「大きな手術を受けることになり大金を用意しなければならない」など、生活の中でお金が必要になる可能性は誰しもあります。事業を営んでいると、運転資金の工面が課題になるケースもあるでしょう。そんなときに頼れるのが、不動産担保ローンです。今回は、不動産担保ローンの基礎知識とおすすめの商品を紹介します。不動産担保ローンを検討中の方はもちろん、資金繰りで困っている方は、悩み解消の足がかりにしてみてください。
- 不動産担保ローンとは、不動産(土地・建物など)を担保に入れて組むローンです。
- 不動産を担保にするため、高額な融資を受けやすく、長期間借り入れられ、資金の使い道も比較的自由です。
- 万が一返済できなくなった場合、担保に入れた不動産を手放さなければなりません。
- 不動産担保ローンは、銀行やノンバンクなどで取り扱っています。それぞれに特徴があるので、ご自身の目的や要望に沿う不動産担保ローンを選びましょう。
不動産担保ローンとは?仕組みやメリットなどを確認
不動産担保ローンとは、土地・建物・マンションといった不動産を担保に設定することで、お金が借りられる仕組みのローンです。万が一借りたお金が返済できない場合、担保にしていた不動産を差し出す約束をすることになります。
不動産担保ローンを利用してお金を融資してもらうには、審査に通らなければなりません。収入や勤続年数といった信用力と、不動産の価値が審査基準となっています。
では、不動産担保ローンを組むことで生じるメリットやデメリット、金融機関ごとの特徴を見ていきましょう。
不動産担保ローンを組むメリット・デメリット
「不動産」という大きな資産を担保にするため、ほかのローンとは違うメリットを享受できる一方、把握しておきたいデメリットもあります。不動産担保ローンにおけるメリットとデメリットをそれぞれまとめました。
・メリット
不動産担保ローンのメリットとして、以下の4つが挙げられます。
- 金利が低い
- 高額な融資を受けやすい
- 返済期間が長く設定できるので毎月の返済負担が軽い
- 借りたお金をある程度自由に使える
ローン契約は、融資する側の金融機関にとって、貸したお金を返してもらえないリスクを背負うことになります。しかし、不動産担保ローンは返済してもらえない事態が生じても不動産が担保に設定されているので、金融機関にとって低リスクなのです。
そのため不動産担保ローンは、銀行のカードローンや無担保のローンより低金利で高額な融資を受けやすい傾向があります。さらに、返済期間を長期に設定できるため、毎月の返済負担が軽くなります。
また、金融機関によっては不動産担保ローンで借りた資金の使い道を制限していません。教育費や医療費、老後の生活費など、ある程度自由に使えるのもメリットでしょう。事業用の資金として借りられる不動産担保ローンもあります。
・デメリット
不動産担保ローンのデメリットは、次の4つが考えられます。
- 不動産を手放すリスクがある
- 融資決定までに時間を要するケースがある
- 不動産の価値が低いと担保に設定できない可能性がある
- 手数料がかかる
ローンの返済ができなくなると、担保にした不動産を手放さなければなりません。金融機関は、貸したお金や利息を回収するために担保の不動産を競売にかけ、売却して資金を取り戻すのです。
そして、不動産担保ローンは債務者の信用力だけでなく、不動産の価値も審査の対象であることから、どうしても融資までに時間がかかってしまいます。審査から融資までの目安は、早くておよそ1週間、金融機関によっては1ヵ月かかることもあります。また、不動産に価値がないと判断されると、担保にできない可能性もあります。
加えて、手数料にも気をつけなければなりません。手数料の主な内訳は、事務手数料や保証料、収入印紙代や登記にかかる費用、不動産調査費用など。目安の金額は、借入金額の2%ほどです。
不動産担保ローンの特徴は金融機関によって異なる
不動産担保ローンを提供しているのは、銀行だけではありません。ろうきんやノンバンクでも扱っています。それぞれの特徴を解説します。
・銀行
全国規模のメガバンクや地方銀行、ネット銀行などが取り扱う不動産担保ローンは、金利が低い傾向にあります。
ただし、銀行利用者の預金を融資しているため、審査が厳しくなりがちです。年齢制限が設けられていたり、担保に入れる不動産に「面積が〇〇平方メートル以上」といった条件がついたりと、審査のハードルが高いと感じる恐れがあります。
・ろうきん
労働金庫、通称「ろうきん」は、労働組合や生協の会員などで構成されている金融機関です。預金や融資など行っているサービスは銀行とほぼ同じですが、ろうきんごとに利用できる方が限られています。例えば、中央労働金庫であれば労働組合や生協の組合員、もしくは関東1都7県(東京都・埼玉県・神奈川県など)の在住者、または該当エリアに勤務している方が対象となっています。
ろうきんで提供している不動産担保ローンは、低金利が特徴です。組合員であればさらに良心的な金利で融資してもらえるケースがあります。ただし、事業性資金や負債整理といった使途では利用できない場合があるため、ご注意ください。
・ノンバンク
ノンバンクとは、融資を専門としている銀行以外の金融機関です。ノンバンクの不動産担保ローンは、銀行ほど審査が厳しくありません。審査から融資までの時間もあまりかからないでしょう。その反面、金利が高く設定されています。
ただし、銀行並みに審査を厳しくし、低金利で提供しているノンバンクもあります。一概に、どのノンバンクも「審査が緩く金利が高い」とは言えないことをご承知おきください。
不動産担保ローン選びに失敗しない3ステップ
不動産担保ローンは、金融機関によって特徴が異なることが分かりました。大切な不動産を担保にして融資を受けるため、商品選びの失敗は避けたいものです。しっかり吟味し、ご自身に合う不動産担保ローンを見つけるために、次の3つのステップを踏まえて選んでみてください。
「貸金業」の登録有無を確認する
不動産担保ローンを提供する金融機関の中には、悪質なローン会社が紛れています。そこで、まずは銀行以外の金融機関は「貸金業」の登録があるかどうかを確認しましょう。というのも、資金を融資する業務を行うには、貸金業法に基づいて財務局や都道府県に貸金業の登録をしなければなりません。登録がない場合、違法で資金融資をしていることになります。
貸金業の登録がされているかは、金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」で確認できます。
金利・融資スピード・実績数をチェックする
続いて、金利や融資されるまでにかかる時間、これまでの実績をチェックしましょう。金利や融資のスピードは金融機関によって違うので、比較検討してみてください。
そして、融資実績が多いと金融機関への信頼度が高くなります。不動産の評価額を算出する経験も積んでいることから、価値を適切に評価してもらいやすいでしょう。
目的や要望に合うか検討する
不動産担保ローンを組む目的や要望と、商品の特徴がマッチするかもポイントです。例えば「住宅ローンの審査に落ちてしまったので違うローンを探している」のであれば、審査が通りやすいノンバンクがおすすめです。「すぐに資金を調達したい」という場合は、審査から融資までが早い金融機関を選ぶと良いでしょう。
このように、ご自身の目的や要望を満たす不動産担保ローンを探してみてください。
【金融機関別】おすすめの不動産担保ローン
ここからは、おすすめの不動産担保ローンを紹介します。銀行、ろうきん、ノンバンクの商品を合わせて8つ厳選しました。なお、ここで紹介する情報は2023年3月時点のものです。
銀行の不動産担保ローンおすすめ3選
まずは、銀行の不動産担保ローンのおすすめを見ていきましょう。
・みずほ銀行 ホームエクイティローン「みずほプレジャーエイジ」
みずほ銀行が提供するホームエクイティローン「みずほプレジャーエイジ」は、ご自宅の一部を担保にするローンです。一部というのは、住宅の評価額から住宅ローン残高を差し引いて残った部分を指します。例えば、住宅の評価額が2,000万円で、ローン残高が800万円だとしましょう。2,000万円から800万円を引いた、1,200万円を担保として活用できます。
【主な特徴】
- マイホームの資産を活かしてローンを組める
- みずほ銀行のキャッシュカードやカードローン型カードがあればATMで借り入れ・返済が可能
- 店舗に行かなくても電話で相談できる
対象年齢 | 契約時:満20歳以上~満66歳未満 |
基準金利 | 変動金利:年2.975% |
借入限度額 | 100万円~1,000万円以内 ※年収の範囲内でご利用限度額決定 |
融資期間 | 1年ごとの自動更新 ※満70歳以上の更新なし |
資金使途 | 自由 ※事業性資金や金融商品購入資金は不可 |
返済方法 | 毎月定例返済(利用残高×1%) |
公式HP | https://www.mizuhobank.co.jp/retail/products/loan/home_equity/index.html |
・楽天銀行「楽天銀行不動産担保ローン」
「楽天銀行不動産担保ローン」は、複数の不動産を担保に入れられる商品です。さらに、住宅ローンが残っていても、購入時から6割以下であれば申し込めます。また、銀行ながら事前審査の結果を最短で翌営業日に回答してもらえ、早くて3週間で融資が受けられるスピード感も魅力です。
【主な特徴】
- 住宅ローンが残っていても申し込みできる
- 銀行事前審査の回答や融資がスピーディー
- 繰り上げ返済の手数料が無料
対象年齢 | ・借入時:満20歳以上~70歳未満 ・完済時:満80歳未満 |
基準金利 | 固定金利:年1.19%~年9.95% |
借入限度額 | 100万円以上~1億円未満 |
融資期間 | 1~25年 |
資金使途 | 自由 ※事業性資金や楽天銀行の貸付商品の借り換え資金は不可 |
返済方法 | 元利均等返済 |
公式HP | https://www.rakuten-bank.co.jp/loan/mortgage-collateral/ |
・住信SBIネット銀行「不動産担保ローン」
住信SBIネット銀行は、気軽に仮審査ができる特徴があります。WEBサイトから仮審査を申し込み、即日から3営業日前後でメールにて回答が届きます。資金の使い道にほとんど制限がないため、借り換えによって複数のローンの返済を一本化できる「おまとめ」を目的にすることも可能です。
【主な特徴】
- WEBサイトから仮審査が申し込めてメールで回答が届く
- 複数のローンを「おまとめ」として借り換えができる
- すでに不動産担保ローンを組んでいても追加で申し込める
対象年齢 | ・申込時:満20歳以上 ・完済時:満79歳以下 |
基準金利 | 変動金利:年2.95%~年8.9% |
借入限度額 | 年300万円以上~1億円以下 |
融資期間 | 1年以上~35年以内 |
資金使途 | 自由 ※事業性資金は不可 |
返済方法 | 元利均等返済 |
公式HP | https://www.netbk.co.jp/contents/lineup/loan/realestate/ |
ろうきんの不動産担保ローンおすすめ
続いて、ろうきんで取り扱っているおすすめの不動産担保ローンをチェックしていきましょう。
・中央労働金庫「有担保フリーローン(不動産担保型)」
中央労働金庫では、団体会員・生協会員のほかに、東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県・茨城県・栃木県・群馬県・山梨県在住者、または一般勤労者を対象とする商品を扱っています。固定金利や変動金利以外に、固定金利と変動金利が組み合わさった金利ミックスタイプも選択できます。
【主な特徴】
- 団体会員・生協会員・関東1都7県の在住者または一般勤労者が対象
- さまざまな金利タイプの中から選べる
- 金利の優遇を受けやすく適用金利が低く設定できる
対象年齢 | ・申込時:満18歳以上 ・融資時:満66歳未満 ・完済時:満76歳未満 |
基準金利 | ・変動金利:年2.475% ・固定金利特約型20年(当初引き下げ型):年3.500% ・全期間固定金利:年3.600% ※変動金利と固定金利を組み合わせると年0.05%引き下げ |
借入限度額 | 30万円以上~1億円以下 |
融資期間 | 35年以内 |
資金使途 | 生活におけるさまざまな資金 ※事業性資金、負債整理資金、賃貸用不動産取得資金、リフォーム資金、投機目的資金は不可 |
返済方法 | ・元利均等毎月返済 ・元利均等毎月・加算月(一時金・ボーナス)併用返済 |
公式HP | https://chuo.rokin.com/banking/loan/manual/ |
・北陸労働金庫「フリーローン(不動産担保)」
北陸労働金庫の商品は、労働組合・生協組合に加入している方と、富山県・石川県・福井県の北陸3県の在住者、または勤務している方が対象です。北陸労働金庫では、有担保のフリーローンで最大0.35%の金利引き下げを実施。組合員や北陸労働金庫に給与振り込みを指定している方などに適用されます。
【主な特徴】
- 労働組合員・生協組合員・北陸3県の在住者または勤務している方が対象
- 組合員のほかに北陸労働金庫を給与振込先に指定している方などは金利引き下げが適用される
- 耐久消費財の購入に加えレジャーにも使える
対象年齢 | 完済時:満76歳未満 ※勤続1年以上 |
基準金利 | ・変動金利:年4.025%~年4.375% ・固定金利特約型(特約期間5年):年3.350%~年3.700% |
利用限度額 | 100万円以上~5,000万円以内 |
融資期間 | 35年以内 |
資金使途 | 生活資金 |
返済方法 | ・毎月返済 ・毎月・ボーナス併用返済 |
公式HP | https://hokuriku.rokin.or.jp/loan/fudousan_free_loan.html |
3-3.ノンバンクの不動産担保ローンおすすめ3選
最後に、ノンバンクでおすすめしたい不動産担保ローンを3選紹介します。
・三井住友トラスト・ローン&ファイナンス「不動産担保ローン」
三井住友トラスト・ローン&ファイナンスでは、さまざまな不動産担保ローンを提供しています。例えば、個人・法人を問わずに幅広い用途で資金を使える「不動産活用ローン(フリーコース・ビジネスコース)」、売却する不動産を担保にして生活資金などに利用できる「不動産売却つなぎローン」などを展開していて、ご自身の都合に最適なローンを見つけやすくなっています。
【主な特徴】
- さまざまな種類の不動産担保ローンを提供している
- 不動産事業や民泊事業など事業に使える商品もある
- 三井住友銀行が100%出資しているので安心して利用しやすい
【不動産活用ローン(フリーコース・ビジネスコース)】
対象年齢 | 要相談 |
基準金利 | 変動金利:年2.99%~年6.40% |
利用限度額 | 300万円~10億円 |
融資期間 | 1年超~35年以内 |
資金使途 | ・個人:教育資金、リフォーム資金、納税資金 など ・個人事業主・法人:開業資金、運転資金、納税資金 など |
返済方法 | ・元利均等返済 ・元金均等返済 |
公式HP | https://www.smtlf.jp/realestateloan/lineup.html |
※ほかの商品の詳細は、公式HPからご確認ください。
・アサックス「不動産担保ローン」
不動産担保ローンを専門に扱い、融資実績が年間1,000件以上を誇る、アサックス。アサックスの不動産担保ローンは、資金使途の制限がありません。一人ひとりに専属の担当者がつくため、要望に柔軟に対応してもらえるだけでなく、最短3日というスピーディーな融資を実現しています。
【主な特徴】
- 豊富な融資実績を持つ不動産担保ローン専門会社
- 資金の使い道に制限がない
- 顧客一人ひとりに専属の担当者がついて対応してくれる
【個人向け不動産活用ローン】
対象年齢 | 年齢制限なし |
基準金利 | 年1.95%~年6.90% |
利用限度額 | 300万円~10億円 |
融資期間 | 30年以内 |
資金使途 | 自由 |
返済方法 | ・元金一括返済 ・元利均等返済 |
公式HP | https://www.asax.co.jp/ |
※事業者向けの不動産担保ローンなどについては、公式HPでご確認ください。
・セゾンファンデックス「事業者向け不動産担保ローン」
セゾンファンデックスでは、事業者向けに特化した不動産担保ローンを提供しています。銀行で融資実行が難しいケースでも対応できるので「赤字決算で銀行のローンが組めない」「すでに借り入れがあるけれど追加で融資してもらいたい」という事業者におすすめです。事業の運転資金にお悩みの方は、セゾンファンデックスへお気軽にご相談ください。
【主な特徴】
- 事業者向けに特化した不動産担保ローンを取り扱っている
- 銀行からの融資が難しい場合でも対応可能
- 審査結果を最短3営業日で回答している
対象年齢 | (個人事業主の場合) ・申込時:満20歳以上~70歳以下 ・完済時:85歳未満 |
基準金利 | ・変動金利:年2.75%~年4.55% ・固定金利:年4.5%~年9.9% |
借入限度額 | 100万円円~5億円 |
融資期間 | 5年~25年 |
資金使途 | 事業性資金 |
返済方法 | 元利均等返済 |
公式HP | セゾンファンデックスの不動産担保ローン |
おわりに
不動産担保ローンは、資金をある程度自由に使え、高額で長期にわたって融資してもらいやすいため、暮らしや事業の「困った」に応えてくれます。その一方、不動産を失うリスクを負わなければなりません。不動産担保ローンを組むには、メリットだけでなくデメリットにもしっかり目を向けることが大切です。今回紹介したおすすめの不動産担保ローンを参考に、ご自身の目的や要望に合う商品を探してみてください。