各種契約や架空請求などでトラブルに巻き込まれた場合、裁判になるようなケースもあるでしょう。
しかし、弁護士に依頼するには多額の費用が必要なため、あきらめて泣き寝入りする方も少なくありません。
そこで、法的トラブルを解決するための相談窓口として「法テラス」が国によって設立されました。法テラスでは法的手続きの相談や扶助制度を利用して弁護士費用を抑えることができます。ただし、法テラスの利用にはさまざまな条件をクリアしなければなりません。
この記事では、法テラスの利用条件や弁護士費用が免除になるケースを解説しています。また法テラス以外の資金調達方法も紹介しているので、参考にしてください。
法テラスとは
法テラスは、2004年6月に公布された総合法律支援法により設立された日本司法支援センターの通称です。全国どこでも法的トラブルを解決するための情報やサービスを受けられる社会の実現を目的として、国により設立されました。
法テラスの業務内容
法テラスでは借金返済に関する問題や、DV・ストーカー被害などの犯罪被害に関連する法的トラブルに対して、専門家からの支援や無料相談などを受けることができます。
また相談の結果裁判が必要となった場合、各種申請書の作成支援もしています。さらに自分で弁護士を雇う資力が無い場合は、民事法律扶助や国選弁護人の選任といったサービスも提供しています。
法テラスが提供するサービス
法テラスが提供する業務のうち、民事法律扶助業務はトラブルに巻き込まれた際に専門家の力を借りるきっかけとなる重要なものです。基本的に弁護士や司法書士への相談や裁判は、多額の費用がかかります。
そのため資力が無い方は、司法サービスを利用できず充分な救済や被害回復が得られないケースが少なくありません。
法テラスでは資力の少ない方を対象に無料法律相談を実施しています。さらに裁判が必要な場合には費用の立て替えも可能です。
法テラスを利用する際の注意点
法テラスは、資力が少ない方でも司法サービスを受けることができます。ただし法テラスの民事法律扶助業務には、利用条件が設定されています。司法サービスの利用を検討する際、法テラスの利用条件に合致しなかった場合は、他の手段の検討が必要です。法テラスを利用する際の注意点を把握しておきましょう。
収入や資産が一定額以下の方のみ利用可能
法テラスの無料法律相談や費用の立替えを利用する場合、世帯収入や保有資産の状況などを申告する必要があります。法テラスが定める基準金額以下の場合に限り、無料法律相談や費用の立替えを利用可能です。
法テラスの無料相談や費用の立て替えを利用する場合の条件は、以下のとおりです。
世帯人数 | 収入基準 | 資産基準 |
---|---|---|
1人 | 182,000円 | 180万円以下 |
2人 | 251,000円 | 250万円以下 |
3人 | 272,000円 | 270万円以下 |
4人 | 299,000円 | 300万円以下 |
例えば3人世帯の場合、世帯の平均月収が272,000円以下、保有資産が270万円以下の家庭が対象になります。
なお東京都や大阪府などの法テラスが定める「生活保護の基準に定める一級地」に該当する地域は基準金額が変わります。
世帯人数 | 収入基準 | 資産基準 |
---|---|---|
1人 | 200,200円 | 180万円以下 |
2人 | 276,100円 | 250万円以下 |
3人 | 299,200円 | 270万円以下 |
4人 | 328,900円 | 300万円以下 |
また家賃や住宅ローンを毎月支払っている場合は、以下の金額が収入から控除可能です。
世帯人数 | 控除額 | 東京都特別区の控除額 |
---|---|---|
1人 | 41,000円 | 53,000円 |
2人 | 53,000円 | 68,000円 |
3人 | 66,000円 | 85,000円 |
4人 | 71,000円 | 92,000円 |
これらの基準を満たさない場合は、法テラスの無料相談や立替えなどのサービスを受けることができません。
審査に時間がかかる
無料法律相談や裁判費用の立替えなどの利用には審査が必要です。審査を通過して初めて援助を受けられるため、法テラスを通じて司法サービスを受けるには時間がかかる場合があります。
赤字となるリスク
裁判を起こしても、敗訴してしまう可能性があります。また、裁判や示談などで賠償を受けられることになっても、実際に賠償金が支払われないケースも少なくありません。このような場合でも、基本的に法テラスへの費用の支払いが必要になるため、赤字を被るリスクがあります。
法テラスで弁護士費用が免除になるケース
法テラスから提供される弁護士費用はあくまで立替えであり、月々分割で返済する必要があります。
弁護士費用の返済について特例を受けるには資力や財産などに条件があります。法テラスで弁護士費用が免除になるケースは、以下のとおりです。
- 生活保護受給者
- 収入要件や資産要件を満たした方
- ひとり親世帯
法テラスの利用前に、ご自身があてはまっていないか確認してみてください。
生活保護受給者
生活保護を受けている方は、以下の条件を満たすことで弁護士費用が免除されるケースがあります。
- 生活保護を受けている
- 事件の結果得た利益の25%を償還している、または償還を不要とする特別な事情がある
- 免除を認める相当性がある
免除の申請には以下の書類が必要です。
- 直近3ヵ月以内の生活保護受給証明書
- 償還免除申請書
ただし、生活保護受給者が必ず弁護士費用を免除されるわけではありません。すべての条件を満たして審査に通過することが必要です。
収入要件や資産要件を満たした方
生活保護受給者以外の方が弁護士費用の免除を受けるには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 収入要件
- 資産要件
- 資力回復困難要件
それぞれの条件について詳しく説明します。
収入要件
収入要件は、毎月の世帯収入が以下の金額を下回る方が該当します。
世帯人数 | 収入基準 | 家賃や住宅ローンを支払っている場合に加算できる金額 |
---|---|---|
1人 | 127,400 円以下 | 41,000 円以下 |
2人 | 175,700 円以下 | 53,000 円以下 |
3人 | 190,400 円以下 | 66,000 円以下 |
4人 | 209,300 円以下 | 71,000 円以下 |
なお東京都や大阪府などの「生活保護の基準に定める一級地」に住んでいる方の基準は以下のとおりです。
世帯人数 | 収入基準 | 家賃や住宅ローンを支払っている場合に加算できる金額 ※()内は東京都特別区に住んでいる場合 |
---|---|---|
1人 | 140,140 円以下 | 41,000 円以下(53,000 円以下) |
2人 | 193,270 円以下 | 53,000 円以下 (68,000 円以下) |
3人 | 209,440 円以下 | 66,000 円以下(85,000 円以下) |
4人 | 230,230 円以下 | 71,000 円以下(92,000 円以下) |
このように、費用の免除を受けるには収入要件を満たすことが必要です。
資産要件
資産要件は、以下の条件すべてにあてはまる方が該当します。
- 主に以下の合計額が66万円以下
- 現金
- 預貯金
- 保険(生命保険、学資保険、個人年⾦等)の解約返戻⾦
- 有価証券の時価
- 自宅以外の不動産を保有していない
- 自動車は1世帯1台のみ
ご自身の保有財産に関する項目が資産要件です。
資力回復困難要件
資力回復困難要件は、以下のいずれかにあてはまる方が該当します。
- 65歳以上の方
- 重度または中度の障害のある者として以下のいずれかに該当する方
- 国⺠年⾦法による障害基礎年⾦の⽀給を受けている方
- 厚生年⾦保険法による障害厚生年⾦の⽀給を受けている方
- 労働者災害補償保険法による障害補償給付を受けた方のうち、その対象となった身体障害の障害等級が1級ないし7級に該当する方
- 身体障害者手帳の交付を受けている方のうち同手帳に1級ないし4級と記載されている方
- 精神障害者福祉手帳の交付を受けている方のうち同手帳に1級ないし2級と記載されている方
- 上記の障害のある者を扶養している方
- 病気により⻑期の療養が必要で、現に収⼊を得ておらず、かつ今後1年程度の間に収⼊を得るために働くことが⾒込めない方
- 上記に準ずる理由により、今後1年ないし2年で現在よりも生計が改善される⾒込みに乏しい方
高齢の方や障害のある方などを対象にしているのが、資力回復困難要件です。
参照:法テラス「生活保護を受給していない方の償還免除申請について」(PDFファイル)
ひとり親世帯
ひとり親の方は、法テラスの弁護士費用を免除されるケースがあります。免除の条件は以下のとおりです。
- ひとり親である
- 前述した収入要件と資産要件を満たしている
- 援助事件で決定された償還充当額を償還済みである
ひとり親世帯に関する免除は、令和6年4月より要件が緩和されています。そのため、それ以前に免除申請して認められなかった方でも、再度申請可能です。
なお、ひとり親世帯が免除を受けられる事件は限定されています。詳しくは法テラスのホームページで配布されているPDFファイルをご確認してください。
参照:法テラス「ひとり親世帯の償還免除制度について」(PDFファイル)
法テラスで弁護士費用を免除するときの申請方法
法テラスの弁護士費用を免除申請する際に必要な書類は、以下のとおりです。
- 償還免除申請書
- 免除に関する確認票
- 同確認票に記載された資料
免除は事件の終了後から申請可能です。なお償還免除申請書と免除に関する確認票は、法テラスの公式ホームページからダウンロードできます。
参考:法テラス「償還免除及び猶予申請書兼案内状」(Excelファイル)「免除に関する確認書」(Wordファイル)
法テラスを利用する流れ
法テラスで経済的余裕のない方が、無料で法律相談(法律相談援助)を行い、必要な場合には弁護士司法書士の費用の立て替え(代理援助・書類作成援助)を行う業務のことを民事法律扶助といいます。この制度を利用する流れは、以下のとおりです。
- 無料相談の申し込み:電話またはWEBから申し込みできる。事務所によっては、相談は対面だけではなく、電話やオンラインでも可能。事前にご自身が利用条件に該当しているか確認する
- 相談の準備:「法律相談票」および「援助申込書」に記入しておく。併せて、準備訴状や呼び出し状(出頭を命じる書類)、相談内容のメモなどを用意する。
- 法律相談の実施:予約日時の10分前に来所(または電話、オンライン面談の準備)し、時間になったら弁護士もしくは司法書士に相談を行う。同一問題につき3回まで可能。
- 代理援助の申し込み:相談のみで問題が解決しなかった場合は代理援助(弁護士や司法書士の費用を立て替えてもらうこと)を申し込む。
- 審査:法テラスにより、代理援助の可否を判断するための審査が実施されるため、結果の通知を待つ。審査に通過したら、個別援助契約の締結および「個別契約書」「重要事項説明書」などの必要書類の提出を行う。
- 事件処理:担当弁護士または司法書士に代理人として事件処理(損害賠償金の請求や債務整理の手続きなど)に対応してしてもらう。
- 担当事件終了の手続き:事件処理の完了後、速やかに法テラスへ「事件の終了を証する書面の写し」を添付した「終結報告書」を提出する。
- 終結審査:報酬金額や償還(返済)方法、援助終結について審査が行われるため、決定内容に基づき事件処理にかかった費用を清算する。
詳しくは法テラスのホームページでご確認してください。
参照:法テラス「民事法律扶助 手続の流れ」
法テラスの条件に合わない場合は「アテラ」がおすすめ
法テラスには、収入の少ない方が司法サービスを受けやすくなるメリットがあります。しかし収入・資産が法テラスの定める免除要件を上回る場合、立て替えてもらった費用は返済が必要です。さらに敗訴してしまった場合や、賠償金や和解金の合意に至ったものの相手方から実際に金銭が得られなかった場合でも、弁護士費用を支払う必要があります。そのため法テラスの利用で生活が一層苦しくなってしまう可能性も少なくありません。
そこで、弁護士費用の立替え・補償サービスを提供している「アテラ」をおすすめします。
「アテラ」とは
「アテラ」は、弁護士が代表を務めるATE株式会社が提供するサービスです。法的なトラブルで相手に金銭等を請求する方に対し、弁護士費用の「立替払い」と、敗訴した場合や金銭の回収に失敗した場合の損失リスクを引き受ける「補償」サービスを展開しています。
「アテラ」の特徴とは
司法手続きをする際は弁護士の利用が必要です。その際費用として着手金や実費、成功報酬金などが必要となります。
弁護士費用のうち初期費用である着手金は、請求金額によって変化しますが、数十万円以上になるケースがほとんどです。「アテラ」では、弁護士費用を含む初期費用を立て替えてもらえるほか、法的トラブルで当面の生活費が不足してしまう場合に利用できる「クイックマネーサポート」といったサービスも提供しています。
※借金の返済に関する相談や法的な請求を受けている側(債務者)の方は「アテラ」の対象外です。
「アテラ」のメリット
アテラの利用に収入制限や資産要件がないため、法テラスの利用条件に合致しないものの経済的余裕があまりない方でも利用することができます。また依頼する弁護士も選択可能です。
「アテラ」はリスクなし
アテラが立替えた初期費用やクイックマネーサポートの返済は、相手方からの和解金や賠償金を元手に行われます。
そのため敗訴したときや、勝訴しても相手方から金銭が支払われなかった場合は、弁護士費用の初期費用とクイックマネーサポートの返済が不要です。
ただし、勝訴して相手から現金を回収できた場合は、立て替えてもらった費用の返済に加えて、受け取った金銭の一部をリスク補償料として「アテラ」に支払う必要があります。
なお、「アテラ」の利用には審査があります。審査の結果、初期費用全額を立替できない場合もあるので注意してください。
おわりに
法テラスは無料法律相談の他、訴状や各種申請書の作成、それらに伴う費用の立替えなど、資力が少ない方でも司法サポートを受けられるサービスです。しかし収入や資産要件に該当しない場合は、法テラスを利用できません。
また相手方から金銭を得られなかった場合は、立替えた費用を返済する必要があるため、赤字を被るリスクもあります。
弁護士費用の立替えや当面の生活費の提供などをするアテラでは、敗訴や金銭の回収に失敗した場合、立替え費用とクイックマネーサポートの返済が不要です。
法テラスとアテラは、資力が少ない方でも司法サポートを受けられるサービスです。不当な解雇や賃金の不払いといったトラブルに巻き込まれた場合は、利用を検討することをおすすめします。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。