株の世界ではさまざまな専門用語があります。聞きなれない用語でも一度はニュースなどで耳にしたことがあるのではないでしょうか。このコラムでは株式購入の際によく出てくるPERやPBRを始め、企業の業績を知るうえで参考となる営業利益や経常利益、決算短信などの用語について解説します。
PER(株価収益率)とは?
50セントで買える1ドル札を見つけること
PERとは、Price Earnings Ratioの略で、「株価収益率」を意味します。その株の現在の価格が割安なのか割高なのかを判断するための指標として用いられています。一般的には、業種別・市場別に平均のPERは異なりますが市場平均より低いと「割安」、高い場合には「割高」と判断されます。
ご存知の方も多いと思いますが、あの有名な投資家ウォーレン・バフェットは、株で成功するために大切なことは「50セントで買える1ドル札を見つけなさい」と、知人のベンジャミン・グレアムから教えられたと残しています。
割安かどうかを判断する
では実際にどのようにPERを参考にして割安かどうかを判断すれば良いでしょうか。PERは、企業の収益力(利益)から見て、今の株価が割安かどうかを測るもので、株価を1株あたりの利益(1株益)で割って算出します。
つまり、今現在の株価が1株益の何倍になっているかを見るということです。1株あたり年100円稼ぐ会社があって、今の株価が1,000円なら、PERは10倍ということになります。同様に、1株あたり年100円稼ぐ企業があって、今の株価が2,000円ならPERは20倍になります。
利益の10倍の値段で買うのと20倍の値段で買う場合を比較すると、10倍の方が割安となります。したがって、PERは数字が低いほど割安ということになります。PERを試算する際に使う1株益は予想の数字を用います。株は常に将来をにらみながら動いているので、それを分析する数字も、新しいものを使うことになります。
企業をまるごと買うつもりで試算してみる
少し視座を変えて考えてみると、企業をまるごと買うのに必要な金額のことを時価総額と呼ばれていますが、この時価総額はシンプルに株価×発行済み株式数で計算することができます。例えば、ある会社の時価総額が3,400億円だったとします。それに対して同社の税引き後の年間利益の予想は340億円。もしこの企業をまるごと購入したとすると「3,400億円で、年340億円の利益を生み出す会社を買った」ことになります。
購入代金の3,400億円は1年の利益の10倍となり、購入代金は10年ほどで回収可能と判断できます。実は、この10年という投資額の回収にかかる年数がPERのことなのです。普通、株式投資は会社をまるごとではなく「1株いくら」で買うので、利益も「1株あたりの利益」を使って、回収にかかる年数を計算します。
どれぐらいが目安になるのか
株価は毎日変動しますので合わせてPERも変動しますが、業績が安定している優良企業と考えられている企業のPERは10倍台のものが多くあります。
当然ながら、リーマンショックやコロナショックのような時期もあり、その時の状況によっても全体的に変わるのですが、株式市場の平均PERはおおよそ10倍~15倍くらいの水準で推移しておりPERは15倍よりも低いと割安と判断されることが多いようです。
なおPERの値が他と比べ非常に低いから、すぐに購入というわけではなく、低すぎる場合には簡単に飛びつくことなく、なぜこれほど低いのかを探る必要があります。
プレミアムなPERについて
数ある銘柄のなかにはPER1桁の銘柄もあれば、何十倍と高い銘柄もあります。一般的には、将来性を期待されている企業の株にはプレミアムがつきPERが高めになる傾向があります。これは株を買ったり売ったりする人の気持ちになって考えてみるとよくわかると思います。
例えば今現在、持っている企業の株式が今後利益を伸ばしそうだと感じた場合、購入した当時と変わらないような値段では売りたくないと思います。反対に、伸びている株式を今から欲しい場合は、多少割高な値段でも良いので買いたいと考えるかもしれません。
一方で今後、利益が減っていくと懸念される株式の場合、買値よりも安くても売ってしまいたいと考えるかもしれませんし、反対に底値になってから買いたいと考えるでしょう。このように多くの投資家たちは将来性を考えつつ、プレミアムをつけたりして値踏みをしているわけです。PERは期待値のバロメーターとして見てみると良いと思います。
ここまでPERについてご紹介しましたが、株式投資の際にこれだけで判断しないよう、ほかの指標と合わせて見ていくことが重要です。
PBR(株価純資産倍率)とは?
割安かどうかを資産面から見る指標
PERの他に株の割安さを測る方法には、もうひとつPBRという指標があります。これは、Price Book-value Ratioの略で「株価純資産倍率」を意味し、株価と企業の“純資産”との関係を表しています。会社の収益力から割安かどうかを測るPERに対して、PBRは会社の資産から割安かどうかを測る指標です。
今の株価が、「1株純資産」の何倍になっているのかを見ることになります。純資産とは、企業の総資産から負債を引いた金額のことであり、純粋にその企業の資産といえる部分のことです。純資産は株主が最初に出資したお金に、その後企業が稼いだ利益を蓄積したものを加えた金額でもあります。つまり、純資産とは株主から預かっている資産ともいえます。
この純資産を発行株式数で割った値を1株純資産と呼びます。なお、会社が解散した場合に株主に配分される資産にもなるため、別名「解散価値」とも呼ばれますので覚えておくと良いでしょう。
1株純資産は帳簿に載っている現預金や不動産などの資産から計算した金額ですが、きちんと経営されている企業の場合には、加えてノウハウや技術やブランド力などといった帳簿上には、載らない価値も計算されています。従って、普通なら企業の価値は純資産以上になり、株価は1株純資産以上(PBR1倍以上)の状態であるはずです。
会社のPBRが1倍以下ならお買い得。ただし要注意!
PBR1倍割れの企業は何社もあるのが実情です。これは通常、赤字企業か、優良企業だけど何らかの理由で一時的に大きく株価が下がっているかのどちらかです。このうち赤字企業の場合にはPBR1倍割れでも買い時とはいえませんが、優良企業でPBR1倍割れの場合には、絶好の買い時といえます。
まず赤字企業の場合、または将来そうなってしまう危険性の高い会社の場合には、純資産そのものがどんどん減っていきます。そのため今の純資産はあまりアテにはできず、今の純資産を基に計算したPBRが1倍を割れていても買い時とはいえません。
一方で本来は将来見通しの良い優良企業だけど、一時的に調子が落ちているとか、株式市場全体の暴落につられて下がったなど外部要因が理由でPBR1倍を割れている場合には、買い時になります。この場合は一時的な理由で激安になっているわけですから、やがて再評価されてPBR1倍以上の適正価格にまで戻ることが期待できますし、さらに上昇していく可能性も高いと評価できるためです。
PBR1倍は底値の基準としてみることもできる
PBR1倍を底値の目途として売買に生かす方法もあります。PBR1倍時点の株価が、株価の底打ちの目途として強く投資家から意識されながら動いていることも多いので、1つの指標として参考になると思います。
EPS(1株当たり純利益)とは?
EPSとは、Earnings Per Shareの略で1株当たり純利益ともいわれます。 1株当たりに対し純利益がどれだけ出ているのかを示す指標として、企業の収益力・成長性を判断する際に用いられます。EPSの値が大きいほど企業の収益は高いことを意味します。EPSを求める計算式は以下のとおりです。
- EPS(1株当たりの純利益)=当期純利益÷発行済株式数
基本的に、企業業績が悪化しているときはEPSは下落し、逆に好調のときは上昇する傾向にあります。EPSは企業の成長性を見る指標であるため、短期的なEPSの上下を捉えるのではなく長期的な視点で上昇トレンドあることが望ましいとされています。
このEPSは株価を予想する際などに活用できます。例えば、投資先として検討している企業Aの株価が1,000円でEPSが200円(=PER5倍)であったとします。一方で、同業種平均の企業BのPERは10倍だった場合、企業Aの株もPER5倍から10倍へ伸びるとして株価2,000円(EPS200円×PER10倍)まで上昇する可能性があることを確認することができます。
また、日経平均のPERは10~15倍が目安といわれており、もしEPSが200円の企業があった場合、その企業の株価は2,000円~3,000円(EPS200円×PER10~15倍)が妥当ともいえます。
IR情報によく出てくる用語8選
営業利益
企業の主な営業活動から得られる本業の利益のことで、売上高から仕入原価を引いて算出した売上総利益から、さらに販売費や一般管理費などの合計を引いたものを営業利益といいます。
経常利益
営業利益と並びよく聞く用語です。営業利益は本業の利益のことですが、この本業以外で生じた損益を含めたものを経常利益といいます。主に投資活動や財務活動から発生するものが計上されます。営業外費用としてあがるのが、銀行等からの借入金に対する支払利息、社債に対する利息・有価証券の売却損などで、営業外収益としてあがるのが、受取利息、保有している株式の受取配当金や、不動産賃貸における賃料収入などが当たります。
当期純利益
当期純利益とは、企業が最終的に稼いだ利益をさします。その年にあげた経常利益に特別損益を加減算し、そこから法人税など税金を差し引いたものです。純粋な企業の経営活動の成果を指します。逆に損失となった場合は、当期純損失と呼びます。
財務諸表
企業の決算までの1年間の財政状態や経営成績をまとめた計算書類の一式です。企業の健康状態を知ることができるため企業の健康診断書といいかえることもできます。貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の3つは特に「財務三表」といわれ、財産の状況、収支の状況、資金の流れがわかる重要な書類です。上場企業は、決算期に開示することが必要になります。
決算短信
決算短信とはすべての上場企業が発表する、決算清報の要点をまとめた書類のことです。貸借対照表、損益計算書、役員人事、連結業績予想などが含まれた資料で、どの企業も同じ様式でまとめられるものです。
貸借対照表
財務諸表のひとつで、企業の一時点の財産の状況を表すものです。企業の資産及び、事業資金をどう集め、どのように保有しているか表します。よくバランスシートとも呼ばれています。
損益計算書
財務諸表のひとつで、企業の一時点の収益と費用の状態を表すために、複式簿記という形式で貸借対照表と同時に作成する書類で儲け具合、経営成績を見るのに適した資料です。
キャッシュフロー計算書
こちらも財務諸表の1つで、企業の一定期間における、資金の流れを見るための一覧表のことです。営業活動、投資活動、財務活動の3種類の表示区分がある書類です。それぞれの活動におけるキャッシュの出入りを把握し、主に資金繰りの改善に活かすことが可能です。
営業活動キャッシュフローとは、企業が事業をするうえで稼いだキャッシュの増減を表します。ここを見ることで、本業でどれだけの儲けがあったのかを判断することができます。
投資活動キャッシュフローとは、機械などの設備投資を行う、新しく工場を建てるなど、先行投資をした分のキャッシュの増減を表します。投資であるため、通常はマイナスになっているケースが多いです。
財務活動キャッシュフローとは、金融機関からの借り入れ、ベンチャーキャピタルからの出資受け入れなど、ファイナンスでどれだけキャッシュが動いたのかを表します。
例えば、営業活動キャッシュフローで利益が出ていて、その範囲内で投資活動キャッシュフロー、財務活動キャッシュフローがマイナスになっている場合は、事業が順調に推移しているパターンともいわれます。業利益を稼ぎながらその範囲内で先行投資を行い、更に借り入れの返済もしている、というように見えてきます。
損益計算書とキャッシュフローをあわせて確認することで事業の状況と先行きがわかるようになります。
その他の用語解説についてはこちらを参考ください。
おわりに
今回は用語解説として株式購入時に知っておくと便利な用語をご紹介しました。今回ご紹介した用語を参考にしつつ株式購入時に役立てていただけますと幸いです。