近年、海外投資家による日本の不動産投資が活発になっています。海外投資家にとって日本の不動産のどのような点が魅力的なのでしょうか。また、その傾向は今後も続くのでしょうか。
この記事では、海外投資家に日本の不動産投資が注目される理由や日本で不動産投資をする方法、日本の不動産投資の将来的展望について解説します。
日本人にとっても不動産投資の有益情報になる部分があるため、参考にしてください。
(本記事は2024年8月14日時点の情報です)
- 日本では海外投資家が不動産投資をする環境が整っているため、市場が活発になっている
- 日本に居住していない海外投資家が不動産を購入する場合、「宣誓供述書」が必要
- 海外投資家が日本で不動産投資をする場合、地震のリスクや人口動態に注意する
海外投資家による日本の不動産投資が活発に
最初に、海外投資家による日本の不動産投資が活発化している状況について見ていきましょう。
日本の不動産需要が高まっている経済的背景
日本の不動産市場が海外投資家から大きな注目を集める背景には、いくつかの経済的要因が挙げられます。
まず、世界的なコロナ禍の影響で、各国で経済対策として大規模な金融緩和が行われたことにより、グローバルにお金が余っている状態が生まれました。例えば、日本銀行のバランスシートは、1998年度末から2022年度末にかけて約9倍に拡大しました。この「カネ余り」現象により、有利な投資先を求める資金が世界中で不動産市場に集まっています。
さらに、日本円の価値の大幅な下落により、海外投資家にとって日本の不動産が割安になりました。2023年10月には、1ドル=150円まで円安が進行しました。円安は海外から見た日本の不動産価格を実質的に下げる効果があり、投資の魅力を高めています。
加えて、日本では長年にわたって低金利政策が続いており、投資家は有利な条件で資金調達ができていたことも海外投資家による日本の不動産投資が活発であった要因の一つとなっていました。
しかし、日本では、2024年3月の金融政策決定会合でマイナス金利の解除が確実となりました。この金利の正常化により、今後はその金利差によるメリットが薄れる可能性があります。
海外投資家から注目を集めているエリア
海外投資家から注目を集めている日本の不動産で人気のエリアとしては、東京、大阪、北海道などが挙げられます。
株式会社神居秒算が中華圏の投資家100名に行った調査によると、投資物件の所在地として最も関心が高かったのは東京で47.5%、次いで北海道が19.8%、大阪・京都が14.9%という結果になりました。
また、JLL社の2022年第1四半期の「世界の都市別投資総額ランキング」では、東京が14位にランクインしました。次いで大阪が37位となっており、日本の主要都市が世界的にも高い評価を得ていることがわかります。
東京都心部では、「赤坂」「青山」「麻布」の頭文字をとって「3A」と呼ばれるエリアが特に人気を集めています。一方、都心でなくても利便性の高い地域への関心も高まっています。
例えば、埼玉県川口市や千葉県船橋市は、都心へのアクセスのよさや移住者の多さなどにより注目されているエリアです。
また、北海道のニセコや熊本、沖縄の宮古島などのリゾート地も、新たな投資先としてトレンドになりつつあります。
日本の不動産が海外投資家に人気の理由
日本の不動産が海外投資家に人気があるのは、主に以下の3つの理由からと考えられます。
社会情勢による不動産評価の変動リスクが低い
日本の不動産が海外投資家に人気がある理由の1つとして、社会情勢による不動産評価の変動リスクの低さが挙げられます。これは、日本の社会構造は安定していて、政治的・経済的に急激な変化が起こりにくいためです。
具体的には、日本は「カントリーリスク」と呼ばれる、社会情勢の変化による投資対象の価値変動リスクが最も低い「Aランク」に位置づけられています。この評価は日本が戦争や紛争などのリスクが低く、不動産の価値が急激に下落する可能性が少ないことを意味します。
よって、日本の不動産は社会情勢の急激な変化による価値の下落リスクが低く、海外投資家にとって安定した投資対象として認識されているのです。
外国人でも不動産を購入することができる
日本においては外国人でも日本人と同様に不動産を購入できる点は、海外投資家が注目するもう1つの理由といえるでしょう。日本では外国人の不動産購入に対する規制や制限がないためです。
多くの国では、外国人による不動産購入に際して、さまざまな規制や制限が設けられています。例えば、シンガポールでは外国人による土地の購入・所有が禁止されており、中国では自国民でも土地の購入や所有ができません。
一方、日本では外国人の不動産購入に対する規制がなく、外国人であっても日本人と同じ条件で不動産を購入し、土地の完全所有権を得られます。
このように、日本では外国人に対する不動産購入のハードルが低く、海外投資家にとって魅力的な投資環境が整っているのです。
家賃収入が安定している
外国人投資家からは、日本の不動産投資では家賃収入が安定していると見られています。先述の株式会社神居秒算の調査によると、日本の不動産に投資したい理由の第1位は、家賃収入の安定性です。
日本では借地借家法によって賃料の大幅な値上げには制限があり、賃料の変動が比較的小さい傾向があります。また、賃貸管理会社による適切な物件の管理で入居者の満足度を高く保ち、長期的な入居が期待できます。
このような日本特有の不動産投資環境によって安定的な家賃収入が見込め、外国人投資家の人気を集める要因となっているのです。
海外投資家が日本の不動産を購入するときの流れ
次に、海外投資家が日本の不動産を購入する手続きの流れについて解説します。
ステップ①購入したい不動産を探す
まずは、投資対象となる不動産を探します。海外投資家が日本の不動産を探す際、インターネットは有効な手段の1つです。日本の大手不動産ポータルサイトでは物件情報を検索でき、エリア、予算、間取りといった条件に合わせて希望の物件を探すことが可能です。
ただし、実際に取引する場合、海外投資家は日本の不動産市場に精通していないケースが多く、契約内容の理解や手続きの進め方に不安を感じることもあるでしょう。
その場合、外国人対応可能な不動産会社に依頼すると安心です。日本には多言語でのサポートや国際的な取引経験を活かし、海外投資家のニーズに合わせたサービスを提供する不動産会社があります。
そのような不動産会社で物件探しから契約、決済まで、専門家によるワンストップのサポートを受けると良いでしょう。
ステップ②物件の見学と買付証明書を提出する
希望の物件が見つかったら、仲介する不動産会社に物件の見学を申し込みます。物件の見学はインターネットで得られる情報だけではわからない、建物の細部や周辺環境を直接確認することが目的です。
物件見学で購入意向が固まったら、不動産会社や売主に購入希望価格や条件などが記載された「買付証明書」を提出します。買付証明書とは、購入者が対象物件の購入意思を示す書面です。
ただし、買付証明書の提出は法的拘束力を持つものではありません。買付証明書を提出したからといっても購入を強制されるわけではなく、あくまで購入に向けた交渉のスタートを切るための手続きです。買付証明書の提出後に購入を取りやめても、違約金のようなペナルティはありません。
ステップ③購入資金を準備する
日本の不動産を購入する際には物件価格だけでなく、登記費用、仲介手数料、不動産取得税などの諸費用を準備する必要があります。諸費用の多くは物件価格や不動産の固定資産税評価額をもとに算出されるもので、全体で購入価格の6〜8%程度と考えておくと良いでしょう。
購入資金=購入価格×6〜8%
資金準備の方法としては、自己資金による一括払いや、日本の金融機関からの不動産投資ローンの利用が挙げられます。外国人が不動産投資ローンを利用する場合、融資条件として永住権が必要となるケースが一般的です。
しかし、永住権がなくても一定の条件を満たせば融資を受けられる、外国人向けの不動産投資ローンもあります。複数の選択肢を比較検討し、最適な方法を選ぶようにしましょう。
ステップ④必要な書類を揃える
外国人が日本で不動産を購入する際に必要な書類は、日本に住所がある場合とない場合で異なります。
【日本に住所がある場合】
- 在留カード・特別永住者カード
- 外国人住民票
- 印鑑・実印(ローンを利用する場合は実印が必要)
- パスポート、運転免許証などの本人確認書類
【日本に住所がない場合】
- 宣誓供述書(住所、サインの証明として)
- パスポート、運転免許証などの本人確認書類
宣誓供述書は日本に住所のない外国人が、日本で不動産を購入する際に必要な書類の1つです。主に、現住所の証明とサインの正当性を証明するために用いられます。2024年4月1日以降、宣誓供述書は当事者の自国だけでなく、居住国の公証人による認証が必要になりました。
また、パスポートの写しについても、本人のパスポート原本の写しであることを公証人に認証してもらう必要があります。
ステップ⑤売買契約書を交わして購入する
次に、不動産会社から物件の詳細や権利関係、契約解除時の規定などが記載された重要事項説明書の説明を受けます。内容に問題がなければ、売主と買主の間で売買契約を締結します。この際、通常は物件購入価格の10〜20%程度の手付金の支払いが必要です。
手付金=購入価格×10〜20%
契約締結後、司法書士による不動産登記に必要な書類の準備と本人確認が行われます。海外在住の買主の場合、書類のやり取りは主にメールや郵送で行われます。このプロセスには3~4週間程度を見ておきましょう。
その後、司法書士が登記簿の情報を確認し、問題がないことを確認したうえで、買主から売主へ手付金を差し引いた残金が支払われます。決済が終了したら、司法書士により新しい所有者への不動産登記の申請が行われます。
ステップ⑥購入後20日以内に財務省に報告する
外為法により、非居住者が日本国内の不動産を取得した場合、財務省に報告しなければなりません。具体的には取得後20日以内に「本邦にある不動産又はこれに関する権利の取得に関する報告書」を、日本銀行を経由して財務大臣に提出します。
外為法は日本と外国との間の資金や財・サービスの移動といった対外取引や、居住者間の外貨建て取引に適用される法律です。
この報告書は、取得者自身だけでなく、代理人(不動産仲介業者など)によっても作成・提出できます。また、書面での提出だけでなく、オンラインシステムによる提出も可能です。詳細な様式や提出方法は、日本銀行のウェブサイトで公開されています。
日本の不動産投資で気をつけたいポイント
外国人が日本で不動産投資をするうえでの注意点を解説します。
地震によるリスクに備える
日本は地震大国であり、大地震が頻発しているため、外国人投資家が日本で不動産投資をする際には、地震によるリスクへの備えが必要です。
立地選びでは、過去の地震被害や予測される震度などを考慮し、リスクの低いエリアを選びましょう。また、建物の耐震性も重要で、新耐震基準を満たしているかどうかの確認が不可欠です。
さらに、不動産を購入した後は、地震保険でのリスクヘッジをしておきましょう。
少子高齢化を念頭に購入不動産エリアの人口動態を考慮に入れる
日本では少子高齢化が急速に進んでおり、外国人投資家は日本の人口動態の変化を考慮に入れる必要があります。
例えば、高齢者のひとり暮らし世帯が増加傾向にあることから、マンションやアパートへの投資では、ファミリータイプよりも高齢者が暮らしやすい小さめのワンルームの需要が高まると予想されます。また、日本の人口は全国的に減少傾向にありますが、その減少率は地域によって異なります。
不動産投資をする際は、都道府県や市区町村レベルでの人口動態を詳しく調査し、将来的に人口減少率が低く、安定した需要が見込めるエリアを選ぶことが賢明です。
日本特有の状況を踏まえ、長期的な物件ニーズを見据えた投資戦略の策定が、外国人投資家にとって重要なポイントとなるでしょう。
海外投資家による日本の不動産投資は今後どうなる?
海外投資家による日本の不動産投資は、今後も活発な動きが続くと予想されます。その大きな理由のひとつが、日本の長期的な円安傾向です。
日米の金利差が大きく縮小する可能性は低いと考えられ、当面は円安が続くと見られています。よって、海外投資家にとって日本の不動産は割安感があり、投資の追い風となるでしょう。
また、投資対象としては中古物件と高価格帯物件の人気が高まると予測されます。ウクライナ情勢などを背景に建築コストが上昇し、新築物件の価格が上昇しているためです。都心部や開発が進む地域の優良物件に、注目が集まると考えられます。
このような円安や市場動向を背景に、外国人投資家による日本の不動産投資は活況が継続するでしょう。
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まず、永住権を持たない外国人の方でも、条件によっては利用可能であることが大きな特徴です。日本での不動産投資に関心を持つ海外投資家にとって、この点は非常に重要な要素となるでしょう。
また、銀行の融資条件に当てはまらない場合でも、セゾンファンデックスでは柔軟に対応し、融資の可能性を探ってくれます。収入や借入れ枠といった問題で銀行から融資を受けられない場合でも、セゾンファンデックスにまずは相談してみると良いでしょう。
さらに、自己資金がない場合でも、自宅や所有する収益不動産を担保にすることで、フルローンを組むことも可能です。
加えて、セゾンファンデックスの不動産投資ローンは、築年数が古い物件や、自営業の方でも融資を受けられる可能性があります。
日本の不動産市場に参入したい海外投資家で資金調達にお悩みの方は、セゾンファンデックスに相談してはいかがでしょうか。
おわりに
海外投資家による日本での不動産投資が活発になると、国内の不動産の市場にも大きな影響を及ぼすと考えられます。円安によって物件を購入しやすい状況が続くと、しばらくは海外投資家の市場への参入は続くと考えられます。
不動産投資を考える人は、今後も海外投資家の動向を注視していきましょう。