シニア層向けの融資として注目の「リバースモーゲージ」。自宅などの不動産を担保に生活資金として、より豊かに生きるための資金として利用者は増えています。ただし、借り入れであるため、審査を通過しなければなりません。
このコラムでは、審査のポイントとともに、申込みにあたって必要となる書類や事前の準備についてご紹介します。
この記事を読んでわかること
- リバースモーゲージは、自宅を担保としたシニア層向けの融資です。借り入れ額に対して、月々の返済は利息のみ、亡くなった時に自宅を売却することで元本を一括で返済
- リバースモーゲージは、年齢や年金など安定した収入など契約者の条件、担保となる不動産の条件をクリアしなければ利用できません。そのため、審査を通過する必要がある
- リバースモーゲージの審査は、申込み→審査→契約と進み、2週間から1ヵ月かかる
- 借り入れに対する審査を通過できなくても、売却により手元資金を増やす「リースバック」などの選択肢がある
リバースモーゲージとは
高齢化、長寿化にともなって、「年金だけでは足りない」「不安」という声が多くなりました。そこで、自宅などの不動産を保有している高齢者向けに、自宅を担保にお金を借り入れる「リバースモーゲージ」が注目されています。
リバースモーゲージとは
「リバースモーゲージ」は、銀行など金融機関が提供する「自宅を担保としたシニア層向けの融資」です。
不動産の評価額をもとに決められた融資限度額の範囲内で借り入れ、月々の返済は利息のみ、元本については、亡くなった時に売却することで一括返済となります。シニア層の資金調達を目的としたリバースモーゲージは、自宅を手放すことなく住み続けることができ、生活資金の補填やより豊かな暮らしができることが魅力といえるでしょう。
リバースモーゲージといっても、取り扱う金融機関によって対象や条件が異なり、また、契約者の状況や意向により受け取り方や契約内容について選択できるため、詳細については確認のうえ、きちんと理解し、検討する必要があります。
まずは、選択肢の一つとして、リバースモーゲージの概要を知ることが大切です。
リバースモーゲージの借入限度額
リバースモーゲージで借り入れできる金額は、不動産の評価額をもとに限度額が決定されます。評価額が借りられる額ではないことに注意が必要です。
金融機関にもよりますが、一般的には評価額の50%(高めで60%)程度が目安となります。つまり、2,000万円の評価額であれば、借入限度額は1,000万円(高めで1,200万円)程度です。
期待する金額よりも低い印象を受けるかもしれませんが、存命中は利息のみの返済であり、経年劣化や価格変動リスクに対する金融機関(貸し手)にとってのリスクを踏まえると妥当な相場ともいえます。
リバースモーゲージのメリット
保有する財産のうち、自宅などの不動産の占める割合が大きく、現預金など生活資金が心もとないケースのほか、病気や介護に備えて金融資産を取り崩したくないシニア層は多いようです。
不動産を担保として活用することで、住み慣れた家での生活を継続しつつ、年金感覚で資金調達もできるリバースモーゲージは、シニア層にとって有り難い魅力的なサービスです。
リバースモーゲージのデメリット
一方で、デメリットもあります。定期的な評価額の見直しにより価値が下落すると融資限度額が下がる可能性があるためです。
すでに借りた金額が融資限度額を上回っていた場合には、契約期間中であっても一括返済を求められ、思いがけず自宅を手放すことになりかねません。また金利動向によっては、月々の支払いが増えるケースも想定されます。
リバースモーゲージの審査項目
リバースモーゲージはシニア層向けの資金調達の手段とはいえ借り入れであるため、利用にあたっては契約する方、対象となる物件について審査が必要です。誰でも借り入れができる訳ではありません。
詳細は金融機関により異なりますので、WEBサイト等で事前に確認しておくことをおすすめします。
ここでは、一般的な審査項目とともにポイントをまとめていますので参考にしてください。
- 申込人氏名・性別・生年月日(年齢)・連絡先(電話番号およびメールアドレス)
- 住所(住所地および物件所在地)…基本的には同じ住所となります。
- 借入希望日・借入金額・借入期間 …あくまでも希望ですが、現実的な記載とすべきです。
- 資金使途(使いみち)… 生活資金など。記載欄スペースにもよりますが、より具体的な記載が好印象です。
- 保証人予定者(物件共有者・同居人の有無・氏名)…配偶者や同居人がいる場合は必ず記載します。
- 現在の住まいについて… 居住年数など簡易的な質問。詳細については別途書類を提出します。
- 国籍(外国籍の方のみ)…永住権の有無
- 収入 …前年度収入金額、収入形態(給与・年金・その他など)、証明書類は別途書類を提出します。
- その他の借り入れ状況 …種類・残高・借入日・返済計画など。正直に記載すべきです。
書面の他、WEB申込みなど形式や質問項目は各金融機関により異なりますが、概ね上記のとおりです。金融機関では、記載された内容にしたがって審査を行うため、正確に丁寧に取り組みましょう。ポイントは、お金を貸す金融機関が、お金を借りる申込者に対して、また対象不動産に対して「信用」と「魅力」を感じるかどうかです。
安定した収入があり、利息の支払いが確実に行われる方でなければ融資されません。他のローンがあったとしても、融資によって完済できれば問題ないですし、重複していても支払いに支障がない程度であれば審査はクリアできるでしょう。
なお、推定相続人がいる場合には、トラブルに発展する可能性を回避するため、全員の意思表示(同意)が必要になる場合もあります。
年齢
リバースモーゲージは、シニア層を対象としたサービスですが、具体的な利用可能年齢は金融機関により幅があります。一般的には60歳以上が多いものの、50歳を下限とする金融機関もあるため確認しましょう。
また、80歳以下(未満)といった上限を設定する金融機関もあります。
一部では、同居家族の年齢制限が設定されているケースもあるため、二世帯住宅や子と同居している場合は審査通過が難しいかもしれません。
国籍
多くの金融機関では、申込みにあたって「日本国籍を有する方、または永住許可等を得ている外国人の方」を要件としています。
収入
申込みにあたって「安定した収入がある方」と収入要件が設定されています。借り入れ額に対する利息が滞りなく支払えるかどうかの審査ですので、継続的に収入が安定していれば所得の種類(給与収入か年金収入か等)は問われません。
金融機関によっては、120万円以上といった具体的な金額が明示されている場合もあります。
なお、多くの金融機関では年収に占める返済額(返済負担率)を概ね30%以内と定めていますが、借入額が大きい場合は審査が厳しくなるということです。
不動産評価額
担保となる不動産については、基本的には土地付き戸建てが対象になります。マンションであっても、首都圏や駅からの距離、築浅物件であれば対象として認められる場合もありますが、マンションは対象外とするケースが多いです。
不動産の評価額算出にあたっては、土地の価値を重視することが理由と考えられます。
社会福祉協議会が行う公的貸付制度のリバースモーゲージ「不動産担保型生活資金」では、土地と建物あわせて概ね1,500万円以上の評価額であることが条件です。
融資金の用途
申込みにあたって、申込者の情報とともに、お金の使い道(資金使途)について記載する必要があります。リバースモーゲージには、公的貸付制度として社会福祉協議会が実施する提供する「不動産担保型生活資金」や住宅金融支援機構と提携している金融機関が提供する「リ・バース60」の他、金融機関独自の商品などの種類があるため、ご自身に適した商品を選びましょう。
範囲はそれぞれ異なりますが、基本的に、生活資金であることといった制限が設けられています。
- 社会福祉協議会が提供する「不動産担保型生活資金」 …老後の生活支援のみに限定
- 住宅金融支援機構と提携している金融機関が提供する「リ・バース60」 …住まいに関する資金
- 金融機関独自のリバースモーゲージは、各金融機関による
例)生活資金、自宅のリフォーム費用、高齢者住宅の入居一時金など
金融機関によっては、原則自由としている場合もありますが、いずれの場合も、事業目的や投資には使えません。
他のローンの返済計画
他に返済中のローンがある場合には、返済能力が低いとみなされる可能性があります。また信用情報から返済遅滞の有無などについて調査が行われるため、複数のローンや返済遅滞があると審査は厳しくなるでしょう。
いずれにしても、これまでの返済実績や負担割合などから総合的に問題がないことがポイントです。他のローンがある場合は、返済予定表などの提出が必要となります。
推定相続人の合意の有無
契約者が亡くなられた後のことについて、相続人となり得る子などがいる場合は、元金返済についての取り決めをしておきましょう。あとでトラブルに発展しないよう、同席や同意書への署名が必要な場合もあります。
子や相続人となるべき親族がいないといった相続人不存在の場合でも、リバースモーゲージの利用に問題ありません。
その場合は、死後事務の委任により手続きは金融機関が行います。
リバースモーゲージの審査期間と流れ
リバースモーゲージの手続きは、申込みから審査、契約、借り入れへと進むのが通常の流れです。金融機関によっては、まず電話や店舗で相談や事前審査ができる場合があります。事前審査の結果を踏まえたうえで、納得できれば正式申込みへ進めるため、その後の手続きをスムーズに進めることが可能です。
審査にかかる期間は、各金融機関の事情および提出書類の不備によるやりとり等にもよりますが、概ね2週間~1ヵ月程度とされています。
審査の流れについては、基本的には、以下のとおりです。
- メールや電話で金融機関店舗への来店予約をする
- 必要書類(申込書、添付資料)の準備
※申込書は、金融機関の窓口での受取り、郵送、メールでの送付、WEBサイトからのダウンロードなど
※申込者情報、物件情報など…自宅に保管されている資料の他、公的機関で受け取るものなどがあります。二度手間にならないようにチェックリストを作成したうえで効率よく準備を進めましょう。
- 書類の提出(郵送もしくは持参)・・・直接担当者と話ができれば良いのですが、郵送による場合も多いです。不備があると審査結果がでるまでの日数がその分延びてしまいますので、不明点は問い合わせするよう確実に行いましょう。
- 審査結果がきて、審査に通れば、契約に進みます。借り入れ後のリスクや注意点、亡くなった後の手続きについて、不明な点があれば質問をしましょう。よく分からないままにすると、後でトラブルになることもあります。できれば、相続人となる子や信頼できる親族、知人に同席してもらうと安心です。
- 問題なく進めば、口座にお金が振り込まれます。発生する利息の支払いについては、口座引き落としになります。毎月口座残高を確認のうえ、遅滞のないように注意しましょう。
リバースモーゲージの審査の準備
リバースモーゲージの審査を通過するためには、仕組みや概要を知るとともに、自分自身や物件の状況を把握しておくなど準備も大切です。事前にしておきたいことを以下にまとめました。ぜひ、参考にしてください。
不動産の評価額を事前に知っておく
借りられる金額、つまり融資限度額は、自宅の不動産評価額をもとに算出されます。借りた金額に対して利息が発生するため、必要以上に借りることは避けたいものです。そのためにも、今後の生活を含めて必要額をシミュレーションすることをおすすめします。
評価額は、実際には公表されている土地の価格だけでなく、周辺事情や取引事例をもとに決定します。事前準備としては、簡易的に固定資産税評価額やWEB検索などで土地価格のイメージをつかんでおきましょう。
なお、評価額が融資限度額ではないことに注意しましょう。金融機関にもよりますが、評価額の50%から60%が相場といわれています。
他にローンがあれば可能な限り返済しておく
他に利用中のローンは、返済能力の有無を判断する際に不利な材料です。リバースモーゲージでは金利が上昇すると利息の返済負担が重くなります。
複数のローンがあると、さらに苦しくなることも想定されるため、事前に返済可能なものについては返済しておきましょう。
推定相続人に同意を得ておく
推定相続人となる子が親のリバースモーゲージの利用を知らなかった場合や同意がない場合には、契約者が亡くなられた後にトラブルになることがあります。事前に、契約内容やどのような仕組みであるか、影響の有無について、きちんと理解してもらいましょう。
リバースモーゲージの審査に必要な書類
申込みにあたって、基本的に必要となる書類は以下のとおりです。取扱銀行によって異なるため、事前に確認しましょう。あとで問い合わせがある場合もありますので、写しをとっておくことをおすすめします。
【契約者について】
- 身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証、保険証、年金手帳など)
- 収入証明書類(年金振込通知書など年金額が記載されたもの、市区町村窓口で交付される課税証明書など)
【担保となる物件について】
- 物件証明書類(登記簿謄本など)
- 納税書類(固定資産税課税明細書など)
※その他、必要に応じて、火災保険証券の写し、管理費等がある場合は直近3ヵ月程度の引落しがわかる資料などが求められる場合あります。
【資金使途に関する書類】
- 現在借り入れがある場合:返済予定表、融資明細等契約内容が記載された資料
- 資金使途が決まっている場合:見積書、販売資料など
その他、詳細がわかる書類や別の書類を求められる場合があります。早急な対応が審査を円滑に進めるポイントとなるため、くれぐれも放置することのないよう注意するとともに、提出に時間がかかる時は、その旨を伝えましょう。
リバースモーゲージの審査に落ちたらリースバックもおすすめ
利用条件を満たしていない場合や、総合的な判断で審査に通らない場合があります。いずれにしても、取扱銀行では審査の結果について理由を教えてくれることはありません。切り替えて、別の方法を検討することをおすすめします。
別の方法の候補としてリースバックがよく挙がりますが、中でも「セゾンのリースバック」がおすすめです。リースバックは、借り入れではなく、自宅不動産を売却することで現金を受け取ります。通常の売却との違いは、売却後も賃貸借契約により自宅に住み続けることができることです。
住み慣れた自宅での生活ができるという点ではリバースモーゲージと共通しています。リースバックでは自宅の所有権がなくなるため、固定資産税や修繕積立金などの出費は不要になりますが、代わりに家賃が発生しますので、自宅の売却代金から充分な期間の生活を維持できるかどうかを判断する必要があります。
まずは、売却額の見積もりと家賃相場について、相談してみることをおすすめします。通常の売却と同様に、見積額には会社によって幅がありますので、複数社で比較検討しましょう。
「セゾンのリースバック」は金融と不動産活用を軸に強みと解決策をもつセゾンファンデックスが買い手となり、所有者となります。クレディセゾングループだからこその売却後の管理やその他のサービスに安心と満足が得られるため、おすすめです。
リースバックは、売却金額だけでなく、さまざまな面から総合的に検討したうえで判断しましょう。
おわりに
リバースモーゲージは、シニア向けの資金調達手段として注目されるようになりました。ただし、年金の上乗せとして受け取れるといった不確かな情報だけで軽はずみな利用は避けた方が無難です。自宅を担保とした融資であり債務を負うことになりかねません。
融資をする側にとっては、確実に返済できる方、元本を回収できる物件を吟味する必要があります。双方が納得したうえでの契約となるため、審査にあたっては丁寧に正直に向き合うことが大切です。