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線状降水帯とは?発生するメカニズムや対策などを解説

セゾンのくらし大研究 編集部

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最近よく耳にするようになった線状降水帯は、一体どのようなものかご存じでしょうか。線状降水帯は、大雨により土砂災害や浸水など大きな被害を及ぼします。天気予報で耳にする時にはすでにかなり危険な状況にあることもある線状降水帯。その危険性や発生要因、発生した際の対処方法などについて詳しく説明していきます。線状降水帯の予測が発表されたとき、どのように動けば良いのか確認しておきましょう。

線状降水帯とは?

最近よく聞かれる線状降水帯。大雨を降らせ、土砂災害や河川の氾濫をきたし、大きな被害を及ぼすこともある線状降水帯とはどのようなものなのでしょうか。

線状降水帯に定義はあるの?

線状降水帯には、正式な定義はありません。気象庁においては、線状降水帯を「次々に発生した積乱雲が、帯状に連なり数時間にわたり同じ場所に停滞もしくは通過し作り出される雨域」としています。その領域は、長さ約50~300km、幅約20~50kmの範囲です。

積乱雲は単発で発生した場合でも大雨を降らせますが、長くても1時間ほどで雨は止みます。大雨だとしても降雨時間が短い場合は、災害レベルになることはほとんどありません。しかし線状降水帯の場合、積乱雲は単発ではなく次々に発生し、数時間で平年の1ヵ月分の雨を降らせることがあります。そのため、線状降水帯が発生した場所では浸水災害や土砂災害などが発生しやすくなり、大きな被害を生んでいるのです。

線状降水帯が危険な理由

単発でも、雷や急な大雨、竜巻などを引き起こし、建物や人への被害を与える積乱雲。その積乱雲がいくつも続いて発生し、通過や停滞する線状降水帯では、さらに大きな被害が引き起こされます。

線状降水帯は、その発生メカニズムがはっきりと解明されていません。いつ発生するのか予測が難しいことに加え、急激に状況が悪化することから、線状降水帯が発生してから情報が発信される方針です。

ほかの雨との違い

大雨をもたらす現象はほかにもありますが、線状降水帯とほかの雨との違いは具体的にどのようなところにあるのでしょうか。

・梅雨

梅雨は、春から夏に曇りや雨の日が多く続く季節現象のことです。5~7月頃に日本付近で発生する前線を「梅雨前線」と呼び、梅雨前線の付近では雨が降ります。暖かい空気と冷たい空気がぶつかったところに、梅雨前線は発生しますが、ほぼ同一勢力の暖気と寒気により発生した梅雨前線は、停滞してしまうため、停滞前線ともいわれています。

梅雨前線で発生した積乱雲のうち、線状に伸びたものが線状降水帯です。

・ゲリラ豪雨

ゲリラ豪雨とは、発達した積乱雲が、短時間に局所的に降らせる激しい雨のことで、時には雷や突風を伴う場合もあります。線状降水帯との違いは、積乱雲の数や雨を降らせる範囲です。線状降水帯では複数の積乱雲が発生しますが、ゲリラ豪雨で発生する積乱雲はひとつです。

線状降水帯のメカニズム

線状降水帯の発生メカニズムは、大気の下層と中層の風向きの違いによりいくつかのタイプに分類されるといわれています。そのひとつが下層と中層の風向きが同じ、バックビルディング型です。長時間の雨を降らせ、災害を引き起こす可能性が特に高いといわれています。

  1. 地上付近の暖かく湿った風(下層風)が寒気や山などにぶつかって上昇し、積乱雲が発生
  2. 発生した積乱雲は、雨を降らせながら上空の風(中層風)により流される
  3. 積乱雲からの下降流と下層風がぶつかり、最初の場所で再び積乱雲が発生する
  4. 2~3を繰り返すことにより、最初の場所で続けて積乱雲が発生する
  5. 発生した積乱雲は中層風に流され、雨を降らせながら同じ場所を通過して衰退し、そして消滅していく

この結果、上空から見ると線状に並ぶ強い降水域が、同じ場所に停滞しているように見えるのです。

参照元:気象庁|線状降水帯に関する各種情報の解説

線状降水帯が発生しやすい場所は?

過去の例からみると、線状降水帯は西日本ほど多く発生すると考えられます。しかし、関東地方や東北地方でも発生しているため、全国のどの地域でも起こりうると考えていたほうが良いでしょう。具体的な事例を見てみましょう。

これまでに起きた災害

以下は、これまでに発生した線状降水帯に関する事例です。

2014年8月:広島県

2015年9月:栃木県

2017年7月:福岡県・大分県

2018年7月:広島県・福岡県

2000年7月:熊本県・福岡県

2021年6月:沖縄県

2021年9月:徳島県

2022年7月:大分県・長崎県・福岡県・佐賀県・高知県

2022年8月:青森県・秋田県・山形県・新潟県・福井県

2022年9月:愛知県・静岡県・宮崎県・熊本県

2021年 7月に熊本県で発生した線状降水帯は、長さは約280km、約13時間もの長時間停滞し、大きな被害をもたらしました。同じ月に大分で起きた線状降水帯による大雨では、農林水産関連の被害額が4億円以上にものぼったといいます。

なぜ線状降水帯の発生が増えているのか

気象庁の気象研究所の分析によると、ここ45年間の中で、線状降水帯による豪雨の頻度は、約2倍に増加しているといいます。また特に6~7月の梅雨の時期は、4倍近くも増加しています。          

 この原因といわれているのが、地球温暖化。地球温暖化の影響で、海からの水蒸気量が増加し、発達した積乱雲が次々と発生するためだと考えられています。

参照元:「集中豪雨」発生頻度45年で2倍超 線状降水帯も起きやすく|NHK 首都圏のニュース

天気予報ではどのように伝えられる?

それでは、線状降水帯が発生した際、気象情報ではどのように伝えられるのでしょうか。どのような発表があった場合に注意する必要があるのか見てみましょう。

線状降水帯の予測情報

線状降水帯が発生すると、豪雨による災害の危険性が高まります。2022年6月より気象庁では、人々にできるだけ早く危機感を持ってもらうため、線状降水帯の予測情報の発表を始めました。線状降水帯の予測情報は、線状降水帯が発生すると考えられる時間の6~12時間前に、「線状降水帯」のキーワードを用いて発表されます。ただし気象庁では、この情報だけで避難行動をとるのではなく、ほかの情報と合わせ、ハザードマップや避難経路・避難所の確認などを行ってほしいとしています。

線状降水帯の呼びかけ例

線状降水帯による大雨に対する予測情報は、

「大雨に関する○○地方気象情報 第〇号 〇年〇月〇日〇時〇分 ○○気象台発表

○○地方では、〇日日中に、線状降水帯が発生して大雨災害発生の危険度が急激に高まる可能性があります。」

と発表されます。

全国を「北海道」「関東甲信」「近畿」「九州北部」など11ブロックの地方単位で発表。発生する時間帯は「午前中」や「日中」、「未明から明け方にかけて」など、地域、時間帯ともに幅を持たせたいい方をします。

線状降水帯は事前に予測可能?

線状降水帯の予測は、実際のところどの程度精密なのでしょうか。予測の仕組みとともに説明します。

予測の仕組み

線状降水帯を予測するためには、積乱雲のもととなる水蒸気の量を正確に観測できるかどうかが重要なのだそうです。GPS衛星から電波を受信する仕組みを活用し、海上の水蒸気量を推測し、10分に1回気象庁は水蒸気量を把握し予測しています。しかし、現在の観測技術では正確な予測は難しく、現在、水蒸気観測の強化や予測技術の開発などを進めているところです。

線状降水帯予測情報で注意したいこと

正確な予測は難しい線状降水帯の予測情報においては、気を付けなければならない点がいくつかあります。気象庁が過去の事例より計算した発生の的中率は、全国単位で2回に1回程度、地方単位では4回に1回程度でした。また情報発信をしなかったものの、線状降水帯が発生した確率は3回に2回あるようです。

気象庁は線状降水帯の予測情報の注意点として、

  • 線状降水帯による大雨の予測は難しいものの、線状降水帯が発生しなかった場合でも大雨になる可能性がある
  • 情報が発信された際は、各市町村の避難情報や大雨警報などの防災気象情報と併用し、避難の判断をすることが重要
  • 線状降水帯による大雨の予測が発表されなくても、大雨による災害の危険を感じたら、防災気象情報全体を活用する

ことを掲げています。 

線状降水帯による大雨の対策

線状降水帯の予測が発表された場合、発生時刻まで半日程度あると考えられます。この間、どのような対策をとったら良いのでしょうか。ご自身の身を守るための具体的な対処法を紹介します。

高いところへ避難

大雨による被害は、住んでいる地域により危険性や種類が異なります。

住んでいる地域が、河川の近くや低地の場合には、浸水や洪水に巻き込まれる危険性が考えられます。避難所へ避難することがすでに危険な場合には、2階建ての住居なら2階へ、マンションやアパートの場合には上層階に避難しましょう。

土砂災害の危険がある場合は離れた場所へ避難

山沿いなどの土砂災害の危険が高い場合には、可能であれば土砂災害の危険が低い地域へ避難することが望ましいといわれています。しかし避難が遅れた場合には、崖とは反対側の部屋に避難し、より安全な場所に移って危険が過ぎるのを待ちましょう。

高齢者などは警戒レベル3で避難開始

警戒レベル3とは、大雨警報や洪水警報が出されている段階で、災害の状況が悪化する可能性があると考えられているタイミングです。ほとんどの場合で、風雨がまだあまり強くないため、高齢者などの災害弱者は避難しやすいと考えられます。また親などの家族が災害の危険地域に住んでいる場合には、直接連絡をして避難を呼びかけることも大切です。

気象情報や自治体の避難情報をチェック

まず普段と比べ、大雨の災害が起きる可能性が高いことを念頭に置いて行動しましょう。スマートフォンやテレビなどで、気象情報をこまめにチェックすることが大切です。また家族や近所の方と相談したり、自治体からの避難情報に耳を傾けたりして、必要時すぐに避難できるように準備を進めましょう。貴重品や着替え、食糧など避難所へ持っていくものの準備をしておくと安心です。普段から3日分の食料の準備をしておくとさらに安心でしょう。

情報取集におすすめのサービス

ここからは、線状降水帯など気象情報の情報収集におすすめのサービスを紹介していきます。

気象庁 「キキクル」

「キキクル」は気象庁が提供するシステムです。大雨や洪水により「浸水被害」「土砂災害」「洪水災害」の情報を整理し、避難が必要かどうかを教えてくれます。地図を5段階に色分けして表示することで危険度が一目で分かるシステム。黒で示されるレベル5は、すでに避難すること自体が危険とされる状況で、すでに災害が起こっているか、切迫している地域を意味しています。紫色のレベル4では、各自治体から避難指示が出されます。

キキクルには、危険度をスマートフォンのメールやアプリにリアルタイムで教えてくれる無料の通知サービスもあります。

気象庁「あなたの街の防災情報」

「あなたの街の防災情報」も、気象庁が提供するサービスのひとつです。都道府県や市町村単位で設定できるため、現在発表されている注意報や警報などの防災情報が細かくチェックできます。

国土交通省「重ねるハザードマップ」

国土交通省が提供する「重ねるハザードマップ」は、自宅や学校、職場などの周辺でどんな災害リスクがあるのか事前に把握できるシステムです。洪水や津波、土砂災害などのリスク情報や道路防災情報、地形分布などの情報を選択し、地図や写真に重ねて表示できます。

アプリ「NHKのニュース・防災」

地域登録が3ヵ所できる「NHKのニュース・防災」アプリでは、自宅のほか職場や学校、離れて暮らす家族など、ご自身の知りたい地域の災害情報を把握することが可能です。天気予報のほか、発表されている防災情報や避難情報が得られます。またアプリにはプッシュ機能もあるため、情報を即座に得られるメリットもあります。

アプリ「Yahoo!防災速報」

「Yahoo!防災速報」は、ヤフージャパンが運営しているアプリです。ご自身の住所などを登録することで気象情報や近々起こる可能性のある豪雨予測、地震などさまざまな災害情報を知らせてくれます。こちらのアプリにもプッシュ機能がついているため、情報を自動的に通知してくれます。また災害時にどのような行動をとったら良いのかまとめた防災手帳も、イラスト付きで分かりやすい機能です。

いつ起こるか分からない!災害に備えて保険も検討しておこう

水害が増えている近年、大雨の際の保険は、保険加入の引き受け条件が厳しくなったり、保険料の引き上げが行われたりしているようです。しかし、水害補償つきの保険に加入していれば、損害状況により申請を行うことはできます。ご自身が加入している火災保険が、水害に対応しているかどうか確認し、万が一水災補償がついていない場合には、契約の見直しを検討してみることも必要でしょう。

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おわりに

よく耳にする線状降水帯は、かなりの雨を降らせることや予測が難しいことより、かなり危険であることが分かりました。しかし研究が進んでいることにより、予測情報の提供が始まり、ご自身で身の安全を守ることも可能です。予測情報が発表されたら、直ちに身の安全を守るための準備を開始しましょう。またほかの情報も取り入れ、ご自身に合った方法での避難をするようにしましょう。

株式会社クレディセゾン提供(運営会社セゾンファンデックス)

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