住宅の購入や相続において共有名義にする場合、持分割合はどのようにして決めたら良いのでしょう。持分割合についての基本的なポイントと、登記をする際の注意点を解説します。
また、共有名義で住宅や土地といった不動産を保有することにはデメリットもありますので、将来困らないためにも共有することのリスクを確認しましょう。
1.共有名義と持分割合とは
住宅や土地といった不動産を所有すると、法務局で所有者の名義の登記が必要になってきます。名義の登記には「単独名義」と「共有名義」の2種類があります。単独名義は1つの不動産の所有者を1人の名義で登記するものです。一方で、1つの不動産を複数人で所有して登記したときの名義が共有名義になります。
不動産を共有名義で持つ場合の所有権のことを共有持分といいます。そして、「持分割合」とは各共有者が持つ共有部分の割合を表したもので、持分割合も法務局で登記する必要があります。
共有名義になるケースとして、例えば、夫婦それぞれがお金を出し合って住宅購入し、その出し合ったお金の割合(持分割合)に応じて登記するような場合などです。例えば、3,000万円の住宅を、夫と妻がそれぞれ半分の1,500万円ずつ負担した場合、持分割合は夫が2分の1、妻も2分の1の共有名義となります。
また相続の場合などでは親から相続する財産が実家しかなく活用する予定もないような場合は、とりあえず相続人となる兄弟で共有するといったことなどもあるかもしれません。相続などの場合においては、遺産分割協議で決めた割合が持分割合となることもあるでしょう。
1-1.夫婦2人で住宅ローンを利用する場合の持分割合
住宅を購入するときは住宅ローンを利用する方も多いと思います。住宅ローンでも、夫もしくは妻だけの単独名義で住宅ローンを組む場合は、住宅も単独名義にすることも可能となり比較的手続きはシンプルになると思います。
しかし、夫婦で収入合算といった場合やそれぞれの名義で住宅ローンを組む場合などは、単独名義で住宅ローンを組むよりも少し複雑になってきます。住宅の名義を共有名義にする場合があり、持分割合も考えなくてはいけなくなるからです。
それでも単独名義で住宅ローンを組むよりも、収入合算などで住宅ローンを組むことにより借入額を増やせることは物件の選択肢を広げることができるので、住宅購入の資金計画を立てる際には検討したい方法の1つでしょう。夫婦で組む住宅ローンは「ペアローン」「連帯債務型」「連帯保証型」と3つの種類があります。それぞれの特徴と持分割合を決めるポイントを表にしたものが以下です。
1-2.持分割合を購入資金を出した割合から変えて登記してしまうと不要に贈与税がかかることも!
原則として住宅購入における持分割合は出したお金に応じて決めなくてはなりません。例えば、3,000万円の住宅の購入に、夫が2,000万円、妻が1,000万円を出したとします。このときの持分割合は、夫が3分の2、妻が3分の1となります。「購入した住宅は夫婦共有の財産だから」といった理由で、持分割合を半分ずつにして登記してしまうケースがあります。
登記上、持分割合が半分ずつということは、夫が1,500万円、妻が1,500万円負担したことになります。実際に夫が負担した分は2,000万円ですから、差額の500万円が夫から妻に贈与されたと税務上みなされる場合があります。持分割合を登記する際に下手に変更してしまうことで、意図していなかった贈与があったとされ、贈与税を課されることにならないように、持分割合は購入時に負担した金額に応じて登記するようにしましょう。
2.持分割合に基づいて登記する際の注意点
住宅購入において持分割合どおりに登記する場合でも、いくつか注意点があります。
2-1.建物の持分がない場合、住宅ローン控除の対象外になる
住宅ローン控除は居住する目的の建物を所有している場合に受けることができる制度です。そのため、持分の対象となる不動産を土地と建物に分けて持分割合を決めている場合に、土地については住宅ローン控除の対象外となってしまう可能性がでてきます。
例えば、夫と妻で連帯債務型の住宅ローンを組んで、土地を夫の名義にして、建物を妻の名義といったように分けて登記した場合、建物の持分のない夫は住宅ローン控除を受けることができなくなります。そのため、夫婦ともに住宅ローン控除を受けることができるようにするためには、建物を夫婦で共有する必要があります。
2-2.土地と建物の持分割合は揃えた方が良い?
夫婦で住宅を共有名義にするときに、土地と建物の持分を揃えるかどうかは状況により異なってきます。
例えば、夫が親から贈与で取得した土地に夫婦で建物を建てる場合などは、土地は夫名義で、建物は夫婦それぞれが負担した分に応じて半々といった持分割合になるといったこともあるでしょう。
土地と建物の持分割合は必ずしも揃える必要はなく、揃っていなくても問題ありません。
2-3.親子が共有名義で住宅を購入する場合、親の持分を相続する際に対策が必要になる
親子で共有名義にして住宅を購入する際には、「親子リレーローン」といった親が高齢の場合でも子どもの年齢をもとに長期の住宅ローンを組んだり、「親子ペアローン」で親と子どもがそれぞれに住宅ローンを組んだり、あるいは親が現金を出して子どもが住宅ローンを組むといった方法が考えられます。
ここで持分割合について1つ注意しておくことが必要なのは、将来、相続が発生したときのことです。
親の持分は、親が死亡した際には相続することになります。このとき、共有名義となっている子ども以外にも、兄弟などの相続人がいる場合があります。その住宅に住み続ける方が親の持分を相続できるように、あらかじめ対策しておくことが必要となるでしょう。
3.共有名義のデメリットと注意点
住宅を取得する際に共有名義にすることで、単独名義では手の届かなかった物件も購入対象にできるようになるといったメリットがある一方で、どのようなデメリットが生じる可能性があるのでしょうか。
3-1.住宅購入にかかる諸費用が倍増する
ペアローンで2人がそれぞれ住宅ローンを利用する場合、住宅ローンは2本立てとなります。それに伴って事務手数料、契約印紙代、登記免許税などの諸費用も増えることになります。
3-2.売却には共有者全員の承諾が必要
共有名義となっている住宅などの全部を売却するには、その共有者全員の承諾が必要となります。この承諾には、持分割合は関係ありません。共有者の誰か1人でも売却に反対したり、連絡がつかないといったような場合は、売却することができません。
そのような場合には、売却に反対する方の持分をいったん買い取るなどしてから、売却に賛成している他の共有者の分とまとめて売却するといった対応が必要となるでしょう。
3-3.相続により共有者が増えると納税や管理費用負担が難しくなる
共有名義となっている住宅を長いこと共有状態のままにしておくと、その間、共有者が亡くなった場合などで、その共有者の子どもや孫、あるいは兄弟などへと共有者が増えていき、全員の同意を得ることがさらに難しくなることが考えられます。
所有していることでかかる固定資産税や修繕費の費用負担といったことも、共有者が多ければそれだけ悩ましくなっていきます。そのため、相続時に共有者を増やさないようにするには、すでに持分のある方に被相続人の持分をまとめていくといった対策が必要です。
3-4.離婚時の対応が複雑
離婚時に共有名義の住宅をどうするかといった判断は、夫婦で住宅ローンを利用していたり、子どもがいたりする場合なども含め、いろいろな要素がからみ複雑になります。
夫婦どちらがその住宅に住み続けるか、または売却してしまうとか賃貸に出すといったことも考えられるかもしれません。所有し続けるのであれば、登記上の名義をどうするのか、住宅ローンが残っていればその返済を誰がするのか、といったことも考えなくてはなりません。
状況に応じて弁護士や税理士などの専門家や、住宅ローンを借りている金融機関などに相談するようにしましょう。
おわりに
住宅を共有名義にすることは、購入資金の増額により購入できる住宅の選択肢が広がるメリットがあります。その際、持分割合を決めることは重要な検討事項のひとつです。将来的に相続や離婚といったことなどが起きた場合に問題が生じる可能性があるので、単独名義にするか共有名義にするかは慎重に検討するようにしましょう。
相続で生じてしまった共有関係を解消する場合や、離婚に際して不動産に住み続ける側が買主となり夫婦間で売買する場合などにおいて、支払いに必要な資金を住宅ローンで組もうとしても、それが親族間売買となるようなときは銀行などの金融機関では取り扱ってくれない可能性があります。セゾンファンデックスの住宅ローンであれば親族間の売買であっても利用することが可能なので、単独名義に変更したい時に検討すると良いでしょう。