経済的自立と早期退職を実現した状態を指す「FIRE」という言葉を見聞きしたことがある方も多いでしょう。しかし、実際にFIREを実現するには多くの資産が必要であり、万人向けの選択肢ではありません。
そこでおすすめなのが「サイドFIRE」です。本記事ではサイドFIREの概要やメリット・デメリット、成功するためのポイントを紹介します。サイドFIREに必要な資産額や具体的な達成手順が分かり、今後のロードマップを定められるでしょう。
FIREとは「Financial Independence Retire Early」の略で、経済的自立と早期退職を達成した状態を指します。サイドFIREは、資産運用の運用益で生活費の大部分をまかないながら、労働収入も得ていくFIREのことであり、通常のFIREより少ない資産で実現できます。しかし、サイドFIREを達成した後に突発的な支出が発生したり、相場が暴落したりすると、その後の生活が成り立たなくなる恐れがあるため、専門家と相談しながら資金計画を立てる必要があります。
サイドFIREとは?
サイドFIREについて解説する前に、そもそもFIREとはどのような考え方なのかを解説します。近年はFIREから派生した多くの用語があるため、それぞれの定義を把握しましょう。
定年を待たずに早期退職する「FIRE」
FIREとは「Financial Independence Retire Early」の略で、経済的自立と早期退職を達成した状態を指します。
経済的自立の定義は資産収入で生活費をまかなえることです。例えば、月々の生活費が30万円であれば、株式や債券などの運用益によって月30万円以上の収入を得られている状態を指します。
資産収入の額は関係なく「資産収入≧生活費」が成り立てばFIREを達成したといえます。
副業などで労働収入を得る「サイドFIRE」
サイドFIREとは、資産運用の運用益で生活費の大部分をまかないながら、労働収入も得ていくFIREのことです。例えば、基礎生活費だけを資産収入でまかない、娯楽費を労働収入でまかなうといった状態です。労働収入は自営業やアルバイトなど制限はありません。
サイドFIREは通常のFIREに比べて用意する資産が少なく済みます。通常のFIREを実現すると、資産収入だけで生活費をまかなえるため、労働によって収入を得る必要がありません。しかし、資産収入だけで生活費をまかなうには多くの資産が必要です。
例えば、年間360万円の資産収入を得るには、運用利回りを5%に設定すると「360万円÷5%」で7,200万円もの資産が必要です。実際には運用益に税金が課されるため、税引き後利回りの4%で計算すると、必要な資産は9,000万円になります。
一方、サイドFIREであれば、労働収入を得ながらであるため、用意するべき資産は半分程度で済むでしょう。
FIREの種類は他にも
FIREという言葉が普及して以降、さまざまなタイプのFIRE論が展開されてきました。具体的には以下のとおりです。
- Fat Fire(ファットFIRE)
- Lean Fire(リーンFIRE)
- Barista Fire(バリスタFIRE)
- Coast Fire(コーストFIRE)
それぞれについて解説します。
・Fat Fire(ファットFIRE)
ファットFIREとは、資産運用の運用益のみで高い水準の生活ができる状態のことです。
明確な定義はありませんが、通常のFIREは生活に必要な資金を明確にし、その金額を資産収入でまかないます。一方、ファットFIREは資産収入の運用益のみで頻繁に海外旅行に行ったり、家賃の高い住宅に住んだりと、生活資金を切り詰めずとも生活できる状態です。
株式や債券からの配当だけでなく、不動産収入など多くの資産から収入を得ている傾向にあります。また、事業売却などによってまとまった資金を得た方なども該当します。
・Lean Fire(リーンFIRE)
リーンFIREとは、必要最低限の生活費で生活し、資産運用の運用益だけで生活費をまかなう状態です。通常のFIREと状態は変わりませんが、生活費や娯楽費を必要最低限まで切り詰めており、質素な生活を送っているのが特徴です。しかし、労働収入を必要としないので、自由な時間を持つことができます。
必要な資産額は通常のFIREよりも少なく済みますが、他の収入がないため、娯楽費を増やすのは難しいでしょう。また、突発的な支出に対する備えも必要です。
・Barista Fire(バリスタFIRE)
バリスタFIREとは、生活費の大半を資産収入でまかない、残りを雇用による賃金でまかなう状態です。サイドFIREとの違いは、労働収入が雇用による収入に限定される点です。
もともとはアメリカ発祥の考え方であり、雇用されることで勤務先の団体保険に加入することが目的です。日本は国民皆保険であるため、あえてバリスタFIREに縛られる必要はないでしょう。
・コーストFIRE
コーストFIREとは、資産収入で生活費をまかなえる状態でありながらも、本格的なFireまであえて労働収入を得るスタイルのFIREです。
生活費は資産収入でまかなえる安心感がありながら、本当にやりたいことを仕事にできるため、充実感のある生活を送れます。社会とのつながりも得られるため、孤独感も少ないでしょう。資産は増えていくため、生活基盤はさらに盤石になります。
サイドFIREのメリット
サイドFIREのメリットは以下のとおりです。
- 用意すべき資金が半分で済む
- ほど良い労働ができる
- 緊急時に資産を使わなくても良い
それぞれについて解説します。
用意すべき資金が半分で済む
資産収入だけで生活費をまかなうFIREは、多くの資産が必要になるため、現実的にイメージできない方も多いでしょう。一方、サイドFIREであれば、通常のFIREの半分程度の資産で達成できるため、多くの方に可能性があります。
例えば、家計の無駄を見直し月々20万円で生活できるとしましょう。FIREを目指す場合は税引き後税率4%で計算すると、6,000万円の資産が必要ですが、半分の10万円であれば3,000万円で済みます。
3,000万円も大金であることに違いはありませんが、年利4%で運用し、毎年102万円を積み立てた場合、20年で達成できます。同条件で6,000万円を貯めるには31年かかるため、10年以上短縮できました。
ほど良い労働ができる
日々せわしなく働いている方にとって、早期退職に憧れがあるでしょう。しかし、まったく働かない状態は社会とのつながりがなくなり、孤独を感じる方も少なくありません。
サイドFIREであれば、生活費の半分を労働収入でまかなえば生活できるため、労働時間を短くして適度に働けます。ご自身が興味のある仕事で稼ぐこともできるため、やりがいや充実感もあるでしょう。また、体や脳を動かすため、健康に良いと考えられます。
このようにサイドFIREを達成することで、柔軟な暮らし方や働き方を実現できます。
緊急時に資産を使わなくても良い
FIREを達成した後に懸念されるのは、資産が減ることです。
例えば、入院費の支払いや家や車の修理などです。FIREの場合は資産収入しかないため、突発的な支出が発生した場合、資産の一部を切り崩して対応しなければなりません。しかし、現在の資産が減ると、将来的に得られる資産収入も減るため、不安を感じるでしょう。
一方、サイドFIREであれば突発的な支出は仕事を増やすなどで労働収入でまかなうこともできるので、資産を切り崩さずに済みます。資産収入と労働収入の二軸で柔軟に対応できるのはサイドFIREの強みです。
サイドFIREのデメリット
サイドFIREにはメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
- 資産が大きく減る可能性がある
- 仕事ができなくなると生活できない
- 費用が増えると労働負担が増える
それぞれについて解説します。
資産が大きく減る可能性がある
サイドFIREを達成するには株式や債券に投資して資産収入を得る必要があります。
しかし、経済情勢の変化による景気変動によって資産が大きく減る可能性もあります。例えば、2008年のリーマンショックでは、日経平均株価が約1ヵ月半で41%下落しました。
仮に3,000万円の資産を運用していた場合、約1,200万円の投資元本を失った計算になります。このような大幅下落はいつ起こるか予測できません。サイドFIREで失敗しないためにも、株式や債券だけでなく、不動産など幅広い資産に投資をしてリスクを分散する必要があります。
仕事ができなくなると生活できない
サイドFIREでは、生活費の半分を労働収入によってまかないますが、ケガや病気で働けなくなった場合、資産収入だけでは生活できなくなります。
会社員の場合は傷病手当金などを受け取れますが、アルバイトや自営業者にはそのような保障はありません。そのため、投資資金以外に万が一に備えて貯蓄をしておく必要もあります。また、民間の保険に加入して備えるのもおすすめです。
費用が増えると労働負担が増える
親の介護などで支出が増えると、資産収入だけでは足りなくなるため、労働の割合を増やす必要があります。
アルバイトなどの時給労働だけでは十分な収入を得られない恐れがあるため、会社員として再就職する必要性も生じるでしょう。しかし、会社員として働くブランクが生じていることに加え、年齢によっては再就職が難しい可能性もあります。
自営業としてご自身の事業を育てるなど、長期目線での対策が必要です。
サイドFIREの手順
サイドFIREの概要やメリット・デメリットが分かったものの、具体的にどのようにして達成できるのか疑問に感じている方も多いでしょう。
本章ではサイドFIREを達成するための手順を解説します。
- 投資資金を確保する
- 副業に力を入れる
- 投資を始める
順番に見ていきましょう。
投資資金を確保する
サイドFIREを達成するには、投資資金を確保する必要があります。
まずは、ご自身の生活費をもとにいくらの運用益があれば、サイドFIREを達成できるのかを考えましょう。その後目標となる資産金額を達成するために、無駄な支出を減らして投資に回す資金を確保します。
サイドFIREまでの計画を立てるためにも、月単位、もしくは年単位でいくらの投資資金を確保できるか計算してみましょう。
副業に力を入れる
必要な投資資金が明確になった後は、副業に力を入れましょう。
アルバイトやパート、フリーランスなど働き方は自由ですが、生活費の半分をまかなえる程度の収入を得る必要があります。
また、副業に力を入れることで投資資金の確保もできるため、早期にサイドFIREを達成したい方は、本業の収入以外にも副業で得た収入を投資に回すのがおすすめです。
投資を始める
サイドFIREをするには、資産収入を得る必要があるため投資を始めましょう。貯蓄だけで生活費をまかなうと資産が減る一方であることに加え、インフレが発生すると資産が目減りするため、サイドFIREの手段には適していません。
サイドFIREを達成するための投資のやり方はそれぞれですが、安定した収入を得るためにも配当金・分配金が得られるものに投資しましょう。
サイドFIREを成功させるポイント
これからサイドFIREを目指す方は、サイドFIREを成功させるポイントをおさえておきましょう。
- 労働収入源をしっかり確保しておく
- 想定外の支出に備えておく
- 分散投資でリスク回避
- プロに相談する
それぞれについて解説します。
労働収入源をしっかり確保しておく
サイドFIRE達成後に重要となるのは労働収入です。資産収入では生活費の半分しかまかなえないため、残りの半分を稼げるだけの収入源を確保する必要があります。
アルバイトやパートといった働き方もありますが、年齢を重ねてからも安定的に稼ぐためには武器となるスキルや経験を蓄積しておく必要があります。
スキルや経験があれば仮に再就職しなければならない状態になったとしても、スムーズに就職できるでしょう。副業を選ぶ際はご自身のスキルアップにつながるものを選択するのがおすすめです。
想定外の支出に備えておく
サイドFIREで後悔しないためにも、想定外の支出に備えておきましょう。例えば入院費や冠婚葬祭、家電の買い替えなどです。
労働収入でまかなう方法もありますが、職種によってはすぐに収入を増やせない場合もあるでしょう。投資資金とは別に、すぐに引き出せる貯蓄を用意する必要があります。
一般的に生活防衛資金の目安は生活費の3ヵ月〜半年分といわれていますが、具体的にいくら必要かは人によって異なります。考えられる範囲の突発的な支出を予測し、シミュレーションしましょう。
分散投資でリスク回避
サイドFIREを達成するための投資先は分散しましょう。集中投資をすると万が一の際に暴落して資産の大半を失ってしまう恐れがあるためです。
例えば、配当利回りが高いという理由で企業の個別株を集中的に積み立てていたとしても、その企業が倒産すると資産価値はゼロになってしまいます。
このような状態にならないためにも複数の企業や国に投資をしたり、株と債券、不動産に資産を分けたりする必要があります。
プロに相談する
サイドFIREを達成するには、ご自身の生活費や今後発生する支出を把握して、適切な資金計画を立てる必要があります。また、どのような投資先を選ぶべきかによって、サイドFIREまでの期間や必要な資金も異なります。
しかし、ライフプランの設計や資産運用など考えるべきことが多いため、一人で考えるのは難しいと感じる方も多いでしょう。そのような方は、ファイナンシャルプランナーへの相談がおすすめです。
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おわりに
サイドFIREとは、資産運用の運用益で生活費の大部分をまかないながら、労働収入も得ていくFIREのことです。サイドFIREは通常のFIREに比べて用意する資産が少なく済むため、達成するまでの期間が短縮されるのが特徴です。
しかし、サイドFIREを達成した後に突発的な支出が発生したり、相場が暴落したりすると、その後の生活が成り立たなくなる恐れがあります。
安心してサイドFIREを達成するためにも、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談し、具体的な資金計画を立てましょう。