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「介護離職で貯金ゼロ」人生の“どん底”から脱出したい…ワタシが「資産形成」をはじめた理由

「介護離職で貯金ゼロ」人生の“どん底”から脱出したい…ワタシが「資産形成」をはじめた理由

相談者の悩みや目標に寄り添い、老後まで見据えたマネープランを立ててくれる「ファイナンシャルプランナー(FP)」。そんなFP自身は、どのような資産形成に取り組んでいるのでしょうか。株式会社FAMOREの山原美起子さんが、自身の経験を交えながら、資産形成をはじめたきっかけとおすすめの運用手法を紹介します。

「ロスジェネ世代」ど真ん中…“とある理由”で、20代で「貯金ゼロ」に

「ロスジェネ世代」ど真ん中…“とある理由”で、20代で「貯金ゼロ」に

「正規雇用のチャンスが少なく、非正規雇用で働く人が多い」
「経済状況の不安から、結婚や子どもを持つことを諦める人が多い」

これは、バブル経済崩壊後の1993年~2004年頃に就職活動を余儀なくされた「ロスジェネ世代(就職氷河期世代)」の特徴です。

私はまさにこの「ロスジェネ世代」の申し子のような人生を送ってきました。

「せっかく新卒で正規雇用された会社を、20代のうちに介護離職して貯金ゼロに。働き盛りの30代を低収入の非正規雇用として働き、現在はおひとりさまです」

セミナーなどで私がこのように自己紹介すると、(お気の毒に…)という顔をされてしまうのですが、なにが幸いするかわからないのが人生です。

やってはいけない「介護離職」…家賃収入が命綱になった

私の父の座右の銘は、「ケセラセラ」。私が小さいときから常々「お金は元気なうちに使わないと意味がないんやで」と言い、老後のために蓄えようという考えは持ちあわせていないようでした。

父の影響か、私もお金はどんどん経験に変える主義。せっかく苦労して新卒で正社員になったのに、お給料は趣味の観劇や習い事、海外旅行などに使い、計画的な貯金は行っていませんでした。

そんな私の生活が大きく変化するきっかけになったのは、26歳のときです。父の健康状態が悪化し、介護が必要になったのです。

若かったこともあり「介護離職」をする決断をした私ですが、今なら声を大にして言えます。

簡単に介護離職をしてはいけません」。

本業での収入が途絶えると、わずかな貯金はすぐになくなりました。

命綱になったのは、親族の勧めで始めていた投資用マンションの家賃収入です。毎月ローンの返済をすると手元に残るお金は生活費ギリギリでしたが、もしこの家賃収入がなかったらと考えるとゾッとします。

「正規」と「非正規」の壁は厚い…仲間と開く“ライフステージの差”

「正規」と「非正規」の壁は厚い…仲間と開く“ライフステージの差”

生活が少し落ち着いてからは、派遣社員として働き始めました。まだまだ正規雇用の壁は高かったものの、人件費削減を目指す企業にとって「非正規雇用」の需要は山ほどあります。派遣の事務仕事も、あっさり決まりました。

しかし、あくまで非正規雇用です。当然、ボーナスや退職金、企業年金などの福利厚生はなく、キャリアアップも期待できない冷遇ぶり。それでも、上場企業の綺麗なオフィスで勤務できることや、自由に使える時間やお金ができた喜びのほうが勝り、この選択が老後の年金にまで影響するなど予想だにしていませんでした。

やがて、正社員の仕事仲間たちは産休、育休、栄転と、続々と職場から抜け始めました。

「マイホームを買ったから、遊びに来てね」などと誘われるようになります。ここでようやく、自分だけライフステージが一向に変わらないことに焦りを感じるようになりました。

「結婚」という選択肢がなかったわけではありませんが、家庭の事情を考えると積極的にはなれませんでした。

「私だってあと数年早く生まれていたら…」「介護離職なんてしなければ…」

いつまでも社会や環境のせいにしている自分にもうんざりで、「自分の未来は自分で切り開いていかなければダメだ!」という気持ちが次第に強くなっていきました。

当時はなんとなく考えないようにしていましたが、いわゆる“勝ち組のキラキラ生活”を目の当たりにした刺激が、資産形成に取り組む決意を固めるターニングポイントだったかもしれません。

貯金だけでは遅すぎる…「自己投資」で収入アップに成功

貯金だけでは遅すぎる…「自己投資」で収入アップに成功

資産形成を始めるにあたって、私がまず取り組んだのは「先取り貯金」です。まずは「年間100万円」貯めることを目標に、月額8万4,000円を貯金することにしました。

先取り貯金のポイントは、給料日と自動積立日を同日にすること。“最初から給料はこれだけしかなかった”と思い込む作戦です。

通帳の数字が増えていくワクワクはあったものの、このペースだと1,000万円貯めるのに10年かかります。

「これでは遅すぎる」とは思いましたが、だからといって投資に回すほどの余剰資金はまだありません。

やはり収入を増やすしかない、と考えた私が次に取りかかったのは「自己投資」でした。

人的資産の価値を高めることは大切な投資の1つ

スキマ時間を使って、簿記やMOS、ビジネス会計、秘書など、履歴書に書けそうな事務系の資格を取得。そのなかにFP資格もあり、晴れてAFP認定者となりました。

その結果、39歳で正社員として転職することができ、念願の収入アップに成功しました。時間はかかりましたが、「人的資産の価値を高めることは大切な投資の1つ」というFPのテキストにあった言葉は正しかったと、身をもって証明できたと感じます。転職後も勉強を続け、現在はCFP(※AFPの上位資格)となりました。

FPになってからの資産形成は「iDeco」と「NISA」をフル活用

FPとして転職してからは、税制優遇のある「iDeco」と「NISA」をフル活用して、投資信託を中心に投資を始めました。

2024年1月から制度内容が大幅に拡充された新NISAですが、つみたて投資枠で私が買った投資商品をひとつ挙げるとすれば「オルカン※」です。

※オルカンとは…オール・カントリー(全世界株式)の略称で、日本を含む全世界の株式等を主要投資対象としている商品です。このファンドに投資することによって、実質的に全世界の株式等に分散投資できるというメリットがあります。

月10万円(年間120万円)を投資し、12月現在の評価額は1,315,268円、損益率9.6%となっています。資産形成の“お金を増やすフェーズ”に、投資は必要不可欠だと言わざるを得ません。

しかし、それぞれの制度はセミナー講師として解説するほど熟知していたものの、投資先の選定やリバランスの判断などには自信が持てずにいました。

そこで私が利用したのが、「ロボアドバイザー」のサービスです。手数料は運用資産額の最大1.10%とやや高めでしたが、AIを活用した投資アドバイスはとても参考になりました。

運用成績も良好で、同じように月2万円を銀行で積立貯金していた場合と比較して、7年間で約140万円の差が出ています。

当然、アップダウンがあるものですから無理はせず、「長期・積立・分散」という投資の基本ルールを守って、大事に資産を育てていこうと思います。

資産形成は「思い立ったが吉日」

資産形成は「思い立ったが吉日」

私が介護離職したときに命綱になった「家賃収入」は、入居者さえいれば一定の金額が毎月手元に入るとあって、「不労所得」と呼ばれます。「不労所得で生活していた」というと、羨望の眼差しを向ける人もいれば、「働かない怠け者」とみなされ冷たい視線を送る人もいます。

しかし、一生健康で働き続けられる保障は誰にもありません。お金の不安はすべてのストレスにつながります。万が一なにかの理由があって働けなくなったとき、不労所得によってストレスが軽減されるだけで、生活を立て直す気力を失わずに済むことを知っておいてください。

そもそも、私の家賃収入は羨望されるほどの額ではありませんでした。なんとか家計をやりくりしながら、重くのしかかる健康保険料や国民年金保険料、税金について必死に調べ、さまざまな救済措置で助けていただきました。

お金のない人こそ、お金やお金にまつわる制度の知識が必要です。窮地に陥ったのは自業自得なところもあって自分の計画性のなさを反省しました。ただ、20代のうちに社会保険や税金に詳しくなったこと、就労以外の収入源の必要性を痛感できたことはラッキーだったと、今振り返るとそう思います。

また、私の資産形成はかなり遅れたスタートで、決して自慢できるようなものではないのですが、思い立ったが吉日です。

何歳から始めても大丈夫です。自分の可能性を諦めないことに意味があると思います。数々の失敗も、その経験の先に今があるので「人間万事塞翁が馬」だと受け止めています。

加えて、FPとしてご相談を受ける側になって感じるのは、私のような「おひとりさま」の場合、パートナーや子どものライフイベントを考える必要がないことから「老後資金」に気持ちが集中しがちであるということです。

たしかに、1人で生きる覚悟をした者にとって「老後資金」は避けては通れない大きな課題でしょう。しかし、老後不安が先行して必要以上のお金を確保しようと生活に制約をつけすぎると、人生の充実感や豊かさを享受することが難しくなってしまいます。

「お金は元気なうちに使うもの」という父の言葉を思い出します。

今を楽しむために使うお金や時間を大切にすることと、将来のために計画的に資産形成を行うことは同時進行が可能で矛盾しません。

今、お金に漠然とした不安がある人こそ、まずは一歩を踏み出してみてください。そして、この記事を読んで、少しでも前向きな気持ちで「私も資産形成をはじめてみようかな」と思っていただけたら嬉しいです。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

株式会社クレディセゾン提供(運営会社セゾンファンデックス)
山原 美起子

執筆者

株式会社FAMORE ファイナンシャル・プランナー(CFP/1級ファイナンシャル・プランニング技能士)

山原 美起子

介護離職をきっかけに、自分をとりまく環境の変化によって一瞬で収入やキャリアを失う社会に不安を覚えお金の勉強を始める。FP資格を取得後、学んだ知識と経験を役立てたいとファイナンシャル・プランナーへ転向。 現在は独立系FP事務所の役員秘書を務めながら、実体験を踏まえた各種セミナーで「環境に左右されず自立を目指す女性のサポート」に注力している。学生向けの金融教育インストラクターや大学での資格取得講座講師としても活躍中。【保有資格】ファイナンシャル・プランナー(CFP/1級ファイナンシャル・プランニング技能士)、SC相続手続きカウンセラー、(一社)相続診断協会 相続診断士、秘書技能検定1級

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