慰謝料とは精神的苦痛や肉体的苦痛を金銭によって賠償するものです。不貞行為による離婚やハラスメント、交通事故による精神的苦痛などで発生するケースがあります。しかし、相手から請求された慰謝料が高額だった場合、その対処法に悩んでしまう方も多いでしょう。
たとえ相手から請求された慰謝料が支払えない金額だったとしても、無視してはいけません。なぜなら、慰謝料の請求を無視し続けると裁判に発展したり、最悪の場合差し押さえなどの法的措置が取られることもあるからです。
この記事では、慰謝料が払えないときの対処法や、支払わなかった場合のリスクについて解説します。


慰謝料を払えない場合の対処法は?

請求された慰謝料が支払えない場合、減額交渉や分割払いを提案する方法があります。提案を受け入れてもらえれば、慰謝料の負担を大きく減らすことも可能です。ここでは、慰謝料が払えない場合の対処法について詳しく解説します。
減額交渉をする
慰謝料を請求された方は、必ずしも請求金額どおりに支払う必要はありません。特に離婚時の慰謝料請求などは、高めに設定されることが多く、交渉次第で金額を減らせる可能性があります。
例えば、以下のケースに該当する方は、減額できないか相手方に交渉してみましょう。
- 相場以上の慰謝料を請求された
- 相手側にも落ち度がある
- 支払い能力がない
減額交渉をする際は、慰謝料の相場や支払い能力などを根拠に、請求された金額が妥当ではない理由を明確に示すことが重要です。ただし、自分に重大な過失がある場合や、明らかな不法行為を行って慰謝料を請求された場合は、減額交渉が難しくなるでしょう。
また、相手との関係性が悪いと、こちらの話を聞いてくれない場合もあるでしょう。交渉の前に、落ち着いて話し合える関係性を作っておくことが大切です。誠意ある態度で交渉することを心がけましょう。
分割払いの交渉をする
慰謝料の一括払いが難しい場合は、分割払いを提案してみましょう。
分割払いを提案する際は、一括払いが難しい理由を説明し、分割で支払う計画を明確に提示することが大切です。さらに、支払いが遅延した場合の対処法を事前に決めておくとよいでしょう。
例えば、書面に月々の支払い額や支払い期間を具体的に記載して、相手に提示する方法があります。また、交渉の際に公正証書を作成することで、滞納時のリスクを軽減し、相手の信頼を得やすくなります。
公正証書とは、公証役場で作成する公文書で、法的効力を持つ書類のことです。「支払いが滞った場合は、強制執行を受けてもやむを得ない」旨の記載がある文書を作成することで、万が一滞納されたときに「強制執行ができる」という安心感を相手に与えられます。
また、分割払いに変更することで、慰謝料を減額せずに支払うことができます。これは請求者にとっても、慰謝料の減額を避けられるため、メリットが大きい方法といえるでしょう。
交渉で相手に納得してもらえれば、分割払いで慰謝料を支払えます。ただし、相手が交渉に応じてくれない可能性もあるため、必要に応じて弁護士に相談するとよいでしょう。
弁護士に依頼する
弁護士に依頼しなくても、減額や分割払いの交渉はできます。しかし、自分で交渉する場合、多大な時間や手間が必要です。また、一度合意した内容に不備があると、あとからトラブルになるケースもあります。
例えば、減額交渉によって慰謝料を減額できたとしても、請求者が「もとの金額に戻してほしい」と希望してくることがあります。その際に、最終合意の金額や金額の変更ができる条件などを明確にしていないと、トラブルになるかもしれません。
交渉をスムーズに進め、双方が納得できる条件で合意するためには、弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士に依頼することで、相手への減額交渉や分割払いの提案を代行してもらえます。また、弁護士は法律的な視点から慰謝料の正当性を判断してくれるため、冷静かつ公平な交渉ができるでしょう。
ただし、弁護士に依頼しても交渉が上手くいかない可能性もあります。無料相談に応じてくれる事務所もあるため、自分のケースが解決できる案件なのか、事前に確認しておくとよいでしょう。
慰謝料を請求されたときに確認すべきことは?

慰謝料を請求された際には、まず何を確認すべきでしょうか。慰謝料を請求されたとしても、以下のポイントを確認し、焦らずに行動することが大切です。
- 支払わなくてもよいケースに該当しないか?
- 慰謝料請求が誰から届いたか?
- 慰謝料は相場の範囲内か?
上記の内容を確認することで、請求された慰謝料が妥当な金額なのかチェックできます。ここでは、慰謝料を請求されたときに確認すべきポイントについて詳しく解説します。
支払わなくてもよいケースに該当しないか?
慰謝料を支払わなくてよいケースは存在します。特に不倫や離婚に関する問題で、以下の事例に当てはまると慰謝料の支払いを拒否できるかもしれません。
- 不倫が疑われている相手と肉体関係(不貞行為)がない
- 不倫関係にあった時点で事実上婚姻関係が破綻していた
- 不倫相手が既婚者であると知らなかった
- 相手から不倫関係の継続を強要されていた
- 慰謝料請求の時効が過ぎている
なお、慰謝料の請求には時効があります。期日を過ぎると請求ができなくなります。。時効の要件は、以下の2つです。
- 不貞行為の事実や誰が不倫相手なのかを知ってから3年
- 不貞行為があったときから20年
不倫の相手がわからない状態では、慰謝料を請求することができないため、時効のカウントは開始されません。ただし、配偶者に対する請求については時効が進行しています。
請求の正当性は個別のケースによって判断されるため、上記の事例に該当する方が、必ずしも慰謝料を免除されるわけではありません。
慰謝料の支払い義務が発生するか気になる方は、専門の弁護士に相談するとよいでしょう。
慰謝料請求が誰から届いたか?
慰謝料を請求された方は、誰から届いたか確認しておきましょう。なぜなら、請求してきた相手によって、交渉方法が変わるからです。請求者ごとの対応は、以下のとおりです。
請求者本人から届いた場合
本人から慰謝料を請求された場合、弁護士などの専門家に相談していない可能性が高いでしょう。この場合、法外な慰謝料を請求していることも多く、交渉の余地があります。
ただし、相手が感情的になっている可能性も高いので、冷静に対処することが大切です。話し合える状態であれば直接話し合いましょう。
また、相手が感情的になっており、直接話し合えない状況であれば、弁護士に交渉方法を相談することも大切です。
行政書士から届いた場合
差出人が行政書士の場合は、裁判で争うのではなく直接的な話し合いによる解決を希望していると考えられます。
行政書士は、内容証明(重要な通知や要求を正式に相手に伝える文書)の作成などを行えますが、裁判や調停の代理は行えません。
この場合、相手も直接的な話し合いによる解決を目指していることから、減額交渉や分割払いの提案が認められる可能性があります。まずは直接交渉してみて、交渉が進まないときは、弁護士に依頼するなどの対処方法を考えましょう。
弁護士から届いた場合
差出人が弁護士であれば、裁判も視野に入れていると考えられます。この場合は、自分で交渉するのではなく、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士は、減額交渉があることを見越して、慰謝料を相場より高めの金額に設定している場合がありますが、知識のない一般の方が弁護士を相手に交渉するのは難しく、減額請求に応じてもらえなかったり、不利になる発言をした結果、逆に慰謝料が増額されたりするリスクがあります。
相手が弁護士を利用している場合は、こちらも弁護士に依頼して、交渉は専門家に委ねましょう。
慰謝料は相場の範囲内か?
請求された慰謝料が妥当な金額なのか、事前に確認することも大切です。
相場よりも高い慰謝料を請求されている場合は、交渉によって減額できる可能性があります。また、慰謝料の金額が相場内であっても、自分の支払い能力や状況を考慮し、分割払いを提案することも可能です。
慰謝料の相場は、インターネットでも調べられますが必ずしも正しい情報とは限りません。また、専門的な知識がなければ理解できず、自分のケースがどの事例に該当するのか判断が難しい場合もあるでしょう。
請求された金額が相場の範囲内か判断できない方は、弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。
慰謝料を払わないとどうなる?

請求された慰謝料を支払えない場合、裁判が行われ、財産が差し押さえられる可能性もあります。また、慰謝料が支払われるまで離婚を拒否され、離婚したくてもできない状態になってしまうこともあるでしょう。
ここでは、慰謝料を支払わなかった場合のリスクについて解説します。
裁判への出席が求められる
慰謝料の請求に応じない場合、相手から裁判を起こされる可能性があります。裁判になると、その後の生活に大きな影響を及ぼすこともあります。
裁判になった際のデメリットは、以下の3つが挙げられます。
- 裁判記録が残る
- 弁護士費用が発生する
- 出廷を拒否できない
慰謝料請求の裁判で出された判決内容は、記録として5年間保管され、誰でも閲覧できる状態になります。その結果、第三者に訴訟内容が知られ、社会的信用を失うこともあるでしょう。
また、裁判の手続きには多大な時間と手間が発生するため、弁護士に依頼するのが一般的です。しかし、弁護士に依頼すると、10万円〜30万円程度の着手金や成功報酬を支払う必要があります。
さらに、裁判所への呼び出しを拒否することはできません。もし、裁判への出席を無視すると、相手の主張が全面的に認められ、裁判所から慰謝料の支払いを命じられます。
慰謝料請求に対して反論がある場合は、期日までに答弁書を提出し、裁判で自分の主張を提示する手続きが必要です。裁判になると、こうした手間に時間を取られてしまうデメリットが発生します。
強制執行で財産が差し押さえられる
裁判所からの命令にもかかわらず、慰謝料を支払わなかった場合、強制執行によって財産が差し押さえられる可能性があります。
強制執行とは、お金を払う義務がある方が支払いを拒否したときに、裁判所がその方の財産を差し押さえて、請求者の代わりにお金を回収する法的手続きです。
強制執行では、以下の財産が差し押さえられる可能性があります。
差押えの対象財産 | 差押えの対象範囲 |
---|---|
給与 | 手取りが月44万円以下の場合は4分の1、44万円以上の場合は33万円を超える部分全額が対象 |
預貯金 | 銀行が差し押さえ命令を受け取った時点の口座残高 |
不動産 | 差押え後、競売によって現金化され、債務の返済に充当される |
家財 | 電化製品、貴金属、家具など |
参照元:「民事執行手続」裁判所
給与が差し押さえられた場合、請求された金額に達するまで、慰謝料を支払い続けなければいけません。ただし、差し押さえられる金額には上限が設定されています。また、生活保護給付金や年金など、生活に必要な財産は差押えの対象外です。
参照元:「不倫の慰謝料が支払われない!相手の給料を差押えできる?」アディーレ法律事務所
離婚できなくなる可能性もある
不倫の慰謝料を支払っていない場合、離婚できなくなる可能性があります。
不倫などのトラブルから離婚するケースでは、離婚前に決めた慰謝料の支払いに合意することで解決するのが一般的です。しかし、どちらかが慰謝料の支払いを拒否すると、相手が離婚に応じないこともあります。
特に不倫や浮気といった不貞行為が原因の場合、加害者側からの離婚請求は認められにくくなります。離婚を考えている方は、できるだけ早期に慰謝料の支払いを済ませましょう。
慰謝料の相場は?

慰謝料の相場を知っておくことで、減額交渉を進めやすくなります。
ただし、ケースごとに慰謝料の相場は変動するため、あくまでも目安として知っておくとよいでしょう。
よくあるトラブルの相場は、以下のとおりです。
事案 | 慰謝料の相場 |
---|---|
不倫・浮気 | 10万円〜300万円 |
離婚 | 100万円〜300万円(裁判所を通した場合:50万円〜500万円) |
悪質な嫌がらせ | 10万円〜300万円 |
傷害事件の慰謝料 | 10万円〜30万円 |
婚約破棄の慰謝料 | 30万円〜200万円 |
不倫や浮気、離婚、嫌がらせ、交通事故など、慰謝料が発生する原因はさまざまです。ここでは、各事例における慰謝料の相場をご紹介します。
不倫・浮気の場合
不倫や浮気による慰謝料の相場は、数十万円〜300万円程度が一般的です。
相場の金額が幅広い理由は、被害者が受けた精神的な苦痛や状況など、さまざまな要因によるからです。
慰謝料が常に相場どおりに収まるわけではなく、金額もケースバイケースとなる点に注意しましょう。また、不倫や浮気が原因で離婚した場合の慰謝料は、離婚しなかった場合の慰謝料より高額になる傾向があります。
離婚の場合
離婚による慰謝料の相場は、100万円〜300万円程度です。
ただし、裁判によって離婚の慰謝料を決める場合は、50万円〜500万円程度と相場の金額に幅があります。
裁判の有無で相場が大きく異なる理由は、不倫や浮気、DVやモラルハラスメントなどの事情を全て確認した上で慰謝料を決定するからです。
例えば、不倫や浮気による離婚では、婚姻年数や不貞期間が長いほど慰謝料が高額になるのが一般的です。また、DVやモラルハラスメントによる離婚の慰謝料は、婚姻期間や被害の深刻さによって金額が大きく異なります。
このように、裁判によって離婚の慰謝料を決める場合は、離婚の背景にある事情を全て含めて判断されます。裁判の有無で慰謝料の金額が大きく変わる可能性があることを知っておきましょう。
その他の場合
不倫や離婚以外にも慰謝料が発生するケースがあります。
例えば、悪質な嫌がらせを受けた場合は、10万円〜300万円程度が慰謝料の相場です。具体的な事例は、嫌がらせの電話やメール、根拠のない噂や誹謗中傷などです。パワハラが原因で精神疾患を発症した場合は、数百万円の慰謝料が認められるケースもあります。
また、人身事故の場合、通院や入院の日数に応じて慰謝料が算定されます。例えば、弁護士基準で算定した場合の慰謝料の相場は、1日通院する場合、重傷時は9,333円程度、軽傷時は6,333円程度です。ただし、弁護士基準は請求できる最高額の算定基準なので、任意保険基準や自賠責保険基準が適用されれば、弁護士基準より少ない金額になる可能性があります。
人身事故の慰謝料は、ほかのケースに比べて算定基準が明確であり、具体的な被害状況に基づいて金額が決まるのが特徴です。
参照元:弁護士法人牛見総合法律事務所「慰謝料について」
借入金で慰謝料を支払う方法もある

慰謝料の請求では、一括払いを求められるケースが多く見受けられます。なぜなら、請求する側は、分割払いによる未払いリスクを避けたいからです。
もし、慰謝料を一括で支払えない場合は、借入金による支払いを検討してもよいでしょう。ここでは、借入金によって慰謝料を支払う方法についてご紹介します。
身内に借りる
慰謝料を工面する場合、親や兄弟など身内に借りるという方も多いでしょう。
自分が原因で慰謝料を請求された場合、身内にお願いしにくいと感じるかもしれません。しかし、正直に事情を説明することで、助けてもらえる可能性はあります。
ただし、場合によっては身内との関係が悪化するおそれもあるでしょう。親しい間柄であっても、相手への配慮を忘れないように気をつけましょう。借用書を作成し、返済計画をしっかりと立てることも重要です。
銀行に借りる
どうしても慰謝料を支払えないときは、銀行からお金を借りて支払う方法もあります。銀行からお金を借りる場合、フリーローンを利用するのが一般的です。
しかし、最近では、慰謝料や離婚裁判専用のローンを提供する銀行もあるようです。
慰謝料の支払いに困った方は、ご自分の状況に合ったローンをホームページで商品を比較したり、窓口で相談してみましょう。低金利で借りられるものがないか、さまざまなローンを比較し、できるだけ負担が少ない方法を検討しましょう。
カードローンを利用する
慰謝料を支払えない方で、融資を急ぐ場合は、カードローンを利用するのもおすすめです。
カードローンとは、カード会社や金融機関が提供している個人向け融資サービスのことです。借り入れに限度額は設けられているものの、利用目的に制限がなく、担保や保証人も不要で、すぐに現金を用意できるのが特徴です。銀行やコンビニのATMから、手軽に現金を借り入れできるのも魅力のひとつといえるでしょう。
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おわりに
慰謝料が支払えない場合、減額交渉や分割払いなどの対処法があります。特に、高額な慰謝料に納得できない場合は、慰謝料の相場や支払い能力を理由に、減額交渉をしましょう。また、一括払いが難しい場合は、分割払いを提案することも可能です。
慰謝料を請求された方は、相手の要求を無視してはいけません。最終的に財産が差し押さえられる可能性があるからです。場合によっては弁護士に相談し、誠実に対応することが大切です。
一括で慰謝料を支払うことが難しい方は、銀行などの金融機関のローンや身内からの借入金などを検討しましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。