退職される方の中には、実際に退職した後の手続きについて不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
- 「退職後の手続きにはどんなものがあるの?」
- 「退職後の手続きはどんな順番でやれば良い?」
退職後に行うべき手続きの中には、急いで行うべきものもあれば、急がなくてもよいものもあります。このコラムでは、以下について詳しく解説します。
- 退職後に必要になる手続き
- 退職後の手続きをスムーズに行うためのポイント
必要な順番に沿って解説していますので、このコラムを読みながら進めていただければスムーズに手続きできます。ぜひ最後までお読みください。
退職後に必要な5つの手続き
退職後に必要な手続きは以下の5つです。
- 健康保険
- 国民年金
- 失業保険
- 住民税
- 確定申告
退職後すぐに再就職する場合や、家族の有無、退職後のライフプランなどによって異なる場合もありますが、これらはほとんどの方に必要な手続きです。各手続きの内容や注意点について、順番に見ていきましょう。
【退職後の手続き1】健康保険
退職後、真っ先に手続きしなければならないのは健康保険です。すぐに再就職する場合は、新しい職場が手続きを行いますが、それ以外の場合は、ご自身での手続きが必要です。
退職後の健康保険は、以下の3つの選択肢からひとつを選んで加入します。
- 健康保険の任意継続
- 家族の健康保険
- 国民健康保険
再就職までの期間が空く場合や、再就職の予定がない場合は、どの健康保険にするかを決めて期限内に手続きをしなければいけません。
また、健康保険未加入の期間ができないように注意して手続きしましょう。なお、どの健康保険に加入すべきか検討するポイントについては、こちらで解説しています。
健康保険の任意継続
健康保険の任意継続は、これまでに加入していた健康保険を任意で継続できる制度です。条件を満たせば2年間、元の健康保険に継続して加入できます。ただし、保険料は全額自己負担になるため、在職時の約2倍になる場合もあります。また、健康保険の任意継続では、扶養に入っている家族の健康保険も継続できます。そのため、家族で加入する場合は、国民健康保険に加入するよりも保険料の負担を抑えられる場合があります。
任意継続の手続き期間は退職日の翌日から20日以内です。これまで加入していた健康保険組合などで手続きしましょう。
家族の健康保険
ご家族に健康保険に加入している方がいる場合は、収入などの条件を満たすことで被扶養者として加入できる可能性があります。被扶養者として加入できる条件は、健康保険組合によって異なります。
被扶養者として加入する条件については、加入手続きの前に必ず確認しておきましょう。被扶養者として加入できる場合は、保険料の支払いが必要ありません。ただし、家族の扶養に入る場合は、退職後すぐに手続きをする必要があるため注意しましょう。
国民健康保険に加入
上記2つの健康保険の加入要件に該当しない場合は、国民健康保険に加入します。国民健康保険に加入する場合は、退職日の翌日から14日以内に手続きしましょう。国民健康保険は、これまで被扶養者として保険料の負担がなかった扶養家族も1人ひとり加入することになり、各自に保険料の支払いが発生します。
家族がいる場合は、家族の加入手続きも同時に行いましょう。どの健康保険にも加入せず、未加入のままにしておくことはできません。家族全員が、いずれかの健康保険へ加入しなければいけないため、期限までに必ず手続きを行いましょう。
【退職後の手続き2】国民年金
退職時の年齢が20歳以上60歳未満である場合は、国民年金の手続きが必要です。すぐに再就職する場合は、次の職場で手続きが可能ですが、再就職までの期間が空く場合や再就職しない場合は、退職日の翌日から14日以内にご自身で手続きを行いましょう。
国民年金の主な手続き方法は次の3つです。
退職後の選択肢 | 必要な手続き |
---|---|
再就職する場合 | 再就職先で厚生年金保険の手続き(国民年金第2号被保険者) |
再就職しない場合 | 国民年金第1号被保険者の手続き |
厚生年金保険加入者の被扶養配偶者となる場合 | 国民年金第3号被保険者の手続き |
国民年金は、これまで第3号被保険者だった配偶者についても、切り替え手続きが必要となります。扶養に入っている家族についても、未加入期間ができないように気を付けましょう。
【退職後の手続き3】失業保険(雇用保険の基本手当)
失業保険は、雇用保険の給付のひとつです。正しい名称は「雇用保険の基本手当」ですが、一般的には失業保険や失業手当と呼ばれています。
失業保険は、会社都合退職だけでなく、自己都合退職でも受給できます。離職票が届いたらすぐに手続きを行いましょう。
失業保険(雇用保険の基本手当)の受給要件
失業保険は、求職の申し込みを行い、就職しようとしているのに職業に就けない場合のみ受給できます。失業保険の受給要件は、次の2つです。
- 就職しようという意思があるのに失業状態にある
- 離職日以前の2年間に、被保険者期間が通算して12ヵ月以上ある
ケガや病気、妊娠や出産など、すぐに就職できない場合は基本手当を受給できません。また、定年退職後しばらく休養する予定の方も受給要件を満たしません。
失業保険(雇用保険の基本手当)の手続き方法
離職票が届いたら、ハローワークに持参して受給の手続きを行いましょう。受給説明会への出席や求職活動を行うなど、所定の手続きを経て失業認定されると手当が支給されます。
なお、申し込みから7日間の待機期間があり、自己都合退社の場合はさらに、待機期間満の翌日から2ヵ月間の給付制限期間があります。
その後、4週間ごとに失業手当の認定を受け、雇用保険の被保険者期間に応じて、自己都合退社の場合は最大150日まで、会社都合退社の場合は最大330日まで受給できます。
失業保険で受け取れる給付額
失業保険で受け取れる金額は、基本手当日額の45〜80%です。ただし、賃金の平均日額によって給付率が変わります。平均日額が低いほど給付率が上がるように設定されています。基本手当日額の詳しい計算式については、以下の表をご覧ください。
1.30歳未満の受給資格者
賃金日額 | 基本手当日額 |
---|---|
2,869円以上5,200円未満 | 80% |
5,200円以上12,790円以下 | 50%〜80% |
12,790円超14,130円以下 | 50% |
14,130円超 | 7,065円 |
2.30歳以上45歳未満の受給資格者
賃金日額 | 基本手当日額 |
---|---|
2,869円以上5,200円未満 | 80% |
5,200円以上12,790円以下 | 50%〜80% |
12,790円超15,690円以下 | 50% |
15,690円超 | 7,845円 |
3.45歳以上60歳未満の受給資格者
賃金日額 | 基本手当日額 |
---|---|
2,869円以上5,200円未満 | 80% |
5,200円以上12,790円以下 | 50%〜80% |
12,790円超17,270円以下 | 50% |
17,270円超 | 8,635円 |
4.60歳以上65歳未満の受給資格者
賃金日額 | 基本手当日額 |
---|---|
2,869円以上5,200円未満 | 80% |
5,200円以上11,490円以下 | 45%〜80% |
11,490円超16,490円以下 | 45% |
16,490円超 | 7,420円 |
参照:雇用保険の基本手当日額の変更|厚生労働省(令和6年9月時点)
上記の数値は令和6年9月時点でのデータです。定期的に給付割合や限度額は見直されているため、定期的に確認しておくとよいでしょう。
【退職後の手続き4】住民税
退職後は、住民税の手続きも忘れずに行いましょう。退職の時期や、退職後の再就職の有無で手続き方法が異なります。手続きの方法や支払方法について見ていきましょう。
退職した年の住民税は退職した時期で支払い方法が異なる
住民税は、前年の所得に応じて課税されます。6月から支払いが開始されるため、退職の時期によって支払い方法が異なるため注意しましょう。
1/1~5/31までに退職した場合
5月分までの住民税は、給与や退職金から一括徴収されます。6月以降の住民税は普通徴収となり、一括もしくは分割(4回)で納付書により納付します。
6/1~12/31までに退職した場合
退職月の住民税は、特別徴収となり給与から天引きされます。翌月以降の住民税は普通徴収となり、一括または分割で納付書により納付します。
再就職が決まっている場合
再就職する場合は、転職先で申し出れば新しい職場で引き続き給与から天引き(特別徴収)されます。申し出ない場合は普通徴収となり、納付書を使って支払います。
退職した年の住民税は高額になることが多いので注意
住民税は前年の所得に応じて課税され、6月以降に支払いが開始されます。普通徴収に切り替えた場合、一括もしくは4回の分割で支払うため、1年分の住民税を毎月分割で支払っていた特別徴収に比べると、1回の支払い額が大きくなります。住民税の目安は前年の所得の1割です。あらかじめ退職金などから用意しておくと、スムーズに支払えるでしょう。
住民税はクレジットカードで支払える
住民税をクレジットカードで支払える自治体も多くなっています。WEBサイトから手続きできるため、わざわざ納付に出向く必要がなく、クレジットカードのポイントも貯められます。
セゾンカードでも支払うことが可能です。まだ、セゾンカードをお持ちでない方は、スマホから最短5分で手続きが完了するSAISON CARD Digital(セゾンカードデジタル)への入会もおすすめです。永久不滅ポイントも貯まるため、お得にポイントを貯めつつ、住民税を支払いたい方にはおすすめです。
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お住まいの自治体がWEBサイトでの支払いに対応しているなら、ぜひご利用ください。なお、自治体によっては手数料が必要になる場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
【退職後の手続き5】確定申告
退職後、年末までに転職しなかった場合は、確定申告が必要です。退職後に収入がない場合は、所得税などが正しく精算されていません。確定申告をすることで、各種控除が受けられ、税金が還付される可能性があります。
退職した翌年の2月16日~3月15日の期間内には、忘れずに確定申告を行いましょう。
退職後に行う各手続きの期限
退職後の手続きを行う際には、それぞれ期限が決められているため、手続きごとの期限を確認しつつ、優先順位をつけて手続きを進めることが大切です。手続きの期限で考えた際に、優先順位をまとめると以下の順序になります。
- 年金
・第一号への手続き:退職日の翌日から14日以内
・第三号(扶養)手続き:事実が発生した日から5日以内 - 健康保険
・任意継続:資格喪失日から20日以内
・国保:退職から14日以内
・扶養:事実発生から5日以内 - 住民税(退職後速やかに)
- 確定申告(翌年3月15日まで)
- 失業保険(原則1年だが2年以内なら遡れる)
必ずしも上記の手順で進める必要はありませんが、それぞれ期日内に終わらせられるように手続きを進めましょう。
また、それぞれ手続きを行う場所についても把握しておくと、スムーズに進められます。各手続きの受付先については以下をご覧ください。
手続きの種類 | 手続きを行う窓口 |
---|---|
年金 | 第1号被保険者への切り替え:居住地の市区町村役所の国民年金窓口 第3号被保険者(扶養)への切り替え:配偶者の勤務先の会社 |
健康保険 | 任意継続:前職の健康保険組合または協会けんぽの支部 国民健康保険:居住地の市区町村役所の国民健康保険窓口 扶養:扶養する配偶者の勤務先の会社 |
住民税 | 居住地の市区町村役所の税務課 |
確定申告 | 居住地を管轄する税務署 |
失業保険 | 居住地を管轄するハローワーク |
退職後の手続きに必要な書類
退職後の手続きを行うためには、複数の書類を準備する必要があります。スムーズに手続きを進めるため、必要書類を把握して、事前に準備しておきましょう。各書類と、それぞれ必要になる手続きについては以下をご覧ください。
書類名 | 説明 | 必要となる手続き |
---|---|---|
雇用保険被保険者証 | 雇用保険に加入していることを証明する書類。 | 退職後の失業保険手続き |
健康保険の資格喪失証明書 | 健康保険の加入資格を失ったことを証明する書類。 | 退職に伴う健康保険の切り替え |
離職票 | 雇用保険の受給資格を証明する書類。 | 退職後の失業保険手続き |
源泉徴収票 | 1年間の所得と税金の支払額が記載された証明書。 | 退職後の確定申告(場合により)、転職先の住民税の計算などに必要 |
退職証明書 | その会社から退職したことを証明する書類。 | 退職に伴う年金の切り替え、退職に伴う健康保険の切り替え、転職先の住民税の計算などに必要 |
上記の書類は、退職の際に会社から受け取るようにしましょう。上記の他にも、年金手帳、身分証明書、マイナンバーカード、印鑑など自分で準備する書類もあるので確認しておきましょう。
また、手続きによっては、コピーでも問題なく手続きを行える場合もあります。自治体ごとに細かいルールが異なる場合もあるため、コピーでも利用できるか気になる方は、各手続きの管轄機関に直接お問い合わせください。
退職後の手続きをスムーズに行うためのポイント
退職後の手続きをスムーズに行うためのポイントは、以下の4つです。
- 退職後に必要となる書類を確認しておく
- 再就職する場合は次の職場でまとめて手続きする
- 必要な手続きを事前に調べて準備する
- 支払いに必要なお金は別にしておく
退職後の手続きをスムーズに行うためには、退職前から準備を進めることが大切です。ここでは、退職後の手続きをスムーズに行うための各ポイントについて見ていきましょう。
退職後に必要となる書類を確認しておく
退職後に必要になる書類は、退職する前に確認しておきましょう。必要な書類を把握しておくことで、退職時に漏れなく揃えられるよう手配できます。退職時にもらえない書類については、いつどんな手段でもらえるのか確認しておくことも大切です。
また、退職後に必要な手続きについて疑問点があれば、関係各所へ事前に問い合わせるなどして、事前に疑問点を解消しておきましょう。
再就職する場合は次の職場でまとめて手続きする
退職後すぐに再就職する場合は、次の職場に必要な書類をすべて持参して手続きします。書類の不足や不備がないよう、必要な書類を事前に準備しておきましょう。
必要な手続きを事前に調べて準備する
退職後すぐに再就職しない場合は、必要な手続きが複数あるため注意が必要です。手続きを行う順番やタイミングを事前に把握しておきましょう。
退職後の手続きの中には、健康保険や国民年金など、期限の決まっている手続きもあります。事前に調べて順番どおりに行えば、期限前に焦って準備することなく、スムーズに手続きを進められるでしょう。
支払いに必要なお金は別にしておく
退職後は、支払いに関する手続きも複数あります。特に、健康保険料や国民年金、住民税などは、大きなお金が必要になる場合も多いため注意しましょう。また、コンビニ振り込みやクレジットカード決済など、支払方法が複数あるものもあります。事前に支払方法について調べておくことで、保険料の支払などもスムーズに進められるでしょう。
退職後の手続きでよくある質問
退職後の手続きは複雑です。説明だけを聞いても、細かい部分がわからない場合もあります。ここでは、退職後の手続きについて、よくある質問について解説します。
確定拠出年金に加入している場合は特別な手続きが必要?
勤務先で確定拠出年金に加入していた場合は、退職から6ヵ月以内に新たな企業型DCかiDeCo、企業年金連合会のいずれかに資産を移す必要があります。次の就職先に企業型DCがあるのか、iDeCoへの切り替えを希望するかによって手続きが変わるため、事前に確認しておきましょう。
退職後にフリーランスになる場合はどんな手続きが必要?
退職後にフリーランスになる場合も、基本的には上記の5つの手続きと同じです。具体的には、以下の3つの手続きを行いましょう。
- 国民健康保険への切り替え
- 年金を第一号被保険者に切り替え
- 住民税の切り替え手続き
フリーランスになった場合は、保険等の手続きに加え、税務署への開業届出の提出も忘れずに行いましょう。
また、会社に勤務している場合は、社会保険料が給料から天引きされているため、自分で支払う手続きをする必要はありません。しかし、フリーランスになった場合は、保険料の支払い方法も変わります。
国民健康保険と国民年金は、それぞれ1年分の保険料の納付書が送られてきます。納付書に記載された期日までに保険料を支払いましょう。支払方法としては、以下の3つの方法から選べます。
- 納付書支払い
- クレジットカード支払い
- 口座振替
住民税については、 毎年5月から6月頃に、住んでいる自治体から「住民税の納税通知書」が送られてきます。支払う回数は、一括払いと年4回の分割払いから選択可能で、分割払いの場合は6月末、8月末、10月末、翌年1月末の4回に分けて支払うのが一般的です。住民税の主な方法は以下の3つです。
- 自治体の役場や指定の金融機関で現金払い
- クレジットカード支払い
- 電子マネー
住民税の支払い方法は、各自治体によって異なります。詳しくはお住まいの市区町村窓口に問い合わせることおすすめします。
退職後14日を過ぎたら健康保険に加入できなくなるのか?
原則として退職後14日以内に健康保険の手続きを行う必要がありますが、仮に期限を過ぎてしまっても加入することは可能です。ただし保険給付の対象となるのは「加入日以降」であり、それ以前の医療費などは全額自己負担になってしまう場合もあるため注意しましょう。
おわりに
退職後の各種手続きには、期限があるため、全ての手続きを期限内に終えられるよう、手続きの順番を検討し、事前に書類を準備しておきましょう。
また、退職後の手続きの内容は、退職日翌日の再就職の有無によって大きく異なります。すぐに再就職する場合は、新しい職場に必要な書類を提出することで完了します。退職前に必要書類を確認をしておくとスムーズに手続きできます。
一方、再就職までに空白の期間がある場合や、すぐに再就職しない場合は健康保険や国民年金の手続きが必要です。また、住民税や確定申告についても、ご自身で手続きしなければなりません。
退職後の動きによって手続きの内容が変わるため、退職前に手続きの内容を確認して、早めに方向性を決めておくことも大切です。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。