交通事故の慰謝料相場は3つに分かれる!計算方法やよくある疑問を解説

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交通事故の慰謝料相場は3つに分かれる!計算方法やよくある疑問を解説

交通事故に遭った際に発生し得る慰謝料は3種類あり、「自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準」のいずれかで計算するのが基本です。請求においては細かいルールがあるため、正しい知識を身につけておきましょう。このコラムでは交通事故の慰謝料について解説します。

1.交通事故の慰謝料の種類&相場の決め方

交通事故が発生して入院・通院やケガの後遺症などの被害を負った際は、精神的なダメージに対する補償として慰謝料を請求できます。慰謝料の種類は3つに分かれており、心に負った傷がどのような原因によるものかによって請求できる種類が異なります。

また、慰謝料をいくら支払ってもらうのかを決める際の基準は主に3つです。どの基準を元にするかによって金額が大きく変わってくるため、知識を深めて正しく理解しておきましょう。ここでは、交通事故の慰謝料の種類や相場の決め方について解説します。

1-1.交通事故に対する慰謝料は3種類

交通事故に際して請求可能な慰謝料の種類は3つです。交通事故に遭ったとき、入院・通院が必要となったり、ケガの後遺症が残ったりする可能性があります。場合によっては事故が原因で命を落とすこともあります。

これらの被害を負った際の精神的なダメージの補償を目的として、被害者は加害者に慰謝料を請求できます。精神的苦痛が何によってもたらされたのかに応じて、慰謝料の種類は以下のように分類されます。

  1. 入通院慰謝料:事故が原因で入院・通院しなければならなくなった場合
  2. 後遺障害慰謝料:事故で負ったケガの後遺障害が残った場合
  3. 死亡慰謝料:事故で亡くなった&事故で家族を失った場合

1-2.交通事故が起きた際の慰謝料算定の3つの基準

交通事故によって生じた精神的なダメージに対していくらの金額を請求するかは、3つの基準のうちのいずれかをベースにして計算するのが基本です。

  1. 自賠責基準
  2. 任意保険基準
  3. 弁護士基準

自賠責基準は法令で定められたもので、事故の被害に遭った際に補償される最低限の基準となっています。

任意保険基準は保険会社ごとに決められており、どのような基準が設定されているかはそれぞれ異なります。基本的には自賠責基準と同等もしくは少し高い額が設定されています。

弁護士基準は裁判基準ともいい、その名のとおり弁護士が慰謝料を計算する際に用いるものです。弁護士基準の考え方は、実際に過去に起こった裁判の例に基づいています。また、3つの基準の中では相場が高い傾向があり、保険会社が設定した基準の2〜3倍となるケースも珍しくありません。

2.入通院慰謝料(傷害慰謝料)の考え方

入通院慰謝料は傷害慰謝料とも呼ばれ、金額を決める際には以下のようなポイントが重視されます。

  • 事故によってどんなケガを負ったか
  • 事故が原因で入院したか
  • 入院・通院していた期間はどのくらいか
  • 実際に入院・通院した日数は何日か
  • どんな内容の治療を受けたか

なお、入通院慰謝料は通院した日数が1日だけでももらえるほか、入院した場合は慰謝料以外にもさまざまな費用を請求できます。入通院慰謝料の計算方法などを詳しく見ていきましょう。

2-1.入通院慰謝料(傷害慰謝料)の計算方法は3パターン

入通院慰謝料として請求する金額を決める場合、3パターンのうちいずれかの方法を使って計算します。

  1. 自賠責基準で計算する方法
  2. 任意保険基準で計算する方法
  3. 弁護士基準で計算する方法

相場を計算する際は、どの基準を用いるかによって金額に大きく差が出る点に注意が必要です。ここでは、それぞれの計算方法についてわかりやすく解説します。

・自賠責基準で計算する方法

自賠責基準では、1日あたりの入通院慰謝料として一定の金額が定められており、日額は4,300円です(2020年3月31日以前に発生した事故は4,200円)。1日あたりの金額に対し、以下の2つのうち少ないほうの日数をかけることで慰謝料の総額が決まります。

  1. 治療期間(初診開始から治療が終了するまで)の日数
  2. 実際に通院した日数を2倍したもの

自賠責基準で慰謝料を決める際のシミュレーションとして、初めて診察を受けた日から治療が終了する前の期間を120日、実際に通院した日数を50日と仮定します。実際に通院した日数を2倍すると100日となり、治療期間の日数よりも少なくなります。

よって、このケースでは実際に通院した日数を日額にかけるため、慰謝料の総額は430,000円となります。(4,300円×100日)

注意点として、自賠責保険によって補償される金額には上限があり、傷害分に対して支払われるのは120万円までです。総額が120万円を超えると、超過分は任意保険会社に請求する必要があります。

・任意保険基準で計算する方法

任意保険基準を使って金額を求める際は、通院と入院の期間に対応する数字を算定表で確認します。算定表とは、「入院が◯ヵ月・通院が◯ヵ月の場合、請求できる金額は〇〇円」のように、入院と通院の期間に対する慰謝料の金額をまとめたものです。

保険会社ごとに異なる算定表が用いられており、その内容は公開されていません。参考として、以前に用いられていた各社共通の相場を確認してみましょう。

各社共通の相場の一部 >【横軸:入院の月数、縦軸:通院の月数】

 0ヵ月1ヵ月2ヵ月3ヵ月4ヵ月5ヵ月6ヵ月
0ヵ月0円252,000円504,000円756,000円958,000円1,134,000円1,285,000円
1ヵ月126,000円378,000円630,000円857,000円1,046,000円1,210,000円1,348,000円
2ヵ月252,000円504,000円731,000円945,000円1,122,000円1,273,000円1,411,000円
3ヵ月378,000円605,000円819,000円1,021,000円1,185,000円1,336,000円1,461,000円
4ヵ月479,000円693,000円895,000円1,084,000円1,248,000円1,386,000円1,511,000円
5ヵ月567,000円769,000円958,000円1,147,000円1,298,000円1,436,000円1,549,000円
6ヵ月643,000円832,000円1,021,000円1,197,000円1,348,000円1,474,000円1,574,000円
7ヵ月706,000円895,000円1,071,000円1,247,000円1,386,000円1,499,000円1,600,000円
8ヵ月769,000円945,000円1,121,000円1,285,000円1,411,000円1,525,000円1,625,000円
9ヵ月819,000円995,000円1,159,000円1,310,000円1,437,000円1,550,000円1,650,000円
10ヵ月869,000円1,033,000円1,184,000円1,336,000円1,462,000円1,575,000円1,675,000円
11ヵ月907,000円1,058,000円1,210,000円1,361,000円1,487,000円1,600,000円1,700,000円
12ヵ月932,000円1,084,000円1,235,000円1,386,000円1,512,000円1,625,000円1,725,000円

例えば、入院はせずに2ヵ月間通院した場合、算定表から252,000円を請求できることが分かります。任意保険基準では算定表を見るだけで金額がすぐに分かるのが特徴です。

入院と通院の期間を月数に換算して端数が出た場合は、端数の日数を含む月数と前月の月数の差額を求め、日割りで計算して端数となった日数分の金額を計算します。

・弁護士基準で計算する方法

弁護士基準で求める際は、保険会社が定める金額と同様に算定表を使用します。ただし、弁護士基準で用いる算定表は実際にあった判例をベースとして設定されたものです。

算定表は通常のケガ用と軽傷用に分かれており、それぞれの名前は「別表Ⅰ」「別表Ⅱ」です。入通院慰謝料を求める際は、個々のケガの状況に応じていずれかの表を使用します。それぞれの算定表をベースにした場合、入院・通院の期間やケガに対していくら請求できるかを確認してみましょう。

別表Ⅰの一部(横軸:入院の月数、縦軸:通院の月数)>

 0ヵ月1ヵ月2ヵ月3ヵ月4ヵ月5ヵ月6ヵ月
0ヵ月0万円53万円101万円145万円184万円217万円244万円
1ヵ月28万円77万円122万円162万円199万円228万円252万円
2ヵ月52万円98万円139万円177万円210万円236万円260万円
3ヵ月73万円115万円154万円188万円218万円244万円267万円
4ヵ月90万円130万円165万円196万円226万円251万円273万円
5ヵ月105万円141万円173万円204万円233万円257万円278万円
6ヵ月116万円149万円181万円211万円239万円262万円282万円
7ヵ月124万円157万円188万円217万円244万円266万円286万円
8ヵ月132万円164万円194万円222万円248万円270万円290万円
9ヵ月139万円170万円199万円226万円252万円274万円292万円
10ヵ月145万円175万円203万円230万円256万円276万円294万円
11ヵ月150万円179万円207万円234万円258万円278万円296万円
12ヵ月154万円183万円211万円236万円260万円280万円298万円

別表Ⅱの一部(横軸:入院の月数、縦軸:通院の月数)>

 0ヵ月1ヵ月2ヵ月3ヵ月4ヵ月5ヵ月6ヵ月
0ヵ月0万円35万円66万円92万円116万円135万円152万円
1ヵ月19万円52万円83万円106万円128万円145万円160万円
2ヵ月36万円69万円97万円118万円138万円153万円166万円
3ヵ月53万円83万円109万円128万円146万円159万円172万円
4ヵ月67万円95万円119万円136万円152万円165万円176万円
5ヵ月79万円105万円127万円142万円158万円169万円180万円
6ヵ月89万円113万円133万円148万円162万円173万円182万円
7ヵ月97万円119万円139万円152万円166万円175万円183万円
8ヵ月103万円125万円143万円156万円168万円176万円184万円
9ヵ月109万円129万円147万円158万円169万円177万円185万円
10ヵ月113万円133万円149万円159万円170万円178万円186万円
11ヵ月117万円135万円150万円160万円171万円179万円187万円
12ヵ月119万円136万円151万円161万円172万円180万円188万円

例えば、事故によってむちうちの治療を受けた場合は別表Ⅱを用いて金額を求めます。入院0ヵ月・通院3ヵ月と仮定すると、受け取れる金額は53万円です。また、骨折などは軽傷以外のケガとみなされるため、「別表Ⅰ」を使用します。

2-2.通院が1日だけでも請求できる

入通院慰謝料は、通院した日数が1日だけでも請求することが可能です。極端に言うと、事故に遭ってから念のために診察を受けたようなケースでも、通院日数を1日とカウントして慰謝料を請求できます。

自賠責基準を適用した場合は、通院1日に対する補償として4,300円を受け取れます。弁護士基準によって金額を考える場合は、軽傷であれば6,333円、重症であれば9,333円です。2つを比較すると、弁護士基準のほうが高い金額を請求できることが分かります。

なお、請求できるのは通院1日に対する慰謝料だけではなく、治療にかかわるその他の費用も含まれます。例えば、入院にかかる費用や入院時に使用する日用品の購入費用、お見舞いにきた方の交通費などです。交通事故でケガを負った際は、慰謝料に加えてさまざまな費用の請求を忘れずに行いましょう。

3.後遺障害慰謝料の考え方

後遺障害慰謝料は、ケガが完治せずに後遺症が残ったことへの精神的ダメージに対して請求できるお金です。交通事故によって負ったケガの治療を続けても、何らかの後遺症が残ることがあります。例えば、「手足のしびれやむちうちの症状が残った」「骨折によって足が変形した」などが挙げられます。

請求するための条件は、症状が後遺障害等級に認定されることです。一部の例外はあるものの、基本的に後遺症があるだけでは慰謝料の請求は認められません。なお、症状の重さごとに等級が16段階に分かれており、等級ごとに決められた金額を請求することとなります。

それぞれの等級に対していくらの慰謝料が支払われるのかを見ていきましょう。

自賠責基準弁護士基準
要介護1級1,650万円2,800万円
要介護2級1,203万円2,370万円
1級1,150万円2,800万円
2級998万円2,370万円
3級861万円1,990万円
4級737万円1,670万円
5級618万円1,400万円
6級512万円1,180万円
7級419万円1,000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

例えば、後遺症が残って13級に認定されたとすると、その精神的苦痛に対して自賠責基準では57万円、弁護士基準では180万円を請求できます。

さらに、本来であれば得ていたはずなのに、交通事故によって得る機会を失った収入についても支払ってもらうことも可能です。これは逸失利益と呼ばれるもので、症状固定日を過ぎてから得られなかった収入に対する補償を指します。

逸失利益を求める際は、事故に遭う前の収入や等級ごとの労働能力喪失率を元に金額を算出します。

4.死亡慰謝料の考え方

死亡慰謝料は、交通事故によって亡くなった方がいる場合に請求できるものです。2つの種類があり、亡くなった方に支払われるのは死亡慰謝料、亡くなった方の遺族に支払われるのは近親者慰謝料です。また、逸失利益や葬儀にかかる費用も加害者側に負担してもらえます。

後遺障害慰謝料と同じように、死亡慰謝料にも目安となる基準が定められています。自賠責基準では、亡くなった方と遺族の方への金額が別々に設定されているのが特徴です。これに対し、弁護士基準では亡くなった方と遺族の方への金額がまとめられています。

害に遭った方自賠責基準弁護士基準
一家の支柱          400万円2,800万円
母親・配偶者      400万円2,500万円
独身の男女          400万円2,000〜2,500万円
子ども   400万円2,000〜2,500万円
幼児400万円2,000〜2,500万円
+ 遺族1名(該当する場合のみ)550万円
+ 遺族2名(該当する場合のみ)650万円
+ 遺族3名以上(該当する場合のみ)750万円
+ 被扶養者あり(該当する場合のみ)200万円

死亡事故に対する慰謝料の交渉は相続人が行うのが一般的で、相続人は遺族の中から選出するのが基本です。

5.交通事故で負ったケガ別の慰謝料相場

交通事故でケガを負った際に支払われる慰謝料は、さまざまな要因の影響を受けて増額・減額されることがあります。例えば、事故の状況や被害者が負ったケガの状態、治療の様子などは影響を受けるポイントです。

慰謝料が増えたり減ったりする理由はいくつかあり、ケガの種類によっても気をつけるべき点が異なります。ケガに対する適切な慰謝料を請求するための知識として、ケガ別の慰謝料相場や注意点を見ていきましょう。

5-1.軽傷の場合の慰謝料相場

軽傷に含まれるのは、​​擦り傷・かすり傷や打撲、捻挫などです。治療にかかる平均的な期間を考慮して、軽症の場合の慰謝料相場をまとめました。

<入通院慰謝料>

軽傷の種類治療にかかる平均的な期間自賠責基準弁護士基準
擦り傷・かすり傷約1ヵ月(通院)約100,000円約190,000円
打撲約2週間(通院)約50,000円約90,000円
捻挫約3ヵ月(通院)約350,000円約530,000円

「事故を起こした側の態度に問題がある」「相手方の過失が重い」などの事情があると、相場以上の慰謝料を請求できることがあります。軽傷は慰謝料が低い傾向があるものの、明確な根拠をもって交渉することで金額を増額できる可能性はゼロではありません。

反対に、「過失相殺・素因減額が行われた」「通院の頻度が低かった」などによって慰謝料が減額されることもあると覚えておいてください。増額・減額されるケースについては「よくある疑問」の項で詳しく解説します。

5-2.骨折の場合の慰謝料相場

骨折で治療を受ける際は、平均して入院と通院が6ヵ月間続くとされています。平均的な治療期間を踏まえた慰謝料の相場は以下のとおりです。

<入通院慰謝料>

自賠責基準弁護士基準
774,000円 (実治療日数90日・総治療日数180日と仮定)165万円 (入院2ヵ月・通院4ヵ月と仮定)

軽傷の場合と同じく、通院頻度によっては金額を減額されることがあります。ただし、ギプス着用で自宅療養するように決められている場合など、通院しない正当な理由がある場合は考慮されます。

また、骨折の程度によっては後遺症が生じることもあるでしょう。骨折による後遺症に対する補償は、骨折した部位や程度によって等級や慰謝料の相場が異なります。

<後遺障害慰謝料>

骨折によって認定されると考えられる等級自賠責基準弁護士基準
7級419万円1,000万円
8級331万円830万円
10級190万円550万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

5-3.むちうちの場合の慰謝料相場

むちうちは捻挫と同じく軽傷に含まれるため、平均的な通院期間に対する慰謝料相場は約35万円(自賠責基準)または約53万円(弁護士基準)です。ただし、むちうちを負った際には特に後遺障害等級について注意しなければいけません。

むちうちで認定され得る等級は12級から14級です。しかし、むちうちの後遺症は他人では判別しにくく、自己判断に委ねられることから、後遺障害等級に認定されるのが難しいとされています。

むちうちによって治療後も症状を感じるのであれば、認定の条件や認定されないケースなどをきちんと押さえたうえで審査を受けましょう。

5-4.脳挫傷の場合の慰謝料相場

脳挫傷(のうざしょう)とは、わかりやすく言うと脳の打撲を指します。脳挫傷はくも膜下出血を引き起こす要因になりますが、仮に症状が発生して入院1ヵ月・通院6ヵ月となった場合は、相手方に149万円を請求できます(弁護士基準)。また、以下のような後遺症が残りやすいのも特徴です。

  • 遷延性(せんえんせい)意識障害
  • 高次脳機能障害
  • 外傷性てんかん など

高次脳機能障害は症状がわかりにくく、症状に気づくのが家族のみであるほど軽いケースもあります。手遅れにならないように、わずかな違和感があった時点で速やかに医師に相談しましょう。

遷延性意識障害は「植物状態」とも呼ばれます。後遺症として残った場合に認定され得る等級や金額の相場は以下を参考にしてください。

認定されると考えられる等級自賠責基準弁護士基準
要介護1級1,650万円2,800万円
要介護2級1,203万円2,370万円

脳挫傷による後遺障害について等級の認定を受ける際は、審査が完了するまでに数年を費やすことも少なくありません。認定までに長い時間がかかる場合は、損害賠償を請求する権利の時効に注意しましょう。請求権の消滅について詳しくは後述します。

6.慰謝料以外に発生するお金について

交通事故による被害を受けた際は、慰謝料以外にもさまざまなお金を請求することが可能です。そもそも慰謝料は損害賠償金の一つであり、損害賠償金は補償される内容によって細かく分かれています。

例えば、交通事故によって負ったケガの治療費や入院費などは事故が起こらなければ出費しなかったであろう費用である「積極損害」に含まれる賠償金です。また、収入の減少にかかわる損害賠償金は、事故が起こらなければ将来得るはずの利益の喪失を指す「消極損害」と呼ばれます。事故に遭った際に漏れなく賠償金を請求できるように、慰謝料以外に発生するお金について理解しておきましょう。

6-1.慰謝料以外に請求可能な賠償金

交通事故が起こった際に請求できる損害賠償金は、積極損害と消極損害の2つです。それぞれに含まれる項目を以下にまとめました。

【積極損害】

  • 治療にかかわる費用
  • 付き添い費用
  • 将来介護費用
  • 雑費
  • 通院するための交通費や宿泊費
  • 学生・生徒の学習費用
  • 家屋や自動車を改造するための費用
  • 葬祭にかかわる費用
  • 弁護士費用
  • 遅延損害金

治療にかかわる費用は、病院で医療を受ける際の費用に加えて、整骨院での治療やマッサージ治療、温泉治療の費用なども該当します。ただし、これらの費用を請求できるのは事故と関連があると認められた場合のみです。

例えば、医師の指示を受けて治療を受ける場合は事故との関連性が認められますが、治療費があまりにも高すぎたり、不必要な医療を受けていたりする場合は認められません。なお、治療にかかわる費用を請求できるのは、医師に症状固定と判断される日までです。

付き添い費用は、入院や通院にあたって付き添いが必要になった際に請求できる費用です。特に幼い子どもは一人で通院できないため、通院付き添い費の請求を認められるケースが多くあります。また、重傷で通院できない場合には、自宅での付き添い介護にかかわる費用を請求できることがあります。

将来介護費用は、特定の等級の後遺障害が残った場合に関する補償です。雑費にはさまざまな費用が含まれており、洗面具や寝具などの入院雑費や、後遺障害が残った後の生活で必要となるものの費用に対してお金が支払われます。

通院するための交通費は公共交通機関に限定されるのが一般的ですが、やむをえない事情があった場合のみタクシーでの移動も認められることがあります。学生・生徒の学習費用は、事故が原因で予定どおりに進級・卒業ができなかった場合などに支払われる損害賠償金です。

なお、事故によって後遺障害が残ると、それまで暮らしていた自宅や車の構造では不便が生じるかもしれません。バリアフリーを目的として自宅や車を改造する際は、相手方に改造費用を請求できるケースがあります。

葬祭にかかわる費用では、葬祭費用や仏壇購入費用などが該当します。ただし、香典返しなどに際して発生した費用は対象ではありません。

加害者に対する賠償請求を弁護士に依頼する場合は、弁護士費用を請求できる可能性があります。また、事故が起こってから損害の内容が決まるまでの期間は、加害者は賠償金の支払いを遅滞しているとみなされます。この支払いの遅れに対し、遅延損害金として年5%の金額を請求することが可能です。

【消極損害】

  • 休業損害
  • 逸失利益

休業損害は、事故によって働けなくなったり家事ができなくなったりしたことに対する賠償金です。主に会社員や主婦・主夫の方が対象ですが、個々の事情によっては無職でも請求できることがあります。

逸失利益は後遺障害慰謝料の項目で述べたとおり、本来であれば手にしていた収入を失ったという損害を補償するものです。

6-2.示談金

慰謝料と混同しやすい言葉として「示談金」が挙げられます。示談金は被害者が受けた損害をカバーするためのもので、金額を決定する際は被害者と加害者の合意が必要です。

示談金は特定の項目を指すわけではなく、被害者に対するすべての損害賠償金を含みます。一方で、慰謝料は損害賠償金の項目の一つであり、言い換えると示談金の一部です。どちらも被害者が受け取るお金という点は共通していますが、具体的な項目には違いがあると覚えておいてください。

7.納得のいく慰謝料を受け取るためのポイント3つ

慰謝料はさまざまな要因によって増額・減額されることがあるため、決定された慰謝料が事故で受けた被害の度合いに見合わないと感じるケースもあるでしょう。納得のいく金額の慰謝料を受け取るためには、以下の3つのポイントを押さえておくのがおすすめです。

  1. 診断書は医師に作成してもらう
  2. 継続して通院し、症状固定まで治療をやめない
  3. 弁護士に示談交渉を依頼する

ここでは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。

7-1.・診断書は医師に作成してもらう

適切な金額の慰謝料を受け取るためには、診断書を医師に作成してもらうことが重要です。慰謝料の金額を決める際には診断書を用いるのが基本であり、算定に使用できる診断書は医師のみが発行できます。

診断書には治療や症状の内容、治療期間などが記載されているほか、交通事故と治療にどのような因果関係があるのかを示す役割があります。もし何らかの後遺障害の症状を感じた場合は、自覚している症状を詳しく伝えて診断書に含めてもらうことも重要です。

7-2.・継続して通院し、症状固定まで治療をやめない

慰謝料を納得のいく金額にするためには、ケガの症状に応じた頻度で通院を継続しましょう。きちんと通院しないと治療の必要性が疑われ、ケガに対する慰謝料の請求ができないことがあります。

入通院慰謝料を求める際は入院・通院した期間をベースとするため、通院をおろそかにしていると計算に用いられる期間が短くなり、結果として慰謝料の金額が少なくなるかもしれません。必要以上の通院は好ましくありませんが、通院頻度が金額に影響する点には留意が必要です。

では、いつまで治療を継続すべきかというと、医師によって症状固定と判断されるまでです。症状固定と診断されると、その後は事故で負ったケガによる後遺症として扱われます。後遺障害に対する慰謝料を請求するためには、症状固定のステップを踏まなければいけません。

しかし、なかには保険会社から治療を途中でやめるように促されて通院をストップする方もいます。保険会社が被害者に治療をやめさせる目的は、請求される治療費などをなるべく抑えるためです。

もし症状固定日を迎えないまま途中で治療をやめると、後遺障害慰謝料を請求できなくなるほか、ケガが完治せずに悪化することにもなりかねません。「治療費を打ち切る」「早めに示談を始めたい」などの理由で保険会社から治療の中止を求められても、症状固定日まではきちんと通院を続けましょう。

7-3.・弁護士に示談交渉を依頼する

症状や精神的ダメージに対して妥当な金額を請求するためには、弁護士に示談交渉を任せるのも有効な選択肢の一つです。示談交渉をプロに依頼することで、以下のようなメリットが得られます。

  1. 弁護士基準で計算するため慰謝料が高くなりやすい
  2. 示談交渉における精神的な負担が軽減される
  3. 損害賠償を請求する際に漏れがなくなる
  4. 後遺障害等級の認定についてアドバイスがもらえる

上述のとおり、弁護士が慰謝料の算定に用いる基準は、自賠責基準や任意保険基準よりも金額が高めに設定されています。被害者が「弁護士基準で計算してほしい」と個人で交渉しても、保険会社に認めてもらえるケースは多くありません。

その点、弁護士には保険会社の事情が通用しないと考えられることから、被害者側の主張を保険会社に認めてもらいやすくなります。結果として、保険会社から提示された金額よりも高い慰謝料を受け取れる可能性があります。

また、示談交渉の際は保険会社と頻繁にやりとりしなければならず、専門用語ばかりの会話にストレスを感じる方は少なくありません。弁護士に依頼すれば保険会社との交渉を一任できるため、示談交渉における精神的な負担を抑えられます。

さらに、損害賠償の請求に漏れがなくなることも弁護士に依頼するメリットの一つです。交通事故や損害賠償の知識がないまま示談交渉をすると、本来であれば請求できる項目を見落としてしまうかもしれません。

弁護士であれば、これまでに起こった判例などを元に正当な金額を割り出せるため、被害者が受け取れるすべての損害賠償を漏れなく請求できます。また、豊富な知識を有していることから、後遺障害等級についてアドバイスしてもらえるのもメリットです。

等級の認定にあたっては、通院の仕方や医師への対応方法も大切なポイントです。弁護士に助言をもらいながら等級認定の申請などを行うことで、認定の審査を通過する可能性が高くなります。

8.交通事故の慰謝料に関するよくある疑問4つ

交通事故に遭った際は専門的な手続きがさまざまあり、特に初めて慰謝料を請求する方は疑問を感じることが多いと考えられます。例えば、よくある疑問として以下のケースが挙げられます。

  1. 慰謝料が増額・減額されることはある?
  2. 慰謝料の請求に時効はある?
  3. 慰謝料はいつもらえる?
  4. 被害者の属性によって慰謝料の相場に差はある?

事故で負ったケガや精神的なダメージに対して適切な金額を請求するためには、交通事故に関する正しい知識が欠かせません。知識の有無によって受け取れる金額が左右されることもあるため、前もって疑問を解消しておく必要があります。

ここでは、交通事故が発生した際によくある疑問について解説します。

8-1.・慰謝料が増額・減額されることはある?

慰謝料をいくらにするかの基準はあるものの、具体的な金額はそれぞれのケースによって変わってきます。増額・減額されやすいケースをそれぞれ見ていきましょう。

【増額されやすいケース】

  • 加害者側の重過失や故意が認められた
  • 事故のあとの加害者側の対応に問題があった
  • 被害者が負ったケガの程度が重大であった

加害者側の重過失や故意とは、飲酒運転や無免許運転、居眠り運転などです。事故が起こった原因として加害者の過失が大きいと判断されると、慰謝料の金額が引き上げられる可能性があります。

または、事故が起こったあとに加害者が暴言を吐いたり証拠隠滅をしたりすることも、金額が増額され得る要因の一つです。誠意のある対応が見られなければ反省していないと判断され、慰謝料の金額に大きく影響します。

そのほかに増額されやすいケースとして考えられるのは、被害者が事故によって重傷を負った場合です。例えば、生死をさまようようなケガや複数回の手術などが該当します。

【減額されやすいケース】

  • 素因減額
  • 損益相殺
  • 過失相殺

素因減額とは、被害者の元々の既往歴や精神的・身体的な特徴によって事故による被害が大きくなった場合に金額が減額されることです。例えば、「うつ病によって外出が難しいために治療が長期化した」「元々ケガをしていたため完治するのが遅くなった」などが挙げられます。

損益相殺に該当するのは、被害者が損害賠償を受け取ることによって利益を得た場合です。複数の保険や制度から重複してお金を受け取ると、事故にかかわりのない理由で利益を得たと判断されることがあります。

過失相殺とは、事故が起こった原因として被害者側にも過失が認められた場合に、過失割合に応じて減額されることです。仮に過失割合を「加害者7:被害者3」とすると、損害賠償の総額から3割分の金額が差し引かれます。

8-2.・慰謝料の請求に時効はある?

慰謝料を請求できる権利には3年もしくは5年の時効があります。例えば、2020年4月1日以降に起こった人身・死亡事故における請求期限の定めは5年です。入通院慰謝料の場合は事故が起こった日の翌日から、後遺障害慰謝料の場合は症状固定日の翌日から5年以内に手続きしなければいけません。

2020年3月31日以前に起こった事故の時効は3年で、4月1日以降の事故よりも短く設定されています。また、被害者側の自賠責保険や自身の人身傷害保険の保険金、物損に対する損害賠償についても、手続きの期限は3年以内と定められています。

8-3.・慰謝料はいつもらえる?

慰謝料は示談交渉が終わってから支払われるのが一般的です。主な流れとしては、示談の話し合いがまとまったら保険会社から示談書が届きます。記入・押印された書類を保険会社が受け取り、支払いの手続きが完了したらお金が振り込まれる形です。なお、示談の締結から入金までの目安は2週間前後です。

加害者が任意保険に加入していない場合は、自賠責保険に請求を行うこととなります。加害者が請求する「加害者請求」と被害者が請求する「被害者請求」の2パターンがあり、加害者請求の手続きの流れや支払いのタイミングは上述したケースと同様です。

一方で、被害者請求は示談が成立する前にお金を受け取れるのが特徴です。迅速に対応すれば早くに慰謝料が支払われるため、事故による経済的なダメージを抑えられます。

ただし、請求にあたっては複雑な手続きを行う必要があり、書類の不備などがあれば入金までに1ヵ月以上かかることがある点には注意しなければいけません。

8-4.・被害者の属性によって慰謝料の相場に差はある?

被害を負った方の属性によっては、支払われる金額に差が出ることがあります。例えば、子どもが被害を受けた場合、死亡慰謝料の相場は大人よりも低くなることがあります。その差は数百万程度となっており、金額に大きな違いがあることが分かります。

被害者が主婦・主夫の場合に支払われる慰謝料は他の職業と同等ですが、休業損害や逸失利益の金額は少なくなる傾向があります。これは、家事は仕事とみなされず収入を得ていないと判断されることが関係しています。

学生が被害を受けた場合も、主婦や主夫と同じく慰謝料の金額に差はありません。他の職業と異なる点は、ケガによって留年したり休学したりした場合に以下のような損害賠償を請求できることです。

  • 学校に通えなくなったために不要になった学費や下宿代
  • 勉強の遅れをカバーするためにかかった家庭教師代や塾代

なお、学生では請求できないと誤解されやすいですが、場合によっては休業損害や逸失利益を受け取れるケースもあります。

9.「おとなの自動車保険」で突然の事故に備えよう

交通事故はいつ発生するかわからないため、思わぬタイミングで被害に遭う可能性はゼロではありません。事故によって被害を受けると、働けない間の収入減などのさまざまなリスクがあります。

このような不測の事態に備えるためにはセゾン自動車火災保険の「おとなの自動車保険」の加入を検討するのがおすすめです。おとなの自動車保険の特長は、自身にとって必要な補償を組み合わせて最適なプランを設計できることです。

保険料は過去1年間の走行距離をベースにして算出されるため、例えば走行距離が短い方であればその分の保険料を抑えられます。割引プランも豊富に用意されており、新規でも継続でもお得な保険料で加入できます。

交通事故のリスクに対して賢く備えるなら、適切な保険料で必要な補償を用意できるおとなの自動車保険を検討してみてください。

おとなの自動車保険

文審番号:SA2021-2183(2022.3)

10.交通事故の慰謝料請求には正しい知識が必要

突然の交通事故によって被害を負った場合は、精神的なダメージの原因に応じて3つの慰謝料を請求できます。金額を決める際には「自賠責基準・任意保険会社基準・弁護士基準」のいずれかが用いられますが、3つの中では弁護士基準が被害者にとって有利な金額になります。

慰謝料の種類によって計算方法が異なるほか、ケガの種類や被害者の属性などによっては相場に差が出ることがある点に注意が必要です。また、慰謝料以外のお金を請求できることもあるため、損害賠償についても詳しく理解しておくことが大切です。

交通事故における慰謝料の請求は複雑な手続きが多く、対応の仕方を誤ると本来受け取れるはずだった金額を得られなくなることもあります。事故に遭った際に適切な金額を請求できるように、慰謝料に関する知識をきちんと整理しておきましょう。