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独身貴族の60歳・元銀行員「やばい、遊びすぎた」…“老後破産”を回避!60歳からできる「資産形成術」【FPが解説】

独身貴族の60歳・元銀行員「やばい、遊びすぎた」…“老後破産”を回避!60歳からできる「資産形成術」【FPが解説】
牧野 寿和(牧野FP事務所 代表社員/CFP/1級FP技能士)

執筆者
牧野 寿和(牧野FP事務所 代表社員/CFP/1級FP技能士)

1958年名古屋生まれ。2003年、牧野FP事務所を開業。住宅や相続、老後の生活など相談者の課題を解決し、思い描いた人生の実現を目指す「家計を健康にするプランニング」を得意とする。投資信託や保険といった金融商品の販売は一切なく、真摯に相談者に寄り添う姿勢で信頼を得ている。現在は1,000件以上の個別相談を中心に、企業や銀行、自治体主催セミナーに登壇。また、高校生やその保護者に、奨学金制度やライフプランニングといった講演も行っている。

元銀行員のK氏(60歳)は独身で、いわゆる“おひとりさま”です。給与は毎月あるだけ使い、資産形成などはほとんど気にしていませんでした。しかし、出席した同窓会で周りが老後の生活の話をしているうちに、「もしかして、このままじゃやばいのでは……」と自身の「老後破産危機」の可能性に気づいたK氏。

牧野FP事務所の牧野寿和CFPのところへ相談に訪れました。筆者は、K氏にどのような助言を行ったのでしょうか。みていきましょう。

銀行員として出世街道を邁進してきた“独身貴族”K氏

銀行員として出世街道を邁進してきた“独身貴族”K氏

現在60歳のK氏は、大学卒業後新卒でB銀行に入社。営業畑を歩み、30代後半で地方支店の課長に、40代で都内の支店長となり、この銀行における“出世街道”を邁進してきました。

しかし、銀行業界のご多分に漏れず55歳で役職定年を迎えたあとは、関連企業に出向。このたび、60歳でB銀行を定年退職しました。

最近、B銀行の取引先であるC社に常勤顧問として迎え入れられたため、70歳までC社に勤める予定です。

“稼いだ金は貯めず、好きに使う”がポリシー

K氏の口癖は、「俺は独りだから、稼いだ金は好きに使う」。給与は貯めることなく、毎月あるだけ使ってきました。気前も面倒見も良かったため周囲からは慕われ、役職定年となったあとも部下や後輩たちと飲み歩く日々が続きました。給与が下がったことについて少しは気にしていたものの、生活水準を下げられずにいたのです。

しかし……。

先ごろ、還暦記念として大学の同窓会が開かれました。久しぶりに会った同級生たちは、しきりに「老後のお金」の話をしています。「老後に向けてなにか準備してる?俺はいい老人ホーム入りたいから、投資信託しているけど」「嫁に怒られてからさ、あんまり外食しないようにしてるんだ」

どうやら、老後も思いのほかお金がかかるようです。次の日、K氏が自身で家計収支のシミュレーションを行ってみると、80歳ころには家計が破産してしまうことがわかりました。何度計算し直しても同じ結果が出ます。

“独身貴族”を気取り、老後の資産形成を一切してこなかったK氏。ようやく今後が心配になり、旧知の知人である筆者のFP事務所を訪れました。

筆者がK氏に提案した「3つ」の資産形成プラン

筆者がK氏に提案した「3つ」の資産形成プラン

筆者は、K氏に話を聞きながら、改めて今後の家計収支シミュレーションをしてみました。結果は[図表1]のとおりです。

[図表1]K氏の家計収支の推移予測
[図表1]K氏の家計収支の推移予測 出所:筆者が作成

在職老齢年金とは、老齢厚生年金の受給額(基本月額)と給与や賞与の額(総報酬月額相当額)に応じ、年金の一部または全額が支給停止される制度。詳細は日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」を参照。

なお、貯蓄しないのがK氏のポリシーとはいえ、まれに収入の全額を使わなかった月や、2度の退職金が支給される年の口座残高は上記のように増えます。

しかし、70代以降は収入と支出のバランスが取れず赤字になり、急速に貯蓄も減っていきます。K氏が行ったシミュレーションと同様、このままでは80代前半には家計が破産してしまうようです。

そこで筆者は、生涯K氏の家計が破産しないために、下記の3つの提案を行いました。以下でひとつずつ見ていきましょう。

  1. 1.支出額を見直す
  2. 2.年金の受給年齢を70歳まで繰下げる
  3. 3.賃貸収入を得る

1.支出額を見直す

K氏の場合、主に次の2点を見直すだけでも、結果として資産を形成することになります。

まずは食費です。K氏の1日の食事は自宅近くにある喫茶店のモーニングサービスから始まり、昼も夜も外食です。

たしかにK氏の言うように、1人分を1食ずつ作る手間と材料費を考えると外食のほうが効率的なのかもしれませんが、このような外食続きの生活では食費だけで相当な金額となります。特に、職場の同僚や部下を誘って奢っている飲み屋代については、積極的に見直す必要がありそうです。

2点目は保険料です。現在加入している保険商品のなかには、明らかに保障が過剰な商品もあり、その分保険料も高額となっています。

この2つを見直すだけで、毎月7万~8万円、年間100万円近くの支出が削減できます。

また、釈迦に説法ではありますが、K氏はなぜかクレジットカードを使いません。B銀行系のカードでさえ使ったことがないといいます。K氏は「後輩にごちそうするとき、現金で支払うのが快感なんだ」と言いますが、支払いをクレジットカードにすれば、その分ポイントが付与されるなど特典があります。クレジットカードの利便性を享受することで、資産形成にも役立つでしょう。

2.年金の受給年齢を70歳まで繰下げる

K氏は70歳までC社に勤める予定です。これにより、働いているあいだは厚生年金保険料が給与から天引きされるものの、将来の年金受給額は増えます。

K氏は老齢厚生年金を65歳から受給できますが、65歳から年金を受給しながら給与も受け取った場合、[前掲図表1]に示したように在職老齢年金の調整が入り、70歳まで本来の厚生年金の受給額より年間44万8,600円、5年間で約224万3,000円年金の受給額が減少してしまいます。

そこで、老齢厚生年金の受給を70歳まで繰下げる(※2)と、1ヵ月あたり0.7%、5年間で42.0%受給額が増額されます。

※詳細は日本年金機構「年金の繰下げ受給」を参照のこと。

つまり、K氏が65歳から受け取った場合、年金受給額は220万3,900円ですが、42.0%増額され70歳から受け取ると42.0%増額され、312万9,538円になります。月額7万7,136円、年間に直すと92万5,638円受給額が増え、先述した70歳までの在職老齢年金の調整もされることはありません。

ただし、年金の繰下げ受給を行う際に大事なことは、繰下げ期間中の収入確保です。

K氏の場合は、60歳~70歳までB銀行の企業年金が毎年120万円、それにC社の給与が480万円と、合計年間600万円(月額50万円)の収入が見込めます。K氏は今後、家計収支が黒字を維持できる見通しがつけば、年金を繰下げ受給して受給額を増やせそうです。

K氏の自宅は“結婚前提”の戸建て…賃貸にすることで収入UP

K氏の自宅は“結婚前提”の戸建て…賃貸にすることで収入UP

賃貸収入を得る

K氏の自宅は、45歳のときに購入した2階建ての戸建てで、将来家族を持つことを前提に建てられたものです。住宅ローンはすでに完済しています。都心まで電車で15分程度の好立地ですが、1人で住むには広すぎて、掃除も大変だといいます。

「できればこぢんまりしたマンションに引っ越したい」という願望を聞いた筆者は、「それなら、KさんはC社にほど近い賃貸マンションに入居し、ご自宅はファミリー向けの賃貸住宅として貸し出すのはいかがですか?」と提案しました。

自宅を貸し出した場合、近隣の家賃相場から鑑みると月35万円(年間420万円)の収入が確保できます。一方、新たに借りる賃貸マンションの家賃は月12万5,000円(年間約150万円)ですから、単純に差し引くと月22万5,000円(年間270万円)が手元に残る計算になります。

なお、自宅を貸し出す際はあらかじめ期限を決める「定期借家契約」にすることで、K氏の足腰が立たなくなったら自宅を売却し、有料老人ホームに入所する選択肢をとることが可能です。安心安全に老後を過ごす一案といえます。

以上3点の見直しを行った場合、K氏の家計収支は[図表2]のようになります。

[図表2]筆者とK氏が見直しを行ったあとの家計収支推移予測
[図表2]筆者とK氏が見直しを行ったあとの家計収支推移予測 出所:筆者作成

※家賃収入270万円は純利益(戸建貸出賃料420万円-居住賃貸マンションの家賃150万円)
※提案後の収支(口座残高)…自宅の貸出80歳まで、居住用マンションの家賃支払い一生と仮定して算出

なお、筆者は60歳前後のご相談者に、資産形成の方法として投資信託や株式といった「金融商品への投資」を勧めることも少なくありません。しかし、K氏は「元本保証のない金融商品への投資は肌に合わない」とおっしゃったため、今回は提案を控えました。

まとめ…人生はまだまだ変えられる

K氏は、筆者に相談したことで老後の生活資金に目途がつき、ほっと一安心です。とはいえ、結婚を諦めてはいないようで……「この歳になって、独りでいるのが無常に寂しくなるときがあるんです。結婚してくれる人はいないかな?」とはにかむのでした。

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