所有する不動産にすでに抵当権がついている場合でも、第二抵当権を設定して不動産担保ローンを借りることができる可能性があります。第二抵当権の活用は、新たな資金需要が発生した際に柔軟な資金調達を実現させる有効な手段です。
このコラムでは、抵当権やその順位の考え方について説明するとともに、第二抵当権以下で融資を受けるリスクを解説します。第二抵当では銀行融資を断られる場合もあるため、第二抵当でも利用可能なローン商品も紹介します。ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
- 第二抵当権で担保余力があれば新たなローンを借りられる
- 第二抵当権を設定して融資を受ける際は、審査を通過しにくく、金利が割高となるうえ、返済負担が増すリスクがある
- ノンバンクや不動産フリーローンを提供する金融機関なら、第二抵当権以下でも比較的審査を通過しやすいため、資金調達の幅を広げることが可能になる
不動産担保ローンにおける抵当権とは
不動産担保ローンにおける抵当権は、お金を貸した債権者(金融機関)にとってのセーフティネットを意味します。債権者が不動産に抵当権を設定しておくと、仮に債務不履行が生じた場合に裁判所へ申し立てを行い、強制的にその不動産を競売にかけて売却処分できます。
売却代金は、ほかの債権者に優先して債務の弁済に充てることが可能です。所有する不動産を担保に入れてお金を借りる債務者側からみても、何らかの理由で返済が困難となり、債務不履行となった場合でも、担保物件があれば返済できる可能性があるため、融資を受けやすくなることがメリットです。債権者が設定した抵当権は法務局で登記することで第三者に対抗できます。
例えば、債務者Aが、銀行Bと銀行Cから融資を受け、このうち銀行Bの債権についてのみAが所有する不動産に抵当権を設定したとします。融資残高はそれぞれ3,000万円です。
その後、債務不履行が発生し、銀行Bの申し立てで競売にかけられた不動産が3,000万円で売れた場合、銀行Bは優先して売却代金から3,000万円の弁済を受けられます。一方で、融資残高が同じく3,000万円あった銀行Cは、債務者にほかの資産がなければ弁済を受けることは難しくなるのです。
抵当権には順位がある
次に、抵当権の順位について解説します。抵当権が実行された場合に優先して弁済を受けられる順位は、状況に応じて変動することもあります。
抵当権の順位とは
所有する不動産の担保力を活用して資金を調達するのは、新たな資金需要に対応する有効な方法です。ただ、ひとつの不動産に対して複数の抵当権が設定されるケースがあり、この場合は抵当権の順位が重要となります。最初に設定された抵当権を「第一抵当権」と呼び、続いて設定された抵当権が「第二抵当権」となります。
第一、第二という表現は、債務の弁済を受ける際の「優先順位」を表しており、さらに第三、第四……と抵当権が設定されるケースもあるのです。
すでに抵当権が設定されている不動産でも、新たな借り入れの担保とすることは可能です。例えば、第一抵当権の対象となる借り入れの残債が3,000万円の場合、担保不動産の価値が5,000万円であれば、まだ2,000万円分の担保余力があることになります。
逆に、第一抵当権の対象となる借り入れの残債がまだ5,000万円であれば、その不動産を担保に入れて別の融資を受けられる可能性は低くなります。債務不履行が発生して第二抵当権を実行して競売にかけても、弁済を受けられる見込みが小さいからです。
抵当権の順位が変わるケース
不動産を担保とした資金調達において、第一抵当権より抵当権実行時に弁済を受ける優先順位が劣るのが第二抵当権です。リスクを抑えたい金融機関としては、弁済を受ける優先順位が重要であるため、上位の抵当権者が順位を下げることを許容することは基本的にありません。そして、順位を変更する場合には、債権者全員の承諾が必要という厳格な条件があります。
ただし、抵当権は抹消されることで順位が変動するものです。以下で、抵当権が抹消されるケースについて解説します。
住宅ローンを完済できた場合
抵当権の順位が変わるケースのひとつめは、住宅ローンが完済され、抵当権が抹消される場合です。ローンが完済された場合は、債権者である金融機関は抵当権を設定しておく必要性がなくなるためです。
住宅ローンの融資を行い、第一抵当権者となっていた債権者が抵当権者でなくなることで、第二抵当権が最も優先度の高い抵当権に変わります。
ただし、登記簿に記載された抵当権は抹消登記を行う必要があります。手続きが行われないまま放置すると新たなローンを組めない可能性もあるため、抵当権者に早めに抹消してもらうことが大切です。
不動産を任意売却する場合
不動産を任意売却する場合も抵当権が抹消されます。任意売却は、ローン返済で滞納が発生した場合、債権者の合意の下で不動産を売却処分する方法です。売却価格ではすべてのローン残債をカバーできない場合でも、抵当権を抹消することが可能となります。
任意売却は債務者の意思で売却を進めるのに対し、競売は債権者が裁判所に申し立てることで売却を進める手続きです。一般的に任意売却では市場価格に近い金額で売却が可能とされる一方、強制的に売却される競売では5割〜7割程度の安値で落札されることもあるとされます。
このため、任意売却は、競売よりスムーズに多めの弁済額を確保できることが期待でき、債権者と債務者双方にとってメリットがある選択肢となる可能性があります。
第二抵当権以下で借り入れるリスク
第二抵当権を設定して新たな借り入れを行うことは、複数の金融機関との取引を可能にするメリットがある一方でリスクもあります。
ここでは、第二抵当権以下はローン審査が通りにくいこと、金利が高くなりやすいこと、そして、返済負担が大きくなりやすいという3つのリスクについて解説します。
第二抵当権以下はローン審査が通りにくい
第二抵当権以下で借り入れるリスクとしてまず挙げられるのは、ローン審査が通りにくいことです。第二抵当権以下の場合、第一抵当権に比べて債権を回収できない可能性が高まるため、金融機関は融資に消極的になる傾向があるからです。
金融機関の収益の源泉は、お金を貸すことによる利息収入ですが、そもそも貸したお金が返ってこなければ損失が膨らんでしまいます。仮に第二抵当権を設定しているローンの返済が滞り、完済不能となる事態に陥った場合、第一抵当権を持つ金融機関は当然、優先的に担保不動産から回収するよう動くでしょう。
担保不動産の市場価値によっては、第二抵当権以下の金融機関には回収の余地が残らない状況も十分考えられます。このため、金融機関が第二抵当権以下で融資を行う場合、審査を厳しく実施する傾向にあるのです。
審査は、債務者の信用情報や収入状況を詳しく調査するだけでなく、担保となる不動産の立地や周辺環境、市場動向などを厳格に査定することになるでしょう。第二抵当権以下での融資を検討する場合、その審査は通常よりも厳格化されると意識しておくべきです。
金利が高くなりやすい
金利が高くなりやすいことも、第二抵当権以下で借り入れるリスクといえるでしょう。金利は、融資を受けるための対価であるといえます。金利つまり融資を受ける対価が割高になるのは、金融機関にとってみると融資を行うリスクが高いと判断されることが原因です。
融資が焦げ付いた場合、第一抵当権を設定した金融機関が優先的に弁済を受けます。第二抵当権を持つ金融機関は、一部またはすべての債権について回収の余地がなくなる可能性が考えられるため、事前にそのリスクを踏まえて高い金利を設定しておくのです。
融資を受ける場合、金利面のデメリットは無視できません。しかし、第二抵当権で融資を受けるためには、その対価としての金利の高さを受け入れざるを得ないこともあります。第二抵当権以下で借り入れを検討する際は、金利だけでなく、借入額や返済期間などほかの条件も踏まえて総合的な選択を行うことが重要です。
返済負担が大きくなりやすい
第二抵当権以下で借り入れを行う場合、返済負担が大きくなりやすいこともリスクとなります。第一抵当権を設定した融資の返済に、2番手以下の抵当権にかかわる融資の返済が加わるからです。
第二抵当権以下の借り入れに関する金利が割高に設定されているケースでは、さらに返済負担が膨らむでしょう。仮に第二抵当権以下で融資を受けて一時的に資金を得られても、長期にわたって返済の重さに苦しむ可能性が考えられます。
負担に耐え切れず返済が滞ると、金融機関は回収に動きます。この場合、任意売却や裁判所の決定に基づく競売が開始され、担保不動産は差し押さえ登記の対象となり、差し押さえ登記がなされると、不動産は売却や融資の担保として利用することができなくなるなどの不利益を被るのです。
将来的に不動産の売買を検討している場合や、追加で資金を借り入れる予定がある場合、大きな障壁となりうるのが差し押さえ登記です。このようなリスクを避けるため、事前に綿密な返済計画を立て、計画に沿った返済を進めるよう努めてください。
第二抵当権以下で借り入れ可能なローンもある
金融機関にとって融資を行う際のリスクが高いため、審査が厳しくなりがちな第二抵当権以下の融資ですが、借り入れ可能なローンもあります。ここでは、2番抵当でも借りられる不動産担保ローンを紹介しましょう。
ノンバンクのローンだと審査が通りやすい
第二抵当権以下で借り入れ可能なローンとしては、ノンバンクからの融資があります。ノンバンクとは、銀行や信用金庫、信用組合など以外で与信業務を行う金融機関のことです。銀行は、一般から広く受け入れた預金を原資に融資業務を行いますが、ノンバンクは預金業務を行いません。具体的には、クレジットカード会社や信販会社、消費者金融などが該当します。
一般的に、銀行から借り入れを受けるには、厳しい審査を通過しなければなりません。預金業務を行う銀行などの金融機関は、法令に基づき預金者保護が厳しく義務付けられているためです。銀行などの金融機関としては、預金を貸し出しの原資としている以上、安定した運営を続けるため、リスクは極力抑える必要があります。
一方で、預金の受け入れを行わないノンバンクは、銀行などより柔軟な審査基準を持っています。そのため、銀行での審査が通らなかった方や、信用情報に課題がある方でも、融資を受けるチャンスが広がるのです。特に、急な出費や突発的な資金調達が必要な場合、ノンバンクは非常に役立つ選択肢となるでしょう。
ただし、ノンバンクは、融資を受けやすくする見返りとして銀行などに比べて金利が高めに設定されていることが多くなります。リスクをとって融資を行う以上、それは避けられない面でもあります。
不動産フリーローンもおすすめ
第二抵当権以下で借り入れ可能なローンとしては、不動産フリーローンもおすすめです。不動産フリーローンは、お金の使い道を問わず、不動産を担保に入れて融資を受けられる仕組みになります。
一般的なローンでは、住宅購入やリフォーム、教育資金など資金使途が限定されるものが多いのですが、不動産フリーローンはあらゆる用途に利用可能というのが最大の特長。不慮の事故や病気などによる突然の出費や、新しい事業に向けて取り急ぎ準備しなければならない資金など、使途の制約なく自由に使えるのが魅力です。
さらに、不動産フリーローンは、担保がある安全性から、無担保ローンよりも低めの金利で長期の借り入れが期待できることも大きなメリットになります。
不動産フリーローンを検討する場合は「セゾンの不動産フリーローン」がおすすめです。セゾンの不動産フリーローンは「極度型」のローンです。借り入れのたびに契約が必要な一般的なローンと異なり、極度型は限度額に達するまでは初回の契約を済ませればWEBや電話での申し込みで融資を受けられます。期間中の繰り返しの借り入れや急な資金が必要になる場合は、その使い勝手が魅力となるでしょう。
返済方法も柔軟です。借り入れの都度、一般的な回数指定払い(元利均等返済)と、元金据置返済の2種類から選べます。元金据置返済は、一定期間は元金返済を行わなくてよい仕組みです。まとまった資金が入る時期が決まっている場合にその効果を発揮するでしょう。
おわりに
第二抵当権を設定して不動産担保ローンの提供を受けるのは、融資を受ける余地を広げるための有効な選択肢です。ただし、金融機関側は安全性を確保するため、厳格に審査したり、金利を高めにしたりするのが一般的です。複数の融資を受けることになるため返済負担が増し、さらに支払いが滞るリスクもあるでしょう。
確実に返済できる計画であるにもかかわらず銀行から融資を受けられない際には、ノンバンクや不動産フリーローンなどの利用も選択肢のひとつです。新たな資金需要が発生した場合は、第二抵当権以下で借り入れを行う利点とリスクを十分に考慮しながら、ノンバンクのローンや不動産フリーローンを検討してはいかがでしょうか。