タイムシェアが気になっているものの、高額な費用から契約をためらっている方は多いのではないでしょうか。タイムシェアとは、別荘などの物件を1週間単位で購入することです。例えば1口1週間の物件を購入すれば、1年のうちの1週間はその物件を所有できます。
ひとりで別荘を購入するとなると多額の費用を要しますが、タイムシェアであれば比較的低コストで購入が可能です。しかし、タイムシェアにはいくつか気をつけるべきデメリットがあり、きちんと理解しておかなければ契約後に後悔することになります。
本記事では、タイムシェアで後悔するパターンと、知っておくべきデメリットを解説します。タイムシェアの購入が向いている方の特徴についても解説するため、これからタイムシェアを購入しようか迷っている方の参考になるでしょう。
(本記事は2024年8月9日時点の情報です)
タイムシェアで後悔するパターン4つ
タイムシェアは低コストで別荘などの物件を保有できる魅力的なサービスです。しかし、購入後に後悔する方も一定数存在します。ここでは、タイムシェアで後悔するパターンを4つ紹介します。
熟慮することなく契約を締結してしまった
タイムシェアの説明会や勧誘はいたるところで実施されており、その場でタイムシェアのプレゼンテーションを聞くことになります。その際に、タイムシェアの魅力に引き込まれ熟慮せずにその場で購入してしまう方も多いです。
しかし、実際の利用頻度や維持費などを冷静になってから考えてみると、自分のライフスタイルや予算に合っていないことに気づく場合があります。
また、タイムシェアの高額な初期費用や維持管理費について、数十年と継続して支払い続けられるか不安に感じる方も多く存在します。
契約した物件へ行く機会が少ない
タイムシェアを購入したものの、いざ利用しようとしても利用期間中に行く機会がほとんどない方も後悔するパターンのひとつです。
例えば、人気のタイムシェア地であるハワイに行く場合、航空券は片道で10万円以上もかかることが一般的であり、所要時間も7~9時間と長時間の旅になります。
ハワイだけでなくニューヨークやラスベガスなど他の人気地も同様に遠く、まとまった休暇を取りにくいことから、タイムシェアを上手く使いこなせない方が多いようです。
使用頻度が低いにも関わらず、年間の管理費やその他の維持費はかかるため、経済的な負担だけが大きくなってしまいます。
自分に合わない物件・プランを購入してしまう
購入したタイムシェアが自分に合った物件タイプではなかったため、購入後に後悔してしまう方もいます。
タイムシェアにはさまざまなプランが用意されており、建物のタイプや間取り、シーズン、内装、立地などのオプションから選択します。しかし、これが自分の希望と合致していない場合は物件を最大限に利用することができません。
また、物件は予約制であり、人気のリゾート地などであれば希望する時期に空きがないことも多いです。加えて選択した物件が同伴する人数に対応していない場合、希望する目的地への旅行でさえも利用できない事態に陥ることがあります。
例えば、大人数でハワイを訪れる計画を立てていても、適切なサイズの物件が確保できなければタイムシェアを利用できません。
維持管理費の負担が大きい
タイムシェアの購入後、維持管理費の負担が予想以上に大きいことに気づいて後悔する人もいます。通常、タイムシェアの契約は長期間にわたるため、その間の維持管理費などの総額は大きくなります。
さらに支払いは現地通貨で行われることが一般的で、為替変動の影響を受けやすいです。とくに米ドルなどの場合、近年の円安傾向により実質的な支払い額が増加傾向にあります。
購入当初より維持管理費が高騰してしまい、管理コストが家計を圧迫してしまっている方も少なくありません。
なお、公式ページには維持管理費や初期費用などの具体的な金額が公表されていません。そのため、実際に契約を検討する際にはこれらの費用を自分できちんと確認しておきましょう。
後悔する前に知っておくべきタイムシェアのデメリット3つ
タイムシェアの購入で後悔しないためにも、事前にデメリットを理解しておくことが重要です。主なデメリットは以下のとおりです。
- 先約が入り、予約できない可能性がある
- 旅行の選択肢が限られる
- 為替変動により維持費が高くなる可能性がある
それぞれ順番にみていきましょう。
先約が入り、予約できない可能性がある
タイムシェアには主に「固定」と「フロート」の2種類があります。固定の場合は利用できる日程がすでに決まっており、一方のフロートでは自分の休暇に合わせて利用する日を予約して決めます。
そのため、フロートタイプで契約している場合は先約がいると予約できない可能性があるのです。とくに年末年始や夏休み、ゴールデンウィークなどのピークシーズンには予約が集中しやすく、予約できなかったケースも多くみられます。
予約済みのハワイ行き航空券があるにも関わらず、希望の物件が満室であるために他の宿泊施設を泣く泣く利用することになったという話しも珍しくありません。
タイムシェアを有効に使いこなすのであれば、予定日を前から確保しておき、早めに予約手続きを行う必要があるでしょう。
旅行の選択肢が限られる
タイムシェアはさまざまなリゾート地で利用できるものの、契約後は「そこを利用しなければならない」と考えてしまうため、旅行の選択肢が限られてしまうデメリットがあります。
タイムシェアを利用できる主な観光地は以下のとおりです。
- ハワイ
- ラスベガス
- カールスバッド(カリフォルニア州)
- マンハッタン(ニューヨーク州)
- ワシントンD.C
- オーランド(フロリダ州)
- トスカーナ州(イタリア)
- ロイヤルディーサイド(スコットランド) など
欧米を中心にさまざまな拠点を利用できるものの、対応していない国のほうが多いのが現状です。世界のさまざまな国を訪れたいという人には不向きなサービスと言えるでしょう。
為替変動により維持費が高くなる可能性がある
前述でも解説したとおり、タイムシェアにかかる費用は現地通貨での支払いが一般的で、為替変動による影響を受けやすいです。
実際にドル円は2022年3月11日の117.32円から上昇傾向にあり、2024年7月4日には161.37円と1.4倍近く上昇。また、ユーロ円も2019年8月2日に118.62円だったのが2024年7月4日には174.20円と、1.6倍となっています。
例えば年間の維持管理費が500ドルとした場合、1ドル117.32円の時は年間約58,660円です。しかし、為替相場が円安に傾き、1ドル161.37円になった場合では約80,685円まで跳ね上がってしまいます。
このように、円安局面になると年間の維持管理費が大幅に増加し、経済的な負担が大きくなります。その反対に、円高に傾いた場合は維持管理費の負担軽減が期待できるでしょう。
後悔しないために知っておきたい!タイムシェア利用のメリット
タイムシェアは維持費用や使い勝手等の面からデメリットが目立つものの、メリットもいくつかあります。
- 旅費を都度支払う必要がない
- 交換利用によりさまざまな施設を利用できる
メリットを押さえたうえで、利用するか否かを判断するとよいでしょう。
旅費を都度支払う必要がない
通常の旅行では宿泊費をその都度支払う必要がありますが、タイムシェアを利用する場合は毎年支払う維持管理費のみで利用できます。これにより、計画的にタイムシェアを使用することで、通常の旅行に比べて宿泊費を抑えることが可能です。
また、利用頻度が多ければ多いほど一回あたりの宿泊費を低減できるため、経済的にも有利になります。
例えば、4人家族の方が500万円の物件を購入したとしましょう。年間7日間利用でき、毎年これを最大限利用し、20年間利用した場合の一回あたりの金額は35,716円です。家族全員で割るとひとり約8,929円となります。
これに対し、同様のリゾートホテルに泊まると、一泊につき数万~数十万円はかかるため、長期間にわたって利用する計画があれば、タイムシェアは経済的にみても合理的な選択となるでしょう。
交換利用によりさまざまな施設を利用できる
タイムシェアを契約していると旅行先の選択肢が限られがちですが、交換利用制度を活用すればその問題を解消できる場合があります。
この制度を利用することで、自分が所有するリゾートの使用権を他の所有者と交換し、異なる立地のリゾートを楽しめます。
例えば、自分がハワイのタイムシェアを持っており、相手がラスベガスの物件を持っている場合、交換が成立すればラスベガスの施設を利用できます。このように、タイムシェアの交換利用は、他の場所での旅行を希望するタイムシェア所有者にとって魅力的な選択肢となります。
タイムシェアの契約を締結して後悔している人が取るべき対策
すでにタイムシェアの契約を締結して後悔している方は、以下2つの対策を取りましょう。
- 解約手続きを進める
- 消費生活センターに相談する
ひとつずつ解説します。
解約手続きを進める
タイムシェアの契約に後悔している方は、早急に解約手続きを進めることが重要です。タイムシェアの契約はクーリングオフ制度の対象であり、期間内であれば追加の費用を負担することなく解約できます。
ただし、クーリングオフの適用期間は購入した州や国によって異なるため、詳細については契約書の確認が必要です。例えば、ハワイ州ではクーリングオフ期間が7日間と定められています。
クーリングオフ期間を過ぎた後に解約を希望する場合は、解約費用が発生する可能性があります。しかし、その費用を負担してでも解約した方が長期的にみて金銭的な損失を抑えられる可能性は高いです。
消費生活センターに相談する
タイムシェア契約に関するトラブルや不安がある場合、消費生活センターに相談することも有効な手段です。消費生活センターには、海外サービス購入時のトラブルに関する多くの相談が寄せられており、タイムシェアに関する相談にも対応してくれます。
実際に消費生活センターでは、タイムシェアについて慎重に契約するよう呼びかけています。
出典:独立行政法人 国民生活センター 海外リゾート会員権「タイムシェア」契約は慎重に
また、クーリングオフ期間が過ぎていた場合でも、事業者との交渉をサポートしてくれることがあります。具体的なサポート例としては以下のようなものがあります。
- 契約内容の詳細な確認と説明:消費生活センターの専門家が、契約書の内容を精査し、消費者にとって不利な条項がないか確認します。
- 事業者との交渉代行:センターの相談員が消費者に代わって事業者と連絡を取り、解約や返金の可能性について交渉します。
- 法的アドバイスの提供:必要に応じて、弁護士などの法律の専門家を紹介し、法的な観点からのアドバイスを受けられるようサポートします。
- 調停の場の設定:消費者と事業者の間で直接の話し合いが難しい場合、センターが中立的な立場で調停の場を設けることがあります。
- 類似事例の情報提供:過去に同様の問題で解決に至った事例があれば、その情報を提供し、解決の参考にしてもらいます。
これらのサポートにより、クーリングオフ期間後でも、契約の見直しや解約、条件の変更などが可能になるケースがあります。ただし、すべてのケースで望む結果が得られるとは限らないため、まずは早めに相談することが重要です。実際に行く際は契約書や関連する書類を用意し、具体的な事例を明確に伝えるようにしましょう。
参考元:独立行政法人 国民生活センター 海外リゾート会員権「タイムシェア」契約は慎重に
タイムシェアを契約しても後悔しない人の特徴
タイムシェアは契約後に後悔する人が一定数存在する一方で、満足に利用している方がいることも事実です。ここからは、タイムシェア契約をしても後悔しない人の特徴についてみていきます。
- 対象の立地に拠点を持ちたいと考えている
- 休暇を柔軟に取れる
- 金銭的な余裕がある人
順番に解説します。
対象の立地に拠点を持ちたいと考えている
タイムシェアの対象となっている場所に拠点を持ちたいと考えている方であれば、購入後に後悔する可能性は低いでしょう。特定のリゾート地や都市へ頻繁に訪れたい場合、タイムシェアは理想的な選択肢となります。
例えば、毎年決められた期間にハワイを訪れることが多い方が現地のタイムシェア物件を購入することで、毎回の宿泊費を抑えながら自分のセカンドホームのように利用できます。
タイムシェアの物件は、長期滞在に便利なアメニティが充実していることが多く、キッチンや洗濯機などの設備が完備されています。これにより、1週間といったまとまった期間を快適に過ごせるようになるでしょう。
休暇を柔軟に取れる
タイムシェアは休暇を柔軟に取れる方に向いています。物件によっては年末年始やゴールデンウィークといった繁忙期での予約が困難になりやすいため、企業経営者や個人事業主など、自由に休暇を取れる方にとくに適しています。
実際、一部の物件では1年前からの予約が可能である一方で、2、3ヶ月前からでないと予約ができない物件もあります。休暇を柔軟に取れる人であれば利用する機会を増やしやすく、「契約したけど結局使わなかった」という事態を避けやすいでしょう。
金銭的な余裕がある人
タイムシェアで後悔する方の大半は経済的な面での後悔です。しかし、そもそも金銭的に余裕がある方は、タイムシェアの利用にかかるコストに対してストレスが小さくなります。
タイムシェアは長期間のローン支払いや高額な初期費用、維持管理費など、ときに数百万円~数千万円もの費用を一度に負担しなければなりません。他にも、利用するためには目的地への交通費や食費などの追加費用も考慮する必要があり、全体的な負担はさらに大きくなります。
しかし、経済的に余裕のある方であれば、これらのコストを比較的容易に負担できるため、タイムシェアを後悔せずに利用することが可能です。
FPが見た「タイムシェアで後悔するかどうか」の結論!
タイムシェアは、海外の物件を1週間単位で購入できるサービスです。しかし、その魅力の裏には慎重に検討すべき要素が隠れています。
多くの場合、タイムシェアの契約は、リゾート地や観光地で開催される説明会や勧誘イベントで行われます。華やかなプレゼンテーションや、限定オファーなどの誘引に、その場の雰囲気に流されて即決してしまう方が少なくありません。
ところが、契約後に冷静になって考えると、以下のような問題に直面することがあります。
- 予想以上に高額な維持管理費
- 利用したい時期に予約が取れない
- 長期的な財務負担の重さ
- 旅行の柔軟性が失われる
これらの理由から、タイムシェア契約は十分な検討期間を設けることが極めて重要です。以下の点を慎重に評価しましょう。
- 自身の旅行スタイルとタイムシェアの適合性
- 長期的な財務計画との整合性
- 代替案(通常のホテル予約など)とのコスト比較
- 契約内容、特に解約条件の詳細な理解
十分な検討の結果、タイムシェアが自身のライフスタイルに合致し、経済的にも有利だと判断できれば、契約を検討しても良いでしょう。しかし、少しでも疑問や不安が残る場合は、契約を見送ることが賢明です。タイムシェアは長期的な投資です。衝動的な決断は避け、冷静な判断を心がけましょう。