裁判を起こすとなると、弁護士に依頼するケースがほとんどです。また、相手から訴訟をされた場合、こちら側も弁護士を立てなければ、まず裁判には勝てないでしょう。
とはいえ、実際に弁護士費用がいくらかかるのか、費用が支払えない場合にどうすれば良いかまで知っている方は少ないのではないでしょうか。今回は弁護士に依頼する際に発生する費用と、お金がない場合に弁護士を依頼する方法について紹介します。
弁護士費用とは
まず、弁護士に依頼する際の費用にはどのようなものがあるのか見てみましょう。
相談費用
相談費用とは、最初に弁護士に依頼する内容などを相談する際に必要となる費用です。「法律相談料」と呼ぶ事務所もあります。弁護士によって異なりますが、相談費用の相場は30分〜1時間で5,000円前後が相場です。
着手金
着手金とは、弁護士に依頼をした段階でかかる費用です。着手金はトラブルの解決がうまくいかなかった場合でも返金されません。
一般的に多くの弁護士は着手金を決める際「相手にいくら請求するか」をもとに計算します。
一般的な民事事件(訴訟事件・非訟事件)の場合、旧日弁連基準(2004年4月1日から廃止)に沿った以下の表で計算した額が相場となります。ものです。
相手への請求金額 | 計算式 |
---|---|
300万円以下 | 請求金額×8%(最低金額:10万円)+消費税 |
300万円超3,000万円以下 | 請求金額×5%+9万円+消費税 |
3,000万円超3億円以下 | 請求金額×3%+69万円+消費税 |
3億円超 | 請求金額×2%+369万円+消費税 |
上の表は裁判を依頼する際の金額です。弁護士によっては、着手金の内訳を示談分や裁判分など段階的に設定するケースもあります。
成功報酬金
成功報酬金とは、仕事の終了時に弁護士へ支払う費用です。成功報酬金の額は「勝訴判決において相手が支払うことになった額」や「和解成立時の相手の合意額」を基に計算されます。また、一部成功の場合はその度合に応じて支払います。こちらも多くの弁護士が使っている旧日弁連基準(2004年4月1日から廃止)では、以下のように計算方法が決まっています。
相手の支払う金額 | 計算式 |
---|---|
300万円以下 | 請求金額×16%+消費税 |
300万円超3,000万円以下 | 請求金額×10%+18万円+消費税 |
3,000万円超3億円以下 | 請求金額×6%+138万円+消費税 |
3億円超 | 請求金額×4%+738万円+消費税 |
実費
実費は、弁護士がその依頼を遂行するために必要となる費用です。相手に文書を送る際の切手代やコピー代、裁判を起こす際に裁判所に払う「印紙代」などがあたります。
実費は、弁護士があらかじめどのくらいの費用がかかるか概算を計算し、着手金と合わせて支払うケースが一般的です。支払うタイミングは裁判(もしくは示談)終了時です。
日当および交通費
日当とは、弁護士が依頼を遂行するために、事務所以外で活動する際に必要な費用です。例えば裁判のために裁判所に出向く際には日当が発生します。また、日当と別に、交通費および宿泊費も発生します。
相場となっている旧日弁連基準では、日当は半日で3万円~5万円となっています。
その他の費用
依頼の内容によっては、実費以外の費用が発生する場合があります。例えば、土地の値段を鑑定してもらう際に不動産鑑定士に支払う鑑定費用や、意見書の作成を医師に依頼する際の鑑定費用などが該当します。
弁護士費用が払えない場合の対応方法
実際に弁護士に依頼するとなると、上記の費用が発生しますが、費用が払えない場合にはどのような救済措置が用意されているのでしょうか。
法テラスの弁護士費用の立替制度を利用する
日本司法支援センター「法テラス」では、弁護士費用の立替制度を利用することができます。ただし、誰でも利用できるわけではなく、利用するには以下の要件を全て満たす必要があります。
- 収入額が一定以下
- 勝訴の見込みが少しでもある
- 民事法律扶助の趣旨に適すること
ちなみに収入額については、同居家族が2人の場合、手取り収入が月251,000円以下であることが条件です。基準は同居家族の人数によっても異なり、また、家賃や住宅ローンの返済を負担している場合には加算額が追加で考慮されます。
以下は、弁護士・司法書士費用の立替制度における収入と資産要件の表です。
家族人数 | 収入基準 | 資産基準 | 家賃・住宅ローンの控除限度額 |
---|---|---|---|
1人 | 200,200円 | 180万円以下 | 53,000円 |
2人 | 276,100円 | 250万円以下 | 68,000円 |
3人 | 299,200円 | 270万円以下 | 85,000円 |
4人 | 328,900円 | 300万円以下 | 92,000円 |
出典:法テラス
※東京都特別区にお住まいの場合の基準
例えば、東京都で1人で住んでいる方の場合、収入が200,200円、資産基準が180万円以下でなければこの制度を利用できないので注意しましょう。
分割払いができる弁護士事務所を利用する
弁護士事務所によっては、弁護士費用の分割払いが可能なところもあります。通常、着手金は一括払いが原則ですが、その他の費用については話し合いにより分割払いが認められる場合があります。
多くの弁護士事務所では、分割払いの回数を最大12回としていることが多いですが、状況に応じて回数を増やしてくれる場合もあります。分割払いを希望する場合は、相談時に弁護士に尋ねてみると良いでしょう。
弁護士費用の立替え・補償サービスを利用する
弁護士費用の立替えや補償を行うサービスを利用することもできます。例えば、日本弁護士連合会(日弁連)が法テラスに委託して行う「日弁連委託援助制度」があります。この制度では、子どもに対する法律援助と犯罪被害者法律援助があります。
- 子どもに対する法律援助:児童虐待や体罰などが原因で人権救済を求める子どもに対して、行政機関や親との交渉などを代理で行う制度です。
- 犯罪被害者法律援助:犯罪、配偶者暴力やストーカー行為などの被害を受けた方やその親族、遺族に対して、刑事裁判、少年審判等手続、行政手続きを行う際の弁護士費用等を援助する制度です。
また、弁護士が経営する「日本リーガルネットワーク」の子会社であるATE株式会社が提供する、弁護士費用の立替え・補償サービス「アテラ」の詳細については「弁護士費用が払えない場合は「アテラ」がおすすめ」で説明します。
国選弁護人を利用する
主に刑事事件において、被疑者や被告人が経済的事由から弁護士を選任することが難しい場合、裁判所が選任した国選弁護人を利用する方法があります。
国選弁護人を利用した場合、弁護士費用の支払いは発生しません。被疑者や被告人が自力で弁護士を依頼できない事情を裁判所に申し立て、認められれば利用可能です。
弁護士費用の相場はどれくらい?
では、実際に問題が発生した場合、それを解決してもらうための弁護士費用の相場はどのくらいなのでしょうか。
弁護士費用の目安 | |
---|---|
労働問題 | 1ヵ月分の給与×3 |
相続問題 | 着手金:数十万円~数百万円 成功報酬金:数十万円~ |
不動産問題 | 着手金:数十万円〜数百万円 成功報酬:数十万円+回収した家賃の10%~20% |
医療過誤 | 経済的利益の10%~20% |
交通事故 | 着手金:10~20万円 成功報酬:経済的利益の10%~15% |
離婚、男女トラブル | 調停:20万円~50万円 裁判:70万円~110万円 |
労働問題の費用
労働問題における弁護士費用の相場は、上記の旧日弁連基準に沿った着手金・成功報酬金の額が一般的です。不当解雇のように請求金額がはっきりと計算できない場合においては、「1ヵ月分の給与×3」などといった形で着手金を計算します。
相続問題の費用
相続問題にはさまざまなものがあります。例えば、遺産分割のための調停・審判を依頼する場合であれば上記の旧日弁連基準に沿った着手金(数十万円~数百万円)・成功報酬金(数十万円~)と同様の額が必要になります。遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)についても、上記の旧日弁連基準に沿った着手金・成功報酬の額が相場となっています。
また、その他の相続問題で必要な手続きの手数料や費用の相場は以下のとおりです。
手数料や費用の相場 | |
---|---|
遺言書作成 | 十万円~数十万円 |
公正証書遺言 | 別途3万円の手数料 |
遺言執行 | 数十万円~数百万円 |
相続放棄 | 5万円〜10万円 |
不動産問題の費用
欠陥住宅に関するトラブルの場合、上記の旧日弁連基準に沿った着手金(数十万円~数百万円)・成功報酬の金額が必要となることが一般的です。家賃滞納等を理由とする建物明渡し請求の相場は、着手金が数十万円、成功報酬は数十万円+回収した家賃の10%~20%です。
医療過誤に関する費用
医療過誤の着手金は、上記の旧日弁連基準に沿った着手金に、調査費用として数十万円が加算されるため、高額となることが多いです。事案によりますが、100万円を超える着手金が必要になることも珍しくありません。成功報酬は、経済的利益の10%~20%が相場となっています。
交通事故に関する費用
交通事故のトラブルの場合、着手金は10万円~20万円、成功報酬は経済的利益の10%~15%が相場です。
離婚、男女トラブルに関する費用
離婚によるトラブル解決費用の着手金は、調停の場合であれば20万円~50万円、裁判になると70万円~110万円にのぼります。離婚成立時には、成功報酬として同程度の金額が発生します。さらに慰謝料の請求や財産分与などにより、別途報酬が必要になります。
弁護士費用が払えなければどうなる
弁護士費用を支払えない場合、弁護士から入金の督促通知が届きます。また、支払いが滞ると、依頼された事件の処理を進められなくなるので注意が必要です。というのも、弁護士は依頼人からの着手金や費用を確認してから事件処理に移るためです。
さらに、弁護士からの督促を無視し続けた場合、弁護士が依頼を辞任してしまう可能性があります。加えて、財産の差押えなどの法的措置を取られることもあるので、支払いが難しいからといって無視しないようにしましょう。
弁護士費用を抑えるためのポイント
弁護士費用を払うお金が足りるか不安を感じている方は、費用を抑えたいと考えているのではないでしょうか。
ここでは、弁護士費用を抑えるためのポイントを4つ紹介します。
早期解決のために早めに相談する
弁護士費用を抑えるためには、早期解決のために早めに相談することが大切です。
なぜなら、法的トラブルが起きた段階で早めに弁護士に相談することで、複雑な手続きや長期にわたる交渉を避けられるので、費用を抑えられるからです。
一方で、問題が大きくなればなるほど、解決に要する時間や労力、費用が増大する傾向があるので注意が必要です。
例えば、ある法律事務所では、事件解決までの期間が長期化した場合、調停1期日あたり2万2,000円の期日日当が発生するとホームページに記載しています。
早い段階で弁護士に相談して、費用を抑えるようにしましょう。
相談料無料の弁護士事務所に相談する
費用を抑えたい場合は、相談料無料の弁護士事務所に相談すると良いでしょう。弁護士事務所では、相談料を30分で5,000円前後、1時間で1万円前後に設定していることも多いです。
相談料がかかる弁護士事務所に相談すると、万一、依頼しない場合でも費用が発生する可能性があります。
そのため、できるだけ少ない回数で弁護士事務所を決めなければならなくなります。
しかし、相談料無料の弁護士事務所なら、費用面の不安なく複数の事務所に相談できます。
ただし、無料の場合でも、相談時間は30分や1時間など限られていることが多いので注意しましょう。
複数の法律事務所で見積もりを取って検討する
法律事務所を選ぶ際は、複数の事務所で見積もりを取って検討するようにしましょう。なぜなら、ひとつの事務所の見積もりだけを取ると、相場よりも高い可能性があるからです。
ただし、依頼費用の安さだけで法律事務所を選ぶのは良い選択とはいえません。価格だけでなく、提供されるサービスの質や対応、弁護士の経験・専門性などを総合的に考慮することが重要です。
弁護士費用特約や弁護士費用保険を利用する
弁護士費用を用意するのが難しい場合は、弁護士費用特約や弁護士費用保険の利用を検討しましょう。
- 弁護士費用特約:自動車保険や火災保険などのオプションとして追加できる特約です。この特約を利用すると、交通事故などで相手方との示談交渉を弁護士に依頼する際にかかる費用を、保険会社が一定額まで負担してくれます。
- 弁護士費用保険:毎月一定の保険料を支払うことで、将来発生する可能性のある法的トラブルに対する弁護士費用を補償する保険のことです。法律相談料や交渉・裁判費用が保険金として支払われます。
どちらも、特定の法的トラブルが生じた際の弁護士費用を補償、弁護士に相談する際の費用を一部サポートする特約など、さまざまなプランが提供されています。
これらの保険に加入しておくことで、万一法的トラブルが発生した際の経済的な負担を大幅に軽減できるでしょう。
弁護士費用が払えない場合は「アテラ」がおすすめ
「アテラ」は、法的なトラブルに関して相手に金銭等を請求する方向けに、弁護士費用の立替・補償サービスを提供しています。初期費用ゼロで弁護士に依頼でき、敗訴した場合でも初期費用分の赤字を生む可能性が無くなります。
「アテラ」の特徴とは
「アテラ」は、依頼時に必要な初期費用を立て替えてくれます。費用の立て替えの範囲は、示談交渉や調停のほか、裁判や証拠保全手続きなど全ての法的手続きが対象です。さらに、敗訴時や相手からの金銭の回収に失敗した時の赤字についても補償してくれます。ただし、補償を受ける際に審査が必要です。具体的な立て替え費用および補償額、リスク補償料については以下のとおりです。
立替費用および補償額 | 20万円~1,000万円(金額詳細は審査のうえ決定) |
リスク補償料 | 審査の結果(リスクの大小)に応じて、提供額の1~2倍 |
さらに、「アテラ」には弁護士費用のほか、オプションサービスとして「クイックマネーサポート」が用意されています。「クイックマネーサポート」とは、弁護士の初期費用とは別に、自由に使える資金を提供してくれるサービスです。支払った弁護士費用や生活資金として利用することができ、敗訴もしくは回収失敗の場合には実質返還不要となっています。弁護士への依頼後、すぐに資金を提供してもらうことが可能です。
※審査の結果、弁護士費用のみの提供となる場合もあります。
※法令により、現金提供の代わりに必要費用の立て替えとなる場合があります。
「アテラ」のメリット
「アテラ」を利用するメリットは、初期費用なしで弁護士に依頼できる点です。通常、弁護士に仕事を依頼する際には数十万円~数百万円の着手金や実費といった費用がかかります。
さらに2019年のデータによると、金銭請求裁判における全面敗訴率は20%で5人に1人が全面敗訴しており、和解・勝訴できたとしても金銭を回収できるとは限りません。
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敗訴した際にも赤字になるリスクを恐れずに弁護士へ依頼できるでしょう。
「アテラ」はリスクなし
アテラはトラブル発生後でも契約できるため、利用するリスクはありません。
ただし、勝訴して相手から現金を回収できた場合には「アテラ」に立て替えてもらったお金を返すとともに、相手から受け取る金額の一部をリスク補償料としてアテラに支払う必要があります。
おわりに
「アテラ」では、泣き寝入りのない社会を実現するために、日本で初めての弁護士費用立て替え・補償サービスを行っています。
裁判において弁護士に依頼するには高額な費用が発生しますが、確実に裁判に勝てるわけではありません。もし敗訴した場合は弁護士費用の分だけ赤字となり、二重の痛手を負うことになります。だからといって裁判を起こさなければ、赤字になるリスクからは解放されますが、本来であれば受け取れたであろう金銭(慰謝料など)も受け取れません。
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