日々のキャッシュフローの改善や老後の資産作りのために不動産投資を検討している方も多いのではないでしょうか。しかし、不動産投資と一口に言っても、投資対象は複数あります。
そこで本記事では、不動産投資の代表格であるアパート投資のメリット・デメリットや始め方について詳しく解説します。本記事を読むことでアパート投資がご自身に適しているかどうかがわかり、具体的な投資計画を立てられるでしょう。
この記事を読んでわかること
- アパート投資とは、アパート一棟を購入して賃貸に出し、家賃収入を得る投資方法
- アパート投資で重要視されるのは利回り
- 築年数の経過によって入居率が下がる恐れがあるため、適切な維持管理が重要
- 投資の目的を明確にして、ご自身に合った投資方法を考える
アパート投資とは?仕組みや魅力を紹介
アパート投資とは、アパート一棟を購入して賃貸に出し、家賃収入を得る投資方法です。
中古アパートを購入して運用することもあれば、土地を購入して新築アパートを立てる方法もあります。一般的に土地を購入して新築を建てるよりも、中古アパートを購入したほうが費用を抑えられるほか、すぐに家賃収入を得られるメリットがあります。
アパート投資の魅力はリスクヘッジをしながら安定した家賃収入を得られることです。区分マンションのようにひとりからしか家賃収入を得られないモデルだと、入居者が退去した際に家賃収入を得られなくなりますが、アパート投資であれば複数の部屋を賃貸に出すため、ひとつの不動産だけでリスクヘッジが可能です。
また、店舗や事務所と違い住宅の需要は根強いため、エリア選定などを適切に行うことで、長期的に安定した家賃収入を得られます。投資用不動産の購入を検討している方は、まずは住宅用の不動産を検討するのがおすすめです。
アパート投資は利回りの意識が重要
アパート投資で重要視されるのは、投資した額に対してどれだけのリターンがあるかを表す「利回り」です。利回りには大きく分けて3つの種類があるため、それぞれの意味と計算方法を理解しましょう。
利回りの種類 | 想定利回り | 表面利回り | 実質利回り |
概要 | 満室を想定した利回り | 現状の利回り | 家賃収入から必要経費を差し引いた利回り |
計算方法 | 満室時の家賃収入(年間)÷物件価格 | 現状の家賃収入(年間)÷物件価格 | 現状の家賃収入(年間)-必要経費(税金や管理費など)÷物件価格 |
一般的に不動産会社が販売図面などに記載する利回りは表面利回りです。なお、新築アパートなどの場合はまだ入居者がいないため、想定利回りを記載しているケースがあります。まずは、記載されている利回りがどの利回りなのかを把握しましょう。
具体的なキャッシュフローを求める際は、実質利回りをもとに計算する必要があります。物件にかかる税金や管理費を把握しなければ計算できないため、不動産会社に問い合わせをしましょう。
利回りが高いほど得られるリターンは大きくなりますが、リスクとリターンは表裏一体の関係にある点に注意が必要です。築年数が経過しているアパートは利回りが低いと買手が付かないため、物件価格を下げて利回りを高くする必要があります。物件を購入する際は、利回りにとらわれ過ぎるのではなく、全体のバランスを踏まえて判断しましょう。
不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家(けんびや)」の調査によると、2023年1〜3月における全国の一棟アパートの平均利回りは8.14%で、東京を含む首都圏の平均利回りは7.66%です。
一棟アパート投資で得られる4つのメリット
一棟アパート投資で得られるメリットは以下の4つです。
- 節税効果がある
- 家賃収入がゼロになるリスクが分散化される
- 長期的な収益が期待できる
- 大規模改修や賃料アップなどの判断が自由にできる
それぞれについて解説します。
節税効果がある
土地を所有している方は、アパートを建てることで固定資産税や都市計画税の節税につながります。住宅用の建物を建てることで、住宅用地の特例を受けられるためです。固定資産税と都市計画税の本則の計算方法は以下のとおりです。
- 固定資産税(土地):課税標準額×税率1.4%
- 都市計画税(土地):課税標準額×税率0.3%
住宅用の建物を建てることで、以下の軽減が適用されます。
区分 | 固定資産税 | 都市計画税 | |
小規模住宅用地 | 住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分 | 価格×1/6 | 価格×1/3 |
一般住宅用地 | 小規模住宅用地以外の住宅用地 | 価格×1/3 | 価格×2/3 |
また、建物は毎年の価値の減少分を減価償却費として経費に計上できるため、利益を圧縮する効果があります。減価償却の期間は構造によって異なる点に注意しましょう。
構造 | 減価償却の期間(法定耐用年数) |
木造 | 22年 |
鉄骨造 | 19〜34年 (骨格材の肉厚によって異なる) |
鉄筋コンクリート・鉄骨鉄筋コンクリート造 | 47年 |
木造の場合、耐用年数が短い分、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べて毎年多くの金額を減価償却費として計上できます。
家賃収入がゼロになるリスクが分散化される
一棟アパートは複数の部屋を別の入居者に貸しているため、空室リスクが分散されます。賃貸住宅では必ず空室期間が発生しますが、アパートのように複数の部屋がある場合、すべての部屋が同時に退去する事態は避けられるでしょう。
区分マンション投資の場合、入居者が退去すると家賃収入がゼロになってしまいます。次の入居者が決まるまでの間は自己資金からローンを返済しなければならないため、自己資金が潤沢にないとローンの返済が滞る恐れがあります。
長期的な収益が期待できる
一棟アパート投資では長期的な収益が期待できます。エリアにもよりますが、住宅の需要は安定しており、適切なリフォームなどを行うことで将来的にも収益が見込めるためです。
ローンを完済した後は手元に残るお金が増えるため、年金の代わりにもなります。老後資金の不足が不安な方は、早めにアパート投資を始めることで、将来への不安を軽減できるでしょう。
また、アパート投資をするうえで入居者の属性も重要です。学生向けのアパートは4年に一度など、定期的に退去が発生しますが、ファミリー向けのアパートであれば比較的長い期間の入居が見込めます。
エリアの需要をリサーチし、どのような方をターゲットにするのかを考えましょう。
大規模改修や賃料アップなどの判断が自由にできる
一棟アパートは所有者が自由に管理できるため、大規模改修や賃料アップなどを柔軟に判断できます。一方、区分マンションは、ほかの所有者を含めた管理組合での判断となるため、外壁の修繕などは個人で行えません。管理組合としての資金が不足している場合、充実した修繕を行えず、マンションの価値が下がってしまう恐れもあります。
また、一棟マンションは規模が大きくなるため、大規模改修に多くの費用と時間がかかる点に注意が必要です。投資用不動産を購入する際は、どのような管理・運用を行いたいのかを踏まえて判断しましょう。
一棟アパート投資で起こり得る4つのデメリット
一棟アパート投資で起こり得るデメリットは以下の4つです。
- 流動性が低い
- 入居率低下の恐れがある
- ローンの借り入れが困難なケースがある
- 金利上昇の影響を受けやすい
それぞれについて解説します。
流動性が低い
不動産投資の多くは流動性が低い点に注意が必要です。株や債券のように証券市場で売買できる投資商品と違い、買主を探す時間がかかるためです。不動産は数千万円の取引価格になることが多く、買主も購入判断を慎重に行うため、成約までに時間がかかります。
一般的に不動産取引は売却を開始してから契約成立までに3ヵ月程度の時間がかかると考えましょう。さらに、引き渡しまでの期間を踏まえると半年程度かかる傾向にあります。
また、短期間で売却益を狙うのは難易度が高く、プロ向けの投資手法です。アパート投資を含めた不動産投資を行う場合は、長期投資を前提に考えましょう。
入居率低下の恐れがある
アパートの築年数が経過すると、入居率が低下する恐れがあります。入居率が低下すると家賃を下げざるを得ない状況になるため、収益も低下します。
また、競合物件との兼ね合いも重要なポイントです。近隣に新築アパートが増えると、入居希望者がそちらに奪われてしまう可能性があるため、家賃を下げるなどの対策を講じる必要があります。
入居率を低下させないためにも、適切にリフォームを行い、室内や設備を新しくしましょう。ターゲットに合ったリフォームを行うことで、築年数が経過しても入居率を維持しやすくなります。
アパート投資を行う際は、設備のリフォームや家賃の低下などを踏まえた計画を立てる必要があります。
ローンの借り入れが困難なケースがある
アパート投資は高額な投資となるため、ローンを組むのが一般的です。しかし、物件の築年数やご自身の年収などによっては希望額のローンを組めない可能性もあります。
近年はアパート投資に対する融資審査が厳しくなっているため、アパート価格満額のローンを組むのは難しいと考えましょう。ローンを組みやすくするためにも、自己資金を多く用意するなどの事前準備が大切です。
金利上昇の影響を受けやすい
アパート投資ではまとまった金額の融資を受けるため、金利上昇の影響を受ける恐れがあります。金利が上昇した結果、毎月の返済額が家賃収入を上回る可能性もあるでしょう。
そのような状態になると自己資金でローンを返済しなければなりません。ローンを組む際は、金利が上昇しても返済に支障が出ない範囲で借りる必要があります。金利は高くなりますが、固定金利でローンを組むのも方法のひとつです。
一棟アパート投資をはじめるための流れ
一棟アパート投資を始める流れは以下のとおりです。
- 目的に合わせて投資戦略を決める
- 不動産会社への相談やインターネットで情報収集をする
- 気になる物件の現地調査をする
- 事業計画・資金計画を立てる
- 契約・引き渡しを行う
それぞれについて解説します。
目的に合わせて投資戦略を決める
アパート投資を始める際は、まずご自身の目的に合わせた投資戦略を決めましょう。
キャッシュフローの改善や年金対策、インフレ対策などによって選ぶべき物件は異なります。例えば、キャッシュフローの改善であれば、すぐに家賃収入が得られて比較的高い利回りの中古アパート投資が適しています。
一方、年金対策であれば、将来的に安定した収益を得るために新築や築浅のアパートのほうが適しているでしょう。また、節税効果を狙うのであれば、法定耐用年数を経過した物件を購入することで短期間に多くの減価償却が可能です。
不動産会社への相談やインターネットで情報収集をする
戦略が決まったら、不動産会社へ相談する、インターネットで情報収集をするなど、投資に必要な情報を集めましょう。
希望のエリアや物件を絞り込めたら、そのエリアの家賃相場や競合物件の数、入居状況、メインターゲットなどを調べる必要があります。不動産ポータルサイトで入居者募集の広告をチェックすることで、そのアパートの空室率などを把握できます。
気になる物件の現地調査をする
気になる物件が見つかったら、現地調査を行いましょう。現地を実際に見てみることで、インターネットだけではわからない情報を確認できます。例えば、夜間の人通りや車・電車の音などです。
ほかにも近隣エリアで大規模な開発予定があるかなどを調べてみましょう。大規模な開発がある場合、将来的に地価が上昇する可能性もあります。
物件に空室があり内覧が可能な場合は、ぜひ見学してみましょう。実際に室内を見学することで入居者の気持ちになって考えられるほか、必要なリフォームなどもイメージできます。
現地の不動産会社から有力な情報を得られることも多いため、不動産会社にも足を運び情報を収集しましょう。ただし、セールストークに乗せられ、目的とは異なる物件を購入してしまわないよう注意が必要です。
事業計画・資金計画を立てる
購入したい物件が決まったら具体的な事業計画・資金計画を立てましょう。長期的に見てどのくらいの利益が得られるのか、資金繰りに問題はないかなどを確認する必要があります。
現在の稼働状況だけでなく、将来的な修繕や家賃の低下などを踏まえた資料を不動産会社に作成してもらうのがおすすめです。また、会社員の場合は定年までにローンを返済できるかなども考慮する必要があります。
契約・引き渡しを行う
物件購入の意思が固まったら、不動産会社の担当者へその旨を伝え購入申込書を記入しましょう。その後売主と契約日などの諸条件をまとめ、互いに合意した後、売買契約を締結します。
なお、ローンを組む場合は必ず契約書に融資特約が入っているかを確認しましょう。融資特約とは万が一融資が否認された際に、契約を白紙解除するための特約です。融資特約がない状態でローンの否認を受けると、違約扱いとなり違約金を支払わなければならない恐れがあります。
売買契約を締結し、無事にローンの承認が得られれば引き渡しへと進みます。
ローンを組むならセゾンの「不動産フリーローン」がおすすめ
資金計画を立てる際、「セゾンの不動産フリーローン」がおすすめです。セゾンの不動産フリーローンでは、お借入限度額は2,000万円以上10億円未満です。
返済方法は元金据置返済か元利均等返済(回数指定払い)から選べます。また、不動産投資だけでなく、有価証券投資などにも利用できるため、幅広い用途で借り入れできます。
アパート投資でよくある失敗の原因を知って成功を目指そう
アパート投資で成功するには、よくある失敗を事前に把握し、原因を取り除く必要があります。アパート投資でよくある失敗の例は以下のとおりです。
- 中身をよく調べず利回りばかりを気にする
- 土地勘がないエリアで周りの状況がわからないまま購入する
- 空き室が出た時に賃料変更や修繕などの対策をしない
- 費用を抑えるためアパートの管理をご自身で行う
- アパート経営についてよく学習していない
いずれも以下のような対策を行うことで解決できます。
- 購入前に入念な下調べを行う
- 信頼できる不動産会社を探す
- 余裕のある資金計画を立てる
これらの内容を踏まえて、アパート投資を始めましょう。
おわりに
アパート投資とは、アパート一棟を購入して賃貸に出し、家賃収入を得る投資方法です。アパート投資は区分マンション投資と違い、家賃収入がゼロになるリスクを分散できるのがメリットです。
また、大規模改修や賃料アップの判断をご自身で行えるため、自由度の高い管理・運用ができます。しかし、築年数が経過すると入居率が低下する可能性があるため、適宜必要なリフォームを行わなければなりません。
ご自身に合った物件・投資方法を考えるためにも、まずは投資の目的を明確にして入念な情報収集を行いましょう。