養育費を払えなくて困っている、ついつい払うのを怠ってしまった、という方はいませんか。養育費を支払わずに放っておくと、さまざまなリスクがあります。ここでは、養育費を故意に支払わなかった場合に起こりうる事態を解説していきます。また、払いたいけれど金銭的余裕がない、という方に向けて養育費を減額、免除できるケース及びその方法を詳しく紹介します。養育費の支払いで困っている方は、ぜひ参考にしてください。
養育費が払えないとどうなってしまう?
基本的に養育費は、子どもが成人になるまで支払わなければなりません。中には2022年4月1日に施行された民法一部改正により、成年年齢が18歳に引き下げになったので、支払い義務も子どもが20歳になるまでではなく、18歳になるまでで良いのでは?と考えている方もいるかもしれません。
しかし、養育費の取り決めをした時点で成年年齢が20歳だった場合は、これまで通り、子どもが20歳になるまで支払い義務を負うことになります。また、子どもが大学に進学している場合は、大学卒業まで支払わなければならない場合もあるのです。
もし、養育費を支払わずに放っておくと、以下のようなペナルティが与えられる可能性があります。
財産が差し押さえられる
養育費が支払えない場合、預金口座や給料、不動産といった財産が差し押さえられてしまうことがあります。
もし、養育費について取り決めを行った調停調書や公正証書、確定判決などの「債務名義」がある場合、親権者は裁判所へ強制執行を申し立てて、支払い義務がある相手の財産を差し押さえることができるのです。
もし給料を差し押さえられてしまうと、養育費の未払い分を完済するまで給料を全額受け取ることができなくなります。
債務名義がない場合、突然財産を差し押さえられる心配はありませんが、親権者から調停や裁判を起こされてしまうと、債務名義が発生するので、財産が差し押さえられてしまうでしょう。
遅延損害金が発生することも
養育費を延滞してしまうと、通常の借金と同じように遅延損害金が発生してしまいます。
民法で定められた遅延損害金の利率は3%です。2020年3月31日以前に養育費の取り決めを行っていた場合は5%となります。
これは、銀行の利率よりもかなり高い利息。長期に渡って養育費を支払わずにいると、膨大な金額になってしまう可能性があるので、養育費はきちんと支払うことが大切なのです。
子どもとの面会に影響が出る
養育費を支払わずにいると、子どもとの面会に影響が出てしまうかもしれません。
面会は「同居していない親が子どもに会う権利」であると同時に、「子どもが一緒に暮らすことができない親と会う権利」でもあります。つまり、面会が子どもに悪影響を及ぼさない限り、親権者が「養育費未払い」を理由に子どもとの面会を制限することはできないのです。
とはいえ現実には、「養育費を支払わないのなら、子どもには合わせられない」とする親権者は少なくありません。こうなると、子どもと面会するために調停及び審判を申し立てることになります。
このように養育費未払いは、子どもとの面会がスムーズにできなくなる、という可能性もあるのです。
刑事罰に処せられる場合も…
養育費を支払わないと、親権者から債務名義をもとに強制執行を申し立てられる場合があります。
この際、親権者はまず債務者に財産開示手続を申し立てます。財産開示の実施が決定した場合、債務者は定められた期日の約10日前までに、財産目録を提出するよう命じられます。
もし、この手続きに従わなかったり、虚偽の報告を行ったりした場合、6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰が科せられる可能性があるのです。
養育費は減額できる?
養育費を支払わないと、さまざまなペナルティが科せられる可能性があります。しかし、どうしても支払えない、ということもあるでしょう。そのような場合、養育費を減額することも可能です。養育費を減額できるのは、以下のようなケースです。
支払う側の収入が減った
養育費を支払う側の収入が大幅に減ってしまったり、収入がなくなってしまったりした場合は、養育費の減額が認められるケースがあります。
養育費の支払い義務及び支払額は、基本的に裁判所が公表している「養育費算定表」が基準となります。養育費算定表では、支払う側と受け取る側双方の収入バランスによって養育費の金額を決定しているので、支払う側の収入が減れば、その分養育費の金額も下げられることになるのです。
リストラ、会社の倒産、予期せぬ病気やケガによる休職や退職などはもちろん、経営状況の悪化による給料引き下げでも養育費の減額が認められるケースがあります。
受け取る側の収入が増えた
養育費の金額は、支払う側と受け取る側の収入バランスで決められます。そのため、受け取る側の収入が増えた場合も、養育費の減額請求は可能です。
しかし、離婚する際に、受け取る側の収入が増えるのを見越して養育費の金額を決定した場合は、減額請求は認められない可能性が高いでしょう。
また「子どもが私立の学校に進学したので高額な授業料が必要」「子どもに継続的な治療を要する持病が見つかった」など、離婚時には想定していなかった事情がある場合も、減額は認められない可能性があります。
支払う側の扶養家族が増えた
一般的に養育費を支払う側が父親、受け取る側が母親、というケースがほとんどでしょう。この場合、支払う側が再婚し、なおかつ再婚相手との間に子どもができた場合には、養育費を減額できることがあります。
再婚相手との間に子どもができると、支払う側は、前妻との子どもに加えて、現在の妻との間に出来た子どもに対しても扶養義務が発生します。そうなると、支払う側の経済的負担が増えてしまうため、養育費の減額請求が認められるケースもあるのです。
受け取る側が再婚した
受け取る側が再婚し、再婚相手と子どもが養子縁組した場合、再婚相手が子どもの第一次的な扶養義務者となるので、支払う側の扶養義務が軽くなります。この場合、受け取る側の年収によっては、養育費の減額、免除が認められることがあるでしょう。
ただし、再婚相手が病気や怪我など、正当な理由があって働けない、もしくは収入がほとんどない、というときは、減額が認められないケースもあります。また、再婚相手と子どもが養子縁組していない場合は、再婚相手に扶養義務が生じないので、減額が認められない可能性が高いでしょう。
養育費減額の手続き方法
やむを得ない事情があり、養育費を減額してもらいたい場合は、どのようにすればよいのでしょうか。順を追って解説していきましょう。
まずは話し合いの場を設ける
養育費の減額を請求したい場合は、まず受け取り側としっかり話し合うことが必要です。減額に納得してもらえるよう、こちらの事情や減額請求の理由を理路整然と話します。
話し合いでまとまれば、新たに合意書を作成しておきましょう。双方で決めた内容を形に残しておかないと、あとでトラブルが発生してしまうケースがあります。
話し合いで解決しなければ家庭裁判所へ
話し合いでは折り合いがつかない、もしくは話し合いそのものができない、という場合は、家庭裁判所に調停を申し立てます。申し立ては、受け取る側の住所にある家庭裁判所に対して行います。申し立てに必要な書類は以下の通りです。
- 養育費調停申立書…申立人、相手、子どもの氏名及び申し立ての理由などを記載
- 子どもの戸籍謄本
- 事情説明書…調停に至った事情を記載
- 進行照会書…話し合いの状況、調停希望日、要望などを記載
- 収入に関する書類…源泉徴収票、給与明細など申立人の収入が証明できる書類
調停では調停員が、支払う側・受け取る側に事情を聴いて、双方にそれぞれの主張を伝え、解決を目指します。調停中に直接相手と話し合う、ということはありません。
調停は、およそ半年以内で終わることが多いですが、1年以上かかるケースもあります。また、調停にかかる金額は、申立書に貼付する収入印紙代(子ども1人につき1,200円)、連絡用に納める郵便切手代(およそ800円〜1,000円)が必要です。これ以外にも、戸籍謄本の取得費用、家庭裁判所までの交通費などがかかります。
調停でまとまらない場合は審判になる
調停で話し合いがまとまらない場合は、調停不成立となり、養育費減額審判の手続きへと移行します。養育費減額審判とは、裁判官が調停委員の意見を踏まえて、提出された書類及び審問をもとに減額が認められるかどうか、判決を下すものです。審判で決定した金額は、守らなければいけません。
審判は調停から自動的に移行するので、新たに何か手続きが必要というわけではありません。審判で納得のいく判決を獲得するためには、収入の減少や生活環境の変化などをしっかりと証明できる証拠を提出することがポイントになります。
一般的に調停が不成立になってから審判で判決が下されるまでの期間は、約3〜4ヵ月といわれています。しかし、状況によってはもっと早期に解決する場合もありますし、判決まで時間を要する場合もあるでしょう。
ちなみに、養育費減額調停を申し立てずに直接養育費減額審判の申し立てを行うことも可能です。しかし、このような場合は、家庭裁判所の職権によって「まずは話し合いから」と調停に付されることがほとんどでしょう。
養育費の支払いが免除されるケース
やむを得ない事情がある場合は、養育費の免除が認められることもあります。ここでは、養育費の支払いが免除されるケースについて解説しましょう。
親権者が支払い免除に同意したとき
養育費を支払わないことに相手側が同意した場合、支払いは免除されます。
養育費は、当事者間の同意が最優先となります。つまり、養育費を支払うかどうかは、子どもの父親と母親、双方の協議によって自由に取り決めることができるのです。
例えば、離婚後は相手と一切かかわりたくない、養育費の代わりに離婚時に財産分与を行うなどで、養育費の支払い免除を取り決めているケースも少なくありません。
しかし、養育費の支払い免除は親権者の合意が必要なため、一方的に破棄することはできません。
支払う側に収入がないとき
養育費を支払う能力がない場合も、支払う必要はありません。例えば病気やリストラで失業した、病気で働けなくなって生活保護を受けている、などというケースです。
そもそも養育費とは、「子どもに対して、親と同じ水準の生活を提供する義務」のことです。そのため、ある程度の収入がある方の場合は、多少生活レベルを落としても支払う義務が生じますが、支払い能力が全くない方は無理をしてまで支払う必要はありません。
受け取る側の再婚相手と子どもが養子縁組したとき
受け取り側が再婚し、再婚相手が子どもと養子縁組をした場合、養育費の減額のみならず、免除が認められる可能性があります。
子どもが養子縁組をした場合、そちらで法律上の親子としての扶養義務が発生します。ただし、もし受け取り側が再婚相手と離婚した場合、自動的に子どもの養子縁組も解消されます。このときは再び扶養義務が復活するので、必然的に養育費の支払い義務も発生します。
これらの理由以外にも、受け取り側の収入が支払い側よりも極端に高い場合も、養育費の支払いが免除になる可能性もあります。
また、子どもが成人に達した場合も、それ以降の支払いを拒否することができます。子どもの成年年齢は、養育費の取り決めをした時点での民法上の成年年齢が参照されるので、2022年3月31日までに取り決めをした場合は、子どもが20歳になるまで支払わなければなりません。
例え子どもが成年年齢に達していても、離婚時に「大学卒業時まで」「22歳まで」と取り決めていた場合は、その取り決めに従う必要があるので注意しましょう。
養育費はローンで借りることも可能
養育費減額の調停を行ったにもかかわらず、減額が認められなかった、免除してもらうことができなかった、という場合は定められた養育費を支払わなければ、さまざまなペナルティが科せられる可能性があります。
とはいえ、さまざまな事情で養育費を支払う余裕がない、という方もいるでしょう。その場合は、相手の同意のうえ、ローンで借り入れをして支払うこともできます。
裁判費用や慰謝料、財産分与など、離婚にかかる費用専門のローンを行っている銀行もあるので、それらを利用することで養育費を捻出することができます。
しかし、中には銀行でローンを組みたくない、もしくは銀行で借り入れできない、という方もいるのではないでしょうか。また、支払期日が迫っているので、今すぐ手元にお金が必要、という方もいるでしょう。そんな方は、セゾンファンデックスの「かんたん安心ローン」がおすすめです。
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おわりに
養育費の支払いが生活費を圧迫してしまう、というのは珍しい話ではありません。しかし、「支払えないから」とそのまま放置していると、利息がどんどんふくらんだり、差し押さえになったりするなど、さまざまなペナルティが科せられてしまうことも。養育費の支払いに困ったら、まずは減額・免除の手続きを行いましょう。もしくは、ローンを利用して養育費を支払うこともひとつの方法です。