道路には、自治体が所有して管理する「公道」と、個人が所有する「私道」の2種類があります。そして私道には、所有権者が1人であるもののほかに、複数の所有権者で共有している「共有私道」があります。共有私道の管理義務は、共同所有者全員にあります。
本来であれば私道は、私道の所有者や私道の所有者が通行を認めた方だけが利用できます。そしてその私道が共有私道である場合、私道に接している不動産を工事する際には共同所有者全員の合意が必要になります。
本記事では「私道共有持分」について取り上げ、私道が複数人の共同名義になっている場合に発生する道路特有の問題や、共有私道に接している不動産に関して注意すべき点を解説します。
権利関係やトラブル事例、売買時の注意点などを事前に押さえて、共有私道になっている道路が自身の所有する不動産に接している場合の参考にしてください。
私道の共有持分とは
私道とは、個人が所有している道路のことを指します。個人が所有しているため原則としてその道路を利用できるのは所有者本人、もしくは所有者が通行を認めた方のみです。また私道の管理義務は所有者にあります。
公道とは自治体が所有し管理する道路で、いわゆる道路法上の道路を指します。道路法では、道路の管理は国や市など行政が行うことと規定しています。そのため公道は公共物となり、道路法だけでなく道路交通法の適用対象にもなっています。
私道は個人の所有物ですので、原則として道路交通法の適用はありません。ただし公道と私道が接している場合、その私道は道路交通法の適用を受けることになっています。
私道の所有方法には2つあります。1つはその私道を共有して所有する方法で、「共同所有型私道」と呼ばれます。そしてもう1つは私道を分筆し、分筆分をそれぞれの所有者が単独で所有する方法です。この方法は「相互持合型私道」といわれています。
道路は建築基準法によって、以下のように分けることができます。
42条1項3号道路(既存道路)
都市計画区域および準都市計画区域の指定や変更などによって、建築基準法が施行されることになった時点ですでに存在している幅4m以上の道路のこと。
42条1項5号道路(位置指定道路)
土地を建物の敷地として利用する目的で、都市計画法や土地区画整理法などに基づくことなく造られた幅4m以上の道路で、特定行政庁による位置指定を受けたもの。ただし、位置指定道路になるためには以下の条件を満たさなければなりません。
- 道路の両端が他の道路に接していること
- 袋路状の道路の場合、幅が6m以上であること。幅が6m未満の場合は、長さが335m以下であること
42条2項道路
都市計画区域および準都市計画区域の指定や変更などによって、建築基準法が施行されることになった時点で、すでに建築物が建ち並んでいる幅1.8m以上4m未満の道路で、特定行政庁が指定したもの。
また42条2項道路については、「道路の中心線から上下もしくは左右に2mずつ後退した線」が境界線になります。これが「セットバック」といわれるもので、セットバックとなった部分には新たに建築物を造ることはできないことも覚えておきましょう。
43条但し書き道路
上記で述べた接道条件を満たしていなくても、特に安全上問題のないと判断された道路を指します。
このような道路に面した土地は本来なら建築物を建てることができませんが、建築審査会で申請が認められれば建物を建てることが可能になります。
私道共有持分の権利および周辺所有者の同意
私道の共同所有者がその周囲の住民である場合、共同所有者それぞれが私道を通る権利を持っています。しかし、自身の所有する土地から公道に出るまでに他の方が所有している私道を通らねばならないケースだと、そこに何らかの権利が必要です。
この項では、私道共有持分の権利や周辺所有者の同意について解説します。
水道やガスなどに関する掘削承諾
水道やガスなどを引くために行う土地の掘削工事は、民法上の地役権にあたります。実際に工事を行う際には、所有者から掘削工事を行うための承諾書を取り寄せる必要があります。
私道に関する通行権
(1)囲繞地通行権(いにょうちつうこうけん)/ 袋地通行権
他人の名義の土地に囲まれている土地を袋地と呼びますが、袋地から公道に出る道がないと、その土地の評価額が大きく下がる原因になります。
そのため民法では、「他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るためにその土地を囲んでいる他の土地を通行することができる(210条1項)」と定めており、袋地に住んでいる方は他の土地の所有者との契約や承諾がなくても、私道を通ることができます。
(2)通行地役権
通行地役権とは袋地ではない場合でも、契約によって他人が所有する私道を通行できるとするものです。契約については合意があれば良いことになっており、理由までは問われません。通行地役権は契約によって設定するのが通常ですが、20年間通路として使用していたとして通行地役権を時効により取得するケースがあります。
(3)賃貸借契約などによる通行権
通行権は、通常の賃貸借契約によって得ることもできます。その際に対価が発生する場合は「賃貸借」で、無償で通行できる場合は「使用貸借」になります。また私道も、固定資産税などの課税対象です。しかし私道の所有者が通行に制限を求めず、他人に自由に通行させている場合、固定資産税が免除されます。
私道共有持分によくあるトラブル事例
私道共有持分では、共有者同士トラブルが発生することがあります。ここではトラブルの事例について紹介します。
掘削工事に関する全員の同意がないために行えない
水道やガスなどに関する道路の掘削工事は、民法上では「共有物の変更行為」にあたります。共有物の変更行為を行うためには共有者全員の許可が必要です。1人でも掘削工事に反対する方がいた場合、工事を行うことができません。
しかし水道やガスはライフラインですので、土地を購入したにもかかわらずその土地のうえに生活するための住宅を建てられないことになってしまいます。そのため建物を建てるにあたって道路の掘削工事が必要になる場合は、土地購入時にあらかじめ工事の承諾書を取得しておく必要があります。
道路補修工事で過半数の同意が取れていない
私道の管理者はその私道の所有者です。そのため道路が傷んでいる場合は、補修工事を行わなければなりません。
道路の補修工事は共有物の管理行為に該当し、工事を実施するにあたって共有者全体の過半数の同意が必要です。同意を得ないまま勝手に工事を行うことはできませんので、事前に共有者から補修の承諾書を取得しておく必要があります。
共有者の中に修繕費用や固定資産税を支払ってくれない人がいる
共有物にかかった修繕費用や固定資産税などは、原則として共有者の持分に応じて負担しなければなりません。しかしなかには、費用や税金の負担を拒否する方もいます。支払いを拒否した方の費用は、最終的には他の共有者が負担しなければなりません。そのため、事前に負担部分について話し合っておくことが大切です。
私道に接している不動産売買で注意すべき点
私道に接している不動産を売買する際には、以下の点に注意しておきましょう。
私道権利内容の明確化する
私道には、掘削工事をする権利や通行する権利などがあります。これらの権利についての詳細を買主にきちんと伝えておかなければなりません。これらの内容は重要事項説明書に記載しなければならない内容ですので、正確に伝えるようにしましょう。
建築基準法の条件をクリアした私道であることを確認する
建物を建設するためには、建築基準法に定められている条件をクリアしなければなりません。そのため、私道が道路の条件をクリアしているかの確認が必要です。条件を満たしていない土地は建物を建設できないため、道路の幅は4m以上あるか、4m以上の幅の道路に2m以上接しているかを必ず確認するようにしましょう。
接している私道に持分がない場合は書面で権利取得する
接している私道に自身の持分がない場合は、通行する権利や建物を建築する権利について、私道の所有者から書面で取得する必要があります。
おわりに
私道を共有している場合、通行や道路工事など通常の不動産と異なる特殊な要因が発生し、管理が複雑化する傾向があります。
一般的に共有状態は解消したほうが良いといわれていますが、他の相続人から共有持分を買い取る資金が手元にない場合は、セゾンファンデックスの遺産分割ローンのご利用がおすすめです。
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