マネーリテラシーを上げよう(その4):利回りと税金について

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マネーリテラシーを上げよう(その4):利回りと税金について

これまで3回にわたり、「マネーリテラシーを上げよう」ということで、概要や初歩的な知識の一部についてご説明してきましたが、ご理解していただけましたでしょうか。このコラムでは、さらに大事なことをお伝えします。

1.単利・複利、利回り

いきなりですが問題です。100万円を5%で運用します。5年後いくらになっているでしょうか?ぜひお時間ある方は計算してみてください。

さて、この問題は解けましたか?

100万円+100万円×5%×5年=125万円

と答えたあなた、それは正解ではありますが、不正解でもあります。なぜ不正解でもあるのか分かりますでしょうか?

この問題には、実は重要なことが1つ抜けているのです。それは「単利か複利か」ということです。このことについて次でご説明します。

運用には、単利方式と複利方式の2つの方法があります。単利というのは、当初預け入れた元金に対してのみ利息が付くことをいいます。先程の問題の場合は、当初の預け入れ元金は100万円ですので、毎年100万円に対して5%の利息が付くことになります。

これに対し、複利というのは一定期間に発生した利息を元金に加え、元利金を元金として利息を計算する方式です。利息に対してさらに利息が付くことになります。複利については、先程の問題で考えてみましょう。1年複利を前提とします。1年複利というのは元利金を新たに計算するタイミングが1年毎ということです。

・1年複利で100万円を5%で運用した場合

1年目の元金は100万円です。これに5%の利息が付きますので、1年後には105万円となっています。単利の場合は2年目も元金は100万円なのですが、複利の場合は1年目でついた利息5万円を加えた105万円が元金となるのです。では、最初に預けてから2年後には複利の場合はどうなっているかというと、105万円×5%=52,500円が利息となり、元利金合計は110万2500円となります。3年目は複利の場合は110万2500円を元金としてこれに5%の利息が付きますので、3年目の終わりには元利金合計は115万7625円となります。このようにして計算していくと複利で運用すると5年後には127万6281円になり、これが問題の答えとなります。つまり、複利で運用した場合には125万円というのは不正解であり、運用方式が記載されていないため不正解の可能性もあるということなのです。計算結果を見てお分かりのことと思いますが、複利は単利の場合と比較すると26,281円も多くなります。

【計算式】

年数計算式利息
1年目1,000,000円×5%50,000円
2年目1,050,000円×5%52,500円
3年目1,102,500円×5%55,125円
4年目1,157,625円×5%57,881円
5年目1,215,506円×5%60,775円

ちなみに、複利の場合の〇年後の元利金の合計金額の計算式は以下になります。

〇年後の元利金合計金額=元金×(1+年利率÷100)年数

「年数」と小さく右上に表示しているのは、「乗数」ということを表しています。これは(1+年利率÷100)を〇回かけるということで、先程の問題の場合を細かく表すと

100万円×1.05×1.05×1.05×1.05×1.05

となります。

ところで、「利回り」という言葉を見たり聞いたりされると思いますが、意味をご存知でしょうか?利回りとは、当初投資した金額に対して得られる利益の割合をいいます。利率と同じように考えられがちですが、この単利と複利では「利回り」は異なってきますので注意が必要です。

上記でご質問した問題の場合で考えると、単利の場合は100万円投資して5年間で25万円の利益ですから(25万円÷5年間)÷100万円で利回りは5%となりますが、複利の場合は100万円投資して5年間で27万6281円の利益ですので(276,281円÷5年間)÷100万円で利回りは5.52562%となります。つまり、単利の場合は利率=利回りとなりますが、複利の場合は利率と利回りは同じでなく、利回りの方が高くなります。

「単利か複利か」は、それによって得られる結果が異なりますので、運用を考える時には非常に重要な概念です。「乗数」という言葉まで出てきて少し難しかったかもしれませんが、しっかり理解していただきたいと思います。

2.税金

あなたは今税金をいくら支払っているか把握していますか?会社員や公務員の方は、勤務先が所得税を計算し給料から天引きし、本人に代わって納税してくれるため、税金に対する興味や関心が低いかもしれません。年末調整の結果還付金があるとの通知を受け取った時点でそれまでの納税額を確認すれば良いですが、多くの方は臨時収入があったと浮かれて実際どのくらい払っていたのかを確認していないのではないでしょうか。耳が痛い人も、いらっしゃるかもしれません。

個人事業主の方は確定申告をしなければならないため会社員や公務員の方よりは意識は高いと思いますが、税理士に任せきりにしてしまっている方は特に心配です。

お金と付き合うと常に税金をセットで考える必要があります。税理士のような高度なことまで知る必要はありませんが、お金と付き合う以上税金のことを常に意識しておくことは大切なことだと思います。

2-1. 税引きで考える

投資、資産運用においてはどのくらい利益を上げられるかということで、「利回り」、「利率」、「金利」などという言葉を見ると思います。このとき注意すべきことがあります。それは、これらは「税額込み」だということです。

例えば、1年物定期預金の金利が1%という場合、1,000万円を預けると1年後には10万円の利息を受け取れるはずですが、実際には79,685円しか受け取れません。これは、税法で利子所得については、原則としてその支払いを受ける際、利子所得の金額に一律15.315%(及び地方税5%)の税率を乗じて算出した所得税・復興特別所得税が源泉徴収されることが規定されているからです。利子所得とは、預貯金及び公社債の利子並びに合同運用信託、公社債投資信託及び公募債等運用投資信託の収益の分配に係る所得をいいます。この規定により、利息を受け取る前に税額分の20,315円が先に差し引かれ、残りの79,685円しか受け取れないということになります。

利子所得は源泉徴収されると述べましたが、例外があります。それは特定公社債等の利子等で、これは確定申告することが原則ですが、確定申告不要制度を選択することもできます。特定公社債とは、国債、地方債、外国国債、公募公社債、上場公社債、2015年12月31日以前に発行された一定の公社債をいいます。また日本国外で支払われる預金等の利子など日本国内で源泉徴収されないものも申告が必要です。

2021年11月26日付コラム「そのFIRE、ちょっと待った!(2)」で、そのようにいう理由としてマネーリテラシーが低いということを取り上げ税金のことにも触れていますので、ここで実際の数字をみて検証してみましょう。お読みいただいていない方のために簡単にご説明しますと、2020年頃から日本でも若い方を中心に、経済的自由を得て早期に会社を退職し、会社に縛られない自由な生き方をする「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」が流行っています。このFIREでは経済的自由を得るための前提として「4%で資産を運用する」となっています。これまでの説明でお分かりいただけると思いますが、この「4%」は税引き後で考えないといけません。資産が1,000万円ありこれを4%で運用する場合を考えてみましょう。預けた1年後には40万円受け取れると思っていたところ、実際は318,740円しか受け取れませんので、81,260円足りず資金計画は狂ってきます。では、どれだけの利回りであれば実質4%の運用になるかというと

4÷79.685%*=5.01976533

*100%―20.315%

ですので、約5.02%での利回りが必要ということになります。検算すると

1,000万円×5.02%―1,000万円×5.02%×20.315%=400,018円

ですので、この計算結果があっていることが分かります。

本当に欲しい結果を得るには、税金という概念が必要だということはこれでお分かりいただけたかと思います。

2-2. 副業

さて、お金を増やすというと投資、資産運用に目がいきがちですが、持っているものを増やすのでなく新たな収入源を得るということで「副業」ということも注目されています。これは「働き方改革実行計画」において副業・兼業の普及を図るという方向性が示されたことを受けて、2018年1月に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、そのガイドラインの中で、副業・兼業を認める方向で就業規則等を見直すことが望ましいとされ、見直しのポイント等が説明されたことを受け、副業を解禁する企業が増えてきたことによるものです。

副業に関する本が多数出版されており、本コラムをお読みいただいている方の中には、実際副業をされている方も多くいらっしゃるのではないかと思います。副業にも様々なものがありますが、やはり税金について知っておく必要があります。

 

副業をする場合は、「確定申告」が必要になります。例えば、副業として別の会社に雇われ給与が支払われる場合、本業である「主たる給与」を受けている会社で年末調整をしていても、副業である「従たる給与」を受けている会社では年末調整ができないのです。2つの収入を合算し、総額で所得税を計算して正しく公平に納税することが求められるため確定申告が必要になります。ただし、副業をしていても確定申告が不要な場合があります。それは「従たる給与」が「年20万円を超えない」場合です。つまり主たる給与以外の所得が年間20万円以上である場合は、確定申告が必要です。毎月16,667円以上受け取っていれば、年間20万円を超えます。従たる給与は、例えば頼まれてコンサルタントを行い報酬を受け取った場合なども含まれます。要は主たる給与以外で報酬を受けた場合は、それは従たる給与に該当することになるのです。

副業も受取金額次第では月に何十万も稼いでいて、どちらが本業なのか分かりずらい方もいますので、確定申告を忘れないで行っていただきたいと思います。

2-3.動向をチェックする

税制調査会、もしくは「税調」という言葉を見たり聞いたりされた方はいますか?またそれはどんなことをいっているかお分かりでしょうか。税制調査会とは、内閣総理大臣の諮問に応じて、租税制度に関する基本的事項を調査審議する内閣府の審議会の1つです。税金の改正が行われていますが、それは政府の税制調査会で検討がなされているということです。因みに、自由民主党内の審議機関の1つである税制調査会と区別するために、政府税制調査会と呼ばれることも多いです。

税金について学ぶという場合、現状だけでなく税制調査会の動向などニュースでチェックすることも大切なことです。この場合の税制調査会は、政府の税制調査会はもちろんのこと、政権政党の税制調査会(2021年12月現在ですと自民党税制調査会)についても、どのような議論がなされているか、どのような声が挙がっているか知っておくことが必要です。例えば、先程利子所得に対する税率は20.315%とお伝えしましたが、これについては増税すべきという意見があるのです。つまり将来引き上げられる可能性が高いということで、そうなると資産形成には大な影響がありますよね。「FIRE」で4%の運用を目指すことについて、現状5.02%の利回りを得る必要があるとお伝えしましたが、利子所得に対する税率が引き上げられれば利回りはさらに高いものを得ないといけなくなるのです。

引き上げられてから慌てるのではなく、あらかじめそれに備えるためにも動向をチェックすることは大事なことです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。計算式が何度も出てきましたので、戸惑われたり理解するのに苦労されたという方もいるかもしれません。しかし、ここでお伝えしたことはいずれも基礎の基礎、いずれも重要なことばかりです。1回読んで理解できなかったとしても諦めず、何度も読んで理解を深めてください。