学費として必要な金額は中学、高校、大学によってや、国公立・私立によっても異なります。入学から卒業までにどのくらい費用がかかるのか、どのように準備するのかについて見ていきましょう。また、学費が払えないときに選択できる延納や分納について、滞納するとどうなるのかについても解説します。
1.学費は授業料だけではない
学費について考える場合、まずまとまった費用として入学金や授業料が挙げられるでしょう。しかし、学校で学ぶためには、それ以外にもさまざまな費用がかかります。教科書代や制服代、通学費なども計算しておく必要があるでしょう。
住んでいる地域とは別の学校に進学する場合は、一人暮らしや下宿、寮などの居住費や生活費も発生します。例えば東京23区内のワンルームで生活するのであれば月に6万~8万円の家賃が相場です。さらに共益費や光熱費などもかかるため、どのように払うのか事前に計画を立てておくことが必要でしょう。
学費を学校にかかる費用と考えるのではなく教育費と幅広く考えれば、学習塾や習い事、スキー教室、キャンプなどの学校外活動費も含まれます。子どもにどのような教育を与えたいのか、また、子どもがどのような進路を希望するのかによって、学費や教育費は大きく変わるでしょう。
2.学校別!学費の目安を紹介
基本となる学費はどの程度かかるのか、公立・私立別に見ていきましょう。
なお、ここでの学費とは、授業料や入学金、教科書代などの「学校教育費」と「学校給食費」、また、補助学習や習い事などを含む「学校外活動費」の3つのことです。また、それぞれの学年でかかる費用をすべて合算し、学年数で割って1年分の学費を算出しています。
2-1.中学校
文部科学省の「平成30年度学校基本統計(学校基本調査報告書)」によれば、公立中学校に進学した場合と私立中学校に進学した場合の学費の違いは以下のとおりです。いずれも1年間にかかる費用を平均した金額なので、3年間では3倍かかります。
公立 | 私立 | |
学校教育費 | 138,961円 | 1,071,438円 |
学校給食費 | 42,945円 | 3,731円 |
学校外活動費 | 306,491円 | 331,264円 |
1年間の学費合計 | 488,397円 | 1,406,433円 |
公立中学校でかかる学費を1とすると、私立では2.9倍かかります。学校外活動費はほとんど変わりませんが、授業料や入学金といった学校教育費に大きな差があることが全体的な差につながっているといえるでしょう。
また、私立では学校給食費が少ないことから、ほとんどの私立中学校において給食が提供されていないこともうかがえます。経済面での負担だけでなく、お弁当を作るなどの負担も保護者にかかってくるようです。
2-2.高等学校
高校では学校給食がないことが一般的なため、学費には学校教育費と学校外活動費の2つが含まれます。1年間でかかる費用は公立・私立ともに中学校よりも少ないです。
公立 | 私立 | |
学校教育費 | 280,487円 | 719,051円 |
学校外活動費 | 176,893円 | 250,860円 |
1年間の学費合計 | 457,380円 | 969,911円 |
公立高校でかかる学費を1とすると、私立では2.1倍かかります。また、学校外活動費に関しては、公立・私立ともに中学校よりも減っていることから、補助学習や習い事などをする割合が減っていることが想定されるでしょう。
2-3.大学
文部科学省の「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」と「私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」によると、国立大学と私立大学の学費は以下のとおりです。国立大学では施設準備費はありませんが、その分、入学料が私立大学の平均よりは若干高めになっています。
国立 | 私立 | |
授業料 | 535,800円 | 904,146円 |
入学料 | 282,000円 | 249,985円 |
施設準備費 | ― | 181,902円 |
1年次の学費合計 | 817,800円 | 1,336,033円 |
2-4.学部別に紹介
国立は基本的に学部にかかわらず授業料は一律です。医学部や歯学部、薬学部などの一部の学部は6年制のため、他の学部と比べると授業料が2年間分増えますが、1年あたりの授業料や1年次の入学料に関しては特に違いはありません。ただし、専門書などを購入することも多いので、医学部などは教材費が高めになることが想定されます。
一方、私立大学は学部ごとに学費が大きく異なるので注意が必要です。旺文社の「2021年度 大学の学費平均額」によると、私立大学の入学料や授業料は理系が高め、文系が低めの傾向にあることがわかります。私立大学の学部別平均入学料と授業料、初年度納入金は以下のとおりです。初年度納入金には施設準備費などが含まれます。
学部 | 入学料 | 授業料 | 初年度納入金 |
医学部 | 1,330,645円 | 2,696,613円 | 7,336,299円 |
歯学部 | 594,118円 | 3,157,647円 | 5,498,365円 |
薬学部 | 318,192円 | 1,401,693円 | 2,158,531円 |
理学部 | 230,606円 | 1,045,703円 | 1,594,135円 |
工学部 | 235,111円 | 1,061,788円 | 1,631,712円 |
法学部 | 220,224円 | 773,196円 | 1,249,857円 |
経済学部 | 225,405円 | 779,180円 | 1,277,961円 |
文学部 | 228,570円 | 797,498円 | 1,313,734円 |
芸術学部 | 236,152円 | 1,017,793円 | 1,641,821円 |
3.学費を準備する3つの方法
小中学校は義務教育なので学校教育費はほとんどかかりません。高等学校も公立であればほとんど学校教育費がかからず、また、無償化制度などを活用することで私立高校の学校教育費もある程度抑えることが可能です。
しかし、大学に関しては国立でも年間約54万円の授業料がかかり、入学金が発生する1年次の学費は80万円を超えます。私立大学を選ぶ場合はさらに高額な授業料がかかるでしょう。特に医学部や歯学部などを選ぶと、他の学部の何倍もの学費がかかることになります。
小中高は公立学校に進学させる予定であっても、大学に向けてある程度の学費を準備しておくことが必要といえるでしょう。学費を準備する方法として、次の3つを紹介します。
- 学資保険
- 定期預金
- 祖父母から贈与を受ける
3-1.学資保険
学資保険とは、子どもや孫などの教育資金を準備するための貯蓄型保険のことです。毎月保険料を支払うことで、大学入学時などに祝い金や保険金を受給できます。祝い金などの支払いタイミングは保険商品によって異なるので注意が必要です。大学進学時に一括で支払われる保険や、大学進学時と2年・3年・4年に進級するときに分けて支払われる保険があり、入学金としてだけでなく、毎年の授業料を補填する目的でも活用できるでしょう。
学資保険によっては、祝い金として小学校や中学、高校に進学するときにも受給できるタイプがあります。私立学校への入学金として利用したり、制服代やランドセル代などに使ったりすることも可能です。どのタイミングで受け取りたいのか考えてから、保険商品を選ぶようにしましょう。
学資保険のメリットとして、契約者に万が一のことがあったときでも子どもの学資を確保できる点が挙げられます。親や祖父母などの契約者が保険料支払期間中に死亡した場合、あるいは高度障害状態になった場合は、以後の保険料の支払いは免除されますが、保険金や祝い金は契約どおりに受け取ることが可能です。学費を準備するだけでなく、契約者自身の生命保険としても活用できるので、単に貯蓄するよりは安心を得られる保険といえるでしょう。
学資保険は保険会社によってもさまざまです。保険金や祝い金の受け取りタイミングだけでなく、保険料免除となる高度障害の判断基準、利回り、途中で解約したときの返戻金のルールなども異なります。何を学資保険に求めるのかによって適した保険商品が異なることを押さえておきましょう。
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3-2.定期預金
自由に引き出せる上に払ったお金よりも受け取るお金が減額しにくい方法を探している方は、定期預金を検討してみてはいかがでしょうか。定期預金は口座に預金をするだけなので、自由に引き出すことが可能です。また、基本的には解約手数料がかからないので、どのタイミングで解約しても積み立てた金額に利息を加えた金額を受け取れます。
ただし、定期預金をするときは、子どもの名義にするかご自身の名義にするかによって税金が異なることがあるので注意しましょう。子どもの名義として定期預金をする場合は、年間の預金額が110万円を超えると贈与とみなされることがあり、贈与税が発生するかもしれません。また、子どもが成人した後は親の一存で引き出すことができなくなるので、子どもに使い道についてしっかりと伝えておく必要があるでしょう。
一方、ご自身の名義で定期預金をするときは、貯めた金額を現金として子どもに渡すと贈与税が発生することがあります。1年間に渡す金額が110万円を超えないようにするか、親が直接学費を支払うようにしましょう。
また、学資として使わないまま死亡した場合は、定期預金も相続の対象となります。相続税が発生することもあるので、学費が目減りしてしまうこともあるでしょう。
3-3.祖父母から贈与を受ける
学費が高く、すべてを支払うことが難しいときは、子どもにとっての祖父母、つまりご自身の親や義父母に相談してみることができるかもしれません。祖父母が教育費のサポートをしてくれる場合には、次の2つのポイントに注意しましょう。
- 110万円を超えたときの贈与税
- 1,500万円までの教育資金の一括贈与制度
祖父母が孫の教育資金を支払う場合には、年間110万円を超えると贈与税の対象となることがあります。個人が贈与を受けた場合に発生する税金です。そのため、祖父が100万円、祖母が100万円と分けて贈与を実施しても、受け取る孫が1人であれば200万円の贈与を受け取ったことになり、贈与税の課税対象となります。また、年間110万円なので、4月に80万円、同じ年の12月に40万円を受けると、合計120万円となって贈与税の課税対象となるので注意しましょう。
1,500万円までの教育資金の一括贈与制度とは、教育資金として使用される資金を一括で贈与する場合は1,500万円まで贈与税が非課税となる制度です。2023年3月31日までの特別措置で、受け取った資金を授業料や入学金などの教育資金に用いることができます。
1,500万円までの教育資金の一括贈与制度を利用するためには、贈与を受ける人が30歳未満であること、また、贈与する人が父母や祖父母などの直系尊属であることが条件です。さらに以下の条件全てを満たす必要があります。
- 教育資金専用の口座を開設すること
- 贈与を受けた人は30歳になるまでに使い切ること。使い切らない場合は残金が贈与税の対象となる
- 口座内のお金を使うときは、教育資金に使ったということが分かる明細書の発行と保管が必要
- 教育資金を学校外の教育に用いるときは、総額が500万円以下であること
参考:国税庁「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」
4.学費が払えないときはどうなる?
人生においてお金がかかるのは学費だけではありません。住宅の購入、結婚式を挙げるなど、人生の節目節目にまとまったお金が必要となるでしょう。入院や手術、事故などの不意の出来事により、予想外の費用がかかることもあります。
学費を十分に準備できないまま大学に進学した場合、途中で学費が払えないという事態に陥りかねません。また、学費を十分に準備したつもりでも、国公立の予定が私立に、文系の予定が理系や医学部に進学したなどの理由で学費が不足することもあります。在学中に学費が払えなくなったときは、まずは学校に相談してみましょう。
4-1.大学に相談すれば分納・延納できることがある
大学入学後に学費が払えなくなったときには、大学に相談することで、分納や延納を利用できることがあります。分納とは学費を分割して支払うことです。通常、大学の学費は1年分まとめて、あるいは前期後期に分けて年に2回支払います。
分納が認められると、学校にもよりますが6回程度まで分けて支払うことが可能です。ただし、分納を利用するには申込期限があるため、支払うことが難しいと判断したときは、できるだけ早く学校に相談しましょう。
一方、延納とは納付期限を遅らせる制度です。学校によっても異なりますが、長ければ6ヵ月ほど納期を遅らせることができることもあります。延納も申込期限が決まっているため、期限までに支払うことが難しいと判断したときは、早めに学校に相談するようにしましょう。
4-2.放置すると除籍処分になることも
大学の学費が支払えないときは、できるだけ早めに学校に相談しましょう。相談せずに放置していると除籍処分になってしまうこともあるかもしれません。
学校によっては成績優秀者や経済的な理由で学費の支払いが難しい学生に対しては、学費を免除する制度を実施していることもあります。ただし、学費免除制度がある大学でも、自動的に適用されるわけではないため、学生課などに出向いて早めに相談することが必要です。
学校内で成績優秀者や経済的な理由で学費の支払いが難しい学生に対して、奨学金を支給していることもあります。返還不要型や無利息型などの奨学金を支給している大学もあるため、利用できないか相談してみましょう。
なお、学費を支払わずに除籍処分になった場合でも、一定期間内であれば滞納した学費を納めることで再入学できる学校もあります。
4-3.卒業できないと就職内定が取り消される
学費が支払えず、卒業できないときは、就職内定を取り消されることがあります。履歴書に記載した「〇年3月卒業予定」であることが前提で内定をもらっているため、卒業していないときや卒業の期日が遅れたときは、学生側の約束不履行とみなされてしまうでしょう。将来が大きく変わることもあるため、学費は最後まで支払うことが大切です。
5.学費が払えないときに利用できる方法
大学や専門学校などの学費の負担が大きく、支払っていくことが難しい場合は、進学先や自治体、企業などが実施している奨学金に申し込むこともできます。また、国や民間のさまざまな制度やローンを利用してみましょう。学費に利用できる主な制度やローンを4つ紹介します。
- 高等教育の無償化制度
- 日本学生支援機構の奨学金
- 国の教育ローン
- 民間金融機関の教育ローン
5-1.高等教育の無償化制度
高等教育の無償化制度とは2020年4月に始まった制度で、大学や短期大学、専門学校などに進学する際に利用できます。世帯が保有する資産と所得、そして学生の学習意欲の3つの条件を満たす場合には、入学金や授業料の減免を受けることが可能です。
まずは資産がチェックされます。家庭に生計維持者が2人の場合は不動産を除く世帯資産が2,000万円未満であること、生計維持者が1人のときは1,250万円未満であることが条件です。
次に所得は市町村民税の所得割額が51,300円未満であることが確認されます。年収の目安は子どもの人数によっても異なりますが、子ども2人のふたり親世帯であれば世帯年収は380万円未満程度が基準になるでしょう。進学する前年の5月頃から高校などで資料を受け取れるため、条件に該当しているか確認しておきます。
最後に学習意欲です。学習意欲は学校の成績が一定以上であることで確認されます。成績が基準を満たさないときは、学生本人によるレポート提出などが求められることがあるため注意しておきましょう。
なお、高等教育の無償化制度は国立大学のすべてが対象となりますが、私立大学や私立短期大学、専門学校の一部の学校は対象となりません。進学を希望する学校が制度の対象なのか確認しておきましょう。
5-2.日本学生支援機構の奨学金
日本学生支援機構の奨学金を利用することも検討できるでしょう。貸与型と給付型があり、貸与型は返還しなくてはいけませんが、在学中は利息が発生しないため負担が大きくならないように工夫されています。家庭の所得制限はありますが、高等教育の無償化制度よりは緩やかであるため比較的利用しやすい奨学金といえるでしょう。なお、貸与型の奨学金は、原則として学生本人が借り入れる借金です。
5-3.国の教育ローン
日本政策金融公庫が実施している国の教育ローンを利用して、学費に使えます。民間金融機関の教育ローンよりは金利は低めですが、日本学生支援機構の奨学金よりは高めなので注意しましょう。
なお、国の教育ローンは原則として学生の保護者が借り入れる借金です。在学中も利息が発生するので、遅滞せず返済するようにしましょう。
5-4.民間金融機関の教育ローン
民間金融機関の教育ローンも利用できます。金融機関によってはカードローンタイプなどもあり、授業料や仕送りをするときなど、必要なときに必要なだけ借りられる利便性が高いローンも少なくありません。
借入金の目的を指定しないフリーローンなどと比較すると、金利は低く抑えられていることが多いです。金融機関によって金利や借り方などが異なるため、いくつかのローンを比較検討して選ぶようにしましょう。
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おわりに
子どもの将来の選択肢を広げるためにも、教育は不可欠です。しかし、決して少ない負担ではないので、計画的に準備をしておく必要があるでしょう。学資保険や定期預金を利用して貯めることや、奨学金や教育ローンの利用も検討できます。
また、子どもがどのような進路を希望しているのか把握しておくことも大切なポイントです。大学に入学してから学費が足りないという事態に陥ると、場合によっては除籍処分になり、卒業できないだけでなく、就職内定が取り消される可能性もあります。早めに学費を準備しておくことで、安心して勉強できる環境を整えておきましょう。