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養育費を支払わない方法はあるの?支払い免除や減額を請求できるケースを紹介

養育費を支払わない方法はあるの?支払い免除や減額を請求できるケースを紹介
セゾンのくらし大研究 編集部

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養育費の支払いは、離婚後に起こりうるトラブルの種のひとつです。離婚時に養育費について話し合って双方が納得したものの、後々養育費を払えなくなってしまうケースも考えられます。とはいえ、養育費の支払いは親としての義務です。そこで今回は養育費を支払わない方法と、支払いの免除や減額されるケースについてご紹介します。ご自身と子どもの人生にかかわることなので、正しい知識を身に付けて対処することが大切です。

この記事を読んでわかること
  • 親が子どもを扶養するのは義務であり、養育費の支払いは民法にも定められている
  • 養育費の支払いを怠ったままにしていると、財産が差し押さえられるケースや、刑事罰に問われるケースもある
  • 養育費支払いの免除や減額は、リストラや病気など急な理由でご自身の収入が減った場合や、ご自身の再婚によって子どもができた場合などで適用される可能性がある
  • 正当な理由であっても、相手と話し合い、双方が養育費の減額について合意しなければならない
  • 話し合いで合意が得られなければ、家庭裁判所で養育費減額調停を申し立てる必要がある
  • 話し合いすら難しい場合は、弁護士に依頼するとスムーズ

養育費の支払い義務について

養育費の支払い義務について

養育費の支払いは「民法877条1項」に定められており、親が子どもを扶養するのは義務であるとされています。一般的には子どもが社会的・経済的に自立するまでに必要な費用とされ、子どもの衣食住などに使われるものです。

離婚してもこの義務がなくなることはありません。離婚後に「別れた相手にお金を払いたくない」と問題に発展するケースも多いのですが、養育費はご自身の子どもに支払うものです。子どもが成長し自立をするために欠かせない費用であるため、義務を放棄することは許されません。自己破産をしても非免責債権となるため、養育費の支払い義務はなくならないことを覚えておきましょう。

令和4年(2022年)4月1日の民法改正により、成人年齢が18歳に引き下げられました。ただし、これに伴い養育費の支払い期限が引き下げられるわけではありません。養育費の支払いは原則20歳の誕生日までとされていますが、双方の合意があれば自由に決めることができます。

例えば、子どもが大学に進学する場合は多額の学費がかかるため、養育費を受け取りたい方は多いはずです。また、病気やケガなどによって20歳を超えても自立できない場合などは、継続して養育費が必要となるでしょう。

参照元:法務省|民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について

養育費の受給状況は?

養育費の受給状況は?

厚生労働省が実施した「全国ひとり親世帯等調査」によると、養育費の支払いを受けていないひとり親も多いことがわかりました。令和3年(2021年)の母子世帯、父子世帯それぞれの受給状況をまとめた表をご覧ください。

■令和3年 養育費の受給状況

総数現在も養育費を受けている養育費を受けたことがある養育費を受けたことがない不詳
母子世帯1,079,213303,252153,444613,5678,950
父子世帯105,1349,1915,00890,277659

父親からの養育費を現在も受けているケースが全体の28.1%に対し、受けたことがあるケースと受けたことがないケースを合計すると全体の71.1%です。一方、母親からの養育費を現在も受けているケースが8.7%、受けたことがある・受けたことがないケースが90.7%となっています。このように養育費を払っていない方も多いのが現状です。また、離婚時に養育費について取り決めをしていないケースも見られます。養育費の取り決め状況についても見てみましょう。

■令和3年 養育費の取り決め状況

総数取り決めをしている取り決めをしていない不詳
母子世帯1,079,213504,086552,11723,011
父子世帯105,13429,70572,5772,852

離婚時は相手と落ち着いて話せる状況ではない場合やすぐにでも離婚したい場合もあり、養育費について話し合えないケースもあるようです。また、養育費に関して取り決めをしている方でも文書なしの場合もあり、後々トラブルになる可能性も考えられます。

離婚時に養育費の取り決めをしていない理由として、母子家庭では「相手とかかわりたくない」、父子世帯では「相手に支払う能力がないと思った」が最も多い理由となっています。取り決めをしていない理由はさまざまですが、子どもの成長に必要な費用であることをしっかりと認識したうえで、今後のトラブルを回避するためにも、離婚時にしっかり決めておきましょう。

参照元:厚生労働省|令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告

養育費を支払わなくて良いケースは?

養育費を支払わなくて良いケースは?

養育費は、離婚しても親である以上は支払うのが基本です。たとえ借金があったり住宅ローンの支払いがあったりしても、養育費を支払わなくても良い理由にはなりません。しかし、例外的に支払わなくても良いケースがいくつかあります。ここからは養育費を支払わなくて良いケースについて詳しく見てみましょう。

支払い能力がない

養育費を支払いたくても支払い能力がない場合は、支払わなくて良いケースもあります。例えば病気やリストラなどやむを得ない理由で失業してしまい、無収入で次の仕事が見つからない場合は養育費を免除されることがあります。

前述した「民法第877条1項」による親の扶養義務は、ご自身と同じ程度の生活を相手が維持できるようにする義務です。収入がある場合は、多少ご自身の生活レベルを落としてでも養育費を支払わなければなりませんが、収入がない場合は免除されることもあります。

相手の収入が高い

養育費として支払う金額や義務は、裁判所から公表される「養育費算定表」が基準となって決められます。支払い側と受け取り側の収入バランスにより、養育費の金額が定められるのが一般的です。

そのため、受け取り側の収入が支払う側よりも高かった場合には、養育費の支払いが免除、もしくは減額される場合があります。前述の養育費の受給状況で、母親からの養育費を現在も受けているケースが8.7%と少ないのは、母親よりも父親の方が収入の高いケースが多いことも関係しているでしょう。

つまり、相手が親権者になった場合でも、相手の収入がご自身より極端に多い場合は、養育費の支払いが免除、もしくは減額されることが考えられます。

支払わないことを約束した

養育費の支払い金額や義務については、両親の話し合いによって決めることができます。その際に、養育費を支払わないことを相手が承認した場合は、支払い義務は発生しません。

離婚後に相手と一切かかわりたくなかったり、養育費の代わりとして相手の財産分与の割合を多くしたりした場合は、養育費を支払わなくて良いケースもあります。

ただし、この約束はあくまで夫婦間での取り決めです。

養育費はあくまで子どものための費用です。そのため、両親間での取り決めがあったとしても、子どもが養育費を請求することは可能です。

子どもが親権者の再婚相手と養子縁組した

離婚後に親権者(受け取り側)が再婚して再婚相手が子どもと養子縁組をした場合は、法律上、再婚相手に扶養義務が発生します。

その際、離婚した親(支払い側)は養育費の支払い義務がなくなる可能性があります。

なお、再婚相手と子どもが養子縁組をしない場合は、継続して実親が養育費を払う必要があります。

子どもが就職した、成人に達した

養育費は「未成年の子どもの養育にかかる費用」のため、子どもが成人したり子どもが就職して自立したりすれば、支払わなくて良いケースもあります。

ただし、前述のとおり大学に進学し学費や生活費が必要な場合や、成人後も就職や自立が見込めない場合には、支払う必要がある可能性も考えられるでしょう。

養育費を支払わないとどうなる? 

養育費を支払わないとどうなる? 

養育費の取り決めの際は、養育費の支払いを怠った場合に強制執行に服することを認める合意書を公証役場で作成します。この公正証書があれば、養育費の支払いが滞った場合に相手は強制執行を申し立てることが可能です。

ただし、養育費の支払いは義務とはいえ、支払いが難しいときもあるでしょう。養育費を支払わないとどうなるのかについて説明します。

財産が差し押さえられる

養育費の支払い期限を守れず滞納してしまった場合は、通常の養育費に加え、遅延損害金として養育費の3%を請求されるケースがあります。つい養育費の支払い期限を忘れてしまった…などの失態がないよう注意が必要です。

また、養育費を支払わなかった場合に、相手が強制執行の申し立てを行えば、財産を差し押さえられるケースがあります。この場合の財産とは、給与の2分の1や預貯金で、さらには土地や建物などの不動産も含まれるものです。66万円以上の現金や自動車、腕時計などの動産も含まれていることを覚えておきましょう。

不払いで財産開示にも応じない場合は罰則がある

養育費の不払いは、子どもの生活レベル低下につながります。養育費の不払いに関して、令和元年(2019年)5月10日に罰則が導入されました。養育費を支払うよう強制執行の申し立てがあったにもかかわらず、財産開示に応じない場合や虚偽の申告をした場合は、「6ヵ月以下の懲役または50万以下の罰金」の罰則が科され、今後社会的に不利になるケースもあります。

参照元:法務省|民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律について

減額を請求できるケースは?

減額を請求できるケースは?

どうしても養育費を支払えない場合、免除は難しくても減額であれば可能なケースもあります。ここでは減額になるケースをご紹介しましょう。

自身が再婚し、子どもができた

ご自身が再婚して子どもができた場合、新しく扶養すべき子どもが増えるため、元配偶者との子どもに支払える金額が限られます。その場合は、養育費を減額できる可能性があるでしょう。また、再婚相手の連れ子とご自身が養子縁組をした場合、同様の理由で養育費を減額できるケースもあります。

収入が減ってしまった

養育費の金額を取り決めた離婚時には予測できなかった事情によってご自身の収入が減ってしまった際は、養育費の減額が可能です。条件となるポイントとしては「離婚時には減収を予想できなかった」という点。

リストラや病気による休職など、急な理由で収入が減ってしまった場合に減額できる可能性があります。また、紙幣価値や物価などの変動によって収入が減った場合も同様に、養育費の減額が可能です。

養育費を受け取る側の親権者の収入が増えた

前述のとおり、一般的に養育費の金額は養育費算定表を基準に取り決めています。そのため、離婚後に相手側の親権者の収入が増えた場合は、減額を請求することが可能です。

養育費を免除もしくは減額を請求する方法は? 

養育費を免除もしくは減額を請求する方法は? 

ここからは、養育費の免除や減額をしたい場合の請求方法について説明します。

親権者同士が話し合う

離婚時に取り決めた養育費の内容を変更したいときは、まずは親同士が話し合いましょう。話し合いで双方が合意し、減額が決まれば面倒な手続きをせずに済みます。

離婚時に養育費について公正証書を作成している場合や、離婚調停で調書が作成されている場合は、新たに公正証書を作成するのがおすすめです。減額することを法的に明確にすることで、「あのとき減額に応じたつもりはない」と言われるトラブルを避けることができます。

また、ご自身の支払う養育費の免除や減額が可能な状況かどうかがわからない場合は、弁護士に相談するのも有効です。免除や減額ができると弁護士が判断した場合は、そのまま手続きを依頼するとスムーズに進めることができます。

養育費減額調停を申し立てる

親同士の話し合いで相手の同意が得られない場合は、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てる必要があります。

調停は裁判所で調停委員をとおして話し合いを行うため、離婚後に顔を合わせて話したくないという方にもおすすめです。養育費減額調停にかかる期間は、事情なども含め家庭によって異なります。およそ30~45日に1回の頻度で調停が開かれ、約半年ほどかかると見込んでおくと良いでしょう。

養育費の減額などが妥当なことを証明する資料を提出し、調停委員が確認します。ただ「払いたくない」といった漠然とした理由や、非現実的な金額では説得力に欠けるため、正当な理由と妥当な金額を提示する必要があります。そして、減額が妥当であると判断されれば、調停委員が相手を説得するという流れです。ただし、調停が不成立になってしまった場合は審判に移り、裁判官によって養育費の金額が決まります。

おわりに 

親に扶養義務があるとはいえ、継続的に養育費を支払うのが難しいケースもあるでしょう。しかし、養育費を払いたくないからといって滞納したままにしておくと、財産を差し押さえられたり、刑事罰に問われてしまったりするケースもあります。養育費とご自身の生活レベルや収入とのバランスを考慮したうえで、見直しが必要な場合には免除や減額について検討しましょう。

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