現在、空き家問題が深刻化しています。空き家ならではのリスクもあり、自治体もその対策に取り組み始めています。空き家問題とはどのようなもので、抱えるリスクにはどのようなものがあるのでしょうか。今回
は、空き家問題に対して所有者のみならず、自治体担当者の方にとっても効果的な対策について解説します。
深刻化する「空き家問題」
総務省の調査によると、2018年10月1日時点の日本の総住宅数は6,240万戸で、前回の調査と比べ3%増加しています。これに対し、「空き家」の数は848万戸となっており過去30年間で455万戸の増加と倍以上の伸びになっています。
結果として総住宅数に占める空き家の割合は13.6%と過去最高となっており、日本の総住宅における7戸に1戸が「空き家」となっていることが分かっています。
最近では介護が必要になった際に自宅ではなく介護施設を利用する方も増えており、親が高齢になった際に介護施設に移り、そのまま亡くなるといったケースも多くみられます。
また、子どもたちも社会人になって都会に移動し、そこで自宅を構えるなど、親の亡き後に実家に戻らない(戻れない)事情を抱えていることも空き家が増えている一因となっているといえるでしょう。
参照元:総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要」
「空き家問題」が抱えるリスク
では、空き家を放置しておくことでどのような問題が発生するのでしょうか。空き家問題が抱えるリスクには、空き家を所有している方に対するリスクと合わせ、自治体が抱えるリスクがあります。それぞれの詳細をみていきましょう。
空き家の所有者が抱えるリスク
・無過失責任
空き家の所有者は、もしもその建物が崩れたり、一部が壊れたりしたことによって、他人にケガなどをさせてしまった場合、所有者には過失がなかったとしても、損害賠償の義務が発生します。自身は住んでおらず、ただ所有者となっているだけでも、このようなリスクを抱えることになるのです。
・維持管理費用
空き家を維持するためには一定の費用がかかります。固定資産税はもちろんのこと、建物の一部や設備が壊れた際の修理費用などの負担も発生します。住んでいないにもかかわらず、これらの費用を負担しなければならない点は、所有者にとって大きなリスクといえるでしょう。
自治体が抱えるリスク
空き家が存在する地域の自治体は、空き家が管理されず放置されていることにより、建物の崩壊や外壁の崩れ、さらには火災が発生するなどといった防災面でのリスクを抱えています。
放置された空き家は犯罪の温床になりやすいといった防犯面でのリスクや、ゴミの不法投棄による悪臭や害虫の発生などといった衛生環境の悪化や、それに伴う景観の悪化などが自治体の抱えるリスクとして挙げられます。
これまで、管理が放置されている空き家については、その周囲に危険が及ぶ可能性がある反面、個人所有の不動産だという理由から、自治体としてもその管理に深く関与できないという点が問題となっていました。
しかし、2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、自治体が空き家問題の解決に積極的に取り組むことが可能となったのです。
この法律により、自治体は崩壊の恐れなど管理が行き届いていない空き家を「特定空家等」に指定するとともに、「必要に応じ、撤去などの命令を行うことができる」とされています。
そして、所有者がそれに応じない場合は強制的に撤去作業を行うことが可能となり、その撤去作業にかかった費用については、所有者が負担することになっています。
「空き家問題」の原因と解決策
空き家がそのまま放置されていることによって起こるこれらの空き家問題の原因には、一体どのようなものがあるのでしょうか。まず、空き家が不動産市場に流通しない原因として、不動産購入の際に新築を希望する方が多いことや、所有者側の解体費の負担がネックになっている点が挙げられます。
いくら立地の良い場所にあっても、建物がある場合は土地を売却する際に建物を解体する必要があり、その費用が捻出できないのです。
そうなった場合には、各自治体で除去費等の助成制度等を設けていますが、所有者のみならず自治体担当者側でもセゾンファンデックスが提供する「不動産売却前提ローン」等の利用を選択肢として検討することで、問題解決の糸口につながるかもしれません。
また、空き家をそのまま流通し活用することも解決策のひとつです。そのためには、国土交通省による「空き家・空き地バンク 」を利用する方法もあります。
ただ、この空き家・空き地バンクについては、できれば空き家になる前に流通させることの方が重要ではないかという声もあります。そのために利用できるのがリースバックの活用です。
空き家にしないための早めの対策とは
そもそも、空き家になってしまう理由のひとつに「解体費の負担が大きい」ことが挙げられます。そのような場合には自己資金で解体費を調達するのではなく、セゾンファンデックスの「不動産売却前提ローン」の利用など自治体側から所有者に対して選択肢のあるアドバイスで進展があるかもしれません。
「不動産売却前提ローン」とは、所有者が売却予定の不動産(この場合は空き家)を担保に資金調達を行い、不動産(空き家)の売却代金で返済する仕組みのローンです。
このローンを使うことにより、売却前に資金調達が可能になるため、建物の解体費用に充てることもできます。また、売却までは毎月の返済は利息分のみで良く、売却時に売却代金で一括返済する仕組みも魅力的だといえるでしょう。
一方、相続がきっかけで空き家になってしまうケースもありますが、その際には空き家になってしまう前に売却する「リースバック」の活用を提案してみましょう。
「リースバック」とは、不動産を売却することでまとまった資金を得ることができ、さらにその後は賃貸借契約を結び、家賃を支払いながらその不動産に住み続けることができる仕組みです。
リースバックで得た売却資金の使い道は原則自由なので、所有者側も自分たちの老後資金として使うことができます。相続の際に相続人間でもめるのがいやだと考える場合は、思い切って売却し、現金化しておくことで、遺産分割でもめることもなくなります。
リースバックは、このような空き家問題を解決するためのさまざまな使い方ができる方法として注目されています。
空き家問題に悩んでいる所有者のみならず自治体の担当者の方も、このような使い方があることを所有者に提案することで空き家問題が拡大することを防げる可能性が高まります。
おわりに
空き家は年々増加傾向にあり、今後も深刻化していくことが予想されます。空き家問題が深刻化することは自治体としても望まないでしょう。
そのような事態を防ぐためにも、早めに行動をしておくことが大切です。空き家を放置しておくことで、自治体もリスクを抱えることになってしまいます。
これらの事実をしっかりと認識し、将来空き家になりそうな家の所有者に対して、リースバックを活用しながら問題解決に努めるように提案してみてはいかがでしょうか。