この記事では「自筆証書遺言」について取り上げています。相続資産額が大きい方ほど遺言書は重要な役割を果たします。しっかりとした自筆証書遺言を用意し、相続人間のトラブルを未然に防ぎましょう。
残された家族がもめないための遺言作成
「法定相続分以外の割合で遺産相続したい」「相続人の数が多く、疎遠な親族がいる」「子どもがおらず、配偶者のみに自分の財産を相続させたい」そんな方におすすめなのがクレディセゾングループの「セゾンの相続 遺言サポート」です。法定相続人の間柄によっては遺産の話し合いがスムーズに進まない場合があります。遺言書でスムーズな相続に備えたい方は、ぜひご相談ください。
セゾンの相続 遺言サポートの詳細はこちら
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、遺言者がご自身で書いた遺言書のことです。ご自身で作成するので、費用はかかりません。ご自身ひとりで作成できるため、好きな時間に作成することもできます。
ただし自筆証書遺言の効力が法律上認められるには、所定の要件を満たさなければなりません。さらに自筆証書遺言は、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。
検認とは、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。相続人に対して遺言の存在や内容を知らせるとともに、遺言書の状態などを知らせます。遺言の有効・無効の判断はしません。
自筆証書遺言の法律上の要件
自筆証書遺言の法律上(民法第968条)の要件は、以下のとおりです。
- 遺言者本人が全文、日付、氏名を自書し、押印していること
- 財産目録を添付する場合は、そのページごとに署名・押印があること
- 訂正がある場合は変更場所を指示し、その旨を付記、署名し、その場所に押印すること
自筆証書遺言は、その全文、日付、氏名を必ず遺言者が自書しなければなりません。財産目録に関しては、パソコンなどで作成しても構いません。ただしその場合は、ページごとに署名・押印をしなければなりません。
日付は、その日付が特定できるよう明記する必要があります。例えば「令和4年12月吉日」というような書き方は、認められません。
自筆証書遺言の正しい書き方
自筆証書遺言に決まった書式はありません。要点さえ押さえておけばどのように書いても問題ありません。自筆証書遺言のひな型や見本を参考に書けば間違いないでしょう。
自筆証書遺言を書くときは、以下の手順で書くとスムーズです。
(1)財産を確認する
(2)財産目録を作成する
(3)相続人の範囲を確認する
(4)財産の配分を考える
(5)遺言書を書く
財産を確認するためには、財産を証明する必要書類を用意する必要があります。例えば不動産であれば「登記簿謄本」「固定資産税納税通知書」「権利書」などがこれに該当します。株などの有価証券であれば「残高証明書」、預貯金であれば「残高証明書」「預金通帳」などです。
書類が揃ったら財産目録を作成しましょう。財産目録については自書である必要はなく、パソコンでの作成も認められます。ただし各ページに署名、押印をする必要はあります。
相続人の範囲も確認しなければなりません。相続人には優先順位があります。第1順位は子ども(直系尊属)です。第2順位は親(直系尊属)、第3順位が兄弟姉妹となります。なお配偶者は常に相続人となります。例えば、被相続人(亡くなった方)に配偶者、子ども、兄弟姉妹がいたとします。このとき、相続人は配偶者と子どもです。
相続人を確認したら、財産の配分を考えましょう。「誰に何をどれだけ相続させるか」は、遺言書の本題です。相続人以外の方にも財産を配分することは可能ですが、「遺留分」の問題もありますので、ここは慎重に考えたいところです。必要であれば専門家に相談しましょう。
ここまで済んだら、自筆証書遺言を作成しましょう。このときくれぐれも記載漏れのないよう注意してください。自筆証書遺言の要件を満たすことはもちろん大事ですが、同じくらい相続財産の詳細情報や相続人の範囲・配分も大事です。あとあとトラブルとなっては大変です。誤解のないよう明示しましょう。
自筆証書遺言の保管方法
自筆証書遺言の保管方法に特別な決まりはありません。自宅や貸金庫などで保管するのが一般的です。ただしこの方法だと紛失の恐れがあります。また、利害関係者によって遺言書が破棄、隠匿、改ざんなどをされる可能性もあります。
2020年7月10日より、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」が開始されました。これにより遺言書を法務局(遺言書保管所)で管理・保管できるようになりました。自筆証書遺言の保管に不安がある方は、この制度の利用を検討すると良いでしょう。
この制度のメリットは、以下のとおりです。
- 遺言書の紛失の恐れがない
- 利害関係者による遺言書の破棄、隠匿、改ざんなどを防ぐことができる
- 家庭裁判所における検認が不要
- 相続開始後、相続人は法務局において遺言書を閲覧できる
- 相続開始後、相続人は法務局において遺言書情報証明書の交付が受けられる
- 遺言者死亡後、関係相続人に対し遺言書保管通知が届く
自筆証書遺言で注意すべきケース
自筆証書遺言で注意すべきケースがあります。大別すると、以下のようなケースです。
- 自筆証書遺言が無効になるケース
- 相続トラブルに発展するケース
せっかく書いた自筆証書遺言が、無効になったりトラブルに発展したりするのは避けたいものです。注意すべきケースを、以下で紹介します。
遺言書の要件を満たしていない
自筆証書遺言は、法律(民法)でその要件が規定されています。この要件を満たしていないと自筆証書遺言は無効です。
自筆証書遺言を書くときは、「遺言書の全文、日付、氏名を自書し、押印すること」「訂正があるときは、ルールに従うこと」など所定の要件を必ず満たすよう注意しましょう。
夫婦など2人以上の複数人で共同作成している
民法第975条に「共同遺言の禁止」が規定されています。「遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない」とされており、夫婦など2人以上の複数人で共同作成した場合にはその遺言は無効になります。
財産が特定できない曖昧な書き方をしている
財産については誰が見ても特定できるよう、正確に書かなければなりません。財産が特定できないような曖昧な書き方のものは無効になります。
例えば不動産なら「所在」「地番・家屋番号」「地積・延床面積」など、預貯金であれば「金融機関名」「支店名」「口座の種類」「口座番号」など、具体的に書くよう注意しましょう。
遺言書が複数ある場合は古いものが無効になる
遺言は、いつでもその全部または一部を撤回することができます(民法第1022条)。また遺言が複数ある場合であってその内容が抵触する場合は、新しい日付の遺言で古い日付の遺言を撤回したとみなされます(民法第1023条第1項)。
気を付けたいのは、古い遺言の全てが無効になるわけではないということです。抵触した部分についてのみ、新しい内容が上書きされるということです。あまりに撤回が多くなってしまった場合には、一度全てを書き換えたほうが良いかもしれません。
遺言者本人が認知症の場合、作成時点の症状次第で無効になることがある
民法第961条から第963条にかけて「遺言能力」について規定があります。民法第963条によると「遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない」とされています。つまり遺言をするには、遺言作成時において意思能力がなければならないということです。
認知症の場合、作成時点の症状次第では無効になることがあります。
民法第973条には「成年被後見人の遺言」について規定があります。その第1項には「成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師2人以上の立会いがなければならない」とあります。
認知症の方が自筆証書遺言を作成した場合、遺言作成時に意思能力があったということを証明できるかどうかが課題です。
具体的な行動を伴わない曖昧な表現をしている
曖昧な表現はトラブルの元です。人によって解釈が異なる表現は避けなければなりません。
「相続させる」「遺贈する」「取得させる」は、明確な表現です。所有権が移ることが明確です。曖昧な表現とは「任せる」「託す」などです。「処分を任せる」「管理を任せる」といったように複数の解釈が可能な表現はトラブルを招く可能性があるので避けるようにしましょう。
著しく公平性を欠くような遺留分を侵害する記載がある
財産をどのように配分するかは、基本的には遺言者の意思で決められます。ご自身の財産をどのように処分しようがご自身の自由です。しかし相続に関しては、全ての財産を自由に配分することはできません。
一定の相続人は、法律によって相続財産を一定割合分だけ受け取れるよう保護されています。これを「遺留分」といいます。この遺留分を侵害するほど、著しく公平性を欠くような記載があると、相続トラブルに発展する可能性があります。例えば「全財産を長男に相続させる」「全財産をAさん(相続人ではない)に遺贈する」などが、これに該当します。
財産の配分については、なるべく公平性を保つよう(理解が得られるよう)配慮するのが望ましいです。
おわりに
遺言書はご自身が亡くなった後、遺族が財産をどう受け取るかを決めるためにも有効です。したがってご自身の意思を尊重するのが最も重要です。
遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」があります。本記事では自筆証書遺言について解説しました。自筆証書遺言の要件、書き方、保管方法についてご理解いただけたことと思います。
遺言書を書くときに頭を悩ませるのは「いかに公平に財産を配分するか」ではないでしょうか。実際に財産目録を作成してみると、不動産を筆頭に全てを平等に配分するのは難しい問題です。特に不動産は、共有名義にすると将来トラブルになる可能性もあります。
このような問題を解決する方法として「現金を多く用意しておく」ということがあります。とはいえ現金を多く用意しておくことは簡単なことではありません。ひとつの方法として「セゾンのリースバック」があります。
リースバックとは、不動産を売却してそれを借りる(リースする)というものです。この方法では、その不動産が自宅であっても利用は可能です。不動産を現金化でき、自宅に住み続けることができます。
「セゾンのリースバック」は、相続対策にも有効です。財産の分割でお悩みであれば一度検討してみても良いのではないでしょうか。