将来を見据えて、少しでも早めに資産形成をしておきたいところですが、「資産形成は、どんなふうにすればいいの?」とイメージができていない人も多いのでは。
そこで今回は、実際に資産形成を進めている20代~40代の3人にインタビュー。どのように考えて、どのように行っているのか。初心者から上級者まで、リアルなポートフォリオとともにお伝えします。
就職の翌年から資産形成スタート! 20代S.I.さんの場合
S.I.さんのプロフィール
- 年齢:27歳
- 性別:男性
- 家族構成:一人暮らし
- 年収:350万円
- 資産形成歴:5年
- 居住地:福岡県
- 現在の金融資産総額:約300万円

Q.資産形成のきっかけや目的は?
就職して2年目に、予想以上にお金が貯まっていることに気がつきました。「やればできるかも」と年間100万円の預貯金を目指して貯蓄を開始。投資信託にも興味が出てきましたが、しばらく踏ん切りがつかずにいました。そんななか、2年前に銀行の窓口で「今年がNISAが切り替わる前の最後の年です。来年から始まる新NISAの枠とも併用でき、今年の投資分は20年の非課税枠(つみたてNISAの場合)を利用できます。せっかくならいかがですか」と提案が。これを機に、より資産を増やすためにトライしてみようと思い、NISAで投資信託の積み立てをスタートしました。
Q.ポートフォリオの変遷を教えてください!
社会人になって2年目で80万円のお金が貯まり、「年間100万円を貯めよう」と目標を立てました。引っ越しなどで預貯金が減るときもありつつ、2年前からはNISAで月3万円の投資信託の積み立てをスタート。現在も継続していて、資産が順調に増えています。

Q.資産形成をはじめて良かったことは?
預貯金だけのときはなかなか増えませんでしたが、投資も取り入れることで資産が増えていくことを実感でき、資産形成へのモチベーションがアップしています。最初の銘柄を選ぶときは慎重に考えましたが、積み立てを始めてからは、一喜一憂はせずにじっくり続けるようにしています。
Q.資産形成の今後の目標は?
このまま積立投資や預貯金を続けて、余裕が出てきたらNISAでほかの投資も検討したいと思っています。毎月の支出を確認して、無駄な支出を減らすことで、投資に回せるお金をさらに増やしたいですね。何かあったときに選択肢を広げられるように、資産総額1,000万円を目指したいと思っています。
生活が安定した20代後半から資産形成スタート! 30代K.K.さんの場合
K.K.さんのプロフィール
- 年齢:32歳
- 性別:女性
- 家族構成:夫(31歳)と二人暮らし
- 個人年収:400万円
- 資産形成歴:10年
- 居住地:千葉県
- 現在の金融資産総額:約310万円

Q.資産形成のきっかけや目的は?
預貯金自体は、学生時代から少しずつ開始。社会人になって、勤務先や保険会社の案内で、iDeCoやNISAの情報を見聞きするようになり、資産形成に興味を持ちはじめました。20代後半になって、仕事と家計が安定してきてから、個人年金や投資信託にトライ。30歳で転職した際に、前職から出た退職金を元手にして新NISAもスタートしました。
Q.ポートフォリオの変遷を教えてください!
20代前半は転職を繰り返して、収入が安定せず、毎日のやりくりで精いっぱい。20代後半になり、仕事が安定してきたタイミングで将来のことが気になり始めました。そこでまずは、保険会社のすすめで、生命保険と個人年金に加入。29歳のときに会社でiDeCoの話を聞き、月1万円(預貯金3000円、投資信託7000円)で積み立てをスタートしています。30歳で転職し、前職から出た退職金を使って、32歳のときにNISA口座を開き、投資信託を購入しました。その後月2万円を積み立てています。

Q.資産形成をはじめて良かったことは?
資産形成を始める前は、目の前の生活にいっぱいいっぱいで不安がありましたが、預貯金や投資などに取り組むようになってからは、自分のライフプランに向き合えるようになりました。資産形成に対してストレスを感じないように、毎月積み立てを設定しています。資産のポートフォリオを時々チェックして、少しずつお金が増えていることが実感できるのもうれしいです。
Q.資産形成の今後の目標は?
これからも積立投資を続けていきたいと考えていますが、このままでは老後に必要な資金は足りないと気づきました。そのため、もう一度自分のライフプランをじっくり練り直し、資産形成の内訳を再検討したいです。深く調べずに勢いで始めてしまったこともあり、安定的な運用に偏っているのが、今となっては少し失敗だったかなと感じています。今後はもう少し積極的な運用を取り入れたいです。まずは生活費を見直して無駄な支出を減らし、投資に回すお金を増やしていき、40歳までに少なくても1,000万円には到達したいと思います。
早期がんをきっかけに資産形成に本腰を入れた 40代Y.T.さんの場合
Y.T.さんのプロフィール
- 年齢:49歳
- 性別:男性
- 家族構成:単身赴任中(妻、子2人)
- 個人年収:1600万円
- 資産形成歴:26年
- 居住地:東京都
- 現在の金融資産総額:約1憶1500万円

Q.資産形成のきっかけや目的は?
30代半ばで初めて人間ドッグを受け、早期がんが見つかったことが大きなきっかけです。それまで多少の資産形成はしていたものの、自分に万が一のことがあった際に家族にお金を残すことを真剣に考えるようになり、本腰を入れて「資産性のあるもの」へ意識を高めました。子どもが社会人になるまではしっかり学費を出し、夫婦二人の生活になったら、自由に使えるように資産を形成していきたいです。
Q.ポートフォリオの変遷を教えてください!
20代前半、就職したての頃は預貯金と保険のみで200万円ほどでしたが、個別株投資や社内の持ち株会もスタート。早期がんにかかった30代半ばからは、ロボアドバイザーや企業型DCなどで投資の割合もアップしました。
不動産の運用にも力を入れています。35歳の転勤を機に、借入先の許諾の下で持ち家を賃貸化しました。しばらく賃貸住宅に暮らし、40歳で家をもう1軒購入。さらに45歳で1軒目の住宅を売却し、その資金を元手にしたり、新たに借り入れをおこなったりして不動産投資も行っています。

Q.資産形成をはじめて良かったことは?
病気をしたこともあり、思い通りの人生というわけではありませんが、長期分散投資を始めたことで、心に余裕が生まれていると感じます。相場に波があり、持っている資産が一時的に減っても、長期で投資すれば配当金でカバーできることもありました。若いうちは投資で失敗もしましたが、さまざまな経験を経て、今の1億円以上という資産につながっています。
Q.資産形成の今後の目標は?
このまま長期分散投資を続けていくつもりです。あらかじめ投資先を分散しておくことで、こまめにメンテナンスする必要がない点も気に入っています。今後何か興味が出てきたら、自分で調べて納得いくものだけに投資をしていきたいです。子どもが社会人になるタイミングから、人生が終わるときに資産が0円になるような計画を立て、資産を増やしつつも、家族で楽しくお金を使っていきたいです。

マネー研究会からの一言
資産形成のターニングポイントは人それぞれ。資産のポートフォリオにも、3人の考え方や思い、目指したい暮らしが反映されていることを感じられたのではないでしょうか。自分自身の夢や目標に向かって資産をつくっていくことで、楽しみや安心感が高まるはずです。経験者のリアルな体験談やポートフォリオを参考にして、この機会に今後の資産形成の進め方を見つめ直してみませんか。
西山美紀
ファイナンシャルプランナー。お金や生き方等をテーマに、単に貯蓄額だけを増やすのではなく、楽しさも増やすお金の貯め方・使い方・増やし方を女性誌やWeb等で発信。著書に『お金の増やし方』(主婦の友社)等。
(取材・執筆=西山美紀 図版制作=藤田倫央 編集=ノオト)