人生100年時代の訪れにより、今より老後の暮らしが長くなるといわれています。そのため、老後の生活資金を年金や退職金のみに頼る場合、資金が不足してしまう可能性が高くなってきました。
このコラムでは、人生100年時代で起こる変化や老後に必要な生活資金、資金不足に備えた資産形成の方法についてご紹介します。
この記事を読んでわかること
- 「人生100年時代」とは、書籍「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」で提言された言葉
- 先進国では2007年生まれの2人に1人が100歳を超えて生きる「人生100年時代」が到来すると予測されており、老後が長くなることで資金不足に陥る可能性がある
- 老後資金不足に備えた資産形成として、変額保険、投資信託のほかにリースバックという選択肢もある
「人生100年時代」とは?
「人生100年時代」とは、世界で最高位のビジネススクールであるロンドン・ビジネス・スクール教授のリンダ・グラットン氏が著書「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」で提唱した言葉です。この書籍の中で、先進国では2007年生まれの2人に1人が100歳を超えて生きる「人生100年時代」の到来を予測しています。
そのような時代が訪れると、教育や働き方に変化が起こる可能性が高くなります。リンダ・グラットン氏は従来とは異なる人生設計の必要性も説いています。
日本においてもその影響力は大きく、2017年9月には首相官邸に「人生100年時代構想会議」が設置され、9回にわたって議論が行われました。2021年11月に「人生100年時代構想会議」は廃止)
人生100年時代で起こる変化は?
「人生100年時代」が訪れることにより、私たちの暮らしには大きな変化が起こります。ここでは、100歳まで生きることが一般化する社会で起こりうる教育の変化と働き方の変化について紹介しましょう。
教育の変化
人生100年時代の到来は、教育に変化を促すと考えられています。教育は「人生100年時代構想会議」の主なテーマにもなっていました。人生100年時代の教育は、リカレント教育と呼ばれています。
リカレント教育とは、学校教育を修了した社会人が、それぞれ必要となったタイミングで学び直し、社会で求められるスキルを磨き続けるという教育制度のことです。企業や大学などの機関では、社会人の学び直しであるリカレント教育を導入し始めました。
厚生労働省では何歳になっても必要な能力・スキルを身につけることができるよう、社会人の学びを応援するポータルサイト「マナパス」の運営や、主体的な学びを支援するため各種給付金での補助を行うことで学び直しのきっかけ作りや学びにかかる費用の支援などに取り組んでいます。
働き方の変化
人生100年時代の訪れは働き方の変化も引き起こすともいわれています。
今までのライフプランは「教育」「仕事」「老後」の3ステージからなると考えられていました。リンダ・グラットン氏はこの3ステージの一方通行の進み方ではなく、ステージを柔軟に組み替えながら自分らしい人生を模索していく「マルチステージの生き方」を提唱しています。
このマルチステージの生き方ができるよう、働き方改革をはじめとして、働く場所・時間・雇用年齢などにとらわれず、誰もが活躍できる労働環境の整備が重要です。
人生100年時代、老後に対する悩みはさまざま
ここでは、人生100年時代が訪れることにより現在より長くなることが予想される老後の悩みについて紹介します。
老後生活についての不安感の有無と程度の調査では「不安感あり」と回答した方の合計は84.4%でした。性別でみると「不安感あり」は男性で81.9%、女性で86.4%と、女性の方が4.5ポイント上回る結果となりました。
また、「不安感あり」とした方の具体的な内容を調査した結果「公的年金だけでは不十分」が82.8%と最も高く、以下「日常生活に支障が出る」(57.4%)、 「退職金や企業年金だけでは不十分」(38.8%)、「自助努力による準備が不足する」(38.5%)の順となっています。
これら調査結果より、8割以上の方が老後生活に不安を抱えており、特に老後のお金に関して不安に感じている方が多いことが読み取れるでしょう。
参照元:公益財団法人生命保険文化センター|令和元年度「生活保障に関する調査」
人生100年時代のライフプラン|老後に必要なお金はどのくらい?
老後の生活に必要なお金はどのくらいでしょうか。ここでは家計調査年報を元に、老後の支出と収入についてご紹介します。
老後の支出はいくらかかる?
ここでは実際にかかる老後の生活資金を家計調査報告(2022年)をもとに見ていきましょう。65歳以上の夫婦のみ無職世帯の平均食費は67,695円、光熱・水道費は22,723円、保険医療費は15,622円となっています。総消費支出額は、236,696円です。(小数点第一位四捨五入)
また、65歳以上の単身無職世帯の平均食費は37,502円、光熱・水道費は14,743円、保険医療費は8,159円との報告があります。総消費支出額は、143,139円です。(小数点第一位四捨五入)
この調査はあくまで食費や光熱費など生活に必要な最低限の支出であり、その他にもお祝い金や孫へのお年玉などの支出が発生することがあります。
参照元:公益財団法人生命保険文化センター|家計調査年報(家計収支編)
老後に期待できる収入源は?
老後生活を支える主な収入源は、年金や退職金、貯蓄になる方が多いでしょう。
民間企業に定年まで勤めていた男性の場合、平均的な年金の受給額は月150,000〜200,000円程度といわれています。これは国民年金、厚生年金をあわせた額です。この年金のみで老後の生活は安心と思われる方がいるかもしれません。
しかし、近年起こっている物価の上昇が今後も続き、生活を圧迫する可能性があります。また、旅行やプレゼントなど月によって支出が増加することもあるでしょう。また病気やケガなどの予期せぬ支出に備える必要があります。
定年退職後に必要な貯蓄額は?
金融審議会市場ワーキング・グループが2019年6月に発表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」によると、60代以上の支出は現役時代と比べて2~3割程度減少しています、しかし、収入も年金給付に移行するなどで減少しているため、高齢夫婦無職世帯であれば毎月の赤字額は約50,000円程度になることも想定されます。
これは95歳まで、つまり65歳から30年生きると2,000万円が不足することになります。
金融庁が公表した老後2,000万円問題とはまさにこの問題のことであり、赤字額は金融資産からの補填が必要です。
参考元:金融審議会市場ワーキング・グループ報告書|「高齢社会における資産形成・管理」P16
人生100年時代、老後資金不足に備えた資産形成の方法とは
ここでは、人生100年時代において老後資金不足に備えた資産形成の方法について3つご紹介します。
変額保険
老後資金不足に備えた資金形成の方法の一つが変額保険です。
変額保険とは、死亡時の保険金や解約返戻金、満期保険金などが運用状況に応じて変動する保険商品のこと。運用状況に応じて受け取れる金額が増減するという点は、株式や投資信託での運用に近い商品性を持ちます。
変額保険は、保険料を支払いながら死亡保険給付を提供すると同時に、保険契約者が選択した投資資産に基づいて運用されるキャッシュバリュー(資産の現在価値)を積み立てることができる点が特徴です。
しかし、変額保険はあくまでも「保険」であるため、万が一の際の死亡保険金には最低保証が設定されています。
投資信託
投資信託も資産形成の方法の一つです。投資信託とは、多くの投資家から集めた資金を専門のファンドマネージャーが管理し、さまざまな資産に分散投資する金融商品のことです。
投資信託は、個人投資家や機関投資家がリスクを分散させ、資産を効果的に運用する手段として利用されています。投資信託の種類やリスク、リターンの特性は異なるため、投資家は自分の目標やリスク許容度に合わせて適切なファンドを選ぶことが重要です。
持ち家の売却
保険や投資信託と活用する資産形成について前述しましたが、持ち家を売却して資金を得ると同時に、賃貸借契約を結ぶことで売却した家に住み続ける不動産を活用するリースバックという方法もあります。リースバックを活用することにより、住み慣れた自宅で生活しながら、まとまった資金を調達することが可能です。
さまざまな企業が参入してきていますが、信頼できるリースバックの事業者選びにお悩みの方におすすめなのが「セゾンのリースバック」。東証プライム市場上場のクレディセゾングループ企業のセゾンファンデックスが提供しているリースバックで、最短2週間で契約可能です。
セゾンのリースバックのメリットとして、家を売却することで、固定資産税の支払いがなくなる点や家財保険の自己負担額が0円となるといったことがあります。
迅速かつ安心してリースバックを利用したい方は一度相談してみましょう。
資産形成は「長期」「分散」「積み立て」を選択肢に
ここでは資産形成をする上で重要な「長期投資」「分散投資」「積み立て投資」の3つの投資の考え方についてご紹介します。
長期投資とは
長期投資とは、株や投資信託などの金融商品を比較的長期間(通常は数年以上)にわたって保有する投資戦略です。
長期投資の主な目的は、資産の価値を時間の経過とともに増やすこと。市場が時間の経過とともに成長することが一般的であるため、資産の価値が増加する可能性が高いと考えられています。
長期投資はリスク(プラスもマイナスも含む収益のブレ)を小さくする効果があるだけでなく、利息が利息を生む「複利の効果」も期待できるという点がメリットです。
この投資戦略は、短期の市場変動や一時的な価格の変化に対して比較的耐性を持つことが期待されています。さらに、長期間にわたる投資は複利効果を最大限に活用することができる方法です。投資の利益が元本に再投資されると、将来の収益が増加します。
分散投資とは
分散投資は、投資ポートフォリオ内で異なる種類の資産や資産クラスに資金を分散させる戦略のこと。
この戦略の主な目的は、投資リスクを管理し、リスクを最小限に抑えることです。分散投資は、一つの資産に依存せず、異なる市場や資産クラスの動きにバランスを取ることで、ポートフォリオ全体のリスクを分散させるという概念に基づいています。
また、異なる資産クラスを組み合わせることにより、市場の変動に対する耐性が高まり、リターンが安定しやすくなるでしょう。
積み立て投資とは
積み立て投資は、前述の分散投資に近い投資方法で期間を分散させ、一定の期間や頻度で一定の金額を投資に積み立てる戦略を指します。市場の価格が上下することを前提とし、定期的に一定額を投資することで、市場の変動に左右されずに資産を取得することを目指す戦略です。
さらに、積み立て投資は長期投資と同様に、利息が利息を生む「複利の効果」も期待できます。
また、積み立て投資は感情的な判断や市場タイミングに依存しない方法です。つまり、市場が不安定であったり、投資家の感情が揺れ動いても、計画通りに投資を続けることができ、感情的な判断を軽減することができます。
積み立て投資は、株式、債券、不動産、ファンドなど、さまざまな投資先に適用できる方法です。
国が主導のNISA・iDeCoを活用
国が主導のNISA・iDeCoを活用するという選択肢もあります。
NISAは、日本政府が設立した個人向けの資産運用制度のこと。現行NISAは、1年につき最大で120万円までの投資利益が非課税であることや株式、投資信託、ETF(上場投資信託)、不動産投資信託(REIT)など、幅広い投資商品が対象であることが特徴です。
NISAは一般NISAとつみたてNISAに大別されます。その違いは非課税枠の額と非課税期間の2点あり、一般NISAの非課税枠は年間120万円、非課税期間は5年間です。一方のつみたてNISAの非課税枠は年間40万円、非課税期間は20年間となっています。
2024年1月からNISAは新制度がスタートし、口座開設期間は恒久化、非課税枠は年間投資枠が合計で360万円(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)に、非課税期間は無期限化と利用しやすくなります。新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠の併用も可能となります。
また、iDeCoは、個人向けの企業年金型の退職資産運用制度です。運用対象には投資信託やETF(上場投資信託)、公社債などの資産クラスが含まれます。
iDeCoは主に退職金の積み立てを促進し、将来のリタイアメント資金をサポートするための制度です。
一方、NISAは個人の資産運用を効率的に行い、投資利益を非課税で受け取るための制度という違いがあります。
NISAとiDeCoはそれぞれ日本の個人金融市場において重要な役割を果たしている制度です。状況に応じて個人の貯蓄および投資計画に取り入れることができます。
投資や保険において注意すべきポイント
ここまではさまざまな資産形成の方法についてご紹介しました。ただし、投資や保険においては注意すべきポイントがあります。ここではどのような点に注意すべきなのかについてご紹介しましょう。
貯蓄や退職金をすべて金融商品購入に充てること
分散投資や積み立て投資などを用いず、リスク分散ができていない状態であると、損をしたときに修正が難しくなります。貯蓄や退職金のすべてを金融商品購入に充てることはリスクが大きいため、おすすめできません。
また、購入するタイミングとして、経済的・精神的に一定のゆとりがある状態で貯蓄や退職金を金融商品購入に充てることが重要です。
相場が暴落したタイミングで焦って積み立て投資をやめること
相場の急激な下落が起きたとき、焦って積み立て投資をやめるのは避けましょう。
相場の変動は一時的であり、市場は長期的には回復する傾向があるためです。急激な下落に対する焦りは、損失を確定させ、将来のリタイアメント資金に影響を及ぼす可能性が高まります。
さらに、積み立て投資は長期的な戦略です。市場の変動は一時的であるため、短期の波乱に惑わされず、計画通りに資産を積み立てることが大切になります。
また、積み立て投資は相場が下がったときにたくさん金融商品を買えるというメリットがあるため、相場が下がっても継続して購入するチャンスと捉えることも大切です。
感情的な判断は投資の敵です。感情に支配された売却は、投資目標の達成を阻害します。計画通りに積み立てを続け、感情的な決断を避けることで、リスクを管理し、資産を長期的に育てることが可能です。
おわりに
このコラムでは、人生100年時代で起こる変化や老後に必要な生活資金、資金不足に備えた資産形成の方法を解説しました。
老後資金の調達方法の一つであるリースバックとは、持ち家を売却して資金を得ると同時に、賃貸借契約を結ぶことで売却した家に住み続けるという不動産取引です。
リースバックに興味がある方は、信頼できるリースバック会社を探して依頼するところから始めましょう。セゾンのリースバックは、大手企業グループが運営していて安心なだけでなく、事務手数料や調査費用なども無料です。
ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。