あなたの資産、大丈夫ですか?(その3)

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あなたの資産、大丈夫ですか?(その3)

前回のコラム「あなたの資産、大丈夫ですか(その2)」では、資産形成を考えるにあたり、「何に投資するのか」を考える前にすべき大事なことをお話ししました。またそのステップを踏んだ先にすることについて、ヒントを出すだけで終わってしまっていますので、今回は答えをお話しします。  

1.まさか自分が

前回、現状把握、ゴール設定の次にすべきことがあるとお伝えしましたが、なぜそのように私が考えるのかを例を挙げてご説明します。  

Aさんは、老後資金のためにと頑張って資産形成に努め、1,000万円貯めることができました。とある休日、お天気が良いので自転車で買い物に出掛けました。気持ちが良く特に予定がないので普段通ったことのない道を通ってみようと思い、知らない道を通ってみることにしました。ところが途中で道に迷ってしまい、現在地を確かめるためにスマホで検索しながら自転車に乗っていたところ、それに気を取られてハンドル操作を誤り、通行人とぶつかってしまいました。倒れてしまった方に駆け寄ると頭から血が流れており意識が朦朧としています。病院に搬送された方は、一命は取り留めたものの半身不随となってしまいました。  

このケースの場合、Aさんにどのようなことが降りかかってくるのでしょう。人のモノを壊す、もしくは人にケガを負わせてしまった場合は、現状通りに戻さなければならないという法律の規定があります。それが民法第709条です。ここでは「不法行為による損害賠償」として、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定されています。これを「賠償義務」といいます。 

賠償義務金額は、その方が健康であればいくら稼げるか、家族構成はどうなっているか、などさまざまな観点から算出されます。その人が20代、30代前半で子どもが小さいという場合、1億円近くになる場合もあります。もし1億円と算出された場合、Aさんは1,000万円貯めていたとしても、この損害賠償のために一気に無くなってしまいます。そして、1,000万円を支払っても、賠償額はまだ9,000万円も残っていますので、残りの分はAさんの生活に支障が出ない範囲で完済するまで支払い義務が続きます。こうなると、資産形成どころではありません。Aさんは、賠償額の支払いのために働くことになってしまいます。ちなみに、Aさんが生きている間に完済できない場合は、相続で子ども等の相続人がそれを引き継ぐことになります。 

 このような話をすると、自身には関係ないと他人事として捉える方が多いのですが、実際にこのような事故を起こしてしまった方の多くが、皆同様に「まさか自分が」、「まさか自分の家族が」と話されます。私たちにはこのようなことが突然に前触れもなく降りかかってくるのですが、何も対策をしていないままこのようなことになってしまっては遅いのです。この例から、せっかく頑張って蓄積した資産でも、たった1つ何かが起きただけであっけなく失ってしまうということを認識する必要があります。なぜ資産形成を考える前にすることがあると私が考えるのかお分かりいただけたでしょうか。 

2.あなたが加入している保険は? 

さて、この話をすると、「資産形成を考える前に保険に入れば良いのだ」、「保険に入っているから大丈夫だ」と考える方が多いです。私のレクチャーやセッションを受けられた方はほぼこのように考えられますが、この考えは半分正解で半分間違いです。もちろん保険に入ることも大事なのですが、それだけでは不充分なのです。  

「保険に入れば良い」と思われた方に5つの質問をします。 

A. 現在どのような保険に加入されているか把握できていますか? 

B. 現在加入されている保険の内容をご自身で説明できますか? 

C. 生命保険と自動車保険、火災保険の担当者は同じ人ですか? 

D. すべての保険証券は1つのファイルにきちんと管理できていますか? 

E. 現在加入されている保険で全てのリスクをカバーできていますか? 

答えはいかがでしたでしょうか?多くの人は、A~Dのお答え全てが「No」となるのではないかと推測します。これは私のこれまでの仕事の経験からいえることです。多くの方は、社会人になりたての頃、勤務先に来ていた保険会社の方にすすめられるがまま加入し、保険について触れる機会は年末調整のために記入するときくらいだったのではないでしょうか。 

保険証券の文字はとても小さく、また記載されていることは長く分かりづらいということもあり、読んだことがある方は少ないと思います。よく考えてみればこれは不思議な話です。保険に加入すれば安くはない保険料を長年支払い続けることになるのですが、その支払額合計はかなりの額になります。普通、人はお金を支払うときに、その対象がどのようなものか内容を知り理解していますよね。ところが、保険については、相当な額を支払っていながら、どのようなものに支払っているのかほとんどといっていいほど把握・理解できていない方が多いのです。分からないものに多額のお金を支払うというのは、保険くらいではないでしょうか。  

さて、一方Eのお答えは、「Yes」とお答えになる方もいらっしゃるかと思います。どちらのお答えになったとしても気を付けていただきたいことがあります。それは、矛盾が生じているということです。現在加入されている保険について把握・理解ができていないにもかかわらず、全てのリスクがカバーできている、もしくはカバーできていないと判断できるのでしょう。カバーできているとお答えになられた方は、おそらく、ファイナンシャルプランナーに相談し、すすめられた保険に入っているのだから、とお答えになるかと思います。しかし本当にそれで大丈夫なのでしょうか? 

ファイナンシャルプランナーの方がダメだとか、信用してはいけないといっているわけではありません。もちろん、その方は、適した保険を選び、すすめられたのだと思います。しかし、ファイナンシャルプランナーは、全てのリスクを把握してアドバイスしているとは言い切れないのです。 

3.さまざまなリスク 

ここで大事なことをお伝えします。「保険は万能ではない。」ということです。ここでお断りしておきたいのは、保険がダメだとか、保険が不要だ、ということをいっているわけではないということです。保険は人生や生活を守ってくれるものとして有効な役割を果たしており、加入することは大事なことだと思っています。 

世の中にはさまざまなリスクが潜んでいます。家を出れば、さまざまな事故に遭遇するリスクがあります。でもそれを恐れて家に引きこもっていれば安全かというと、火事や地震といった災害リスクがあります。病気になるリスクもありますし、リスクを挙げていけばきりがありません。私たちの生活、人生はリスクと隣り合わせといっても過言ではないでしょう。 

このような世の中に生きているあなたに、突然ですが質問です。リスクは好きですか?嫌いですか? 

もしこの質問に対して「好き」とお答えになられたとしたら、相当スリルを楽しむのがお好きな方なのだろうと想像します。多くの方は「嫌い」とお答えになられるのではないでしょうか。できるだけ安心、安全な生活、人生を送っていきたいと思いますよね。 

ではその嫌いなリスクですが、身のまわりにどのようなリスクが潜んでいるか把握されていらっしゃるでしょうか。嫌いということはそれを少しでも遠ざけたい、減らしたいと考えると思うのですが、リスクについて把握できていなくては遠ざけることも減らすこともできません。そもそも、自身の生活、人生にどのようなリスクが潜んでいるか、考えたことがある人はそれほど多くはないと思います。リスクについて考えるということを学校では教えてもらっていないことや、社会人になって保険に入ればそれで安心と思わされることなどが理由として挙げられるでしょう。  

リスクの把握ができていないにもかかわらず、保険に加入していればそれで安心と思ってしまうというのは、よく考えてみればおかしな話です。きちんと把握できていなければ、回避するための対策を講じることはできません。「保険に入れば良い」という考えが半分は間違っているということ、「保険は万能ではない」ということがお分かりいただけたでしょうか。保険はリスクをカバーする手段のひとつにしかすぎません。本コラムをお読みになられている方がどのような方なのか分かりませんが、第1章で挙げた例のようなことが起きても、完済できるくらいの資産や収入があれば保険に入る必要がない、といえるでしょう。 

私のレクチャーやセッションでは、第1章でお出しした例をお話ししながら、資産を失ってしまうようなことになる前に、またならないように、そして、そのようなことになった場合でもきちんと対処できるようにしておく必要があるとお伝えしています。「たった1つの何かが起きたとしても、それによって今の生活、人生が壊れないようにする」ことはとても大切なことです。私はこれを「リスク管理」と定義しています。リスク管理という概念をもたずに、お金を貯めたり増やしたりすることを優先してしまうと第1章の例のようなことが起こりえてしまうのです。お金を貯めたり増やしたりする前に、何があったとしても今の生活が最低限守れる状況を作るのが最優先事項であり、それがリスク管理なのです。 

おわりに 

いかがでしたでしょうか。「何に投資するか」を考えることより先にすべきことがあることはお分かりいただけたでしょうか。リスクについて考え、それを回避する対策を講じることなく、資産形成を考えることの怖さをご認識いただけましたら幸いです。 

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