離婚が決まり家を売却したいけれど、住宅ローンが残っていても売れるのか不安に感じる方は多いでしょう。結論として、住宅ローンが残っていても家の売却は可能です。ただし、売却時に抵当権を抹消する必要があります。
本記事では、離婚時に住宅ローンを返済中の家を売却する方法と売却までの5つのステップを解説します。売却時に気をつけるべきポイントがわかれば、売却手続きをスムーズに進められ、離婚後のトラブルを避けられるでしょう。
この記事を読んでわかること
- オーバーローンの状態では通常の売却が難しい
- 通常の売却が難しい場合は、任意売却やリースバックという選択肢がある
- 家の売却は離婚後に行い、売却前に住宅ローンを組んでいる金融機関に必ず相談する
- 離婚協議書は公正証書にしておくことでトラブルを回避できる
離婚で家の売却を考えたら住宅ローンの残債を確認しよう
離婚により家に誰も住まなくなったとしても、住宅ローンの支払い義務はなくなりません。離婚後も家をそのままにしておけば、住宅ローンの返済は継続されます。しかし、住宅ローンの返済は経済的な負担が大きいため、離婚をしたら家の売却を検討する方が一定数います。
家の売却を考え始めた際は、住宅ローンの残債を確認しましょう。家を売却するには住宅ローンを完済する必要があり、家の売却額と残債の関係(アンダーローンかオーバーローン)によって、売却方法が変わるためです。
本章では、売却額と残債の関係を解説します。ご自身の状況に当てはめて考えてみましょう。
アンダーローンの場合
アンダーローンとは、住宅ローンの残債が家の売却価格を下回ることです。
アンダーローンの場合、売却した資金で住宅ローンを完済できるため、足りない差額を自己資金で返済したり、任意売却をしたりする必要はありません。
なお、住宅ローンを完済したあとに売却益が残った場合は、財産分与で分けることが可能です。
オーバーローンの場合
オーバーローンとは、住宅ローンの残債が家の売却価格を上回ることです。
オーバーローンは、家の売却額で住宅ローンを完済できない状態です。住宅ローンを完済できないと、家に設定されている抵当権を抹消できないため、家を売却できません。
オーバーローンの家を売却するには、売却額で足りない差額を自己資金で返済する必要があります。返済に充てるまとまった資金がない場合は、住宅ローンの残債が売却額と同額になるまでローンを返済し続けるのもひとつの方法です。
また、手持ち資金がない状態でオーバーローンの家をすぐに売却するには任意売却という方法があります。任意売却については次章で詳しく解説します。
【住宅ローンの残債状況別】離婚時に家を売却する方法
家の売却額と住宅ローンの残債の関係により、家の売却方法が変わることを解説しました。ご自身の状況に応じた売却方法がわかれば、離婚時の手続きをスムーズに進められます。
そこで本章では、アンダーローンとオーバーローン、それぞれに適した売却方法を解説します。
【アンダーローン】買い取りまたは仲介で家を売却する
アンダーローンの場合、売却時に抵当権を抹消できるため、通常の方法で売却できます。具体的には、仲介または買い取りで家を売却すると良いでしょう。
仲介と買い取りは、以下のような売却方法です。
- 仲介:不動産会社が売主と買主の間に入って、家を売買する
- 買い取り:不動産会社が買主となって、家を買い取る
仲介とは、不動産会社に依頼して買主を探してもらう売却方法です。仲介で売却する際の売却価格は、市場における相場価格をもとにして決めます。物件の条件がよければ高額での売却も期待できます。
ただし、不動産会社が買主を探すため、不動産会社に仲介手数料を支払わなければなりません。また、買主を見つけるまでに時間がかかる恐れがあるため、売却すると決めたら早めに行動する必要があります。
一方、買い取りとは、不動産会社に直接家を買い取ってもらう方法です。不動産会社が買主であるため、早く確実に売却できます。離婚の手続きを進めながら計画的に売却できるのもメリットです。直接契約であり、仲介手数料も必要ありません。
ただし、買い取りは売却金額が市場価格の7〜8割程度になるケースが多いです。そのため、住宅ローンの残債を上回る金額で売却できることを確認する必要があります。もし買い取り金額が住宅ローンの残債を下回る場合は、買い取りでの売却は困難です。
【オーバーローン】任意売却を利用して家を売却する
オーバーローンの場合、家の売却額で住宅ローンを完済できないため、売却額で足りない差額を手持ちの資金から支払わなければなりません。手元にまとまった資金がなければ、抵当権を抹消できないため家の売却は困難です。
しかし、手持ちの資金がなくても、任意売却を利用すればオーバーローンの家を売却できます。
任意売却とは、住宅ローンを組んでいる金融機関の承諾を得て、家を売却することです。通常の売買と同様に不動産会社が仲介して市場で売却するため、市場価格に近い金額で売却できます。また、売却時期を売主の希望で決められるため、競売のように強制的に退去させられることはありません。金融機関も早く融資を回収できるため、任意売却に協力的なケースが多いです。
ただし、残債と売却額の差額はローンとして残ります。住宅ローンの返済義務はなくならないため、売却後もローンを返済しなければなりません。毎月の返済額は金融期間と相談して離婚前より少なくしてもらえる可能性があります。
任意売却は、金融機関と交渉しなければならないため、専門的なノウハウとスキルが欠かせません。経験豊富な不動産会社に依頼するのが、任意売却を成功させるポイントです。
離婚に伴って家を売却するまでの5ステップ
離婚により家を売却するまでには、以下の5つのステップがあります。
【1】家の名義人を確認する
【2】住宅ローンの残債額を調べる
【3】家を査定してもらい売却額を決める
【4】住宅ローンの問題を解決する
【5】不動産会社に相談して買主を見つける
ここからは、ステップごとの詳しい内容を解説します。
【1】家の名義人を確認する
名義人とは家の所有者のことで、家を売却できるのは名義人だけです。夫婦のどちらかひとりが名義人の場合、名義人ではないもうひとりは家を売却できません。夫婦の共有名義の場合は、互いに同意して売却することになります。
家の名義人がわからない場合は、家の所在地を管轄する法務局で登記簿謄本を取得しましょう。
売買契約など売却の手続きは全て名義人が行わなければならないため、スムーズに売却を進めるためにも名義人の確認は大切です。
【2】住宅ローンの残債額を調べる
住宅ローンの名義人は家の名義人と同じとは限らないため、誰が借りているか確認する必要があります。
離婚が決まったら、必ず住宅ローンの残債額とローンの名義人を確認しましょう。
住宅ローンの残債を基準にして、売却金額を決めたり売却方法を検討したりする必要があります。残債を把握しておけば、不動産会社へ相談する際もスムーズです。
住宅ローンの残債は、ローンを組んでいる金融機関から定期的に送付される返済額のお知らせや、ローン残高証明書に記載されています。ネットバンキングに登録していればアプリから確認できる場合もあります。どちらもわからない場合は、ローンを組んでいる金融機関に問い合わせてみましょう。
【3】家を査定してもらい売却額を決める
査定は一社だけでなく、複数の不動産会社に依頼しましょう。不動産会社によって査定額が異なるためです。また、得意な地域や物件の種別、独自サービスなども異なるため、複数の会社に依頼して比較検討することが大切です。
正確な査定額を出してもらうためには、訪問査定がおすすめです。しかし、ご近所に知られたくない場合や、おおよその目安を知りたいだけの場合は、机上査定を依頼しましょう。評価額や周辺市場の動向などから、おおよその売却額を算出してもらえます。
しかし、実際の売却額と乖離する可能性があるため、実際に販売に出す際は訪問査定で価格を算出するのが一般的です。
【4】住宅ローンの問題を解決する
売却額が住宅ローンの残債を上回るアンダーローンの場合は、通常の方法で売却できます。
一方、売却額が住宅ローンの残債を下回るオーバーローンの場合は、金融機関や専門知識のある不動産会社に相談しなければなりません。金融機関が了承してくれれば任意売却ができます。
売却額と住宅ローンの残債の関係により売却方法が異なるため、売却査定額がわかった後はローンの残債と比較して、どの方法で売却するかを検討しましょう。
【5】不動産会社に相談して買主を見つける
仲介や買い取り、任意売却など、売却方法を決めた後は、不動産会社に相談して買主を見つけてもらいます。
仲介や任意売却の場合、不動産会社と媒介契約を締結し、買主が見つかり次第売買契約を締結します。
買取の場合、買い取ってくれる不動産会社を探して、買取金額を検討しましょう。ご自身で買取会社を探すのが難しければ、不動産仲介会社に依頼して買取会社を探してもらう方法もあります。ただし、その場合は仲介手数料がかかるため注意が必要です。
離婚時に家を売却する際のポイント
離婚時に家を売却する際に、押さえておくべきポイントは以下のとおりです。
- 家を売るタイミングは離婚後がおすすめ
- 金融機関(住宅ローン借入先)に離婚は報告しなくてはならない
- 任意売却を検討したら早めに行動する
- 離婚協議の内容は公正証書に残しておく
- 住み続けたいならリースバックも視野に入れる
本章では、ポイントをひとつずつ解説します。家の売却を成功させるために、前もってポイントを把握しておきましょう。
家を売るタイミングは離婚後がおすすめ
家を売るタイミングは、離婚後がおすすめです。なぜなら、離婚後の財産分与は贈与税がかからないためです。離婚後に家を売却して、住宅ローンを完済したあとに残った売却益を夫婦で分けても、贈与税は課されません。
一方、離婚前に家を売却して売却益を夫婦で分けると、贈与税の対象になる可能性があります。ただし、家が夫婦の共有名義の場合、離婚前の売却でも夫婦それぞれの持分に応じて売却益を分ければ、贈与税に該当しません。
家の名義人が夫婦どちらかの単独の場合、家の売却は離婚後がおすすめです。
金融機関(住宅ローン借入先)に離婚は報告しなければならない
離婚により家を売却する際は、住宅ローンを組んでいる金融機関に相談する必要があります。
住宅ローンは、ご自身で居住する家を購入するためのローンです。そのため、金融機関に報告せず住宅ローンの名義人が住まなくなると、契約違反により一括返済を求められる恐れがあります。また、借入時に金利の優遇を受けている場合は、居住しなくなると金利の引き上げなど、何らかの条件が出される可能性があります。
売却時の抵当権抹消などを相談する必要もあるため、離婚による売却を決めたら必ず金融機関に連絡しましょう。
任意売却を検討したら早めに行動する
オーバーローンの場合、任意売却を検討したら早めに行動することが大切です。
任意売却は売却の期限を最大1年と設定するケースが多く、売却期限が近づくと希望の売却額より安くても売却しなければなりません。早めに売却活動を始めれば、売却期間を長くできるため、希望額に近い価格で売却できるまで待つ余裕が生まれます。
また、市場でなかなか売却が決まらないと、住宅ローンを組んでいる金融機関が早く融資金を回収しようとして、競売にかける可能性があるため注意が必要です。
競売は、任意売却と異なり、期限がきたら強制的に売却させられます。そのため、売却額が希望より安かったり強制的に退去させられたりする恐れがあります。
任意売却を進める場合は、競売の入札開始日の前日までに任意売却を成功させなければなりません。そのためにも早めの行動が重要です。
離婚協議の内容は公正証書に残しておく
離婚協議書は、離婚する際の条件や合意事項を文書にしたものです。家を含めた財産の分与や子どもの養育に関する事項などを書面にすることで、離婚協議で決めた内容を明確に残しておくことが可能です。
離婚協議書を作成したら、公正証書にしておくことをおすすめします。公正証書とは、当事者の嘱託により公証人が作成する公文書のことです。公正証書にしておくと、記載された項目それぞれに法的な効力が発生し、後日のトラブルを避けられます。
公正証書には、家の売却時期や費用負担、清算方法などを記しておきましょう。
住み続けたいならリースバックも視野に入れる
夫婦のどちらかが離婚後も家に住み続けたいなら、リースバックを利用する方法があります。
リースバックとは、家を売却する際に、新所有者と賃貸借契約を交わし、売却後も賃料を支払うことでそのまま住み続けられる契約です。リースバック会社が家を買い取って売却額を売主に支払い、そのまま売主に家を貸し出します。
家を売却したいけれど生活環境を変えたくない、ご近所に売却したことを知られたくないなど、今の家から引っ越したくない場合に有効な方法です。家を売却するため固定資産税を支払う必要がなくなることに加え、引っ越し費用も節約できます。
住宅ローンを返済しながら夫婦のどちらかが住み続けると、返済が滞ったり勝手に家を売却されてしまったりと、トラブルが発生する恐れがありますが、リースバックなら、そのような心配がありません。
離婚後も夫婦のどちらかが家に住み続けたい場合は、リースバックを検討しましょう。
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リースバックを視野に入れる方は、ぜひセゾンのリースバックをご検討ください。
おわりに
離婚により家を売却する際に住宅ローンの残債がある場合は、売却額と残債の関係により売却方法が変わります。アンダーローンなら不動産会社による仲介や買取が可能ですが、オーバーローンなら任意売却による売却となります。
離婚が決まったら、住宅ローンを組んでいる金融機関や知識や経験が豊富な不動産会社へ相談する必要があります。
離婚時には家の売却以外にも手続きが多いため、前もって売却方法や流れを理解しておくことが重要です。ポイントをしっかりと把握して、スムーズに売却を進めましょう。