株式に興味があり購入を検討したことのある方も多いのではないでしょうか。株式市場は、2013年からのアベノミクスの影響もあり日経平均3万円を数十年ぶりに回復し活況を呈しています。以前より資産運用の代表格として挙げられている株式投資の始め方について、このコラムでは解説します。
1.株式購入に至るまで
まずは取引開始までの一連の流れをご紹介します。
口座を開設する(証券会社に申し込む)
最初に証券会社の口座開設から始めます。現在は、ネット証券が充実しており手数料も安く気軽に始めることが可能です。まずはネット証券会社のWEBサイトから申込用紙を取り寄せて口座を開設しましょう。もちろん証券会社の窓口へ行って、口座を開設することも可能です。
口座開設には、運転免許証などの本人確認書類やマイナンバーカードが必要になりますので事前に用意しておきましょう。
なお年間20万円以上の利益が出る場合は納税義務が生じますが、口座の種類を選択する際、源泉徴収ありの特定口座を選ぶことで、証券会社が税金の計算を行い代理で納税をしてくれます。源泉徴収ありの特定口座で開設することでご自身での確定申告は不要となり、申告漏れの心配もありません。
購入する株式を決める
口座開設が完了したら購入する株式を決めます。現在株式を購入できる上場企業は、4,000社近くにものぼります(2021年9月時点)。上場企業のなかから、どの企業の株を買うかを決めましょう。最初はあまり難しいことは考えずにご自身にとって身近な企業の株を少額で購入してみるのも良いかもしれません。まずは購入方法に慣れることも大切です。
実際に注文を出す
どの株を購入するのか決めたら、今度は注文ですが、株式を買ったり売ったりする注文をする際に、注文方法には「指値注文(さしねちゅうもん)」と「成行注文(なりゆきちゅうもん)」の2種類があります。
指値注文とは、買う、もしくは売る価格をご自身で指定して注文する方法です。例えば「500円の指値で1,000株の買い注文」や「200円の指値で2,000株の売り注文」という注文方法です。
指値注文の特徴は、買い注文であれば指値以下の株価(上記例500円の指値の場合、500円以下の価格)、売り注文であれば指値以上の株価(上記例200円の指値の場合、200円以上)にならなければ、注文が成立しないという点です。
成行注文とは、指値注文とは逆に価格を指定しないで注文する方法です。「成行で100株の買い注文」や「成行で500株の売り注文」という注文方法です。
株取引時間中に成行の買い注文を出すと、最も低い価格の売り注文に対してすぐに注文が成立します。同様に、成行の売り注文を出すと、そのタイミングで最も価格が高い買い注文に対して、すぐに注文が成立します。
具体的に例を挙げてみましょう。
株価が500円、最も価格が低い売り注文が501円で3,000株だとすると、最も価格が高い買い注文が399円で3,000株で出ている場合に、成行で買い注文1,000株を出すと501円で購入できます。また成行で売り注文1,000株を出すと、399円で売れることになります。
注文が成立するまでの間も同様に株価は変動しますので、その変動により、より高い株価で買うことになったり、より低い株価で売ることになったりする可能性がありますのでご注意ください。
このような指値注文、成行注文は、基本的にすべてWEBサイト上で注文から決済まで完結できます。 購入希望の価格と株数を入力してクリックするだけで完了します。
注文成立
購入希望者と売却希望者が希望価格を出し合って、条件が合えばその注文は成立します。指値注文、成行注文などの注文方法にもよりますが通常、個人が取引する程度の金額でかつ大型銘柄であれば即時取引は成立する可能性が高いです。
売却する
購入した株式が値上りしたら、売却して利益を確定させましょう。売却する際も、指値注文、成行注文の両方ができます。これで一連の株式投資の流れは完了です。
2.企業の利益は株主のもの?
株式投資を始めるにあたり、そもそも株主になるとはどういうことなのか確認しておきましょう。
企業が経済活動をして利益が上がればその分株主は配当金という形でお金を得ることができます。企業の稼いだ利益は原則、オーナーである株主のものです。これは、賃貸マンションのオーナーの場合と同じ考え方です。
しかし、企業の利益は株主のものという考え方には抵抗がある方がいるかもしれません。実際に一生懸命に働いて利益を生み出しているのは社長や社員です。彼らが知恵を絞り、汗水垂らして働くことで、企業は利益を得ることができるのですが、社員や社長の給料は原則、会社の経費として計上されます。
企業が稼いだ収益から、社長や社員の給料などの経費を差し引き、さらに税金を引いて、残ったものが利益になります。そして、この利益は株を買うことで事業資金を投資した株主に還元されるものです。
では、実際にどのように配当されるのでしょうか。企業の利益すべてを株主数で割って(正確には発行している株数で割って)、配当するのかといえば、そういうわけではありません。
通常、利益の7~9割は翌年以降さらに利益を稼ぐための事業資金にまわされることになります。新たな製品を作るための設備投資をしたり、出店するための土地建物を購入したりするために使われます。つまり企業として成長するための投資に回されるということです。
いろいろな株主がいますから、株主のなかには利益は全額配当してほしいという方もいます。そこは共同オーナーなので、株数による多数決によっては全額配当ということもあります。しかし、企業が今年の利益を有効利用することで翌年もっと多くの利益を出せるのならば、オーナーにとって悪いことではないでしょう。
このように、配当されず企業内に蓄えられる利益を内部留保といいます。これは企業が株主から預かっているものなので、もしも企業が解散するようなことがあれば、株主に返還されるお金になります。以上のことから企業の利益とは原則すべて株主のものといえるでしょう。
3.株式で利益を出す(売却益と配当金)
3-1.株式を売って利益を出す
次に株で利益を得る仕組みについて解説していきます。株で利益を出す方法にはいくつかの方法がありますが、ここでは基本的な方法の1つとして株の値上がり益(空売りの場合除く)を得る方法を説明いたします。
値上がり益とは、株を買ったときよりも売るときに株価が上がり、その差益の儲けを指します。仮に、10万円の株を購入し、その後15万円になったときに売ると、差額の5万円が儲けとなり、5万円の値上がり益が出たということになります。
安く仕入れて、仕入れ価格以上の価格で、できるだけ高く売るという意味ではあらゆるビジネスにも共通することでしょう。
3-2.配当金で利益を得る
企業が利益を出したとき、株主に利益を還元するものを配当金といいます。この配当金も株の儲けとなります。企業に入ったお金から人件費、原価など必要経費を除き、残ったお金は次の利益につなげるための設備投資や将来に備えての内部留保などに使います。そして最終的に残ったお金が配当金となります。
この配当金の金額は1株当たりいくらを配当とするかは、通常、株主総会で決定されます。1株あたりの配当額が決まると、株主には郵便為替など、配当を受け取るための証書が送られてきます。その証書と印鑑と身分証明書を持って郵便局や銀行で配当を受け取ることができます。補足ですが証券会社に事前申込みをすれば、証券口座を振り込み先に指定することも可能です。
この配当金は、権利確定日という指定された日に株を保有していることで受け取ることが条件です。権利確定日は企業の決算月によって異なります。
企業ごとにいったいどのくらいの配当金を受け取ることができるのでしょうか。これは基本的に各々の企業の業績に連動しますから企業によって変わります。ご自身が投資したい企業の配当利回り状況については、事前によく確認しておきましょう。
業績の良い企業ですと配当利回り3%台というところも見つけることができますので、ゼロ金利時代の現在には銀行に預金しておくより、利回り面において効率的に資産を増やすことができます。
注意すべきは点としては、配当額は会社の業績によって毎年見直されます。業績が伸びれば配当も増えるでしょうし、業績が悪化すれば配当は減る可能性も十分にあります。配当を安定的に狙うなら、業績が安定している企業を選ぶことが必要です。
4.株主優待
株主優待は、一定数以上の株を権利確定日に保有していた株主に対する優待制度で、株主に対するプレゼントのようなものです。(権利確定日については後述いたします)すべての上場企業が行っているわけではありませんが、近年制度を導入する企業が増えています。株主優待では、自社製品の詰め合わせや、店舗の利用券、割引券のほか、お米券やクオカードなどの金券、地方の特産品などがもらえることが多いです。商品が選択できる場合もあります。
株を購入したいと思っている企業に株主優待があるかどうかは、その企業のWEBサイトで調べることができますので事前に調べてみましょう。なお持っている株数によって受けられる優待が異なる企業もありますので、ご自身の株数と照らし合わせて確認しましょう。
5.権利確定日及び権利付き最終日
配当と株主優待について、とても大切なことがあります。それは、「いつの時点で株主であれば受け取れるのか」ということです。これを「権利確定日」といい、この日に株主でないと、配当も株主優待も受け取ることができません。
権利確定日(原則として決算日)に株主として登録されておくには、権利確定日の2営業日前である「権利付き最終日」までに株を買って持っておく必要があります。なぜなら、注文が成立しても、それは契約が成立しただけに過ぎず、実際に株主名簿が書き換えられるまでに時間がかかるからです。
この2営業日前の日を「権利付き最終日」といいます。権利確定日が土・日・祝日に重なった場合は、実質的な確定日が前日に繰りあがるので注意が必要です。権利付き最終日は証券会社によっては、銘柄情報欄に掲載されていることもありますので確認してみてください。
権利付き最終日を1日でも過ぎると、配当も株主優待ももらえなくなりますから注意が必要です。例えば、2021年3月31日が権利確定日とした場合は、以下のとおりです。
2021年3月29日(月) 権利付き最終日(この日までに株を買う)
2021年3月30日(火) 権利落ち日
2021年3月31日(水) 権利確定日
おわりに
今回は、株式投資の始め方について解説しました。現在のゼロ金利時代、銀行に預金していても貯金額が増えるのは少額です。例えば配当利回り3%台の配当金を受け取ることのできる企業を探して投資することは、さほど難しいことではありません。ぜひ将来の資産形成の一部として株式投資を始めてみてはいかがでしょうか。