不動産売買を行っており登記手続きを控えている方の中には、不動産売買を短期に行う予定のため節税テクニックを探している方もおられるのではないでしょうか。不動産売買の際には所有権の移転登記が必要であり、それにともなう登録免許税や司法書士に依頼する報酬などが必要になります。しかしそれらの費用を抑える方法に「中間省略」があります。
今回は「中間省略」について解説します。不動産登記でトラブルになりやすい「中間省略」の注意点もあわせて紹介しますので、節税などで「中間省略」を検討している方に必見の内容です。
1.中間省略登記とは
中間省略登記とは、不動産の取り引きの際に節税を目的として行われるものです。
例えば不動産の取り引きにおいて、まずAさんからBさんに売却され、そしてすぐにBさんからCさんに売却されたケースでは、本来なら、AさんからBさんに売却された時点で一度所有権の移転登記を行い、その後BさんからCさんへ売却されたタイミングで所有権の移転登記を行う必要があります。
しかしBさんからCさんへ売却される期間が短い場合は、AさんからCさんへ所有権が移転したことにすれば所有権移転登記は一度で済み、その分登録免許税や司法書士への報酬を抑えることにつなげられます。
・中間省略登記のメリット
中間省略登記には登録免許税を抑えられるメリットがありますが、それ以外にもメリットが存在します。
それはBさんが転売によって得た利益をAさんやCさんに知られずに済むことです。もちろん売買という取り引きが行われている以上、売買契約書は作成しますが、AさんからBさんへの売却では、AさんとBさんでの契約締結になります。
そしてBさんがCさんに売却した際には、BさんとCさんで売買契約を交わすことになります。そのためAさんはBさんがCさんにいくらで売却したのかを知ることはできませんし、CさんもBさんがAさんからいくらで購入したのかを知ることができません。
・中間省略登記は法律上どうなっている?
中間省略登記について、裁判所は当事者(上記のケースではA、B、Cの3人)の同意があれば、CさんはAさんに対して直接移転登記を行うよう求めることができるとしています。
またBさんが同意することなく、AさんとCさんとの合意のみで行われた中間省略登記だとしても、その登記の内容が現在の権利関係に合っているなら、Bさんには正当な利益がない以上、中間省略登記の抹消を求めることはできず、さらに正当な利益があったとしても、Bさん以外の方が中間省略登記の抹消を求めることはできないとしています。
ただし、あくまでも裁判所の判断であって、登記の実務を行う法務局では中間省略登記を認めていません。法務局としては権利の移転に忠実に、AさんからBさんへの所有権移転登記を行い、その後BさんからCさんへの所有権移転登記を行うのが正当と考えています。
しかし改正前の不動産登記法では、登記の際に「登記原因を証する書面」を添付する必要があるものの、用意できなければ「申請書副本」で代用することができ、Bさんの存在が記載されていない申請書副本を添付することで、中間省略登記が可能な状態になっていました。
2.新・中間省略登記とは
2005年に不動産登記法が大きく改正され、インターネットを使用した電子情報で受け取ることになりました。登記の際には「登記原因証明情報」の添付が必須になったことから、中間の位置にいるBさんの存在を隠すことができなくなり、中間省略登記を行うことは実質的に不可能になりました。
しかし、それに反対する不動産業界から中間省略登記を認める声が上がり、結果としてこれまでの中間省略登記と同じ効果を得られる方法が認められています。これを新・中間省略登記といいます。
・中間省略登記と新・中間省略登記の違い
新・中間省略登記では、「第三者のためにする契約を用いた売買契約」による第三者への直接の所有権移転登記が認められることになりました。この「第三者のためにする契約」が認められた点が、これまでの中間省略登記と新・中間省略登記の大きな違いです。
・第三者のためにする売買契約手続き
新・中間省略登記を行うにあたり、AさんとBさんとの売買契約に「所有権はAさんからCさん(Bさんが指定する第三者)に直接移転する」という特約を付けます。これが「第三者のためにする契約」です。つまりAさんはBさんに対して、所有権の移転を直接Cさんに行うことをBさんに約束するわけです。
・買主の地位の譲渡手続き
新・中間省略登記の手続きには、買主であるCさんの地位の譲渡手続きが必要です。具体的にはまず、AさんとBさんが不動産売買契約を締結し、同時にAさんは「買主の地位譲渡の同意」を行います。
その後BさんからCさんへ「買主の地位を譲渡する契約」を締結します。これによって所有権はAさんからCさんへ直接移転します。BさんとCさんとの間で交わす契約は売買契約ではなく、譲渡契約です。そのため、Bさんに登記の義務はありません。
3.新・中間省略登記でトラブルにならないための注意点
新・中間省略登記を実際に行う際には、以下の点に注意することが大切です。
・重要事項説明や契約不適合責任(瑕疵担保責任)が免除される場合がある
宅建業法では、不動産売買契約の際には重要事項説明が義務化されており、さらに契約不適合責任が適用されます。
しかし、新・中間省略登記でBさんとCさんとの間で行われるのは譲渡契約ですので、重要事項説明の義務や契約不適合責任が適用されない場合があります。そのため、万が一のことがあった場合のリスクが大きいことを覚えておきましょう。
・売主の代金回収に時間がかかる場合がある
Bさんが不動産会社である場合、Aさんと不動産会社Bが特約付きの売買契約を締結し、その後不動産会社BとCさんが譲渡契約を結ぶ流れになるため、不動産会社BとCさんとの契約が締結されない限りAさんには代金が支払われないことになります。
Cさんの存在が明確であればいいのですが、不動産会社が買主(Cさん)をこれから見つけるという状況だと、その分売買代金の回収に時間がかかる点に注意が必要です。
・同時決済でない場合に所有権移転リスクを負う
AさんとBさんとの間の契約は売買契約ですが、Bさんは所有権を取得せずにAさんに対して代金を支払います。仮にAさんが悪意を持ってBさんから代金を受け取った後に、Cさん以外の第三者に所有権を移転する可能性もないとはいえません。それを防ぐには、「AさんとBさんとの取り引き」そして「BさんとCさんとの取り引き」を同時に行うことが大切です。
おわりに
新・中間省略登記は不動産取引において節税効果のある方法ですが、仕組みや注意点をしっかりと理解して行うことが大切です。そのためにも、メリットを有効に利用できるような契約を心掛けましょう。
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