近年は住宅価格の高騰と共働き世帯の増加により、ペアローンを利用してマイホームを購入する夫婦が目立つようになってきました。住宅金融支援機構が2024年6月に発表した資料によると、2023年10月〜2024年3月までに住宅ローンを借り入れた方のうち、22.8%がペアローンを利用しています。
しかし、ペアローンを組んだものの、万一離婚してしまった場合はどうすれば良いのでしょうか。ペアローンを組んだ方が離婚される場合のケース別対応方法を解説します。
ペアローンの基礎知識
ペアローンを組んでいても離婚は可能です。
ただし、さまざまな障害を乗り越えなければいけません。
本項では、以下3つの視点からペアローンの基礎知識について解説します。
- ペアローンとは
- ペアローンのメリット
- ペアローンのデメリット
ひとつずつ見ていきましょう。
ペアローンとは
ペアローンとは、夫と妻それぞれが住宅ローンを組んで、それぞれが主たる債務者となり借り入れをすることです。例えば夫が2,000万円、妻が1,500万円の合計3,500万円の住宅ローンを組むイメージです。ペアローンを組むと、お互いが配偶者の連帯保証人になるケースが一般的です。ペアローンには次のようなメリットとデメリットがあります。
ペアローンのメリット
ペアローンのメリットは以下の3つです。
- 大きな金額を借りられる
- 夫婦で団信に加入できる
- ふたり分の住宅ローン控除を使える
順番に確認していきましょう
大きな金額を借りられる
ペアローン最大のメリットは、通常の住宅ローンでは実現が難しい大きな金額の借り入れが可能になることです。夫と妻がそれぞれ独自に住宅ローンを組むことで、双方の収入を基に合わせて大きな資金を調達できるため、夫婦どちらかだけの収入では難しかった理想のマイホームの購入も、ペアローンを組むことで実現できたというケースも少なくありません。
夫婦で団信に加入できる
夫婦どちらも住宅ローンを組むと、ふたりで団信(団体信用生命保険)に加入できます。団信に加入すると夫婦のうち一方が亡くなったとしても、その方のローンの残債は団信で完済されるため、亡くなった相手方の住宅ローンの返済義務はありません。
ふたり分の住宅ローン控除を使える
ペアローンは夫と妻が独立して住宅ローンを組むため、住宅ローン控除もふたり分使えます。住宅ローン控除とは、以下2つのうち低いほうの金額が、所得税および住民税から最大13年間控除される制度です。
- 年末の借入残高×0.7%
- 年間の最大控除額
年間の最大控除額は、新築または中古住宅、住宅の環境性能などによって異なります。例えば新築の長期優良住宅・低炭素の住宅に、2025年に入居する場合、年間の最大控除額は31.5万円(4,500万円×0.7%)です。
ペアローンはふたり分の住宅ローン控除を受けられるため、節税効果が高まります。
ペアローンのデメリット
ペアローンにはメリットだけではなく、以下4つのデメリットもあります。
- 配偶者のローンの連帯保証責任も負う
- 配偶者に万一のことがあってもご自身の債務は残る
- 諸経費がふたり分かかる
- リストラ・出産・育児・病気のリスクを考えなければいけない
万一の事態が生じても後悔しないように、リスクを把握しておきましょう。
配偶者のローンの連帯保証責任も負う
ペアローンは配偶者の連帯保証人になります。連帯保証人とは、債務者の返済が滞った場合に代わりに返済しなければならない義務を負う方のことです。ペアローンでは、配偶者の返済が滞ると、ご自身と配偶者の返済分を合わせて負担しなければいけません。
万一配偶者が病気やけが、リストラなどを理由に、収入が減少し、住宅ローンの支払いが難しくなる事態を想定したうえで借入額を決めましょう。また、返済義務は婚姻中はもちろん、離婚した後も継続します。
配偶者に万一のことがあってもご自身の債務は残る
夫婦のうち一方が亡くなった際は団信によって完済されるとはいえ、債務がなくなるのはあくまでも亡くなった方の分だけです。生存している方の住宅ローンは残ります。
そのためペアローンを組む際は、万一事態が起きてもご自身の返済は滞らないのか、返済が難しくなる場合はどのように対処するのかを事前に決めておきましょう。
諸経費がふたり分かかる
ペアローンは契約を夫婦ふたり分結ぶことになるため、金融機関に支払う事務手数料や契約書に貼り付ける印紙代などの諸経費も2倍かかります。借入額によっては数十万円以上も諸経費が増えます。
また夫婦で繰り上げ返済や借り換えを行う場合、それらの手数料もふたり分かかるため注意が必要です。
リストラ・出産・育児・病気のリスクを考えなければいけない
一般的にペアローンで住宅ローンを組むと、借入額が大きくなりがちです。夫または妻の収入だけでは返済できない金額を借りている場合、以下のような事態が発生すると、返済が滞ってしまう恐れがあります。
- 出産や育児で共働きができなくなった
- 会社の業績が悪化などにより、リストラされてしまった
- 病気が原因で働けなくなった
ペアローンを組む際は、上記のようなリスクを考慮し、余裕のある返済計画を立てましょう。
ペアローンを組んでいる夫婦が離婚する際の問題点
ペアローンを組んでいる夫婦が離婚する際は住宅ローンの存在が問題となります。具体的には次のような問題点が離婚後も残ります。
- 住宅ローンの名義変更はできない
- 離婚後も住宅ローンが残る
- 売却には配偶者の同意が必要
- オーバーローンだと金融機関が売却を認めない可能性が高い
順番に見ていきましょう。
住宅ローンの名義変更はできない
金融機関は、離婚を理由とした住宅ローンの名義変更を原則認めません。そのため、離婚時に借入金を全額返済できない場合は、離婚後も元配偶者と住宅や土地を共有し続けることになります。
不動産の共有状態が続くと、後述するトラブルにつながりやすいため、注意が必要です。
離婚後も住宅ローンが残る
離婚をしても住宅ローンの返済義務は消えないため、婚姻中に組んだペアローンは離婚後も返済し続ける必要があります。また連帯保証人を解消できていない場合は、元配偶者の返済が滞ると、ご自身が返済を肩代わりしなければいけません。
売却には配偶者の同意が必要
ペアローンを組むと、建物や土地を配偶者と共有することになります。共有状態の不動産を売却する場合は、名義人全員の同意が必要です。ペアローンの場合は、夫または妻から了承を得なければいけません。
ただし離婚を決めた状態は、基本的に夫婦仲が冷め切った状態であるのが一般的で、配偶者の同意を得ることは非常に難しいでしょう。
オーバーローンだと金融機関が売却を認めない可能性が高い
マイホームの売却に関して配偶者の同意が取れても、オーバーローンだと金融機関が売却を認めない可能性が高いです。オーバーローンとは、不動産の売却金額よりも残債の方が多い状態のことを言います。
例えば、売却金額が2,000万円、残債が3,000万円の状態がオーバーローンです。このケースでマイホームを売却してしまうと、残債1,000万円の返済義務が残るため、金融機関の承諾を得ることは難しいです。
一方で、残債よりも売却金額の方が多い状態をアンダーローンと言います。アンダーローンの状態でマイホームを売却すると、住宅ローンを完済できるため、金融機関の承諾を得られる可能性は高いです。
マイホームが想定以上に値下がりしたり、不動産市況が悪化したりしているとオーバーローンの状態となり、金融機関に売却を認めてもらうのは厳しいでしょう。
離婚時のペアローンの問題を解決する方法
- 売却する
- 収入や資産の多い方がローンを買い取る
- 返済しながら住み続ける
- 住宅ローンを一本化する
売却する
マイホームを売却し、住宅ローンを完済するのが、とくにトラブルが少ない方法です。アンダーローンであれば、ご自身と配偶者の返済義務がなくなり、かつ連帯保証人としての義務も消滅します。さらに住宅ローンを返済しても余ったお金は、財産分与で得ることも可能です。
ただし先述したようにオーバーローンの状態では、金融機関が売却を許可しない可能性があります。オーバーローンの不動産を売却するためには、自己資金で売却額と残債の差額を補填しなければいけません。例えば売却額2,000万円、残債が3,000万円の場合は1,000万円分のマイナスを補う必要があります。このケースであっても、自己資金で1,000万円を用意できれば売却を認められる可能性は十分にあるため、ペアローンの問題解決策として有効です。
住宅ローンを組んで購入した家には抵当権が設定されます。抵当権とは、融資している銀行がその不動産を担保にして返済が滞った場合に、優先的にお金を回収するための権利です。
離婚後も、ご自身と元配偶者の返済が滞らなければ問題はありません。しかし万一返済が滞ってしまうと、連帯保証人として相手方の返済を肩代わりしなければいけません。仮に返済が滞ると、金融機関の承諾を得て任意売却や競売で家を売却できたとしても、オーバーローンの場合はローンの返済義務は残ります。つまり、売却によってすでに家が存在しないのに、住宅ローンの返済を続けることになります。
ペアローンを組んだ夫婦が離婚を機に家を売却しようと考えている場合は、家の売却価格と住宅ローンの残債をしっかりと把握したうえで判断しましょう。
返済しながら住み続ける
返済を続けながら、今の家に住み続ける選択肢もあります。子どもの生活を変えたくない、学区を変更したくないなどの理由から、親権者が住み続けることを望むケースに用いられる方法です。
ただし住宅ローンを組む際の条件として、名義人の居住を義務付けているのが一般的です。つまり、住宅ローンを完済せずに引っ越してしまうと契約違反となり、最悪のケースでは一括返済を求められるケースもあります。離婚後も返済しながら住み続けたい場合は、弁護士や金融機関に相談しましょう。
住宅ローンを一本化する
ペアローンは免責的債務引受により解消できます。免責的債務引受とは、債務者の代わりに第三者が債務を引き受けることです。例えば、妻が離婚後も家に住み続ける場合、夫の持分を夫の住宅ローンと共に妻が引き受けます。住宅ローンを一本化することにより、残債を一括返済できなくてもペアローンの解消は可能です。しかし、免責的債務引受は金融機関の許可を得ないとできないため、必ずしも成功するとは限りません。
免責的債務引受においては、返済能力の面で元の債務者の代わりとなれるかが審査されます。例えば、妻が夫の債務について免責的債務引受をする場合は、妻にご自身の住宅ローンの返済に加え、夫の返済分も負担できるかを審査されます。返済余力がない場合、収入が大きく増えているといった事情がないと、金融機関の許可を得ることは難しいです。
免責的債務引受が難しいことを踏まえると、現実的な選択肢は住宅ローンの借り換えになります。住宅ローンの借り換えとは、別の金融機関から新たに住宅ローンを借り入れ、その借入金で現在の住宅ローンを完済する方法です。住宅ローンの借り換え時に契約者名義を新たな債務者に設定すれば、ペアローンを解消できます。
例えば、離婚後妻が家に住み続ける場合、A銀行にて夫婦残債合計3,000万円のペアローンを組んでいるとしましょう。この場合、B銀行にて妻名義で3,000万円の住宅ローンを組み、そのお金でA銀行の住宅ローンを完済します。住宅ローンの借り換えは、免責的債務引受ほど審査が厳しくないため、免責的債務引受の同意を得られないときに有効な方法です。
しかし、免責的債務引受の場合と同様、住宅ローンの借り換えには審査があります。借り換え時の収入や信用情報、職業などによっては審査に通らず借り換えができない可能性もあります。そもそも、アローンの解消のための借り換えには対応していないという金融機関もあるため、注意が必要です。
そこで利用を検討していただきたいのが、セゾンファンデックスの住宅ローンです。
セゾンファンデックスの住宅ローンは、担保力を重視した審査と担保設定できる不動産の幅の広さが魅力です。さらに他の金融機関ではあまり対応していない親族間・夫婦間の売買における住宅ローンにも対応しています。
一度、他の金融機関で免責的債務引受や借り換えの審査に落ちてしまったという方、ペアローンを解消したうえで離婚したいという方、ペアローンを一本化したいと考えている方はご検討ください。
離婚時のペアローンのリスクを抑える方法
ペアローンを組む際は、離婚時のリスクに備えておきましょう。本項ではリスクを抑える3つの方法について解説します。
- ゆとりを持った返済計画を立てる
- 多めに頭金を入れる
- 借入期間を短期にする
ひとつつずつ見ていきましょう
ゆとりを持った返済計画を立てる
ペアローンは大きな金額を借りられるため、ひとりでは手が出ない高額な物件を購入する傾向にあります。高額な物件を購入すると、返済計画がカツカツになりがちで、離婚後の返済が難しくなる可能性が高いです。
そのため、万一の事態があっても返済が滞らないように、余裕のある返済計画を立てましょう。目安は返済比率20%以下です。返済比率は「年間の返済額÷年収」で求めます。
多めに頭金を入れる
頭金を多めに支払うことで、借入額を抑えることができます。借入金が少なければ、オーバーローンのリスクが減り、離婚時の物件売却がよりスムーズに進む可能性が高まります。
借入期間を短期にする
無理のない範囲で借入期間を短縮することも有効です。借入期間が短いと、月々の返済額が増え、短期間で残債が減りやすいです。残債が減るとオーバーローンのリスクが低くなり、売却時のトラブルを防ぎやすくなります。
おわりに
ペアローンを組んでいる夫婦が離婚するとき、残債をどう取り扱うかが問題になります。住宅ローンを完済するまで、ペアローンの返済義務は離婚後も残り続けます。離婚後はペアローンにまつわる諸問題を回避するため、親族間・夫婦間売買が可能な住宅ローンなどを利用してペアローンを一本化することが望ましいです。
離婚後、最小限の負担でペアローンを解消したいと考えている方はセゾンファンデックスの住宅ローンへご相談ください。
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