ローンです(条件によっては上限額の緩和制度もあり)。
通常、申し込み審査から資金の振込みまで20日前後かかります。10月~3月は依頼が多いため、受験シーズンの2~3ヵ月前に申し込んでおきましょう。
世帯収入の上限などいくつかの条件はありますが、幅広い世帯を対象としており、固定低金利(2.4%)で返済期間が18年以内と長い点も特徴です。日本学生支援機構の奨学金との併用も可能で「学費は奨学金でまかなえるが、大学入学金に困っている」という場合にも検討できます。
また、カバーしている学校が国内の大学に限られていない点も注目したいポイントです。海外の大学、専門学校や予備校などに進学する場合も使える可能性があります。1年中いつでも申し込み可能で、中学校卒業以上の子どもの受験費用、入学金、学費や賃貸アパート代まで用途も広くなっています。
メインバンクを頼るのもひとつ!銀行教育ローン
国の教育ローンに対し「銀行教育ローン」と呼ばれる、銀行や信用金庫で扱っている教育ローンもあります。国の教育ローンより資金調達までのスピードが早く、借入額が大きいケースが多い点がメリットです
ただし金利は2.0%~5.0%前後で、国の教育ローン2.40%(2024年5月1日時点)と比較すると高めです。銀行や信用金庫によっても貸付条件や内容が異なるため、銀行教育ローンを検討する際は必ず複数のローンを比較検討したうえで、ご自身に合ったものを選びましょう。
家庭環境によっては国や自治体の制度なども使える
家庭環境によっては、国や自治体で設けられている制度などを使える場合もあります。ここでは4つの制度をご紹介します。
- 母子父子寡婦福祉資金貸付制度
- 生活福祉資金貸付制度
- 自治体の奨学金制度
- 高等教育の就学支援制度
順番に見ていきましょう。
ひとり親の場合は母子父子寡婦福祉資金貸付金制度
「母子父子寡婦福祉資金貸付金」は、子どもが20歳未満で、母子家庭や父子家庭などが無担保、無利子で必要な資金を借入できる制度です。学校の種類などの条件によって借入可能な金額が異なります。
母子父子寡婦福祉資金貸付金の資金の種類は、生活資金や医療介護資金などさまざまなものがあり、「就学支度資金」は大学入学金で利用できます。無利子で借入でき、償還期間は20年です。また、学費に充てられる「修学資金」もあります。
母子父子寡婦福祉資金貸付制度の「就学支度資金」と「修学資金」を見ておきましょう。
資金名 | 限度額 | 利率 | 使用使途 |
---|---|---|---|
就学支度資金 | ・国公立大学、短大、大学院等 420,000円 ・私立大学、短大等 590,000円 | 無利子 | 入学金、制服など |
修学資金 | ・専修学校(専門課程) 126,000/月 ・短期大学 131,000/月 ・大学 146,000/月 | 無利子 | 授業料、書籍、交通費 |
就学支度資金と修学資金は併用可能です。お近くの地方公共団体の福祉担当窓口へ、問い合わせてみましょう。
低所得世帯向けには生活福祉資金貸付制度
低所得の方は全国社会福祉協議会の「生活福祉資金貸付制度」を検討してみましょう。大学入学の際に使える資金として「教育支援資金」が設けられていて、就学支度費として50万円まで借入れできます。教育支援費として月々65,000円まで借入可能で、学費などに充てることもできます。いずれも無利子で返還期限は20年以内です。
生活福祉資金貸付制度の教育支援資金の中の、就学支度費と教育支援費について見ていきましょう。
資金種類 | 貸付限度額 | 使途内容 | 利子 | 償還期間 |
---|---|---|---|---|
就学支度費 | 50万円以内 | 入学金、入学時に必要な教科書等 | 無利子 | 20年以内 |
教育支援費 | ・短期大学、専修学校専門課程 60,000円/月 ・大学 65,000円/月 | 授業料、通学時の交通費等 | 無利子 | 20年以内 |
自治体の奨学金制度などを確認
お住まいの地域によっては、生活福祉資金貸付制度以外にも自治体独自の奨学金制度などがあります。受給条件の多くは「本人または保護者がその自治体に居住している、もしくは出身者」で、ハードルが低いのが特徴です。日本学生支援機構のホームページより「条件」や「大学名、団体名」の入力で、利用できる奨学金制度の検索が可能です。
地方公共団体等が行う奨学金制度は、「居住地」「学校の所在地」だけでなく、出身地(保護者の居住地)から支援が受けられる制度もあります。
募集時期や貸付条件、借りられる上限額などは自治体によって異なるため、早めに調べて問い合わせてみると良いでしょう。
国の高等教育の修学支援制度もチェック
2020年4月から始まった国の制度「修学支援新制度」も、チェックしておきたい制度のひとつです。住民税非課税の世帯またはそれに準ずる世帯の子どもが、大学や専門学校に進学する際に使えます。
具体的には、授業料や入学金を免除または減免できる給付型の奨学金があります。対象校は、一定の要件を満たすと国等が確認した大学・短期大学・高等専門学校(4年・5年)・専門学校です。随時対象校が更新されているため、該当するか確認してみると良いでしょう。
支援額は、世帯収入や学校の種類、子どもの生活形態(自宅かひとり暮らしか)によって異なります。
なお2023年12月に閣議決定された「こども未来戦略」により、2025年度から多子世帯の学生等は、大学等の授業料や入学金が無償になります。
急ぎの場合はカードローンも便利
納付期限までに日数の余裕がなく、すぐに入学金が必要なときは、カードローンの利用も検討しましょう。
各種教育ローンや国・自治体の制度は、手続きに日数がかかるため大学入学金の納付期限に間に合わない場合もあるでしょう。しかし、即日または数日で借入できるカードローンであれば、時間がない状況でも間に合わせやすいです。
なお、カードローンと似たものにクレジットカードのキャッシングがあります。違いや特徴を見ておきましょう。
項目 | カードローン | キャッシング |
---|---|---|
金利 | 2.0~18.0% | 15.0~20.0% |
借入限度額 | 1万~800万円程度 | 10万~300万円程度 |
融資スピード | 最短即日~数日 | (キャッシング枠が設定されていた場合)即時 |
大学入学金などのまとまったお金を必要とする場合は、十分な金額を借り入れやすいカードローンを検討するほうが良いでしょう。
また、カードローンを利用する場合は同時に国の教育ローン「教育一般貸付」も申し込んでおくのがおすすめです。国の教育ローンは借りられるまでに時間がかかりますが、審査が通り借りられるようになった場合は、カードローンから国の教育ローンに移行すると返済の負担を減らせます。
おわりに
せっかく大学合格を勝ち取ったのに、「大学入学金が支払えずに合格取り消し」という残念なことになるのはさけたいものです。親戚などにお金を借りるあてがなくても、子どもの教育に使える制度やサービスは多くあるため心配ありません。
ただし合格通知から納付期限まではそれほど期間がなく、早く納付して安心したいというご家庭も多いでしょう。そのような場合には、早く借りられるカードローンを検討しましょう。セゾンファンデックスでは、コンビニATMで手数料無料で使えるカードローンをご案内しています。「いろいろな方法で大学入学金の準備を検討したけれど間に合わない」という場合にも対応できるかもしれません。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。