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円高と円安はどっちがいい?資産防衛に向けてとるべき行動とは?

セゾンのくらし大研究 編集部

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2024年は約38年ぶりの円安水準を記録し、為替相場が大きく変動しています。この歴史的な円安が、日本にどのような影響を及ぼしているのかご存知でしょうか。また「円高と円安のどっちがいいのか分からない」と感じる方も多いでしょう。そこで今回は、円高・円安の基本を解説し、資産防衛に向けてとるべき行動についてまとめてみました。

改めて円高・円安についておさらいしたい方や、円安で家計が圧迫されて困っている方はぜひ参考にしてみてください。

この記事を読んでわかること

円高と円安は立場によって良し悪しが異なり、どっちがいいのかはご自身の状況などにより変化します。一般的には、大幅な円安は個人にはデメリットが大きく、輸出企業にはメリットにつながりやすいです。
例えば円安は、食品や生活必需品の値上がりを招き、家計に直接的な打撃を与えます。さらに日本円で資産を保有していた場合、価値が目減りしている可能性もあります。

円安のリスクを軽減するためには、預貯金以外の金融資産の保有、日本円資産だけでなく海外資産をリスク許容度に応じて保有することが大切です。

円高と円安はどっちがいい?

円高と円安はどっちがいい?

2024年6月に1ドル=160円台となり、約38年ぶりに円安水準を更新しました。その影響もあり、2024年中に約10,000品目以上が値上げされ、3年連続の10,000品目突破となりました。日本はさまざまな品目を輸入に頼っているため、円安が進むことで材料費も高騰し、食品などの値上げをせざるを得ない状況です。

食用油や調味料、乳製品など各家庭の必需品といえる品目が数多く値上げされています。食品の値上げは飲食店にも打撃を与えており、メニューの値上げすべきか悩んでいる経営者も少なくないようです。

値上げは続く一方で給料は上がらない現在の状況では、生活が苦しいと感じている方も多いでしょう。円安の影響が家計を圧迫しているといえます。

円高と円安を考えるうえで、気になるのは結局「どっちがいいのか」ということでしょう。結論からいうと、円高と円安は立場によって良し悪しが異なります。

例えば、海外旅行をしたいときは円高のほうがお得に楽しめるでしょう。一方、自動車関連などの輸出企業に勤めている場合は、円安のほうが海外で車がよく売れます。円の価値の推移は家計や企業の業績に大きくかかわるため、自分事として理解しておくことが大切です。

では、そもそも円高・円安とはどのような状態なのか、具体的にご紹介します。

円高とは

円高とは、円の価値が上がることです。円高・円安で考えた際の円の価値は、ドルやポンドなどの他国通貨との比較によって決まります。例として「1ドル=100円」が「1ドル=80円」となった場合、もともと100円を支払わないと1ドルを得られなかったのに対して、80円で1ドルが手に入るようになります。

例えば、レストランで10ドルのランチを注文するとしましょう。1ドル=100円の場合1,000円支払う必要がありますが、円高で1ドル=80円になると同じランチを800円で食べられます。

円安とは

一方で円安とは、円高とは逆に円の価値が下がることを指します。「1ドル=100円」から「1ドル=150円」へと、円の価値が下がったとしましょう。レストランで10ドルのランチを注文する場合、もともと1,000円支払えば食べられたはずが1,500円必要になります。

一方で1ドル100円のときに、100万円で1万ドルを購入しそのまま保有している間に1ドル=150円の円安となった場合、1万ドルは日本円換算で150万円まで増えることになります。取引金額が大きいほど、円高・円安の影響を大きく受けることが分かるでしょう。

円高・円安になる主な要因

円高・円安になる要因はさまざまですが、主に以下のようなものが挙げられます。

  • 国別の金利差
  • 金融政策や財政政策
  • グローバル経済の変動
  • 投資家センチメント

近年、ドル高・円安が進んだ背景には、日米の金利差拡大があります。日本は長らく低金利政策を続ける一方で、アメリカは徐々に利上げを行ってきました。金利が高いドルを買う動きが広がったことが、1ドル160円を超える円安となったひとつの要因です。

また、景気や物価の動向を左右する金融政策や、雇用の状況といった経済活動に影響を与える財政政策も為替レートが変動する要因となります。

さらに、近年は新型コロナウィルス感染症の流行やウクライナ情勢の悪化、インフレの高進など、グローバル経済の変動も為替レートに大きな影響を与えています。こういった出来事は投資家センチメント(投資家の心理状態のこと)にも影響し、市場全体の心理状況の変化に為替レートが大きく変動するケースもあります。

円高のメリット・デメリット

円高のメリット・デメリット

「円の価値が上がる」と聞くと円高の方がメリットが大きい印象を受けますが、実際はデメリットもあります。以下では、具体的なメリットとデメリットをご紹介します。

円高のメリット

円高は、企業よりも個人へのメリットが大きい傾向にあります。

海外のものやサービスが安く購入できる

円高では円の価値が上がり、輸入食品を安く手に入れることが可能になります。日本は多くの食品を輸入に頼っているため、円高になることで食品の原材料の価格を抑えることが可能です。その結果、消費者に届く食品の値段が下がりやすくなります。

また、少ない円で外貨に交換することができるため、旅行の日程を長めに設定したり、いつもよりグレードの高いホテルを利用したりと、円安時期よりも海外旅行をお得に楽しめるでしょう。実際に2010年〜2012年ごろは円高の傾向があったため、海外へ旅行する方が増加しました。

輸入産業の業績が伸びやすい

円高の場合、輸入にかかるコストが安く済むため、輸入企業の業績が伸びやすくなります。例えば洋菓子店では卵や薄力粉などの原材料に加えて、箱やリボンなどラッピング用品が必要です。これらの仕入れも海外から行っている店舗は、輸入コストを大きく削減できるでしょう。

つまり、円安時に比べて原価が抑えられるため、利益は拡大し、事業によっては円高の恩恵を大きく受けられます。

また、ガソリンや灯油なども海外からの輸入がほとんどです。そのため、需要が一定でも円高が進むとガソリンや灯油が安くなり、各家庭の負担は小さくなります。

円高のデメリット

円高のメリットは個人への恩恵が大きいことでしたが、デメリットは以下のとおりです。

海外資産の価値が下がってしまう

個人で外貨預金や海外資産での投資を行っている場合は、日本円に換算すると価値が下がってしまうリスクがあるので注意が必要です。円高になる前に保有していた海外資産を円高のタイミングで、日本円に換金すると、為替レートの変動によりお金が減ってしまう「為替差損」が発生します。

ただし、日本円に戻さない限り為替差損は発生しないので、為替レートの動向をチェックしながら落ち着いて換金のタイミングを判断しましょう。

輸出製品が海外で売れにくくなる

円高は海外にとって日本からの輸入品の価格が上がることを意味するため、自動車のような輸出製品は高額となり売れにくくなります。輸出産業をメインとしている企業は、円高は業績悪化に繋がる要因になります。

また、日本に旅行に来る外国人観光客にとっては、円に対して自国通貨の価値が下落している状態といえるでしょう。これは、円安のときに日本人が海外旅行に行く状態と一緒です。

円安のメリット・デメリット

円安のメリット・デメリット

円安は輸出企業へのメリットが大きく、個人はデメリットを感じやすいといえます。具体的にどんな影響があるのでしょうか。

円安のメリット

外貨に比べて円の価値が落ちることを円安と呼びますが、その円安にもメリットがあります。ただし、円安のメリットは個人では感じにくく、輸出企業や経済的な影響が大きいといえます。

日本のものやサービスが海外へ売りやすくなる

円安になると、外貨を日本円に交換したときに、円高時よりも多くの日本円を手にすることが可能です。日本のものを安く購入でき、サービスも安く利用できるため、外国人観光客の増加が期待できます。

外国人観光客の中には、いつもより多くお土産を購入したり、充実した宿泊プランを選択したりする方もいるでしょう。その結果、日本のお土産店や宿泊施設に多くのお金が流れるようになります。

輸出産業の業績が伸びやすい

円安は海外の方にとって日本製品を安く仕入れるチャンスであるため、輸出産業の業績アップに繋がります。例えば、電子部品や自動車などがよく売れるようになるでしょう。とくに自動車産業は、1円円安になるごとに数億円単位が動くといわれています。

個人としては海外資産を保有していた場合、円で資産を保有していたときよりも資産増加が期待できます。海外資産を取得したときよりも円安になったタイミングで円に換金することで「為替差益」が見込めるでしょう。

円安のデメリット

円安は個人に対してのデメリットが大きいといえます。具体的にはどのような影響があるのか解説しましょう。

生活必需品の値上がりリスクがある

円安は輸入製品の価格が上がるのが特徴です。輸入コストが高まることで、日用品や食品などさまざまなものの価格が高騰します。特に日本は輸入製品に頼っている割合が大きいため、円安になると生活必需品の値上がりが発生しやすくなります。

具体例を挙げると、衣類のほとんどはベトナムや中国から、トウモロコシや小麦などはアメリカからの輸入品です。またガソリンや工場・飛行機の原動力となる原油のほとんどをアラブ首長国連邦やサウジアラビアなどの中東諸国から輸入しています。

つまり生活に必要不可欠なものの多くが、外国のモノでまかなわれているといえます。そのうえ、賃金が必ずしも上がるとは限らないため「生活が厳しい」「どんどんお金が無くなっていく」と感じる方もいることでしょう。

金融商品を持っていないと資産が目減りする可能性も

賃金が増えないまま円の価値が下がり、物価が上昇した場合、資産を日本円のみで保有している場合はどんどん目減りしていきます。日本円の資産しか持っていない場合は、実質的に損し続けることになってしまうため、注意が必要です。

「円高に戻れば問題ないのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。もちろん戻る可能性も否定できませんし、長期的な円安が続くこともありえます。実際どのような経済情勢になるかの見通しはさまざまな要因に左右されます。

現在日本では少子高齢化による人口減少が続いていますが、人口減少は国力低下を招きます。国力が低下すると、さらに円を売る動きが強まるため円安が進み、インフレが加速する可能性もあるといわれています。円安は個人の金銭的負担が増えて生活に影響しやすい状態といえるでしょう。

円安のときにとるべき行動とは

円安のときにとるべき行動とは

円高・円安どっちにもメリット・デメリットはありますが、個人がとくに気を付けておきたいのは「円安」です。円安で発生する生活必需品や食品の価格高騰は、直接的に家計を圧迫します。

日本円で資産を持つことは大きな損失をする可能性も低く安全に思えますが、円安が進むにつれて損し続けることになるため注意が必要です。では、円安を上手に乗り越えるためにとるべき行動とは一体何でしょうか。

国内原料・国内生産の製品に目を向ける

円安であっても国内原料・国内生産の製品は為替レートの影響を受けにくいものです。円安時は積極的に国内製品を利用するようにしましょう。

例えばパンよりも米をメインにするなど、円安の傾向があるときは身近な行動から変えていくのがおすすめです。ちなみに、パンの原材料となる小麦の80%近くはアメリカやカナダからの輸入品です。

ただし、国内で材料を揃え国内で生産するものであっても、製造時や運送時などどうしてもガソリンなどの海外資源に頼らざるを得ない場合もあります。そういった場合には、かえって価格が上がる可能性があることを念頭に置いておきましょう。

金融商品を保有する

前項でも述べたように、円安のときは国内資産の価値が下がるため資産が目減りしてしまいます。外貨に換えて保有するより、コツコツ日本円で預金する方が安全なように思えますが、円安時は注意が必要です。円預金で資産をすべて保有しておくことがリスクに繋がりかねません。

資産の一部を、株式投資や海外も投資対象とした投資信託などの金融資産や、外貨資産に変えることも検討しましょう。

株式投資に関しては、円安が業績に好影響を与える企業の株や、日本企業だけではなく海外企業も組み入れたファンドなどの購入も検討してみましょう。外貨預金は日本に比べて金利が高いものが多いのも特長です。ただし、満期時の円安円高が日本円へ換金した際に影響します。

しかし投資経験がない方にとっては「いきなり資産運用なんて難しそう」と感じるでしょう。そんなときはスマホで簡単に手続きができる金融商品や、ポイントを利用した資産運用などがおすすめです。貯まったポイントを使用することで、現金を失うリスクを防げるためハードルは低く感じるでしょう。

また、NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用し、少額から投資を始めてみるのもおすすめです。日本だけでなく海外の資産にバランス良く投資を行うことで、特定の国の動向によって資産額が大きく変動するリスクの軽減にもつながります

極端な行動には注意も必要

円安は日本円の価値が下がっている状態を意味しますが「すべての資産をドルに換える」といった極端な行動は避けましょう。円安がいつまで続くか予想できませんし、実際に日本円の価値は日々変動しています。どんな場合でも資産を保てるよう、円と外貨の保有バランスはご自身のリスク許容度を考慮しながら考えましょう。

2024年後半の為替相場はどうなる?

2024年は140円台前半から取引が始まり、4月下旬には一時160円台に乗せ、7月には161円台と歴史的な円安水準となりました。しかし、7月中旬から8月上旬にかけて一気に円高に振れ、9月時点では140円台前半での取引が続いています。

今後の為替相場を予想するのは難しいですが、低金利通貨で資金を調達し、高金利の通貨に換えて資産運用する「キャリー取引」など、短期的な値動きの変化から利益得ることを目的に取引を行う投機筋の円売りポジション解消による大きな相場の変動は一巡したものと思われます。今後大きな変動が起こらないとは言い切れませんが、さらに円高に振れるとなると日米の金利差縮小が必要になると考えられるので、日銀やFRB(連邦準備制度理事会)の動向に注目しましょう。

また、以下のようにいくつかの構造的な円安要因もあることから、円高への圧力は限定的となる可能性があります。

  • 新NISAに伴う個人の円売り
  • 原油価格上昇などによる貿易赤字
  • デジタル赤字

2024年からNISA(少額投資非課税制度)の新制度がスタートし、海外資産への投資が加速していることが円売りのひとつの要因となっています。また、エネルギー供給の大半を輸入に頼る日本にとって、原油価格の上昇などにより貿易赤字となっていることも円安の要因です。

なお、デジタル赤字とは、海外のデジタルサービスを使うことによって生じる赤字のことです。日本企業がDX化を進めるほど海外デジタルサービスへの支払いが増え、結果的に円安の要因となっています。

このように構造的な円安要因があるので、2024年後半にかけて急激な円高となる可能性は低いと考えられますが、投機的な円買いが膨らむケースには注意しましょう。

おわりに

今回は、円高・円安の基本を解説するとともに、個人でできる円安対策についてもご紹介しました。個人にとって円安は、食品や生活必需品の値上がりなど直接的に家計に打撃を与えるため注意が必要です。この記事で紹介した対策は今すぐできることばかり。大切な資産を守るためにも、円安対策をできることから始めてみましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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