ニュースなどでよく「GDPが・・・」といったフレーズを聞くことはありませんか?よく聞く言葉でも、きちんと説明できるという方は意外にも少ないのではないでしょうか?
今回のコラムでは、そんな「GDP」について取り上げて詳しく解説をしていきます。
GDPをしっかり理解することで、国内の経済状況はもちろん、世界各国の経済状況の比較もできるようになりますので、ぜひこの機会に理解を深めていただければと思います。
1. 「GDP」とは?
GDPとは、「Gross Domestic Product」の頭文字をとったものです。「Gross(グロス)」は『総』や『合計』という意味、「Domestic(ドメスティック)」は『国内』という意味、「Product(プロダクト)」は『生産』という意味を持ちますので、GDPは『国内総生産』と訳されます。
『国内総生産』とは、一定期間内に国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値の合計額の事を指します。付加価値とは「儲け」を意味しますので、GDPによって「国内でどれだけの儲けが産み出されたのか」という国の経済規模を知ることができ、景気動向を示す目安として使われています。
例えば、食パンを200円で売った場合、作るのにかかった小麦などの原材料価格が100円だった時には、付加価値は100円として計算します。
さらに、この100円から働いている人にお給料として70円を支払うと、お店の儲けは30円となります。もし個人事業主だとすると、生み出した付加価値の全てを所得として獲得することになります。
このように、生み出された付加価値であるGDPは、個人(賃金として支払われる)と企業(株式会社に利益として残る)のいずれかに分配されます。
個人であれば所得税、企業であれば法人税がそれぞれ課税されますので、個人や企業の所得の一部は税金という形で政府に分配されることになります。
私たちが普段お仕事をしている中で、会社もしくは個人事業主として、商品やサービスという形で世の中に生み出した付加価値の合計が『GDP』です。
※日本の国内総生産の大半を占めているのが、日本で生活する人々が日常的に行う「消費」と国内にある企業が行う「投資」の合計金額である「民需」です。
民需に加え、政府が使ったお金である「政府支出」と輸出額から輸入額を差し引いた「貿易収入」 を合計した金額がGDP(国内総生産)となります。
2. 「GDP」の種類
GDPは、国の経済状況を知ることのできる指標ですが、より正確に状況を知るためには、物価の変動についても考える必要があります。そこで、GDPは「名目GDP」と「実質GDP」という2つの指標に分けられます。
2-1. 名目GDP
価格は時間の流れとともに変化していきますが、“価格の変化を考慮せずに計算”したものを「名目GDP」といいます。
対象の期間の付加価値を単純に合計して求めるため、たとえ、インフレが起こって貨幣価値が下がっていたとしても、考慮には入れません。
しかし、価格変化を考慮に入れない名目GDPではその国の正しいGDPの変化を見ることができない可能性があります。
2-2. 実質GDP
一方、“価格の変化を考慮に入れ調整したもの”を「実質GDP」といいます。
GDPは、国の豊かさの指標です。価格が上がったからといって国が豊かになったとはいえず、むしろ価格が上がっているだけで、国の経済力が落ちている可能性もあるのです。
例として、りんごの価格と販売個数で「名目GDP」と「実質GDP」を計算してみます。
【名目GDP】
販売個数と市場価格をそのまま算出します。
・2020年…1,000万円(10万個×100円)
・2021年…1,560万円(13万個×120円)
・2022年…1,820万円(13万個×140円)
【実質GDP】
名目GDPから価格の変化による影響を取り除いて算出します。(ここでは実質GDP算出の基準年を2020年とします)
・2020年…1,000万円(10万個×100円)
・2021年…1,300万円(13万個×100円)
・2022年…1,300万円(13万個×100円)
販売個数と市場価格をもとにそれぞれ計算した名目GDPと実質GDPをグラフにすると以下のような結果になります。
価格上昇(物価上昇)の影響を受けている名目GDPは、物価変動の影響を取り除いて算出した実質GDPよりもその規模が大きく見えてしまいます。
2021年と2022年の名目GDPで比較すると、りんごの価格が上昇した分、2022年は経済規模が拡大しているように見えますが、販売数量はどちらも13万個と変わらないため、物価変動の影響を取り除いて算出した実質GDPでは、経済成長がまったく見られないことになります。
このように、モノやサービスの価格変動の影響でGDPの数値が変化してしまうことを避けるため、経済の成長力を知る上では「実質GDP」の方が重視されているのです。
※本来GDPは「モノやサービスの付加価値の合計額」であるため、市場価格に含まれる中間投入額(原材料、光熱燃料、間接費など)を差し引く必要がありますが、今回の例では市場価格そのものをGDPとして計算しています。
価格を不変なものとして捉える際に重要なのが『物価指数』となり、一つの国における複数商品の価格水準を平均した指標のことを指します。
3.「GDP」が変化する3つの要因
GDPが変化する要因には「人口増減」「1人あたりのGDP(経済効率)の増減」、「物価の変動」の3つが主に挙げられます。
3-1.人口の増減
国民1人当たりの利益(1人当たりGDP)が変わらなくても、その国の人口が2倍になれば、国全体のGDPは2倍に増えます。人口が増えれば、1人当たりの利益や豊かさは変わらなくても、国全体のGDPは増えるのです。
一方で人口が減れば、1人当たりの利益や豊かさは変わらなくても、国全体のGDPは減ることになります。
3-2.1人あたりGDP(経済効率)の増減
経済の効率が上がり、経済活動が活発になることで1人当たりGDPが増えれば、人口が増えなくても国全体のGDPは増えます。一人ひとりの豊かさも増し、より多くのものを買えるようになります。
3-3.物価の変動
物価もGDPに影響を与えます。例えば、ある国でインフレ政策により突然あらゆるモノの値段が2倍になったとすると、全員の売り上げと、原価とその他のコスト、そして利益が全て2倍になりますので、GDPも2倍になります。
ただし、インフレによりあらゆるモノの値段が2倍になると、確かにGDPは2倍になりますが、稼いだお金で買えるモノの値段も同時に2倍になっています。そのため、本当に「経済が成長した」「国が豊かになった」とはいえません。
「実質的にどれくらい豊かになったのか」を知るには単なる名目上のGDPの増加率だけを見るのではなく、そこから物価の上昇率を差し引き、物価のかさ上げ効果を取り除いた実質的な経済成長を見ていくことが大事になります。
※【1人当たりGDP】とは…
国内総生産をその国の人口で割った数字を一人当たりGDP(1人あたり国内総生産)と呼びます。国ごとに人口が違うため、各国の経済状況を確認するには国内総生産ではなく、一人当たり国内総生産で比較する必要があります。この一人当たりGDPにも名目GDPと実質GDPがあります。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
国内総生産(GDP)は誰もが一度はニュースなどで聞いたことのある言葉だと思いますが、意味をきちんと知ることで、経済がどのように変化しているのかを理解することにつながります。
そして、GDPはマーケットにも大きな影響を与えます。投資をする上でも知っておくべき重要な経済指標のひとつとなりますので、このコラムを通して理解を深めるきっかけになれば幸いです。
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