預貯金以外の資産形成を始めてみたい!「でも、もし失敗したら?」と思うと、なかなか一歩を踏み出せない…。そんな人は意外に多いようです。
そこで、今回は資産形成初心者が陥りがちな「よくある失敗」例をもとに、ファイナンシャルプランナー西山美紀さんがそれらの失敗を事前に回避するコツを解説します。
【失敗あるある その1】すすめられた金融商品を、よく考えずに購入して失敗!

金融機関の窓口で「今は、この金融商品が人気ですよ」と言われて、商品の内容がよくわからないまま「人気ならいいかな」と思って、深く考えずに購入してしまったんです。
その後、自分が購入して少し経ってから、どんどん相場が下がってしまいました。どうやら、それまでは相場がよかった時期で人気だったよう。手数料も高いタイプだったらしく、ずっと元本割れのまま…どうしたらよかったのでしょうか?
商品について、内容を理解したうえで始めることが大切です。特に、値動きのある商品は、仕組みを理解しておくことが欠かせません。
値動きのある商品の代表例としては、個別株や投資信託などがあげられます。「個別株」は、経済状況や企業の業績などによって、日々株価が変わります。株主優待や配当金が出るものもありますが、株主優待や配当金はなくなったり、変更になったりすることもあり、その際に株価が大きく下がるケースもあります。
「投資信託」は、幅広い商品に手軽に分散投資ができますが、例えば株に投資するタイプは、株価が全体的に下がれば、投資信託の基準価額も下がり、資産が一時的に減ることになります。
それらの仕組みをしっかり理解したうえで始めましょう。相場が高い時期にまとめて買ってしまうことのないように、まずは少額から、積み立てなどでゆっくり試すこともおすすめです。
【失敗あるある その2】投資信託の積み立てをしていたが、相場の急落で売って損をした

投資信託の積み立てを月5,000円でスタート。順調に増えて喜んでいたのに、ある日突然、暴落してしまいました。
それまで含み益としてプラスになっていたのに、急にマイナスの画面になって真っ青。「投資はやっぱり向いていない」と、急いで全部売って、損を出してしまったんです。
でも少し経ってから相場が回復したと聞いて、「あのとき、焦って売らなければよかった」と思っています。
投資をする際は、短期間で増やそうとせず、長期でじっくり増やしていくことを基本にしましょう。特に、投資信託の積み立てをする場合は、長期で考えることが大切です。
相場が下がったときにドキッとしてしまうかもしれませんが、同じ金額で定期的に積み立てていくうえでのメリットもあります。
例えば、1万円で毎月同じ金融商品を買うとして、1口500円なら20口買うことができますよね。一方、相場が下がって1口400円になったときには、25口買えることになります。つまり、相場が下がったときには同じ金額で資産をたくさん買うことができるんです。
短期間で見ると、資産が減ったり、含み損が出たりすることもありますが、その時期も積み立てを続けていくのがコツです。「むしろ、安く買えてラッキー」と考えましょう。相場が回復したときに資産を増やすことにつながります。
投資信託の積み立てを始めたら、5年、10年と長い目で見て続けていくことが大切です。
【失敗あるある その3】株価の動きに、毎日ハラハラドキドキして疲れてしまう

「お金を増やすには、投資だ!」と考えて、思い切ってトライしました。でも「大きく減ったらどうしよう」と気になって、仕事中でも、つい株価の動きを見たくなってしまいます。
家でリラックスしているときも、ふと「今朝は株価の値下がりのニュースがあったけれど、大丈夫だろうか」と気になって不安になることも…。気持ちが疲れてしまうのですが、私に投資は向いていないのでしょうか。
投資を始めて、常にハラハラドキドキしてしまうのであれば、自分にあった投資をしていない可能性が高いと考えられます。
投資にはリスクがつきもので、投資先の商品や投資方法、金額によって、そのリスクの大きさは異なります。値動きが激しいタイプの場合や、投資先が絞られている場合、投資金額が大きい場合は、それだけリスクが大きくなります。
例えば、投資初心者の方が、投資先が分散された投資信託を毎月100円で積み立てるのであれば、あまりハラハラはしないはずです。でも、一つの株に、100万円をまとめてドンと投資したら、気になって仕方がないと思います。
ハラハラドキドキしている場合は、ぜひ、今の投資状況が自分にあっているかを確認してみましょう。
投資金額の目安としては、投資をした場合に「一時的に値段が半分くらい下がっても怖くならない」と思える金額が良いでしょう。仮に、「100万円投資をして一時的に50万円になるのは怖いけれど、1万円を投資して一時的に5000円になるならそのまま投資を続けれそう」と感じたら、1万円で投資をしてみると良いと思います。
投資先は一つだけに絞らずに分散させること、また、購入のタイミングも1回ではなく積み立てによって分散させることでリスクを抑えられます。
慣れてきたら、投資金額を少しずつ増やし、商品を見直したり、追加していったりするのが良いでしょう。
【失敗あるある その4】資産形成にお金を回しすぎて、今を楽しめなくなった

今後のお金が不安になって、少しでも投資をしようと、支出を切り詰めて投資資金をつくっています。
少しでもお金を増やそうと思うと、自分が使っているお金のほとんどがムダ遣いのような気がして、“今”を楽しむことができなくなってきました。投資によってお金は少しずつ増えていますが、あまり楽しい気分になれず、不安もなかなか消えません…。
お金が少しずつ増えているのに不安が消えないのであれば、マネープランをうまく立てられていない可能性があります。
マネープランとは、今後の自分のライフイベントを考えて、どれだけお金が必要になるかを調べ、それに対してお金を準備していく計画のことです。
例えば、いつかマイホームを購入したい場合。いつ頃、どんな物件がほしいのか、どのエリアに住みたいのか、それらを加味した物件価格の目安のほか、購入の際に用意すべき現金はどれくらいか、住宅ローンを組んだら月々の支出はどれだけ増えそうかといった目安を考えてみます。結婚や出産、転職などの場合も、その時期や必要なお金に加えて、その後の収支に変化がありそうかも考えてみましょう。
そうすれば、今からどのくらいのお金を、どんなペースで準備していけば良いのかが、具体的に見えてくるでしょう。
お金を貯めていくには、日々の生活費を確認して、無駄な支出がないかもチェックします。スマホ代や水道光熱費、保険料、習い事費、サブスク代など、まずは毎月一定額出ていく“固定費”で不要な支出がないかを確認し、少しでも減らすことができれば毎月そのお金が貯まります。
少しずつお金が準備できていることがわかれば、不安が減るはずです。また、現在と将来はつながっているので、今を楽しむことも、将来楽しく過ごしていくことにつながります。資産形成に力を入れすぎずに、自分にもご褒美をあげながら、少しずつお金の準備をしていけるといいですね。
【失敗あるある その5】SNSでの情報を鵜呑みにして、集中投資して大損

SNSで「この株は絶対にもうかる」という投稿を見かけて、「いいね」がたくさんついていたので、ボーナスが出たタイミングで、思い切って多額の投資をしました。
その後はしばらく増えていて喜んでいましたが、突然急落して大きな損が出てしまいました。当時のSNSでの投稿は消えていて、鵜呑みにしてしまったことを反省しています。
SNSはどんな人でも発信できて、内容は実に玉石混交です。投資初心者の方が正しい情報を見極めることは難しいので、注意が必要です。
個人が発信しているSNSは参考程度にとどめて、金融庁や金融機関のSNSなど、信頼のおける情報を必ずチェックしましょう。最近はそれらの公式サイトでわかりやすい発信がされているため、一度HPを見てみることをおすすめします。
また、一つの商品に多額で集中投資をすることは、失敗すると大きく損をするリスクが高くなります。リスクを抑えて安定的なリターンを目指すには、投資先の商品を分散させることが大切です。また、まとめて購入せず、購入時期を分散させることも心がけましょう。
投資信託なら、複数の投資先に分散され、積み立てで購入もできます。日本などの先進国や新興国などさまざまな国の株式や債券などにも手軽に投資できます。金(きん)やプラチナ、原油など、個人では投資しにくいものでも投資信託なら月100円や1,000円などの少額で始められます。まずは余裕資金で、少額で積み立てを始めるのも良いでしょう。

From マネー研究会
どんな人でも、初めて挑戦することには不安を感じるものです。よくわからないまま始めて失敗してしまうこともあるでしょう。少しでも失敗を避けられるよう、ぜひ今回のよくあるケースを胸に刻んでおきましょう。正しい情報を選び、理解し、納得したうえで資産形成をできるように少しずつ取り組んでいくことが大切です。
西山美紀
ファイナンシャルプランナー。お金や生き方等をテーマに、単に貯蓄額だけを増やすのではなく、楽しさも増やすお金の貯め方・使い方・増やし方を女性誌やWeb等で発信。著書に『お金の増やし方』(主婦の友社)等。
(監修・執筆=西山美紀 イラスト=YUKI YAMAGISHI 編集=ノオト)