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新紙幣発行の目的はタンス預金のあぶり出し?手元に現金を置くメリットやリスクなど徹底解説

新紙幣発行の目的はタンス預金のあぶり出し?手元に現金を置くメリットやリスクなど徹底解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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新紙幣の発行に伴い、「実は目的はタンス預金のあぶり出しなのではないか」との声が聞かれるようになりました。タンス預金とは現金を自宅に保管することで、違法ではありませんが、問題点もあります。

今回の記事では新紙幣発行とタンス預金の関係、タンス預金のメリットと問題点、資産の適切な管理方法について詳しく解説します。これを読めば自分の資産の割り振りのバランスがわかり、不安なく新紙幣時代に備えられるでしょう。

(本記事は2024年8月29日時点の情報です)

この記事を読んでわかること
  • 新紙幣発行の目的は偽造防止といわれているが、一部ではタンス預金のあぶり出しも期待されているのではないかとの憶測がある
  • タンス預金は国や金融機関に把握されないため、持ち主が自由に使える
  • タンス預金には滅失のリスクや相続時のトラブルのおそれ、インフレによる資産価値の目減りのリスクなどがある

新紙幣発行の主な目的は偽造防止

新紙幣発行の主な目的は偽造防止

2024年7月、新紙幣が発行されました。前回の新紙幣発行は2004年で、約20年ぶりの刷新となります。

新紙幣発行の主な目的は、紙幣の偽造防止です。近年、偽造技術は著しく進歩しており、従来の偽造防止技術では対応が難しくなっています。新紙幣には、以下のような最新の偽造防止技術が導入されています。

  • 3Dホログラム:見る角度によって肖像が回転する
  • 高精細すき入れ:肖像のすかしの背景に高精細なすき入れが入っている
  • 特殊発光インキ:紫外線をあてると、日本銀行総裁の印章や模様の一部が発光する

これらの技術により偽造を大幅に難しくし、紙幣の信頼性の強化が期待されています。

また、新紙幣にはユニバーサルデザインも取り入れられ、額面数字の大型化や識別マークの導入により、誰にでもわかりやすい設計となっています。

紙幣刷新はタンス預金のあぶり出しが裏の目的?

紙幣刷新はタンス預金のあぶり出しが裏の目的?

新紙幣発行の目的は偽造防止とされていますが、現金以外の決済手段が発達した現代において必要性は低いのではないかと考えられます。新紙幣発行には、キャッシュレス化の推進やタンス預金のあぶり出しの効果があるのではないかとの推測ができます。

想定されている日本のタンス預金はどれぐらいある?

新紙幣発行の裏の目的として、タンス預金のあぶり出しが指摘されています。タンス預金とは、銀行に預けずに自宅などで保管している現金のことです。その名前の由来は、かつて多くの人々がタンスに現金を隠していたことから来ています。

日本銀行が毎年発表している「資金循環統計」によると、2023年12月末時点で家計における現金・預金のうち現金の総額は約109兆円に達しています。この数字は年々増加傾向にあり、日本経済にとって無視できない規模となっています。家庭にある現金をすべてタンス預金とは考えられませんが、タンス預金は増加傾向にあるといえるでしょう。

タンス預金の増加は消費や投資の停滞につながる可能性があるため、政府や日本銀行にとって懸念事項となっていると考えられます。新紙幣発行により古い紙幣を新しいものに交換する必要が生じるため、これまで家庭内に眠っていた現金が表に出てくることが期待されます。

しかし、タンス預金には銀行破綻のリスクを回避できるなどのメリットもあり、一概に否定できるものではありません。新紙幣発行を機に、個人個人がご自身の資産管理方法を見直す良い機会となるかもしれません。

タンス預金があぶり出しされる理由|経済的デメリットとは

タンス預金があぶり出しされる理由|経済的デメリットとは

政府が新紙幣を発行する目的の中にタンス預金のあぶり出しがあるとしたら、どのような理由からでしょうか。ここでは、タンス預金の経済的デメリットについて解説します。

消費や投資の冷え込みが懸念されるから

巨額のタンス預金が存在することは、経済にとって大きな問題となります。なぜなら、タンス預金は銀行口座に預けられている預金と異なり、使われずに「死蔵」されている可能性が高いからです。本来であれば消費や投資に回されるべき資金が、タンス預金という形で表に出ないことによって経済全体の活性化が阻害されてしまうのです。

新紙幣発行によってタンス預金が銀行口座に移行し、活発に利用されるようになることを期待する声もあります。旧紙幣をタンス預金している方が新紙幣と交換するために銀行へ持ち込むことで、長年埋もれていた資金が市場に出回り、消費や投資を活発化させる効果を期待できます。

マネーロンダリングや脱税が懸念されるから

マネーロンダリングとは違法に得た資金の出所を隠蔽し、合法的な資金に見せかける行為です。高額紙幣は匿名性が高く、大量の現金を容易に運搬できるため、このような不正行為に利用されやすい特性があります。

タンス預金として多額の現金を保有している場合、それを銀行に預け入れようとすると資金の出所を説明できないケースが多く、マネーロンダリングの疑いをかけられる可能性があります。

さらに、タンス預金は税務署からの把握が困難なため、相続税の脱税につながりやすくなります。

このように現金の追跡は困難なことから、政府の立場からはタンス預金が表に出ることが望ましいといえるのです。

タンス預金は悪いことばかりではない

タンス預金は悪いことばかりではない

本来、タンス預金は違法ではなく、タンス預金をする方には相応の理由があります。ここでは、タンス預金のメリットを解説します。

【タンス預金のメリット1】好きな時に使える現金が手元にある

タンス預金の大きなメリットは、好きな時に使える現金が手元にあることです。銀行の営業時間や ATM の稼働状況に左右されず、急な出費にも即座に対応できます。

例えば、深夜の急病や災害時など、突発的な事態でも現金があれば安心です。また、キャッシュレス決済が普及している今でも、現金でしか支払えない場面は依然として存在します。

このように、タンス預金は緊急時や特殊な状況下での柔軟な資金運用を可能にする、実用的な選択肢といえるのです。

【タンス預金のメリット2】銀行破綻や口座凍結対策になる

タンス預金は、銀行破綻や口座凍結のリスクに対する有効な対策となります。金融機関は必ずしも安全とは限らず、予期せぬ事態で預金へのアクセスが制限される可能性があるためです。

例えば、2015年のギリシャでは、厳しい資本規制により銀行からの現金引き出しが制限され、市民生活に大きな影響を与えました。また、日本でもペイオフ(預金保険)制度により、銀行破綻時に全額保護されるのは元本1,000万円までの預金と利息のみです。

このように、タンス預金は金融システムの不確実性に備える安全策として、一定の役割を担います。

【タンス預金のメリット3】家族や国に知られず資産を貯蓄できる

タンス預金の重要なメリットは、家族や国に知られずに資産を貯蓄できる点です。銀行口座と異なり、マイナンバーと紐付けられないため、プライバシーが高度に保たれます。

そのため、家族間の金銭トラブルを避けたい場合や、相続税対策や所得税対策に有効な選択肢となります。

このように、タンス預金は個人の資産管理の自由度を高め、金融プライバシーを重視する人々にとって魅力的な貯蓄方法となっているのです。

タンス預金を継続する注意点

タンス預金を継続する注意点

タンス預金にはメリットがある反面、多額の保有にはリスクがあります。

【タンス預金のリスク1】盗難や災害時の紛失

タンス預金の最大のリスクは、盗難や災害時の滅失です。自宅での保管はセキュリティが金融機関ほど万全ではないため、現金が危険にさらされやすくなります。

例えば、空き巣の被害に遭ったり、火事や地震などの災害に遭ったりすると現金を失うおそれがあります。また、単純な紛失のリスクもあるでしょう。このように、物理的に現金を手元に置くタンス預金の特徴はメリットであり、デメリットでもあるのです。

【タンス預金のリスク2】遺産相続時のトラブル

タンス預金は遺産相続時に深刻なトラブルを引き起こす可能性があります。タンス預金は預貯金のような記録が残らないため、相続手続きが複雑化するためです。

例えば、亡くなった方がタンス預金の存在を家族に伝えていなかった場合、発見されずに放置されたり、発見されても相続人間で分配方法を巡って争いが生じたりする可能性があります。さらに、適正に申告しても多額のタンス預金がある相続案件は税務調査の対象になりやすく、相続人に追加の負担がかかるおそれがあります。

このように、タンス預金は生前には便利でも、相続時には家族に予期せぬ負担や混乱、さらには税務上の問題をもたらす可能性が高いのです。

【タンス預金のリスク3】インフレに弱い

タンス預金には、インフレになると価値が下がるというデメリットがあります。インフレとは物価が継続的に上昇し、相対的にモノの価値が目減りする現象です。タンス預金は現金をそのまま保管するため、インフレの影響を直接受けてしまいます。

年間2%のインフレが20年続くと、100万円の価値は約67万円相当まで目減りします。一方、銀行預金であれば利子がつき、投資であればインフレ以上のリターンを得られる可能性があります。

このように、タンス預金は長期的には資産価値の維持が難しく、インフレが続くと実質的な資産価値の目減りを招くリスクがあるのです。

もしものためのタンス預金は結局いくらが理想?

もしものためのタンス預金は結局いくらが理想?

タンス預金にはリスクがあるものの、災害時や緊急時に備えて一定額を手元に置くと安心です。災害やシステム障害などでATMから現金を引き出せない状況が発生する可能性があるためです。その際に手元に現金がないと、生活に支障がでるおそれがあります。

地震や台風などの自然災害が発生した際、電力や通信インフラが停止することでATMやクレジットカードの利用ができなくなる場合があります。このような緊急事態に備えて、少なくとも1週間分程度の生活費をタンス預金として確保しておくと良いでしょう。

例えば、1ヵ月あたりの生活費が30万円だとすると、1週間分で約7万5,000円になります。この金額を目安にタンス預金として現金を保管しておくと、いざというときに役立ちます。

タンス預金としてすべての資産を現金で保管するのは避けるべきですが、災害や緊急時に備えて少なくとも1週間分の生活費を手元に置くと安心です。緊急時の備えと資産の有効活用の両立を心がけましょう。

おわりに

現在、多額のタンス預金のある方にとって、新紙幣発行は資産管理を見直す機会となります。また、タンス預金のない方も、緊急時のための現金の必要性を考えてみましょう。

タンス預金には緊急時の備えという利点がある一方で、盗難リスクや資産価値の目減りなどの問題もあります。適切な量の現金を手元に置きつつ、残りは銀行預金や投資信託などで運用するバランスの取れた資産管理が望ましいでしょう。

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