日本は治安が良く、世界中から観光客が訪れる一大観光国としての性質を有しています。また、諸外国とは違い外国人が不動産を取得しても追加で課税されることもありません。投資目的で日本の物件を購入したいと考える外国人投資家は多いですが、実際に購入するとなると日本の不動産会社に送金するか方法が問題になるはずです。今回の記事では、外国人が日本の不動産を購入する場合の送金方法やその他の注意点について解説します。
(本記事は2024年7月29日時点の情報です)
- 諸外国とは異なり、日本では外国人による不動産の購入は基本的に可能である
- 外国人が日本の不動産を購入する場合、海外送金、預金小切手、ローンの利用で代金を支払うことが想定される
- 外国人が日本の不動産を購入する場合の流れは日本人の場合と大きくは変わらないが、住民票の代わりに宣誓供述書が必要だったり、財務大臣への届出が必要だったりと細かい部分で異なる
- 外国人対応のノウハウがある不動産会社に依頼するのが重要
外国人による日本の不動産購入は可能
実は世界的に見た場合、外国人が土地を買える国はごくわずかと言われています。そのうちのひとつが日本であり、国籍や居住国に関係なく、しかるべき手続きを踏めば問題なく購入が可能です。
そこで、ここでは外国人が不動産を購入する際に発生する費用と税金の扱いについて解説します。
不動産購入時に発生する費用
不動産購入にあたって必要になる費用には、以下のものが含まれます。具体的な金額は個々の事例によって異なりますが、だいたい物件価格の1割程度を見込んでおくと良いでしょう。
- 仲介手数料
- ローン手数料(融資手数料、保証会社手数料、ローン保証料、斡旋手数料、団体信用保険)
- 登記費用(司法書士への報酬など)
- 手付金
- 火災保険料
- 修繕積立金(マンションなどの集合住宅の場合)
- 印紙税
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 消費税(土地の場合にはかからない)
外国籍を理由に追加の課税はない
日本の場合、外国人だからという理由で不動産の取得、所有にあたって追加の税負担が求められることはありません。日本人と同様、購入した物件の固定資産税や都市計画税や、不動産所得があれば所得税が毎年課税されます。
外国人が不動産購入する際の支払い方法
外国人が日本の不動産を購入する場合、不動産会社にどうやって支払いをするかが問題になります。ここでは一般的に考えられる3つの方法を、具体的な利用条件も含め解説していきます。
パターン①海外送金
日本の金融機関の口座を持っていなくても、海外の金融機関の口座から、日本の不動産会社が指定する口座に海外送金の形で振り込むことができます。
海外送金の注意点
海外送金を行う際、「送金依頼明細書」と「外国為替計算書」という2つの重要な書類が必要になります。
「送金依頼明細書」は、送金前に不動産会社から取得する書類です。この書類には、送金先の銀行情報、送金金額、送金目的などの詳細が記載されており、海外の銀行で送金手続きを行う際に必要となります。この書類があることで、送金の正確性が保証され、誤送金のリスクを軽減できます。
一方、「外国為替計算書」は送金後に不動産会社から受け取る書類です。これには実際に行われた送金の詳細(送金日、送金額、適用為替レート、手数料など)が記載されています。この書類は、送金が正しく行われたことを確認するためだけでなく、将来的に税務申告や資金移動の証明が必要になった際の重要な証拠書類となります。
これら2つの書類を適切に取得・保管することで、国際的な不動産取引における資金の流れを明確に記録し、法的・会計的な観点からも安全な取引を行うことができます。特に高額な不動産取引では、これらの書類の重要性が一層高まりますので、必ず不動産会社と緊密に連携して取得するようにしましょう。
これらの手配には時間がかかるケースがあるため、1~2週間余裕を持って送金しましょう。また、相応の知識・経験がある担当者でないと対応が難しいことを考えると、信頼できる不動産に依頼するのも重要です。
なお、海外からの送金を日本で受け取る場合は以下の情報が必要になるため、不動産会社からもれなく伝えてもらいましょう。
- 受取人取引銀行名
- SWIFTコード(BICコード)
- 受取人取引支店名・住所
- 受取人口座名義
- 受取人店番号口座番号
- 受取人住所
パターン②融資の利用
融資を受けて不動産を購入することも考えられます。代表的なものが住宅ローンや不動産投資用ローンです。
融資利用の注意点
たとえ、日本で暮らすことを目的として不動産を購入する場合でも、住宅ローンは日本の永住権を保有していないと利用が困難なのも実情です。日本の金融機関から融資を受けるのが難しい場合は、母国にある金融機関の日本支店の利用も検討しましょう。
また、投資目的の不動産を購入するなら、永住権のない外国人でもローンが組めることがあります。どこの国籍であれば利用できるのかなど、具体的な扱いはそれぞれの金融機関により異なるため事前に確認しましょう。
パターン③預金小切手
預金小切手とは、銀行などの金融機関が振りだす小切手のことです。送金する側が外国の金融機関で預金小切手を発行してもらったうえで、日本の受取人(例:不動産会社)に送ります。その後、受取人が日本の金融機関に持ち込み現金化するのが基本的な流れです。
預金小切手の注意点
預金小切手を使って送金する場合の注意点として、すぐに現金化できず、売主に敬遠される恐れがある点が挙げられます。特に、不動産の場合は金額が高額であるため、不動産会社によっては預金小切手での支払いを断ってくるかもしれません。
なお、金融機関によっては、外国で振り出された小切手の換金自体を扱っていないケースもあります。不動産会社がこの点を理由として預金小切手での送金を断ってくる可能性もあるため、預金小切手以外の方法で送金することを優先して考えましょう。
外国人が日本の不動産を購入するまでの流れ
外国人が日本の不動産を購入する場合の流れは、基本的には日本人が購入する場合と大きく変わりありません。ただし、購入後に財務大臣に報告する義務がある点だけが大きく異なるので注意してください。
一般的な流れは以下のようになっているので、順を追って解説します。
物件を検討する
まずはどの物件を購入するか検討しましょう。下見をしなくても購入自体は可能ですが、 文章や写真、不動産会社の担当者との会話だけでは得られる情報に限界があります。より正確な情報を得るという意味では、実際に下見をするのが望ましいです。
買付証明書を提出する
購入する物件を決めたら、不動産仲介会社(売主)に買付証明書を提出します。個々の不動産仲介会社によっても細かい部分は異なりますが、一般的には次の事項が記載されます。
- 購入希望者名
- 捺印(もしくはサイン)
- 対象の物件(所在地や建物の構造、規模、面積、部屋番号など)を特定する内容
- 購入希望金額
- 購入条件(融資の有無、契約時期など)
- 有効期限
代金の支払い方法を決める
買付証明書を提出したら、代金の支払い方法を決めます。不動産会社が指定する口座への送金、預金小切手の利用などが考えられますが、利用できる方法は個々の事例により異なるので確認しましょう。ローンを組む場合は、不動産会社および金融機関の担当者とやり取りをして申し込み手続きを進めます。
重要事項の説明を受ける
不動産会社の宅地建物取引士として登録済みである担当者から重要事項の説明を受けます。重要事項説明書(35条書面)を用いて物件そのものおよび取引条件に関する説明が行われるので、内容を理解しながら進めてください。具体的には以下の事項について説明が行われます。
取引建物に関する事項 | ・物件の所在地・種類・構造・床面積 ・登記された権利の種類 ・法令に関する事項 ・上下水道・電気・ガスの整備状況 ・建物の設備の整備の状況 ・造成宅地防災区域内か ・アスベスト(石綿)使用の調査内容 ・水防法に基づく水害ハザードマップにおける所在地(位置) |
取引条件に関する事項 | ・購入代金以外にかかるお金について ・契約の解除について ・供託や保険の加入について ・損害賠償額の予定・違約金に関する事項 ・支払金、預り金の保全措置について ・契約期間および更新に関する事項 ・用途その他の利用の制限に関する事項 ・管理の委託先について |
不動産の売買契約を結ぶ
重要事項説明を受けて、問題がなければ売買契約を結びます。売買契約締結時に印紙税や手付金が発生するので用意すべき金額を確認しておきましょう。
決済する
売買契約を締結後、手付金を除く残りの代金を支払います。指定された期日に支払いが完了するよう、スケジュールを決めて動きましょう。
所有権移転登記を行う
代金の支払いが終わったら、所有権移転登記を行います。この手続きにより、買主に所有権が移ったことを法的に証明することが可能になる仕組みです。以下の書類を用意する必要があるので、早いうちから手配をすすめましょう。
- 登記事項証明書
- 不動産登記申請書
- 委任状
- 登記原因証明情報(売買契約書、領収書など)
- 本国(又は居住国)の政府発行の住民票又は宣誓供述書とパスポート
- 認印
財務大臣に報告する
外国人が日本の不動産を購入した場合、財務大臣への報告を行わなくてはいけません。不動産の取得日から20日以内に、日本銀行を経由して財務大臣に「本邦にある不動産又はこれに関する権利の取得に関する報告書」を提出します。
ただし、不動産を投資目的で取得した場合に提出することが前提であるため、自分もしくは家族・親族・従業員が自宅として使うためなど一定の条件に当てはまる場合は提出の必要がありません。
外国人が日本の不動産購入を失敗させないためのポイント
外国人が日本で不動産をトラブルなく購入するためには、日本と外国の法律の違いやコミュニケーションの難しさを踏まえたうえで進める必要があります。ここでは失敗しないために意識すべきポイントとして、以下の5つの点について解説します。
- 外国人との売買仲介に強い不動産会社を選ぶ
- 宣誓供述書と本人確認書類は事前に準備しておく
- 契約書や重要事項説明書には外国語も併記してもらう
- 長期間の日本滞在が難しい場合は代理人を選任する
- 不動産購入後に権利証の受け取りを忘れない
外国人との売買仲介に強い不動産会社を選ぶ
外国人が日本で不動産を購入したいなら、外国人との売買仲介に強い不動産会社を選びましょう。過去にも外国人との売買仲介を何件も手掛けている、自分の母国語を話すスタッフがいるなど、さまざまな観点から強いかどうかを推し量れます。日本での不動産投資に関する外国人向けのセミナーを開催しているなど、積極的な情報発信を行っているならさらに期待できるでしょう。
宣誓供述書と本人確認書類は事前に準備しておく
宣誓供述書と本人確認書類は事前に準備しておきましょう。本来、不動産取引や登記手続きでは日本の住民票、印鑑証明書などが必要になりますが、在留資格のない外国人の場合これらの書類を用意するのは難しいのも事実です。
代わりになる書類として宣誓供述書や居住国での住民票(に相当する書類)、パスポートが必要になるため、来日前の早い段階から用意しておくのをおすすめいたします。
契約書や重要事項説明書には外国語も併記してもらう
契約書や重要事項説明書に外国語の併記をしてくれる不動産会社であれば、やりとりがさらにスムーズに進められます。契約内容の誤解によるトラブルを防止できるためです。
ただし、より高度なやり取りをしたい場合は、自分で通訳を手配しておくことも選択肢に入れましょう。不動産取引に関する知識のある通訳を紹介してくれるエージェントもあるので、事前に問い合わせてみるのをおすすめいたします。
長期間の日本滞在が難しい場合は代理人を選任する
永住権のない外国人の場合、長期間の日本滞在が難しいことが往々にしてあり得ます。手続きをスムーズに進めるためには、売買や決算、納税などの代理人を選任しておきましょう。外国人対応ができる税理士事務所・法人で引き受けてくれることがあるので一度相談してみるのをおすすめいたします。
不動産購入後に権利証の受け取りを忘れない
不動産を取得したら、2週間前後で不動産の登記識別情報通知が受け取れます。これは登記上権利者であることを証明する重要な書類であるため、確実に受け取りましょう。
受け取れるのが日本を出国した後になりそうなら、居住国に送ってもらうか、管理会社に預かってもらうかの扱いを決める必要が出てきます。
言語の壁を乗り越えるための対策
日本の不動産取引において、言語の壁は外国人購入者にとって大きな課題となります。契約書や重要事項説明書など、専門的な用語が多用される文書を正確に理解することは、母国語でさえ難しい場合があります。この言語の壁を乗り越えるために、以下の対策を検討しましょう。
専門通訳の利用
不動産取引に精通した専門通訳を雇うことで、複雑な法律用語や不動産特有の表現を正確に理解できます。多くの不動産仲介会社や法律事務所が、このようなサービスを提供しています。費用は取引の規模や複雑さによって異なりますが、重要な交渉や契約締結時には必須と考えるべきでしょう。
翻訳サービスの活用
契約書や重要事項説明書などの重要文書は、専門の翻訳サービスを利用して母国語に翻訳することをお勧めします。ただし、法的拘束力があるのは日本語の原文であることに注意してください。翻訳版は理解を助けるための参考資料として扱われます。
多言語対応の不動産会社の選択
外国人顧客向けのサービスを提供している不動産会社を選ぶことで、言語の問題を大幅に軽減できます。これらの会社は多言語のスタッフを擁し、英語をはじめとする外国語での対応が可能です。
法的アドバイザーの起用
外国語に堪能な弁護士や司法書士を起用することで、法的な側面からのサポートを受けられます。彼らは契約内容の説明や、取引に関する法的リスクの解説を母国語で行ってくれます。
テクノロジーの活用
AI翻訳ツールなどのテクノロジーも補助的に利用できます。ただし、法的文書や専門用語の翻訳には不正確な場合があるため、重要な決定の際には必ず人間の専門家による確認が必要です。
言語の壁を克服するための対策には追加のコストがかかる場合がありますが、誤解や法的トラブルを防ぐためにも、これらの投資は不可欠です。慎重に準備を進め、必要に応じて専門家のサポートを受けることで、スムーズで安全な不動産取引を実現できるでしょう。
外国人が日本の不動産を購入する際の法的リスクと注意点
外国人が日本で不動産を購入する際には、日本特有の法律や慣習に起因する様々な法的リスクがあります。これらのリスクを理解し、適切に対処することが重要です。以下に主な法的リスクと注意点を解説します。
土地利用規制に関するリスク
日本では、都市計画法や建築基準法などにより、土地の利用方法が厳しく規制されています。
注意点:購入予定の不動産が位置する地域の用途地域、建ぺい率、容積率などを事前に確認しましょう。これらの規制により、将来的な建て替えや増築が制限される可能性があります。
権利関係の複雑さに関するリスク
日本の不動産には、地上権、借地権、抵当権など、複雑な権利が設定されている場合があります。
注意点:不動産登記簿を詳細に確認し、第三者の権利が設定されていないか、また設定されている場合はその内容を把握しましょう。必要に応じて、日本の不動産法に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
土壌汚染や地震リスク
日本特有のリスクとして、土壌汚染や地震による被害があります。
注意点:土壌汚染対策法に基づく調査結果や、地震ハザードマップを確認しましょう。また、地震保険への加入も検討すべきです。
相続に関するリスク
外国人が所有する日本の不動産の相続には、国際私法の適用という複雑な問題が発生します。
注意点:自国と日本の相続法の違いを理解し、必要に応じて遺言を作成するなど、事前の対策が重要です。国際相続に詳しい弁護士や税理士に相談することをお勧めします。
賃貸借契約に関するリスク
投資目的で不動産を購入し賃貸する場合、日本の賃貸借法制度を理解する必要があります。
注意点:日本の借地借家法は賃借人の権利を強く保護しています。賃貸借契約の解除や賃料の値上げには制限があることを理解しておきましょう。
税務上のリスク
不動産の取得、保有、売却のそれぞれの段階で、様々な税金が課されます。
注意点:固定資産税、不動産取得税、登録免許税などの税金について理解し、適切に納税する必要があります。また、自国と日本の間の二重課税防止条約の内容も確認しましょう。
外為法に基づく事後報告義務
外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づき、一定の条件下で財務大臣への事後報告が必要です。
注意点:報告義務を怠ると罰則の対象となる可能性があるため、不動産取得後の手続きも忘れずに行いましょう。
これらの法的リスクや注意点に適切に対処するためには、日本の不動産法制度に精通した専門家(弁護士、税理士、不動産鑑定士など)のアドバイスを受けることが不可欠です。専門家との連携により、安全で確実な不動産取引を実現し、将来的なトラブルを回避することができるでしょう。
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おわりに
日本は外国人であっても不動産の取得が可能で、追加での税負担もないことから不動産投資の対象国として魅力的な国です。しかし、日本での永住権がなく、銀行口座も持っていない場合はどうやって日本の不動産会社に送金をするかが問題になります。海外の銀行から海外送金扱いでお金を振り込むか、預金小切手を使うかなどの方法が考えられますが、外国人でも利用できるローンを使うことも検討しましょう。また、いずれの方法を使うにしても、手続きに手間がかかりがちなので早いうちから進めるのをおすすめいたします。