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年末調整をしないとどうなるの?基本と対処法を詳しくご紹介

年末調整をしないとどうなるの?基本と対処法を詳しくご紹介
セゾンのくらし大研究 編集部

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働いている方なら1度は耳にしたことがある年末調整という言葉。書類を提出しないまま期限が過ぎてしまうと、どのようなデメリットがあるのでしょうか。今回は年末調整の基本をおさらいしながら、手続きをしなかった場合に起こること、その対処法についてご説明します。

「年末調整をしないとどうなるのか知りたい」「手続きができなかった場合はどうすれば良いのか知りたい」という方は、ぜひお読みください。

1.年末調整の基本をおさらい 

まずは年末調整の内容や対象、必要書類などについてご説明します。

1-1.年末調整とは

年末調整は、所得税の過不足を調整する手続きです。所得税は、給与から源泉徴収として天引きされています。しかし、この天引き額は、あくまでも規定に基づく概算額。そのため、本来納税するべき額との間には相違があります。

本来の所得税額を算出するには、1年間の実際の収入や社会保険料、控除の額などが必要です。これらを用いて算出した所得税額と、すでに天引きされた源泉徴収されている額を比較して、還付や追加徴収などの調整を行う手続きが年末調整です。

1-2.年末調整の期限

企業が税務署に申告する期限は、翌年の1月31日。年内の給与が確定する時期にもよりますが、11月ごろに従業員に書類の提出を求め、12月中に年末調整の計算を始めるところが多いでしょう。

年末調整で申告した内容に誤りがある場合は、期限内であれば再申請が可能です。生命保険料控除や扶養家族人数などに変動があるときは、間違いが生じやすいため特に注意が必要です。

参照元:国税庁|年末調整のしかた

1-3.年末調整の対象

どのような場合に年末調整の対象となるのか、ご紹介します。

年末調整の対象になる人

年収2,000万円以下の給与所得者であれば、基本的に年末調整の対象です。年末調整が必要なタイミングは年末の場合と年末以外の場合があります。

【年末に年末調整を行うケース】

  • 1年を通して企業で勤務している
  • 年の途中で就職・転職し、年末まで継続して勤務している

年末調整のタイミングで勤務していれば、パートやアルバイトであっても基本的に年末調整の対象となります。これは、社会人に限ったことではありません。

学生の場合も、アルバイトをしていたら年末調整をしましょう。特に、1ヵ月の収入が88,000円を超える場合は、所得税が源泉徴収されて過払いとなっている可能性があります。

【年の途中で年末調整が必要となるケース】

  • 12月分の給与を受けたあとに退職した
  • 年の途中で海外に転勤となり国内に生活の本拠がない
  • 年の途中で死亡などによって退職した
  • 年の途中で著しい障害により退職し、年内に再び就職できる見込みがない
  • パートやアルバイトで働いていて年の途中で退職し、その年の収入が103万円以下である

年末調整の対象となる勤務先は、1ヵ所のみと決まっています。ダブルワークの場合は、どちらで年末調整をすると良いのか迷う方もいるでしょう。複数の勤務先から給与を受け取っている場合、給与が最も多いところで年末調整をするのが一般的です。

参照元:No.2665 年末調整の対象となる人|国税庁

年末調整しなくていい人

年末調整が不要なケースは以下のとおりです。

  • 1年間の給与収入が2,000万円を超える
  • 災害減免法により、所得税などの徴収猶予や還付を受けた
  • 年の途中で退職し、かつ年末調整の対象者に該当しない
  • 1年を通して国内に生活の本拠がない
  • 一定の条件を満たす日雇いの労働者

災害減免法は、災害により住宅・家財が損害を受けた際に、所得税が軽減免除される法律です。軽減免除を受ける条件は、災害にあった年の所得が1,000万円以下で、損害額が家財の価額の半分以上、また、雑損控除(災害などで資産が損害された場合の所得控除)を受けていないことも条件となります。

日雇いの労働者については、同じ雇用主に継続して雇用されているわけではないため、基本的には年末調整の対象ではありません。

しかし、日給が9,300円以上で、連続して2ヵ月以上の契約をしている場合には、所得税が給与から天引きされている可能性があります。その場合は、企業として年末調整を行っているところもあります。

参考:No.8004 災害を受けたときの所得税の取扱い|国税庁

1-4.年末調整の際に職場に提出する書類

年末調整で必要な書類は、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書・給与所得者の配偶者控除等申告書・給与所得者の保険料控除申告書と、各種証明書です。書類の内容について、以下に分かりやすくまとめました。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

扶養控除などを受けるために必要な書類で、扶養控除申告書とも呼ばれます。所得税の計算には、個人の生活状況も加味されます。つまり、扶養家族がいれば所得控除が適用されます。

企業側は、提出された扶養控除申告書をもとに、必要な控除額を差し引いて所得税額を算出します。

扶養控除申告書の提出により受けられる控除は、扶養控除だけではありません。それぞれの内容については後述しますが、障害者控除・勤労学生控除・ひとり親控除・寡婦(かふ)控除などを受ける際にも、扶養控除申告書の提出が必要です。

給与所得者の配偶者控除等申告書

配偶者控除申告書とも呼ばれ、配偶者控除・配偶者特別控除を受ける場合に提出が必要です。この申告書は、2020年に「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」という名前に統一されました。

その一部に配偶者控除申告書があります。配偶者控除・配偶者特別控除が受けられるのは、一定の条件を満たす場合のみ。条件を満たさない場合には、申告書の記入は不要です。

給与所得者の保険料控除申告書

保険料の控除を受けるための書類で、保険料控除申告書とも呼ばれます。生命保険料控除・地震保険料控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除の4項目があり、それぞれの保険料を支払っている場合に記入します。

生命保険料控除は、その年に支払いをした生命保険料のうち、一定額が所得控除になる制度です。一般の生命保険料だけでなく、介護医療保険料、個人年金保険料の控除も含まれます。

地震保険料控除は、ご自身や生計を一にする親族などが所有し、住宅として常時使用している場合にのみ対象です。別荘や賃貸にしている住宅の地震保険料は対象にならないため、注意しましょう。

社会保険料控除の欄は、ご自身や生計を一にする親族が負担するべき社会保険料を支払ったときに記入します。対象となるのは直接支払った社会保険料のみで、給与から天引きされているものは含まれません。

学生納付特例制度を利用して大学卒業後に国民年金保険料を支払った、大学生の子どもの代わりに国民年金保険料を支払ったなどの場合が該当します。

小規模企業共済等掛金控除は、独立行政法人中小企業基盤整備機構の共済契約や個人型確定拠出型年金(iDeCo)などの掛金を、ご自身で支払っている場合に記入が必要です。

各種証明書

申告書は、毎年10月ごろに保険会社から届く控除証明書をもとに作成します。生命保険料・地震保険料・国民年金保険料などの控除証明書が届いたら保管し、申告書と一緒に提出しましょう。

2.年末調整をしないとどうなる?

年末調整をしないとどうなる?

年末調整をしないと、各種控除を受けられなくなる、個人で確定申告する手間が増えるなどさまざまな弊害があります。以下で詳細を確認しましょう。

2-1.法律違反となる

年末調整をしないと、法律違反に当たるのをご存じですか。所得税法第190条では、企業に対して年末調整を義務付けています。法律違反となるのは企業側だけではありません。

同法の第194条では、扶養控除等申告書の提出が従業員の義務であると記されています。また、第195条・第196条では、配偶者控除等申告書や保険料控除申告書の提出義務についても明記されているのです。

年末調整を行わなくても、基本的に従業員側の罰則はありません。しかし、企業側が故意に年末調整を行わない場合には罰則があります。企業側が年末調整をしない場合に考えられるのは、主に2つのケースです。

1つ目は、従業員から適切に所得税を徴収していないため年末調整をしないケース。2つ目は、従業員から所得税を徴収しているにもかかわらず、年末調整をしないケースです。

前者の場合は、企業側に1年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられます(所得税法第242条)。そして、後者の場合の罰則は、10年以下の懲役または200万円以下の罰金、あるいはその両方です(所得税法第240条)。

参照元:所得税法 | e-Gov法令検索

2-2.各種控除を受けられなくなる

年末調整をしない場合は、所得控除が受けられません。年末調整の際に適用される控除には、以下のものがあります。すでにご説明したものもありますが、こちらでは一覧で見られますので参考にしてください。なお、細かな条件についての説明はここでは省いています。

配偶者控除控除対象配偶者がいる合計所得金額1,000万円以下の方が受けられる控除
配偶者特別控除配偶者控除が適用とならない場合に受けられる可能性のある控除
扶養控除控除対象扶養親族がいる場合に受けられる控除
生命保険料控除生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料などの支払いをした場合に受けられる控除
社会保険料控除本人と生計を一にする配偶者・親族の社会保険料の支払いをした場合に受けられる控除
地震保険料控除地震保険料の支払いをした場合に受けられる控除
住宅借入金等特別控除住宅ローンを組んでマイホームを購入・新築・増改築した場合に受けられる控除
小規模企業共済等掛金控除個人で確定拠出型年金(iDeCo)の掛金や小規模企業共済掛金の支払いをした場合に受けられる控除
ひとり親控除・寡婦控除ひとり親や、寡婦(夫と死別または離別した方)が受けられる控除。
障害者控除本人や同一生計配偶者、扶養親族などが障害者である場合の控除
勤労学生控除本人が勤労学生である場合に受けられる控除

年末調整をしなければ、本来控除されるはずの金額が控除されないまま処理されます。また、年末調整をする場合でも、企業側が把握しきれない(納税者本人にしか分からない)部分の申告を忘れると、控除が受けられません。

2-3.税金を多く払うことになる

年末調整をしなければ、所得税の過払いがあっても還付されません。つまり、所得税を多く払うことになります。高くなるのは所得税だけではありません。課税所得をもとに決定される住民税も、翌年には高くなるでしょう。

ここで注意したいのは、すべての従業員が年末調整で還付を受けられるわけではないということ。還付されるのは、給与から天引きされている金額が、本来納税するべき金額より多い場合のみです。

そのため、給与が大幅に増えた場合や例年よりも賞与が多い場合、年の途中で扶養親族が減った場合などにおいては、天引きされた所得税では足りないことも。これらに当てはまる方が年末調整をしない場合は、不足分の税金のほかに、ペナルティとして加算税や延滞税がかかる場合があります。

2-4.個人で確定申告する手間が増える

税金の過払い分の還付を受ける方法は年末調整以外にもあります。何らかの理由で年末調整ができなかった場合は、確定申告をしましょう。

しかし、年末調整をしないで確定申告をするのは、想像以上に手間がかかります。方法については後述しますが、確定申告は年末調整とは異なり、書類の作成から提出までをご自身で行わなければなりません。

3.会社で年末調整しない場合の手続き

3.会社で年末調整しない場合の手続き

何らかの理由で年末調整ができなかった場合に行う確定申告などの手続きについて、期限や方法を詳しくご説明します。

3-1.確定申告

前述のように、年末調整をしなかったときは確定申告を行います。確定申告の時期は、翌年の2月16日から3月15日。所得税を過払いしている場合は、確定申告をするとその分が戻ってきます。

確定申告をするときは、まず確定申告書の記入が必要です。確定申告書は、税務署で直接、または国税庁のWebサイトからのダウンロードにより入手できます。また、国税庁のWebサイトの確定申告書等作成コーナーでも作成が可能です。

書類の提出方法には、持参・郵便・e-Taxなどがあります。e-Taxとは、作成した申告書を電子データで税務署に提出できる、国税の電子申告・納税システムです。

では、確定申告も忘れてしまったときは、どうしたら良いのでしょうか。この場合は、還付申告をすることで、過払い分の還付を受けられます。

3-2.還付申告

還付申告とは、確定申告により所得税が還付になる申告のこと。つまり、実質的には確定申告と同じです。前述のように、確定申告の期限は3月15日。

しかし、厳密にいえば、これは確定申告により税金の支払いが必要になる場合の期限です。一方で、還付が生じる場合の期限は、翌年の1月1日から5年間となっています。

還付申告の手続きの手順は、確定申告と同様です。確定申告書等作成コーナーで書類を作成できるので、必要に応じて利用しましょう。

参照元:No.2030 還付申告|国税庁

おわりに

年末調整をしないとどうなるのかについてご説明しました。年末調整が行われないと、控除が受けられないため税金を多く払うことになります。

この場合には、確定申告や還付申告という方法もありますが、手間がかかることは間違いありません。年末調整の申告書の提出は、従業員の義務です。漏れがないように書類の記入をして、期限までに提出することを心掛けましょう。

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