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円高と円安はどっちがいい?資産防衛に向けて円安が進む今とるべき行動とは?

セゾンのくらし大研究 編集部

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32年ぶりの円安となっている今、日本にどのような影響が出ているのかご存知でしょうか。「円高と円安のどっちがいいのか分からない」という方も多いでしょう。そこで今回は、円高・円安の基本を解説するとともに、現状とるべき行動についてまとめてみました。

改めて円高・円安についておさらいしたい方や、円安で家計が圧迫されて困っている方はぜひ参考にしてみてください。

この記事のポイント

円高と円安は立場によって良し悪しが異なり、どっちがいいのかは自身の状況などにより変化します。一般的には、大幅な円安は個人にはデメリットが大きく、輸出企業にはメリットにつながりやすいでしょう。
円安は、食品や生活必需品の値上がりを招き、家計に直接的な打撃を与えます。さらに日本円で資産を保有していた場合、価値が目減りしている可能性もあります。

円安のリスクを軽減するためには、預貯金以外の金融資産の保有、日本円資産だけでなく海外資産をリスク許容度に応じて保有することが大切です

1.円高と円安はどっちがいい?

2022年10月に1ドル=150円台となり、約32年ぶりに円安水準を更新しました。その結果2022年中に約20,000品目以上が値上げされることに。日本はさまざまな品目を輸入に頼っているため、円安が進むことで材料費も高騰し、食品の値上げをせざるを得ない状況です。

食用油や調味料、乳製品など各家庭の必需品といえる品目が数多く値上げされています。食品の値上げは飲食店にも打撃を与えており、値上げをするか頭を悩ませている経営者も少なくないようです。

値上げは続くものの給料は上がらない現在の状況では、生活が苦しいと感じている方も多いでしょう。円安の影響が家計を圧迫しているといえます。

終値を参考に作成(参考:チャート

円高と円安を考えるうえで、気になるのは結局どっちがいいのか、ということでしょう。結論からいうと、円高と円安は立場によって良し悪しが異なります。

海外旅行をしたいときは円高のほうがお得に楽しめ、例えば自動車関連などの輸出企業に勤めている場合は、円安のほうが海外で車がよく売れます。円の価値の推移は家計に大きくかかわるため、自分事として理解しておくことが大切です。

では、そもそも円高・円安とはどのような状態なのか、具体的にご紹介します。

1-1.円高とは

円高とは、円の価値が上がることを指します。円高・円安で考えた際の円の価値は、ドルやポンドなどの他国通貨との比較からうまれます。「1ドル=100円」が「1ドル=80円」となった場合、もともと100円を支払えば1ドル得られていたものが、80円だけで1ドルが手に入るようになります。

例えば、レストランで10ドルのランチを注文するとしましょう。1ドル=100円の場合、ランチに1,000円支払う必要があります。円高で1ドル80円になった場合は、同じランチを800円で食べることが可能です。

1-2.円安とは

一方で円安とは、円高とは逆に円の価値が下がることを指します。「1ドル=100円」から「1ドル=150円」へと、円の価値が下がったとしましょう。レストランで10ドルのランチを注文する場合、もともと1,000円支払えば、手に入っていたはずが1,500円必要になります。

また、1ドル100円のときに、100万円で1万ドルを購入しドルとして保有していた場合に1ドル=150円の円安となると、1万ドルを日本円換算したときには150万円となっていることになります。取引するものの金額が大きいほど、円高・円安の影響を大きく受けることが分かるでしょう。

2.円高のメリット・デメリット

ドルよりも価値が上がる、と聞くと円高の方が印象が良い気もします。そんな円高にもデメリットがあり、では、具体的にどんなメリット、デメリットがあるのかご紹介します。

2-1.円高のメリット

円高は企業へのメリットよりも個人へのメリットが大きい傾向にあります。

海外のものやサービスが安く購入できる

円高では円の価値が上がり、輸入食品を安く手に入れることが可能になります。日本は多くの食品を輸入に頼っているため、円高になることで食品の原材料の価格を抑えることが可能です。その結果、消費者に届く食品の値段が下がることに繋がります。

また、少ない円で外貨に交換することができるため、旅行の日程を長めに設定したり、いつもよりグレードの高いホテルを利用したりと、円安時期よりも海外旅行がお得に楽しめるでしょう。2010年〜2012年ごろは円高の傾向があったため、海外へ旅行する方が増加しました。

輸入産業の業績が伸びやすい

円高の場合、輸入にかかるコストが安く済むため、輸入企業の業績が伸びやすくなります。例えば、洋菓子店には卵や薄力粉などの原材料に加えて、箱やリボンなどラッピング用品の仕入れも海外から行っている店舗もあります。

円安時に比べてコストがかからないため、原価が抑えられ利益が生まれやすくなるという仕組みです。このように企業の事業によっては円高の恩恵を大きく受けられます。

また、ガソリンや灯油などは海外からの輸入がほとんどです。そのため、需要が一定だとして、円安から円高が進むとガソリンや灯油も安くなり、各家庭の負担も少なくなります。

2-2.円高のデメリット

円高のメリットは個人への恩恵が大きいことでしたが、デメリットは以下のとおりです。

海外資産の価値が下がってしまう

個人で外貨預金や海外資産での投資を行っている場合は、日本円に換算すると価値が下がってしまうリスクがあるので注意が必要です。円高になる前に保有していた海外資産を円高のタイミングで、日本円に換金すると、為替レートの変動によりお金が減ってしまう「為替差損」が発生します。

ただし、日本円に戻さない限り、この損益は発生しないので、為替レートの動向をチェックしながら落ち着いて判断しましょう。

輸出製品が海外で売れにくくなる

円高は海外にとって日本からの輸入品の価格が上がることを意味するため、自動車のような輸出製品は高額となり売れにくくなります。輸出産業をメインとしている企業は、円高は業績悪化に繋がる要因になります。

また、円高は、日本に旅行に来る外国人観光客にとっては、自身の自国通貨が、円に対して価値が下落している状態といえるでしょう。これは、円安のときに、日本人が外国に旅行に行く状態と一緒です。

3.円安のメリット・デメリット

円安は輸出企業へのメリットが大きく、個人はデメリットを感じやすいといえます。具体的にどんな影響があるのでしょうか。

3-1.円安のメリット

外貨に比べて価値が落ちることを円安と呼びますが、その円安にもメリットがあります。ただし、円安のメリットは個人では感じにくく、輸出企業や経済的な影響が大きいといえます。

日本のものやサービスが海外へ売りやすくなる

円安になると、外貨を日本円に交換したときに、円高時よりも多くの日本円を手にすることが可能です。日本のものを安く購入でき、サービスも安く利用できるため、外国人観光客の増加が期待できます。

外国人観光客の中には、いつもより多くお土産を購入したり、充実した宿泊プランを選択したりする方もいるでしょう。その結果、日本のお土産店や宿泊施設に多くお金が流れるようになります。

輸出産業の業績が伸びやすい

円安は海外の方にとって日本製品を安く仕入れるチャンスになるため、輸出産業の業績アップに繋がります。例えば、電子部品や自動車などがよく売れるようになるでしょう。とくに自動車産業は、1円円安になるごとに数億円単位が動くといわれています。

個人としては海外資産を保有していた場合、円で資産を保有していたときよりも資産増加が期待できるでしょう。海外資産を取得したときよりも円安になったタイミングで円に換金することで「為替差益」が見込めるでしょう。

3-2.円安のデメリット

円安は個人に対してのデメリットが大きいといえます。具体的にはどのような影響があるのか解説しましょう。

生活必需品の値上がりリスクがある

円安は輸入製品の価格が上がるのが特徴です。輸入コストが高まることで、日用品や食品などさまざまなものの価格が高騰します。日本は輸入製品に頼っている割合が大きいため、円安になると生活必需品の値上がりが発生しやすくなります。

具体的な例を挙げると、衣類のほとんどはベトナムや中国から、トウモロコシや小麦などはアメリカからの輸入品です。ガソリンや工場、飛行機の原動力となる原油のほとんどをアラブ首長国連邦やサウジアラビアなどの中東から輸入しています。

生活に必要不可欠なものの多くが、外国のモノでまかなわれていることが分かります。そのうえ、賃金が必ずしも上がるとは限らないため「生活が厳しい」「どんどんお金が無くなっていく」と感じる方もいることでしょう。

金融商品を持っていないと資産が目減りする可能性も

賃金が増えないまま円の価値が下がり、物価が上昇した場合、資産を日本円のみで保有している場合はどんどん目減りしていきます。日本円の資産しか持っていない場合は、実質的に損し続けることになってしまうため、注意が必要です。

「円高に戻れば問題ないのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、もちろん戻る可能性も否定できませんし、長期的な円安が続くこともありえます。実際どのような経済情勢になるかの見通しは色々な要因に左右されます。

現在日本では少子高齢化で人口減少が続いていますが、人口減少は国力低下を招きます。国力が低下すると、さらに円を売る動きが強まるため円安が進み、インフレが加速する可能性もあるといわれています。円安は個人の金銭的負担が増えて生活に影響しやすい状態といえます。

4.円安のときにとるべき行動とは

円高・円安どっちにもメリット・デメリットはありますが、個人がとくに気を付けておきたいのは「円安」です。円安で発生する生活必需品や食品の価格高騰は、直接的に家計を圧迫します。

日本円で資産を持つことは大きな損失をする可能性も低く安全に思えますが、円安が進むにつれて損をし続けることになるため注意が必要です。では、円安を上手に乗り越えるためにとるべき行動とは一体何でしょうか。

4-1.国内原料・国内生産の製品に目を向ける

円安であっても国内原料・国内生産の製品は為替レートの影響を受けにくいものです。円安時は積極的に国内製品を利用するようにしましょう。

例えば、パンよりも米を食べるなど。円安の傾向があるときは、身近な行動から変えていくのがおすすめです。パンの原材料となる小麦の80%近くはアメリカやカナダからの輸入品です。

ただし、国内で材料を揃え国内で生産するものであっても、製造時や運送時など、どうしてもガソリンなどの海外資源に頼らざるを得ない場合もあり、そういった場合には、逆に、価格が高くなる可能性があることを念頭に置いておきましょう。

4-2.金融商品を保有する

前項でも述べたように、円安のときは国内資産の価値が下がるため資産が目減りしてしまいます。外貨に換えて保有するより、コツコツ日本円で預金する方が安全なように思えますが、円安時は注意が必要です。円預金で資産をすべて保有しておくことがリスクに繋がりかねません。

資産の一部を株式投資や海外も投資対象とした投資信託などの金融資産、外貨資産に変えることも検討しましょう。

株式投資に関しては、円安が業績に好影響を与える企業の株を購入するとか、日本企業だけを投資対象としたファンドではなく、日本以外の海外企業も組み入れたファンドを購入するなども検討してみましょう。外貨預金は日本に比べて金利が高いものが多いのも特長です。ただし満期時の円安円高が日本円へ換金した際に影響を受けます。

しかし「いきなり資産運用なんて難しそう」と、投資をしたことがない初心者の方であれば、感じる方もいらっしゃるでしょう。そんなときはスマホで簡単に手続きができるものや、ポイントを利用した資産運用がおすすめです。貯まったポイントを使用することで、現金でいきなり投資するよりもハードルは下がるでしょう。

また、つみたてNISAや単元未満株などを活用し、少額から投資を始めてみるのも良いでしょう。日本だけでなく海外の資産にバランス良く投資を行うことで、特定の国の動向によって資産額が大きく変動するリスクの軽減にもつながります

4-3.極端な行動には注意も必要

円安は日本円の価値が下がっている状態を意味しますが、だからといって「すべての資産をドルに換える」といった極端な行動には注意が必要です。円安がいつまで続くか予想できません。日本円の価値は日々変動しています。どんな場合でも資産を保てるよう、円と外貨の保有バランスは自身のリスク許容度を考慮しながら考えましょう。

おわりに

今回は、円高・円安の基本を解説するとともに、個人でできる円安対策についてもご紹介しました。個人にとって円安は、食品や生活必需品の値上がりなど直接的に家計に打撃を与えるため注意が必要です。この記事で紹介した対策は今すぐできることばかり。大切な資産を守るためにも、円安対策をできることからはじめてみましょう。

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