資金の借入を検討するなかで、家や土地などの不動産を担保にすることを考えている方も多いのではないでしょうか。不動産を担保にすると高額な融資を受けられる一方で、資産を失うリスクもあるため注意が必要です。本記事では、不動産を担保に借入する具体的な方法とメリット・デメリットを詳しく解説します。最後まで読んでいただければ不動産を担保にする際の注意点がわかり、計画的な資金調達ができるでしょう。
- 不動産を担保にすると、まとまった資金を比較的低い金利で借入できる
- 資金の貸し倒れのリスクが低いため、保証人を見つけにくい方や高齢者の方でも利用しやすい
- 担保にする不動産の評価には時間とお金がかかる
- 不動産の評価額が下がる恐れがあるため、余裕を持った返済計画を立てることが大切
家(土地・不動産)を担保に借入する方法とは
家や土地などの不動産を担保等活用してお金を借りる方法は、大きく分けて以下の5つです。
- 住宅ローン
- リバースモーゲージローン
- 不動産担保型生活資金
- 不動産担保ローン
- リースバック
順番に詳しく解説します。
住宅ローン
住宅ローンとは、住宅取得専門のローンです。新築および中古の住宅を購入する際や、注文住宅を建てる際に利用できます。
住宅ローンで高額なお金を借りられるのは、取得する住宅そのものが担保になるためです。
融資と引き換えに金融機関が住宅に抵当権(不動産を売却して得た資金を優先的に受け取る権利)を設定するため、返済できなくなった場合は金融機関に住宅を差し押さえられます。
なお、住宅ローンを利用して取得できる住宅は、ローン利用者本人が住む住宅(自宅)に限られます。投資用の物件や事業所、セカンドハウスなどは取得できないため注意しましょう。
自宅兼事務所の場合は、住宅部分の床面積が全体の1/2以上であれば住宅ローンを利用できる場合が多いです。
リバースモーゲージローン
リバースモーゲージローンとは、家や土地などの不動産を担保に生活資金を借入できる金融商品です。借入できる資金の金額は、担保にした不動産の評価額により決まります。
一般的なローンは毎月元金の一部と利息を合わせて返済する必要がありますが、リバースモーゲージローンでは毎月の返済が利息のみで済む点が特徴です。
元金は、ローン利用者が亡くなった際に担保の不動産を処分して一括返済します。毎月の返済負担が少なく、収入源の少ない高齢者でも利用しやすいローンです。
なお、リバースモーゲージローンはリースバックとよく混同されます。違いを確認しておきましょう。
リバースモーゲージローン | リースバック | |
---|---|---|
毎月の返済 | ローンの利息分を支払う(元金は死亡後に一括返済) | 賃貸借の利用料(家賃)を支払う |
不動産の所有権 | 保有したまま | 所有権を手放す |
固定資産税 | 支払いが必要 | 支払い不要になる |
借入資金の使い道 | 生活に必要な用途に限られる | 売却代金は自由に使える |
年齢制限 | 55歳以上に制限される場合が多い | 年齢制限がない場合が多い |
リースバックと異なり、リバースモーゲージローンでは不動産の所有者であることは変わらないため、固定資産税を継続して支払う必要があります。
また、リバースモーゲージローンでは借入資金の用途が限定される点に注意が必要です。日常の生活費や老人ホームの入居費用などには使えますが、事業資金や投資資金などには利用できません。
不動産担保型生活資金
不動産担保型生活資金とは、低所得の高齢者を対象として、家や土地などの不動産を担保に生活資金を融資する制度です。
各都道府県の社会福祉協議会が実施する公的な制度で、資金を借り入れるには一定の条件を満たす必要があります。
不動産担保型生活資金のなかでも低所得者世帯向けと要保護者世帯向けの2つに分けられ、融資の条件は以下のとおりです。
不動産担保型生活資金(低所得者世帯向け) | |
---|---|
融資の対象 | 65歳以上の高齢者が属する低所得者世帯 |
融資の上限 | 土地の評価額の70%程度月30万円以内 |
連帯保証人 | 必要 |
利子 | 年3%または長期プライムレート(民間金融機関が企業に融資する際の指標となる金利)のどちらか低い方 |
要保護世帯向け不動産担保型生活資金 | |
---|---|
融資の対象 | 65歳以上の高齢者が属する要保護世帯 |
融資の上限 | 土地および建物の評価額の70%程度生活扶助の金額の1.5倍以内 |
連帯保証人 | 不要 |
利子 | 年3%または長期プライムレート(民間金融機関が企業に融資する際の指標となる金利)のどちらか低い方 |
資金の借受人が亡くなると、担保にした不動産は処分されます。なお、不動産担保型生活資金で借り入れたお金は、生活費以外には使えません。
参照元:
厚生労働省|生活福祉資金貸付制度
厚生労働省|生活福祉資金貸付制度条件等一覧
不動産担保ローン
不動産担保ローンとは、土地や家などの不動産を担保にお金を借りるローンです。借入できる金額は、担保にした不動産の価値と収入などのローン利用者の返済能力が総合的に評価されて決まります。住宅ローンやリバースモーゲージローン、不動産担保型生活資金は資金の使い道が決められているのに対し、不動産担保ローンは使い道が原則自由な点が特徴です。子どもの教育資金や娯楽費用のほか、事業用資金として借り入れることも可能です。
例えば、事業が赤字決算の場合、通常は返済能力が低いと判断されて融資を受けにくいですが、不動産の価値も評価される不動産担保ローンなら資金を借入できる可能性が高いでしょう。
セゾンファンデックスの事業者向け不動産担保ローンは特に不動産の担保力を重視するため、銀行での融資が難しいケースでも借り入れしやすい商品です。銀行での借入に不安を感じている方は、ぜひご検討ください。
セゾンファンデックスの事業者向け不動産担保ローンの詳細はこちら
なお、不動産を担保ではなく、売却して資金を調達する方法もあります。
リースバック
リースバックとは、家やマンションなどの不動産を一度売却し、すぐに同じ不動産を賃貸(リース)として利用する契約を指します。
通常、自宅を売却して資金を作る場合は、別の住居へ引っ越さなければなりません。しかし、セゾンのリースバックを利用すれば自宅に住み続けながら現金化できます。
また、不動産の所有者ではなくなるため、固定資産税の支払いが不要になります。マンションの場合は管理費や修繕積立金も不要です。
セゾンのリースバックなら最短2週間で契約し、生活スタイルを変えることなくまとまった資金を調達できます。事務手数料や不動産の調査費用なども0円で利用できるため、ぜひご検討ください。
家(土地・不動産)を担保に借入するメリット
家や土地などの不動産を担保に借入するメリットは、以下の7つです。
- まとまった資金を借りられる
- 借入金利が低い傾向にある
- 借入期間が長い
- 保証人を必要としないケースもある
- 本人所有不動産でなくても利用できる場合がある
- 使い道が比較的自由
- 高齢者も利用しやすい
順番に見ていきましょう。
まとまった資金を借りられる
家や土地などの不動産を担保にする場合、まとまった資金を借入できるメリットがあります。担保の不動産があることで資金の貸し倒れのリスクが低いと判断され、融資の上限額が高くなるためです。
不動産を担保に借入するローンとほかのローンの借入限度額を比較してみましょう。
ローンの種類 | 借入限度額の相場 |
不動産を担保に借入するローン | 100万円〜1億円 |
銀行のカードローン | 10万円〜800万円 |
消費者金融のカードローン | 1万円〜800万円 |
銀行のカードローンや消費者金融(個人向けの融資を専門に扱う事業者)のカードローンで借入できる金額は、800万円ほどが限度です。
一方、金融機関やローン商品により異なりますが、不動産を担保にすると不動産評価額のおよそ6〜8割ほどの金額を借りられ、上限額が1億円程度に設定されています。
借入金利が低い傾向にある
家や土地などの不動産を担保に借入するローンは、借入金利が低い傾向があります。以下、主なローンの金利を比較してみましょう。
ローンの種類 | 金利の相場(年利) |
---|---|
不動産を担保に借入するローン | 1.0%〜10% |
銀行のカードローン | 1.9%〜15% |
消費者金融のカードローン | 3.0%〜18% |
無担保で融資する銀行や消費者金融のカードローンは、資金を回収できないリスクに備えて金利が高めに設定されています。
一方、不動産を担保に借入するローンは貸し倒れのリスクが少なく、金利は比較的低いです。金利が低いほど返済総額が小さくなり、支払いの負担を軽減できるメリットがあります。
借入期間が長い
不動産を担保に借入するローンは、借入期間が長い点がメリットです。
住宅ローンや不動産担保ローンは最長35年まで借入できる商品が多く、不動産担保型資金やリバースモーゲージは終身型ローン(亡くなるまで借入期間が続くローン)です。
無担保で借入するローンは、最長でも5年〜10年ほどしか借りられません。
借入期間が長ければ、月々の支払い額を抑えたゆるやかなペースの返済計画が立てられます。
保証人を必要としないケースもある
不動産を担保に資金を借入する際は、保証人が不要になるケースが多いです。
保証人は、ローン利用者が資金を返済できなかった場合に備えて指定されますが、不動産を担保にしていればその必要がありません。
保証人に指定できる家族や親戚、知人がいない方でも資金を借入できる点がメリットです。また、保証人に指定することで生じやすい人間関係のトラブルも避けられるでしょう。
本人所有不動産でなくても利用できる場合がある
借入する本人が不動産を所有していなくても、ローンを利用できる場合があります。例えば、親族が所有する不動産を担保にするケースです。
親族とは、以下のように定義される関係者を指します。
- 配偶者
- 三親等内の姻族:祖父母、ひ孫、叔父叔母、甥姪までの血族の配偶者
- 六親等内の血族:6世代前の祖父母や6世代後の子、はとこなどまでの範囲
また、共有名義で所有する不動産も担保にできます。
なお、他人名義の不動産を担保にローンを申し込む際は、担保にする不動産の所有者を連帯保証人に指定する必要があります。複数人で共有名義の不動産を所有していれば、全員が連帯保証人の対象です。
連帯保証人には資金の返済に問題が生じた場合に責任を負うリスクがあるため、事前に相談・説明し、慎重に決めることをおすすめします。
使い道が比較的自由
不動産を担保に借入した資金は、使い道が比較的自由な点がメリットです。
マイカーローンや医療ローンなどはあらかじめ決められた用途にしか使えませんが、不動産担保ローンやリースバックなら資金を調達してから用途を決められます。
例えば、以下のような用途に活用できるでしょう。
- 家のリフォーム費用
- 子どもの教育費
- 親の介護費
- 趣味・娯楽などの費用
- 投資用の資金
- 事業用の資金 など
また、まとまった金額を長く借りられるため、無担保のカードローンなどに比べて使い方の選択肢が広いのが特徴です。
なお、住宅ローン、リバースモーゲージローン、不動産担保型生活資金は使い道が限定されているため注意しましょう。
高齢者も利用しやすい
不動産を担保にすると、高齢者も資金を借りやすい点がメリットです。収入が年金のみの高齢者などは、返済能力が低いと判断されて融資の審査に通らないケースが多いです。また、審査に通っても借入限度額を低く設定される場合が多いでしょう。
一方で、亡くなったあとに担保の不動産で一括返済できるリバースモーゲージローンや不動産担保型生活資金を利用すれば、高齢者でもまとまった資金を調達できます。
また、リースバックであれば、住み慣れた家を手放さずに資金を調達することも可能です。現金資産が少ないものの自宅や土地などの不動産がある方は、不動産を活用することを検討してみましょう。
家(土地・不動産)を担保に借入するデメリット
ここまで家や土地などの不動産を担保に借入するメリットを紹介してきましたが、以下のデメリットもあります。
- 融資までに時間がかかる
- 手数料がかかる
- 返済できなくなると不動産を売却される
後悔しないためにも、事前にリスクを把握しておきましょう。
融資までに時間がかかる
不動産を担保にする場合、融資までに時間がかかると考えましょう。
無担保のローンでは申込者の信用情報や返済能力の審査だけで済みますが、不動産を担保にすると不動産の審査(評価)も必要になるためです。
不動産は一つひとつ状態や立地条件が異なるため評価が難しく、融資の金額も高額なため慎重に時間をかけて審査されます。
一般的に、1週間〜1ヵ月程度はかかると想定しておきましょう。
また、審査に必要な書類の準備にも時間がかかります。ローンの申し込みには主に以下のような書類が必要です。
【担保不動産に関する書類】
- 全部事項証明書
- (土地の場合)公図や地積測量図
- (建物の場合)図面
- 固定資産税評価証明書 など
【ローン申込者に関する書類】
- 年収や勤務先がわかる書類
- 身分証明書
- (事業者の場合)法人の全部事項証明書
- (事業者の場合)事業の業績がわかる書類 など
不動産に関する書類は法務局から取り寄せなければいけないものもあります。借入を検討している方は計画的に準備を進めましょう。
手数料がかかる
不動産を担保に借入すると、手数料がかかります。借入の際に必要な手数料には、主に以下のようなものが挙げられます。
- 不動産を審査する費用(全部事項証明書の発行手数料など)
- 不動産に対する抵当権設定登記の費用
- 印紙代
- 保証料
- 振込手数料 など
一般的に、借入金額の2〜3%ほどの手数料が必要です。例えば1,000万円の資金を借りる場合、手数料が20万円〜30万円ほどかかります。
500万円未満の少額の借入や、短期間で返済する予定で借りる場合は、無担保のカードローンなどの方が返済負担が少ないケースが多いでしょう。
返済できなくなると不動産を売却される
不動産を担保にすると、ローンを返済できなくなった場合に不動産を売却されるリスクがあります。
ローン利用者が返済できないことがわかると、融資した金融機関は担保の不動産を差し押さえ、競売にかけて売却代金から資金を回収します。
資産を失うだけではなく、自宅を担保にした場合は住む場所にも困るでしょう。また、他人名義の不動産を担保にしていた場合は、人間関係に悪影響を及ぼす可能性が高いです。
不動産を担保に借入する際は、リスクを十分検討したうえで無理のない返済計画を立てましょう。
家(土地・不動産)を担保に借入する際の注意点
家や土地などの不動産を担保に借入する際は、以下の2点に注意しましょう。
- 不動産の評価が変動する
- 不動産を担保にした借入でも安定した収入を求められることも
それぞれ詳しく解説します。
不動産の評価が変動する
不動産を担保に借入する際は、不動産の評価額が変動する可能性があることを想定しておきましょう。
例えば、災害の被害を受けたり経済が落ち込んだりすると、契約時より不動産の評価額が下がる恐れがあります。
融資した金額よりも担保の不動産の価値が下回ると、追加で担保となる不動産を提供するなどの対応が求められることもあります。
借入期間が長いほど不動産の評価額が変動するリスクが高いため、借入金額に余裕を持つことや、早めに完済するのがおすすめです。
不動産を担保にした借入でも安定した収入を求められることも
不動産を担保にしても評価額が変動する恐れがあるため、安定した収入がないと借入の審査に落ちるケースがあります。
特に、銀行から借入する際はローン利用者の返済能力を重視する傾向があるため、無職の方や高齢者の方など収入に不安のある方は注意が必要です。一般的に、借入の際は以下のような点が審査されます。
- 正社員などで継続的に安定した収入が見込めるか
- 最後まで完済できそうな年齢か
- 他社で多額の借入をしていないか
- 過去の返済実績(信用情報)に問題はないか
審査を通過するのが難しい方は、比較的融資がおりやすい消費者金融のカードローンなどで少額ずつ借り入れるのもひとつの選択肢です。
借入する際は不動産の価値とご自身の返済能力を客観的に評価し、借入方法や借入金額を慎重に検討しましょう。
おわりに
家や土地などの不動産を担保等に活用して資金を調達する方法には、以下の5種類があります。
- 住宅ローン
- リバースモーゲージローン
- 不動産担保型生活資金
- 不動産担保ローン
- リースバック
不動産を担保にすると貸し倒れのリスクが低いと判断されるため、無担保の場合よりまとまった資金を低い金利で借りられる点がメリットです。ただし、ローンを返済できなくなると、担保にした不動産を失うリスクがあります。
不動産の評価額が落ちて借入金額を下回れば追加担保を求められるケースもあるため、ご自身の返済能力も含めて慎重に検討し、借入する前に無理のない返済計画を立てておきましょう。