親が年齢を重ね、収入の減少などが原因で住宅ローンの返済が困難になるケースがあります。自宅を売却して解決する方法もありますが、自宅を手放さず、子どもが返済を継続する親子間売買も選択肢のひとつです。
本コラムでは、親子間売買の特徴やメリット、注意点について解説するとともに、親子間売買で住宅ローンを組めない場合の選択肢についても詳しく解説します。
親子間売買とは?どんな場合に行われる?
親子間売買とは、 親子間で不動産の売買契約や金銭の授受を行い、登記の名義を変更することをいいます。親が住宅ローンの返済に行き詰まった場合などに、自宅を手放さずに資金問題を解決する手段のひとつとして利用されます。
自宅の売却によって、住宅ローンの完済や家計の負担軽減を図ろうとしても、子世帯が同居している場合は簡単に家を手放すわけにはいきません。そういった場合に、親子間売買を利用することで自宅を手放すことなく問題を解決できます。
親子間売買のメリット
不動産を売却して資金を準備したい場合でも、売れるまで現金化できません。預貯金と異なり、流動性が低い点が不動産のデメリットのひとつです。
しかし、親子間売買なら、売買契約から金銭の受け渡しまで比較的スムーズに進みます。両親の住宅ローンを子どもが肩代わりするだけでなく、所有権も合わせて取得できるため、相続時のトラブルを防ぐ効果もあります。
また、親子間売買ならそのまま住み続けられるため、生活環境が変わらないのも魅力です。
親子間売買の注意点
親子間売買では贈与とみなされないよう、物件価格の妥当性に注意が必要です。周辺相場よりも極端に安い価格で売買すると「みなし贈与」ととられる可能性があります。双方に贈与の意図がなくても、実質的に贈与と同様の経済的利益があれば、みなし贈与と判断されるので注意しましょう。また、親子間売買で住宅ローンを組んだ場合は住宅ローン控除を利用できますが、住宅ローンの控除が受けられる条件を満たす必要があります。
- 住宅ローンの審査に通っている
- 住宅ローンの返済期間が10年以上である
- 住宅面積床面積が50㎡以上で一定の耐震基準をクリアしている
- 買主側が買った家に住む
- 買主と売主が同居したり生計を一緒にしていない
- 買主の年収が3,000万円以下
そもそも、親子間売買は住宅ローンの審査にとおりにくく、控除を受ける場合には、親子が同居できない点にも注意が必要です。
親子間売買で住宅ローンが組みにくいワケ
親子間売買で住宅ローンの利用が難しい理由のひとつとして、贈与を目的とした売買の可能性がある点が挙げられます。つまり、あえて売買という形をとることで、相続税や贈与税の脱税を疑われるおそれがあるのです。もちろん、すべての親子間売買がそのような目的で行われるとは限りませんが、金融機関の審査は非常に厳しくなります。
また、親子間売買は借入金の使途自体を疑われることも住宅ローンの利用が難しい理由です。住宅ローンの借入金は住宅購入資金に充てることが前提ですが、事業用や投資用として利用されたケースは少なくありません。実質的に住宅ローンの借入金を他の用途に流用できてしまうため、親子間売買での住宅ローン審査は非常に厳しくなっています。
親子間売買でも組める住宅ローンとは?
銀行などの金融機関で住宅ローンを組むのは難しいかもしれませんが、親子間売買でも利用可能な住宅ローン商品を提供している金融機関は存在します。
例えばセゾンファンデックスの提供する住宅ローンは、親子間売買にも対応しています。また返済遅延などにより信用情報に瑕疵(かし)がある場合や、一般的にローンを組みにくい個人事業主や勤続年数の短い方でも利用できる可能性があります。
セゾンファンデックスの親族間売買は、保証人も原則不要です。銀行などの金融機関やフラット35を取り扱う住宅金融支援機構で住宅ローンを組むのが難しい場合は、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
親子間売買の流れや価格の決め方は?
親子間で不動産の売買をすることが決まったら、以下の流れで手続きを進めていきましょう。
- 不動産の現状と権利関係を確認する
- 適正な不動産の価格を決める
- 売買契約書など必要書類を準備する
- 契約・決済を行い、法務局で登記申請をする
不動産の現状と権利関係を確認する
まず、最寄りの法務局で登記事項証明書(旧:登記簿謄本)を取得し、不動産の現状や所有者、権利関係を確認します。これにより、不動産に抵当権などの担保権が設定されていないか、第三者の権利がないかを把握できます。
適正な価格を決める
不動産の価格を決める際は、税務上「みなし贈与」と判定されるのを防ぐため、市場価格と大きく乖離しないように適正な価格を設定する必要があります。
- 市場価格の把握:インターネットなどで近隣の売出物件を検索し、おおまかな市場価格を把握しましょう。
- 公的な評価額の確認:納税通知書で固定資産税評価額を確認し、公示価格や路線価も参考にします。
- 専門家への相談:必要に応じて、不動産鑑定士や不動産会社に査定を依頼することも検討しましょう。
売買契約書など必要書類を準備する
- 売買契約書の作成:法律に則った契約書を作成し、署名押印します。契約書には収入印紙を貼付する必要があります。
- 必要書類の準備:
- 売主と買主の本人確認書類(運転免許証など)
- 印鑑証明書
- 不動産の権利証または登記識別情報
- その他、必要に応じて固定資産税納税通知書など
契約・決済を行い、登記申請をする
- 契約の締結と代金の支払い:双方で契約書を取り交わし、売買代金の決済を行います。
- 所有権移転登記の申請:法務局で不動産の所有権移転登記を申請します。申請には必要書類を揃え、所定の登録免許税を納付します。
注意点
これらの手続きを自分たちだけで行うことも可能ですが、売買契約書の作成や登記申請には専門的な知識が必要で、多くの時間と手間がかかります。不備があると手続きが滞る原因にもなります。
そのため、のが難しいと感じたら、最初の段階から不動産会社や司法書士、土地家屋調査士に依頼することをおすすめします。専門家に相談することで、手続きをスムーズかつ正確に進めることができます。
親子間売買で住宅ローンが組めないときの選択肢は?
親子間売買で住宅ローンが組めない場合は、フリーローンや無担保ローンなどの資金用途に制限のないローン商品を使用するのもひとつの方法です。ただし、一般的な住宅ローンに比べて金利が高い点には注意しなければなりません。
自宅に住み続けたまま資金問題を解決したい場合は、親子間売買以外に「リースバック」を利用する方法があります。リースバックとは、第三者に自宅を売却して資金を得るのと同時に、買主からその物件を借りて住み続ける方法のことです。。
あくまでも賃貸契約なので家賃を支払う必要はありますが、修繕費や固定資産税といった自宅の維持コストを軽減することができます。
セゾンファンデックスの提供するリースバックでは、家財保険の保険料がかからないほか、事務手数料や賃貸借契約の更新手数料・礼金といったさまざまな費用が不要です。またホームセキュリティ・みまもりサポートやハウスクリーニングなどの無料サービスも利用できます。
自宅の売却代金は一括で受け取ることができ、用途の制限もないので、住宅ローンの返済や事業・投資への利用、老人ホームへの入居費用などに充てられます。
おわりに
住宅ローンの返済は長期にわたるため、想定外の出来事により返済が難しくなることがあります。住宅ローンの滞納が続くと、自宅が競売にかけられて強制的に売却される恐れもあり、最悪の場合は自己破産に陥るケースもあります。。
また、両親が返済困難となった場合、子どもが資金を援助すると贈与税の対象となる可能性があるばかりか、相続時に他の相続人とトラブルが生じる恐れがあります。そのため、親子間売買によって相続前に自宅を引き継いでしまうのも有効な選択肢でしょう。
ただし、物件価格の適正化や売買代金の準備方法については注意が必要です。売買契約書の作成や登記なども併せて行う必要があるため、不動産会社などに相談して手続きを進めていくのがおすすめです。
住宅ローン返済が難しくなってきた場合は、自宅の相続も考慮しつつ、親子間売買・リースバックなどを検討してみると良いでしょう。