経済ニュースや新聞などでよく目にする「GDP」や「物価」、「失業率」などといったデータを『経済指標』といいます。
今回のコラムでは、ニュースなどで取り上げられて話題になる主要な経済指標について、知っておくべき重要な経済指標をいくつか取り上げて解説していきます。
こういった経済指標を押さえることで「なぜ今円安になっているのか?」「なぜ値上げラッシュになっているのか?」などが分かり、対策や準備をすることができるようになるでしょう。
1. 「経済指標」とは?
経済指標とは、各国の政府、経済関連の中央省庁、中央銀⾏が発表している「経済状況」を表す統計データです。経済状況を構成するもの(物価、景気、金利、貿易など)を数値化し、過去から現在に至る変化を把握できるようにしたデータで、各国の公的機関が定期的に集計・公表します。
経済の動向を把握することができるため、結果次第では金融市場にとても大きな影響を与えます。
投資をする上でファンダメンタルズ(経済的基礎)要因、いわゆる経済指標と呼ばれる統計データはとても大事な要素となりますので、しっかりとチェックしておくことが大切です。
2. 知っておきたい「経済指標」の13種類
経済指標には多くの種類のデータがありますが、ここでは代表的な指標をご紹介していきます。
2-1. 米国雇用統計
為替相場、世界経済において最も重要な指標のひとつといわれている「米国雇用統計」は、世界経済の中心とされるアメリカの失業者数や就業している人数などの雇用情勢が、アメリカ合衆国労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics、略してBLS)から発表されます。
毎月第1金曜日に10項目以上の統計が発表されますが、特に注目されるのが「平均時給」「非農業部門雇用者数(NFP: Non-Farm Payroll)」「失業率」です。アメリカの中央銀行にあたる米国連邦準備理事会(FRB)は、金融政策の決定にあたり、この米国雇用統計の結果を重要視しています。
雇用統計について詳しく解説している「雇用統計」についてゼロから解説!相場への影響は?(リンク)もぜひ合わせてご確認ください。
参照元:米国雇用統計が確認できるサイトはこちら(米国労働省のウェブサイト)
2-2. GDP(国内総生産)
GDPはGross Domestic Productの略称で、「国内総生産」ともいわれます。一定期間内にその国で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値の合計額の事を指します。
GDPによって「その国でどれだけの儲けが産み出されたのか」という国の経済規模を知ることができるため、景気動向を示す目安として使われます。また、GDPには名目GDPと物価変動の影響を取り除いた実質GDPという種類があります。
GDPについて詳しく知りたい方は、【意外と知らない】GDPについて分かりやすく解説!)もぜひ合わせてご確認ください。
参照元;国内のGDPが確認できるサイトはこちら(内閣府のウェブサイト)
参照元:世界のGDPランキングはこちら(総務省統計局のウェブサイト)
2-3. CPI(消費者物価指数)
CPIはConsumer Price Indexの頭文字を取ったもので、消費者物価指数とも呼ばれます。一般消費者世帯が購入するモノやサービスの総合的な価格の水準を表す数値で、日本では総務省が毎月発表しています。
消費者物価指数は物価変動を示す指標で、インフレ状況や景気を判断する際に重要になる指標です。全てのモノやサービスを総合した「総合指数」、価格変動が大きい「生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)」などがあり、基準年は5年ごとに更新されていきます。
参照元:CPIが確認できるサイトはこちら(総務省統計局のウェブサイト)
2-4. 景気動向指数
景気動向指数は、景気の現状と先行きを予測する上で重要な景気指数をもとに算出される指標で、内閣府が毎月発表しています。景気に対して先取りで動く「先行指数」、ほぼ一致して動く「一致指数」、遅れて動く「遅行指数」の3系列の指数があります。
また、景気動向指数には景気変動の大きさなどを表すCI(Composite Index)と変化の方向性を表すDI(Diffusion Index)の2つがあり、それぞれ見方は異なりますが、両方見ることでより景気の動向を正確に把握できます。
参照元:景気動向指数が確認できるサイトはこちら(内閣府のウェブサイト)
2-5. 小売売上高
小売売上高は、百貨店やスーパーマーケット、コンビニなど小売・サービス業者の売上金額をまとめた指標です。消費者が商品購入にどれだけのお金を使ったかが分かる指標になるため、その国の景気や個人消費の動向が判断できます。経済動向を把握するためには欠かせない指標です。
参照元:小売売上高が確認できるサイトはこちら(経済産業省のウェブサイト)
2-6. 鉱工業生産
鉱工業生産は、金・銀・鉄・石灰などを採掘する鉱業とコンピューターや電化製品・自動車などの製造業の生産量を指数化しまとめた指標です。生産量の変化によって、その国の景気状況や個人消費の動向を把握することができます。
参照元:鉱工業生産指数が確認できるサイトはこちら(総務省統計局のウェブサイト)
2-7. FOMC
FOMCとは、Federal Open Market Committee(連邦公開市場委員会)の略でアメリカの金融政策や政策金利に関することを決定する会合です。年に8回開催され、委員会はFRB理事7名と地区ごとの連邦準備銀行総裁5名の最大計12名で構成されています。
今後のアメリカの金融政策の方向性を判断する材料になるため、市場関係者から注目を集めます。
参照元: FOMCが確認できるサイトはこちら
参照元:FOMCの速報が確認できるサイトはこちら(ロイター)
2-8. 景況感指数
景況感指数は、消費者や企業購買担当者、アナリストなどに現在の景気や今後の景気動向について聞き取り調査やアンケート調査を行い、その結果を指数化してまとめた指標です。景況感指数が低ければ景気が悪く、高ければ景気が良いと読み取ることができます。
各国が毎月発表している景況感指数は、「ZEW景況感指数(ドイツ)」「IFO景況感指数(ドイツ)」「米消費者信頼感指数(アメリカ)」「ミシガン大消費者信頼感指数(アメリカ)」などがあります。
参照元:ドイツのIFO景気指数
2-9. 貿易収支
貿易収支は輸出額から輸入額を差し引いた収支で、モノの輸入と輸出のバランスを表す指標です。輸出額が輸入額を上回れば貿易黒字、逆に輸出額が輸入額を下回れば貿易赤字となります。
一般的には貿易黒字になるとGDPが上昇し、貿易赤字になるとGDPが下落するといわれています。
参照元:貿易収支が確認できるサイトはこちら(財務省貿易統計のウェブサイト)
2-10. 日銀短観
日銀短観とは「全国企業短期経済観測調査」の通称で、日本銀行が四半期ごとに公表します。
全国の資本金2,000万円以上の企業約1万社を対象に「今の景気をどう判断しているか」「今後の予想」「設備投資」などの項目でアンケート調査を行い、会社の規模・業種別に集計したものです。
企業の景況感や今後についてが分かる重要な経済指標として注目されています。
参照元:日銀短観が確認できるサイトはこちら(日本銀行のウェブサイト)
2-11. 日銀金融政策決定会合
日銀金融政策決定会合とは、日本銀行の政策委員が金融政策の方向性や政策金利に関することを討議・決定する会合です。年に8回、毎回2日間にわたって開催され、9名の政策委員(総裁、副総裁2名、審議委員6名)による多数決で決定されます。
日銀金融政策決定会合とともに、会見後の日銀総裁の発言にも注目が集まります。
参照元:金融政策が確認できるサイトはこちら(日本銀行のウェブサイト)
2-12. ECB政策理事会
ECB政策理事会とは、欧州中央銀行(European Central Bank)の最高意思決定機関のことで、ユーロ圏の金融政策や政策金利に関することを決定します。6週間毎に開催され、役員会メンバー6名(総裁、副総裁、理事4名)とユーロ圏の中銀総裁19名の計25名で構成されています。
ECB政策理事会は議事要旨が公開されないため、第1回目の会見後に開かれるECB総裁の発言に注目が集まります。
2-13. その他(要人発言)
経済指標そのものではありませんが、国の経済政策を担う政府高官や高級官僚、金融政策を担う中央銀行の総裁や財務大臣、そしてその関係者などの発言により、景気の現状や先行きの見通しがある程度明らかになるため、結果として相場が動きます。
そのため、要人発言にも注目が集まります。
3. 「経済指標」で分かることは?
上記のように、経済指標は各国の「景気が現状良いのか悪いのか」、「景気はこれからどうなっていくのか」、そして、自分が思っている景況感の認識・予測と実際の市場の動きにズレが生じていないかを確認する際に役立ちます。
株価、債券価格、為替レートといった資産価格は、これらの経済指標の数値結果次第で時に大きく変動し、それによって値上げなどが起こり家計にも響いていきます。経済指標をチェックすることで、事前に把握ができ、準備や対策を講じることもできますので、ぜひチェックしていきましょう。
経済指標は月毎や四半期毎に発表され、前月比(または前期比)か前年同月比(または前年同期比)で比較することが一般的で、前回発表された数値から傾向が続いているのか、傾向が変わっているのかを確認します。また、『結果』が出た際に「予想」よりいいか悪いかによって相場の向きが変わってきます。
4. 経済指標を投資に役立てるには
投資をする上で、チャートを見て今後の動きを予測する方法もありますが、今回ご紹介した経済指標がチャートに与える影響も大きいため、経済指標を用いて広い視野で相場の状況や動向を判断していくことがとても大事になります。
また、自分が感じている景気の状況と、実際の景気にズレが生じていることもあるかもしれません。そういったズレを無くして正確な投資判断をするためにも、経済指標を役立てていく必要があるのです。
それぞれの経済指標は発表時期も決まっていますし、情報が分かりやすくまとめられているサイトもあります。まずは経済指標を確認する習慣がついてくるだけでも投資に対する意識が変わっていきますので、ぜひご自身に合ったやり方を見つけていただければと思います。
おわりに
経済指標はいずれも世の中の景気を判断する際にとても役立ちます。一見、日本の景気には関係なさそうな経済指標でも、日本の景気は国内の公的機関が発表したものだけでなく、海外の影響に大きく左右されます。特に、アメリカは経済規模が大きく全世界の経済に大きな影響を与えています。
経済指標をインターネットで検索してみると、「発表時間」「重要度」「対象の国・地域」「指標名」が、カレンダー形式で1か月程度事前に分かるようになっています。無料で見られるものがほとんどなのでぜひ一度チェックしてみてください。
今回のコラムを通して、投資初心者が押さえておくべき代表的な経済指標について知ることができるきっかけになれば幸いです。
投資総合スクールThe Gavelの公式YouTubeチャンネルでは、こういった経済指標の解説から自身の資産を守るための正しい知識を発信しています。ぜひ気になる方はこちらも合わせてご覧になってみてください。