不動産投資は、最低でも数百万円〜数千万円の資金が必要となるため、不動産投資ローンを活用するのが一般的です。ただし、不動産投資ローンは住宅ローンと比べて審査基準が厳しく、審査に通るのが難しいといわれています。
そのため、事前の対策をしっかり行わないと金融機関からの融資を受けられず、不動産投資を始められないでしょう。
この記事では、不動産投資ローンの審査基準や審査に通らないケース、通過するための対策を解説します。この記事を読むことで、不動産投資ローンの審査に通るための具体的な準備方法や、金融機関がどのような点を重視しているのかを理解し、審査通過の可能性を上げることができます。

不動産投資ローンは住宅ローンよりも審査が厳しい
一般的に、不動産投資ローンは住宅ローンよりも審査が厳しいといわれています。本項では、不動産投資ローンと住宅ローンの4つの違いを解説します。
- 借り入れの目的
- ローンを返済するための原資
- 金利
- 審査基準
住宅ローンと比較しながら、不動産投資ローンの理解を深めていきましょう。
借り入れの目的
不動産投資ローンは、家賃収入を目的として不動産賃貸業を営むための投資用物件を購入する際に利用される融資です。そのため、売却益を目的とした不動産投資には融資を行いません。
一方、住宅ローンは、自分自身が居住するための不動産を購入する際に利用されます。
ローンを返済するための原資
不動産投資ローンは、家賃収入を原資として返済を行います。ただし、不動産投資には、入居者が集まらない空室リスクや、家賃を支払わない家賃滞納リスクが存在します。これらのリスクにより家賃収入を得られない場合、給与収入や貯蓄を切り崩して、ローンを返済しなければなりません。
一方で、住宅ローンの返済の原資は主に給与収入です。
金利
基本的に、不動産投資ローンの方が住宅ローンよりも金利が高く設定されています。一般的に、不動産投資ローンの金利はおよそ1.5〜5.0%です。
一方、住宅ローンは固定金利か変動金利かによりますが、およそ0.5〜2.0%と低めに設定されています。
不動産投資ローンは、先述した空室リスクや家賃滞納リスクなどがあるため、住宅ローンよりもリスクが高いと金融機関は判断します。そのため、万が一の事態に備えて金利を高めに設定しています。
審査基準
住宅ローンでは基本的に、申し込み者の属性(年収や勤務先など)をメインに審査を行います。
一方で不動産投資ローンは申し込み者の属性に加え、物件の収益性も審査の対象です。つまり金融機関は、投資用物件が家賃収入を安定して生み出せるかを確認し、申し込み者の返済能力と物件の収益性の両方を総合的に評価します。
不動産投資ローンの6つの審査基準
不動産投資ローンは、一般的な住宅ローンよりもリスクが高いため、厳しい審査が実施されます。 ここでは、主な審査項目と基準を6つ解説します。
- 年収
- 自己資金
- 勤務先と勤続年数
- 物件の収益性
- 物件の担保価値
- 法定耐用年数
順番に確認していきましょう。
1.年収
不動産投資ローンでは、住宅ローンよりも高めの年収が求められます。一般的には、年収500~700万円以上が目安です。
基本的に金融機関の規模が大きくなるほど、求められる年収は高くなります。たとえば、メガバンクは、年収1,000万円ないと審査の通過が厳しいともいわれています。
なお、高年収の方が必ず融資を受けられるとは限りません。不動産投資ローンは、後述する物件の収益性や担保価値なども含めて総合的に審査されます。そのため、年収はあくまでも審査基準のひとつとして考えることが大切です。
2.自己資金
自己資金とは、物件購入のために自分自身で用意する資金です。自己資金を多く用意し、自己資金比率が高いほど、金融機関から評価されやすくなります。
一般的には、物件価格の2〜3割を自己資金として用意しなければなりません。
例えば、3,000万円の物件を購入する場合、600~900万円の自己資金が必要です。
ただし、物件価格の2〜3割というのはあくまで目安です。金融機関や申し込み者の属性によっては、より多くの自己資金が求められる可能性があります。
3.勤務先と勤続年数
住宅ローンと同様に、不動産投資ローンの審査においても勤務先や勤続年数は非常に重要です。
大手企業や公務員など安定した収入が期待できる勤務先・職業の場合、審査で有利になる傾向があります。一方で、自営業者や中小企業に勤務している場合、収入が不安定とみなされやすく、審査に通りにくいです。
また、勤続年数も審査で重視されるポイントです。就職または転職してから1年未満だと退職するリスクが高く、収入の安定性が低いと判断されやすいため、審査では不利になる傾向があります。一般的には、同一の勤務先で2〜3年以上の勤続年数が求められます。
4.物件の収益性
先述したように、不動産投資ローンでは申し込み者の返済能力に加え、物件の収益性も審査の対象です。つまり、
金融機関は家賃収入で返済が滞りなく行えるかに注目します。
例えば、人気エリアでは空室リスクが少ないと判断されやすいため、審査で有利となるでしょう。また、融資額に対して多額の収益が期待できる場合も審査でプラスになる傾向があります。
5.物件の担保価値
万が一返済が滞った場合に備え、金融機関は物件に抵当権を設定して融資を行います。抵当権とは、ローン契約者(債務者)が返済不能に陥った際に、債権者である金融機関が担保にした物件を売却して貸付金を回収できる権利のことです。高値で売れる見込みがあるほど、金融機関は安心して融資を実行しやすいため、物件の価値は不動産投資ローンの審査において非常に重要です。
基本的に、駅近の物件やターミナル駅に近い物件、再開発エリアの物件は担保価値が高くなります。また、新築に近い物件やリフォームがされている物件も担保価値が高いと判断されやすいです。
6.法定耐用年数
法定耐用年数は、融資期間に影響します。
法定耐用年数とは、建物をはじめとした固定資産が使用可能な、法律で定められている期間のことです。法定耐用年数は資産の種類や構造によって異なり、国税庁が定めた「主な減価償却資産の耐用年数表」に規定されています。
例えば、 住宅用の建物の耐用年数は下記のように規定されています。
- 木造:22年、
- 金属造:19年・27年34年(骨格材の厚みによる)
- 鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造・鉄筋コンクリート(RC)造:47年
金融機関は、法定耐用年数を考慮して融資期間を設定します。例えば、築10年の木造物件を購入する場合、融資期間は最長12年程度(法定耐用年数22年 – 築年数10年)です。
ただし、法定耐用年数をどこまで基準にするかは、金融機関や個々の状況によって異なります。
金融機関別の不動産投資ローンの特徴
不動産投資ローンの審査では、金融機関ごとに異なる基準が適用されます。金融機関ごとの特徴を知ることで、審査を有利に進めやすくなるでしょう。
本項では、不動産投資ローンを提供している以下の4つの金融機関の特徴について解説します。
- 銀行
- 信用金庫
- 日本政策金融公庫
- ノンバンク系金融機関
自分に合った金融機関を選ぶことが、投資を成功させる鍵です。
銀行
銀行は、「都市銀行」「地方銀行」に大別されます。都市銀行は対応エリアが広く、比較的低金利で融資を受けられる点が魅力です。しかし、その分審査基準は厳しく、綿密な事業計画と申し込み者ご自身の高い信用性が求められます。
一方、地方銀行は対応エリアこそ限られますが、都市銀行並みの金利が適用される場合があります。また、都市銀行よりも審査基準は緩やかなケースが多く、都市銀行よりは比較的融資を受けやすいです。
ただし、後述する信用金庫よりは審査が厳しいため、全く取引実績や不動産投資経験のない方が審査に通過するのは難しいでしょう。
信用金庫
信用金庫は、地域の方が会員となり、相互扶助を目的とする金融機関です。そのため、原則として信用金庫の営業エリア内に居住している、または購入物件がなければ融資は受けられません。しかし、地域密着型の営業を行っているという特徴から、取引実績があれば柔軟に審査してもらえる可能性があります。
ただし、都市銀行や地方銀行と比べると金利が高めである点には注意が必要です。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、日本政府が100%出資している政策金融機関です。民間の金融機関に比べると審査は厳しくないともいわれています。銀行や信用金庫で審査に通らなかった方でも、日本政策金融公庫であれば融資を受けられる可能性があります。
また、日本政策金融公庫は不動産賃貸業を行う方に対して融資を行っており、投資目的の場合は対象外になるため注意が必要です。利用目的は「投資」ではなく、「不動産賃貸業を行うため」という表現を使用しましょう。
ノンバンク系金融機関
ノンバンクは預金業務を行わず、主に貸し出し業務に特化した金融機関です。
ノンバンク系金融機関では、銀行系や政府系に比べ、金利が高めに設定されています。しかし、審査スピードが速く、申し込みから融資実行までの期間が短い点は大きなメリットです。
また、耐用年数を超えた物件や再建築不可など、銀行では一般的に担保と認められにくい物件でも融資を受けられる可能性があります。再建築不可物件とは、建築基準法第42条・第43条の接道義務(建物の敷地が道路に幅2m以上接していなければならない)に違反しており、建て替えができない物件のことです。そのため、再建築不可物件は価値が低く、担保として認められるケースは限られていますが、ノンバンク系金融機関であれば、担保にできる可能性が他の金融機関よりも高めです。

不動産投資ローンの審査に通らない3つのケース
不動産投資ローンの審査に通らない原因として、以下のようなケースが考えられます。
- 自己資金が少ない
- 担保物件の価値が低い
- 申し込み者の属性が金融機関の基準を下回っている
順番に確認していきましょう。
自己資金が少ない
自己資金が少ないと、想定どおりに家賃収入が得られない場合に返済が滞るリスクが高いと金融機関に判断されやすく、審査では不利になる傾向があります。
また、不動産投資ローンを利用する際には、登記費用や不動産取得税などの諸費用がかかりますが、基本的に自己資金から支払わなければなりません。自己資金が少ないと上記の費用を支払えないリスクもあるため、審査はより厳しくなるでしょう。
担保物件の価値が低い
先述したように、金融機関は返済が滞るリスクに備えて、購入する物件に抵当権を設定します。返済が滞ると物件を売却して、融資額の回収を行います。
そのため、担保物件の価値が低いと融資額が希望額よりも低くなったり、そもそも審査に通らなかったりする可能性が高いです。
特に物件の築年数が古い、立地条件が悪いといった場合、担保評価額が低くなるため注意が必要です。
申し込み者の属性が金融機関の基準を下回っている
申し込み者自身の属性も、審査に大きく影響します。以下に該当する場合は、金融機関が定める審査基準を満たせない可能性が高いです。
- 年収が低い:返済能力に不安があると判断される可能性がある
- 年齢が高い:完済時の年齢を考慮し、返済期間が短くなることで返済負担が大きくなると判断される可能性がある
- 延滞履歴が残っている:過去にクレジットカードやローンの延滞などがあると、審査に悪影響を及ぼす
上記のような属性の場合、金融機関は返済能力に疑問を抱き、融資を避ける傾向にあります。
不動産投資ローンの審査を通過するための対策
不動産投資を成功させるためには、まずローン審査を通ることが重要です。審査を突破するために効果的な対策を以下に解説します。
- 収支計画は綿密に行う
- 自己資金は十分に用意する
- 物件選びは慎重に行う
- 信用情報は良好な状態に保つ
- 職業・収入の安定性をアピールする
- 複数の金融機関を比較検討する
これらの対策を実践すれば、審査に通過する確率を上げられます。一度審査に落ちてしまった方や、これから初めて不動産投資ローンの審査を申し込む方は参考にしてください。
収支計画は綿密に行う
物件の収益性を金融機関に理解してもらうためには、収支計画の作成が有効です。収支計画とは、不動産投資における収入と支出の長期的なシミュレーションをまとめたものです。
収入には家賃以外にも、駐車場代や礼金が含まれます。金額は投資しているエリアの同じような物件を参考に決めましょう。また、満室時だけでなく、空室率を考慮した複数のケースで収入をシミュレーションすると、収支計画書の完成度が高まります。
支出にはローン返済額や管理費、修繕費、保険料などが含まれます。特に、修繕費は突発的なトラブルに備えて多めに見積もりましょう。
自己資金は十分に用意する
自己資金を多めに用意すると借り入れ額が下がり、金融機関の貸し倒れリスクが下がるため、審査に通過しやすくなります。
目安は物件価格の2〜3割程度ですが、少しでも多く自己資金を用意することが理想的です。
自己資金は、金融機関に対する返済能力の証明となるだけでなく、投資に対する真剣さを示す重要な指標にもなります。そのため、審査に通るか不安な方は多めに自己資金を準備しましょう。
物件選びは慎重に行う
物件選びは、投資の成功を大きく左右する要素のひとつです。審査の観点からも、担保価値と収益性の高い物件を選ぶことが重要です。最寄り駅から徒歩10分以内など、アクセスが良く周辺環境の整った場所は、入居者を集めやすいため金融機関に好まれます。
さらに、周辺に大学や企業が多いなど、賃貸需要の高い地域を選ぶことで、安定した家賃収入を得ることができます。
築年数は10年以内が目安です。建物の構造も融資期間に影響してくるため重要な要素といえます。
信用情報は良好な状態に保つ
金融機関は、過去のクレジットカード利用状況やローン返済履歴などをもとに、融資の可否を判断します。そのため、日頃から信用情報を良好な状態に保つことが重要です。
具体的には、クレジットカードの支払いを延滞しない借り入れがあれば返済は滞りないようにしましょう。また、不要なクレジットカードは解約し、キャッシング枠を減らすことも有効です。
職業・収入の安定性をアピールする
安定した収入は、返済能力の高さの証明となります。正社員として3年以上勤務している、確定申告書や源泉徴収票で安定した収入を証明するなど、自身の状況を具体的に示すことが重要です。副業や投資収入がある場合は、それらの収入証明も用意することで、さらに審査を有利に進められます。
複数の金融機関を比較検討する
各金融機関は、それぞれ独自の審査基準を持っています。そのため、一度審査に落ちてしまったとしても、別の金融機関では審査に通る可能性があります。
特に信用金庫やノンバンク、日本政策金融公庫は、銀行よりも比較的審査が厳しくありません。複数の金融機関を比較検討して、自身の状況に合った金融機関に審査を申し込みましょう。
おわりに
不動産投資は、最低でも数百万円〜数千万円の資金が必要となるため、不動産投資ローンを活用するのが一般的です。しかし、不動産投資ローンは住宅ローンよりも厳しく審査が行われます。
本記事で解説したように、不動産投資ローンの審査では年収、物件の収益性、担保価値など、住宅ローンよりも多くの項目が見られます。これらの基準をすべて満たすことは簡単ではありませんが、適切な対策を行えば、審査を通過できる可能性を高められるでしょう。
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