自分で選んだ自治体へ寄附することができる「ふるさと納税」。ふるさと納税をすると、税金が控除され、実質2,000円の負担で返礼品がもらえるのが特徴です。
このコラムでは、「返礼品は受け取ったけれど、住民税が控除されていない」「きちんと控除されているか分からない」という方に向けて、ふるさと納税で住民税が安くならない原因や、きちんと税金が控除されているかチェックする方法などをご紹介します。
ふるさと納税と控除の仕組み
毎年「どこの自治体に寄附をしようか」「今年はどんな返礼品があるかな」と楽しみにしている方も多いふるさと納税。まずは、そのふるさと納税の基本的な考え方と、控除を受けるための手続き方法を解説します。
ふるさと納税とは
ふるさと納税とは、自分の選択した自治体に寄附をした場合、寄附額のうち2,000円を越える部分が、所得税と住民税から還付・控除される仕組みです。
ふるさと納税という名前ですが、自分の生まれ故郷だけでなく、応援したい自治体やゆかりのある自治体など、どこの自治体にも寄附することができます。また、寄附のお礼として、返礼品が送られてくるのが特徴です。
全国の特産品を楽しむこともできるため、毎年ふるさと納税を行っているという方も多いでしょう。また、寄附金の使い道を選択することも可能で、環境保全や子育て支援など、自分が支援したい分野に寄附金を使用してもらえます。
控除を受けるためには手続きが必要
ふるさと納税では、所定の手続きを踏まないと控除を受けることができません。ふるさと納税には、確定申告とワンストップ特例申請の控除方法があり、手続きの仕方が異なります。
確定申告を行う
まずは、返礼品などを参考に自治体を選びます。ふるさと納税サイトなどから納税を行うと、自治体からお礼の品と確定申告に必要な寄附を証明する書類(寄附金受領書)が送られてきます。寄附を証明する書類とは、ふるさと納税の寄付をしたことを自治体が証明する書類です。
お礼の品と寄附金受領書を受け取ったら、翌年の3月15日までに住所地を所轄する税務署で確定申告を行いましょう。マイナンバーカードがあれば、税務署に行かなくても自宅でパソコンやスマートフォンなどからも申告可能です。確定申告をすると、ふるさと納税を行った年の所得税と翌年度分の住民税から還付・控除されます。
ワンストップ特例制度を利用する
ワンストップ特例制度を利用する場合、確定申告の手続きは不要となりますが、代わりにワンストップ特例申請書の提出が必要です。申請書は、自治体から送付されてくることもあれば、ダウンロードできる場合もあります。
ワンストップ特例申請書に記入をしたら、寄附した翌年の1月10日必着日までに間に合うように郵送しましょう。ワンストップ特例の場合は、所得税からの還付はされず、ふるさと納税を行った翌年度の住民税からの控除となります。
控除が受けられる金額は、確定申告を行った場合もワンストップ特例制度を利用した場合も同じです。
あっ!手続きが必要なのね。忘れないように早めにやらなきゃ。
ふるさと納税で住民税が安くならない原因
中には、ふるさと納税の返礼品は受け取ったけど、住民税が安くならない、安くなっているか分からないと悩んでいる方もいるでしょう。ここではその理由を順に説明します。
確定申告をしていない
ふるさと納税は、返礼品を選んで寄附するだけでは税金の還付・控除がされません。住民税が安くならない場合、確定申告をしていない可能性があります。
確定申告の手続きには、寄附金受領証明書と源泉徴収票などの所得証明書類、還付金の受取口座番号、マイナンバーがわかる指定の書類が必要です。必要書類を揃えたら、住所地所轄の税務署で確定申告を行いましょう。
マイナンバーカードをつくっておけば、毎年自宅で簡単に手続きができるのでおすすめです。マイナンバーカードの手続きは『マイナンバーカード申請はスマホでできる!メリットや手順、よくある質問は?』で詳しく解説していますので参考ください。
ワンストップ特例制度に申し込みしていない
確定申告が不要な給与所得者で、ふるさと納税先が5団体以内の場合には、ワンストップ特例制度を利用することができます。確定申告が不要な給与所得者とは、給与所得が2,000万円以下で、1ヵ所のみから給与を受け取っている、雑所得が年間20万円以内の方などです。
ワンストップ特例制度を利用する場合は、返礼品を選んで寄附する際にワンストップ特例制度の利用を選び、ふるさと納税をした自治体に特例の申請をします。申請書類が寄附した翌年の1月10日までに届かなければ、控除の対象外となってしまうので忘れないようにしましょう。
無職・専業主婦は住民税が発生しない
無職や専業主婦の場合、もともと住民税が発生していないため、住民税が安くなることはありません。ふるさと納税による税金の還付・控除は、寄付する方の所得金額によって決まるからです。そのため、収入がない場合には、ふるさと納税自体はできますが、全額自己負担となってしまいます。親の扶養に入っている場合は親に、夫の扶養に入っている場合には夫に、ふるさと納税をおすすめすると良いでしょう。
住宅ローン控除を受けている
住宅ローンで住宅を購入する場合、ローン残高の0.7%が所得税と住民税から13年間控除されますが、その住宅ローン控除を受けているとふるさと納税による税金の控除ができない場合があります。控除額が大きい住宅ローンがある場合は、住宅ローン控除額を確認しておきましょう。納めるべき税額を超えた金額の控除は受けられないため、ふるさと納税による寄附金税額控除をしきれないことがあります。
納税者の名義が異なっている
納税者と異なる名義でふるさと納税をしてしまうと、ふるさと納税の税金控除を受けられません。同じ世帯で家計を共にしていても、住民税を納めている納税者の名義で寄附を行う必要があります。独身の時にふるさと納税をしていて、結婚して夫の扶養に入った場合などは、特に注意が必要です。
控除の上限額を超えている
ふるさと納税には、上限額があります。ふるさと納税額の年間上限を超えた金額は、全額控除の対象となりません。上限額を超えた分は、自己負担となります。上限額は寄附した年の所得や家族構成などにより異なるため、注意が必要です。ふるさと納税の各サイトに早見表や控除上限額シミュレーションがあるので、事前にチェックしておきましょう。
ふるさと納税で住民税はいくら安くなる?(確定申告の場合)
ふるさと納税を行うことで、税金はいくら控除されるのでしょうか。ここでは、確定申告をした際の所得税・住民税からの還付額・控除額の計算方法を解説します。ここでは、年収500万円(独身)で所得税率20%の場合を例に解説いたします。
所得税からの還付額の計算方法
所得税からの還付額は、「(ふるさと納税額-2,000円)×所得税率(復興等区別所得税を加算)」で決まります。なお、ふるさと納税に適用される所得税率には復興特別所得税(所得税率×2.1%)が加算されます。
復興特別所得税を加算した所得税率は、税率が5%の場合は5.105%、10%なら10.210%、20%なら20.420%となります。なお、所得税の還付の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の40%が上限です。
50,000円をふるさと納税すると、(50,000円-2,000円)×20.42%で所得税からの還付額は9,802円です。
住民税からの控除額(基本分)の計算方法
住民税からの控除には、「基本分」と「特例分」の2種類があります。まずは、基本分の計算方法を確認しましょう。
住民税からの控除額(基本分)は「(ふるさと納税額-2,000円)×10%」で求められます。控除の対象となる、ふるさと納税額には上限があり、上限額は総所得金額等の30%です。
例えば、50,000円ふるさと納税したとすると、(50,000円-2,000円)×10%で、4,800円の控除を受けられます。
住民税からの控除額(特例分1)の計算方法
住民税からの控除額(特例分)は、「(ふるさと納税額 – 2,000円)×(100% – 10%(基本分) – 所得税率(復興等区別所得税を加算))」で求められます。
例えば、50,000円ふるさと納税したとすると、(50,000円-2,000円)×(100%-10%-20.42%)で、33,398円の控除を受けられます。
この場合、住民税からの控除の特例分は、この特例分が住民税所得割額の20%を超えない場合に限ります。
住民税からの控除額(特例分2)の計算方法
上記の計算方法で、住民税所得割額が20%を超えた場合、「(住民税所得割額)×20%」で、住民税からの控除額を求めることになります。要するに、20%を超えた部分については、差し引くものがないため住民税から控除されません。
そのため、特例分の金額と所得税からの還付額、住民税からの控除額(基本分)の合計が控除額を超えてしまい、(ふるさと納税額-2,000円)では全額が控除できなくなるのです。よって、実質負担額が2,000円を超えてしまいます。
控除額の合計額の計算方法
確定申告をした場合、所得税と住民税のそれぞれから税金の還付・控除が行われるため、それらの合計金額を求める必要があります。
還付・控除の合計額の計算方法は、「【所得税の還付】(ふるさと納税額-2,000円)×所得税率(復興等区別所得税を加算)」+「【基本分の控除】(ふるさと納税額-2,000円)×10%」+「【特例分の控除】(ふるさと納税額 – 2,000円)×(100% – 10%(基本分) – 所得税率(復興等区別所得税を加算))」です。
上記例では、合計:9,802円+4,800円+33,398円=48,000円です。
ふるさと納税で住民税はいくら安くなる?(ワンストップ特例制度の場合)
次に、ワンストップ特例制度を利用した場合の住民税控除額の計算方法を解説します。ここでは、年収500万円(独身)で所得税率20%の場合を例に解説いたします。
ワンストップ特例制度を使った場合の控除額の計算方法
ワンストップ特例制度を使った場合は、住民税から控除額の全額が控除されます。ワンストップ特例制度の計算方法は以下のとおりです。
(50,000 円-2,000 円)×10%=4,800 円
(50,000 円-2,000 円)×(90%-20.42%)=33,398円
住民税の特例控除額33,398円×20.42%÷(90%-20.42%)≒9,802円
上記例では、合計:4,800円+33,398円+9,802円=48,000円です。
自分のも、計算してみよっと。
住民税が安くなっているか確認する方法は?
ふるさと納税をしたけれど、税金控除がきちんとされているか分からないという方もいるでしょう。ここでは、そのチェック方法を解説します。
ふるさと納税で控除される税金は、「住民税決定通知書」と「確定申告書の控え」で確認することができます。住民税決定通知書とは、住民税額が記載されたものです。会社勤めの場合、5月〜6月頃に勤務先を通して、自営業の場合は6月に市区町村から郵送されてきます。
確定申告で控除を受けた場合
所得税の還付金は、確定申告をしてから1ヵ月〜2ヵ月後に指定の口座へ振り込まれます。また、住民税の控除は、ふるさと納税を行った翌年6月の支払い分から1年間の適用です。
所得税の還付金額は、確定申告書の控えにある「還付される税金」欄に還付額が記載されているのでチェックしましょう。なお、住宅ローン控除など他にも受けている控除がある場合や、年末調整をせず所得控除が所得金額に変更がある場合には、それら含めて合算された金額が記載されていますので注意しましょう。
住民税の控除は、住民税決定通知書の左下にある「摘要」という欄を確認します。摘要の欄に「寄附金税額控除額: 〇〇円」と書かれてありますので、その金額を確認しましょう。この金額が、所得税の還付額と合計した際に、【ふるさと納税で寄付した金額-2,000円】となっていれば、控除が行われています。
ワンストップ特例制度で控除を受けた場合
ワンストップ特例制度では、全額が住民税から控除されるため、所得税の還付はありません。住民税の控除は、確定申告をした場合と同様に、ふるさと納税をした翌年の6月の支払い分から1年間適用されます。
控除が正しく行われているかどうかは、住民税決定通知書をチェックしましょう。住民税決定通知書の摘要の欄に「寄附金税額控除額: 〇〇円」の記載を確認し、【ふるさと納税で寄付した金額-2,000円】となっていれば、控除が行われています。
住所税の控除額の正確な数値は、次の年にならないと分からないのね。知らなかったわ。
住民税控除の手続きを忘れてしまった、控除額に誤りがあった場合は?
「ふるさと納税をしたけれど、税金控除の手続きを忘れていた…」「住民税決定通知書を確認したけど、控除額が違う…」といった場合は、5年以内であれば税金控除の手続き、更正が間に合います。
確定申告なら申告期限は5年
ふるさと納税で税金控除の手続きを忘れた場合、ふるさと納税を行った翌年1月1日から、原則として5年以内に確定申告を行うことで、税金控除の手続きができます。ワンストップ特例制度を申請期限内にできなかった場合も、確定申告を行いましょう。
確定申告なら5年以内に更正の請求ができる
確定申告をしたけれど「税金が控除されていない」「控除額に誤りがある」といった場合には、更正の請求が可能です。控除が正しく行われているか不安な場合は、所轄の税務署に問い合わせてみましょう。更正を請求する場合には、「更正の請求書」を所轄の税務署長に提出する必要があります。請求内容が正当と認められれば、減額更正が行われて納め過ぎた税金が還付されます。
おわりに
ふるさと納税で住民税が安くならない原因や、税金が控除されているかチェックする方法などをご紹介しました。実質2,000円の負担でできるふるさと納税。全国の特産物を楽しめる点も魅力です。
ふるさと納税をする際には、ポイント還元も嬉しい、セゾンのふるさと納税を利用してみてくださいね。税金控除のためには、確定申告やワンストップ特例制度できちんと所定の手続きを進めることも大切です。必要な手続きを行い、ふるさと納税を賢く活用しましょう。