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マネーリテラシーを上げよう(その5):マネーリテラシーの上げ方について

岡部 達磨(ライフバランスプロデューサー)

監修者
岡部 達磨(ライフバランスプロデューサー)

いつ死んでも後悔しない、自分なりの幸せな人生をどうしたら構築できるか考え、学び、行動し、現在それを実現。月の半分以上はゴルフをしつつ、自分らしい理想の人生を手に入れたいと本気で思う人に寄り添うトータルコンサルタントとして活動中。これまでプロ野球選手、医師や経営者をメインに1,000件以上のコンサルティング実績。 2級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)

これまで4回にわたり、「マネーリテラシーを上げよう」ということで、概要や初歩的な知識の一部についてご説明してきました。ご理解していただけましたでしょうか。このコラムではどのようにしてマネーリテラシーを上げていくのかということについてご説明します。

1. 金融リテラシー・マップ

マネーリテラシーを上げよう(その1)」でご説明した通り、日本人の多くはお金について学ぶ機会はほとんどありませんでした。様々な状況を考えると仕方のないことではありますが、ではどうすればリテラシーを上げられるのか、と疑問に思われる方もいるでしょう。

それをご説明する前に、金融経済教育推進会が2014年6月に公表した「金融リテラシー・マップ」から、年齢別・分野別にどのようなことが習得すべき事項となっているのかを見てみましょう。以下は「政府広報オンライン」からの抜粋です。

・小学生

買い物をしたり、お年玉、お小遣いをもらってそれを管理(お小遣い帳を付ける)したりしながら、お金に関わる経験・知識・技能や、社会の中で生きていく力の素地を身に付ける。具体的には、貯蓄の意義を理解し計画的に貯蓄する習慣を身に付ける、など。

・中学生

お小遣いや買い物などの経験を増やし、家系や生活設計について理解し、将来の自立に向けた基本的な力を養う。具体的には、職業体験を通じて就きたい職業について考える、家計の収支について理解を深める、など。

・高校生

生活設計の重要性を理解し、社会人として自立するための基礎的な能力を養う。具体的には、長期資金管理の大切さや意思決定の重要性を理解する、など

・大学生

社会人として自立するための能力を確立。具体的には、クレジットカードを利用する場合、借金であることを理解し支払い可能な範囲で利用する、金融商品のリスクやリターン、基本的な金融商品の仕組みや特性を理解する、など

・若年社会人

生活面・経済面で自立。具体的には、給与天引き預金を行うなど貯蓄行動を定着させる、公的年金・保険の内容を把握し、必要に応じて貯蓄や民間の保険・年金への加入などを考える、様々な金融商品の性質を理解し運用する、など

・一般社会人

社会人として自立し本格的な責任を担う。具体的には、収支の改善に努め、黒字を確保し、貯蓄や投資を通じて将来に向けた資産形成を行う、必要に応じ、住宅ローンなどの負債も計画的・有効に利用、など

いかがでしょうか。このコラムを読まれた方の多くが一般社会人に該当すると思いますが、子どもがいる方は一般社会人以外もご確認ください。これから分かることは、小学生や中学生でのお金に関する教育は家庭が中心ということです。将来、小学校、中学校でもカリキュラムが組まれるかもしれませんが、2022年度から実施される高校の新学習指導要領で、家庭科の学習内容に資産形成が加わり、やっとお金に関する教育がスタートする状況です。まだまだ先のことと考えずに、家庭で子どもへのお金についての教育を検討された方が良いでしょう。

参照元:https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201404/1.html

2.マネーリテラシーを上げる方法

 さて、マネーリテラシーを上げるためには、様々なことを学ばなくてはなりません。学ぶ方法は色々ありますので、以下ではそれをご紹介します。

2-1.日々のニュース

まず一番手っ取り早くてお金がかからない方法は、日々のニュースから学ぶということです。新聞やニュース番組では経済や金融関連のニュースが日々流れています。それらについては、聞いたことはあるけれど仕組みなどよく分かっていないというものがあるかもしれません。例えば、「本日の日経平均は前日比100円20銭値下がりした」というニュースを見たとしましょう。「日経平均」という言葉はよく見聞きするでしょうが、その意味をご存知でしょうか。また、なぜ値下がりしたのでしょうか。別の例として「本日の為替相場では前日比20銭円安ドル高の○○円○○銭になった」というニュースを聞いて、「円安」の意味や、なぜそうなったのか分かりますか?言葉の意味や、その事象が起きた原因・要因などはインターネットで調べればすぐに分かります。その事象が起きた原因・要因については、調べてもすぐには理解できないこともあるでしょう。でもそこで挫けず、新聞や書籍を読むなどして理解する努力を続けてください。更に詳しく説明しているWEBサイトを探し理解を深めていけば、段々とニュースを見聞きしただけで分かるようになりますし、ニュースに敏感に反応できるようになってきます。

金融や経済をめぐる環境は時代により大きく変化しています。また、様々な金融商品や金融サービスが続々と生まれています。日々のニュースに敏感に反応できるようになると、そうした変化に付いて行けます。風が吹けば桶屋が儲かる、の言葉の通り、1つのニュースから次にどんなことが起きるかということの予想・予測が立ち、変化に対してより早く対応できるようになり、場合によってはそれによってお金の損失を防ぐことができるようにもなります。

より知識を深めたくなった場合は、セミナーや勉強会に参加してみると良いでしょう。

2-2. 投資の勉強と実践

次は、投資の勉強と実践です。

「投資」とは、将来の利益のために資金を投じることをいいます。資産運用と同じような意味で使われることもありますが、実際の意味合いは異なります。資産運用は、資金を増やすため、または減らさないためにご自身の財産を活用することです。投資も資産運用の一種とみることもできますが、第一の目的が利益を上げることとするのが投資、今ある財産を活かして増やす第一の目的が資産運用となります。

投資については「=ギャンブル」と思っている方もいるかもしれませんが、それは間違いです。たしかに、株価の動きだけを見て短期間で売買を繰り返したり、株価が上がりそうな銘柄に多額の資金を投入して「一獲千金」を狙ったりする手法もありますが、それは「投資」ではなく「投機」といいます。とにかく儲けようとすることが投機であり、将来のために計画的にお金を増やすために行う「投資」は決して賭け事と同じではありません。

投資をする上で重要なのは、投資の種類(投資対象商品)や特徴など投資について学び、知識を身に付けて行うということです。「マネーリテラシーを上げよう(その2)」でご説明した「リスク」はもちろんのこと、リスクを軽減し少しでも確実性を高める方法なども学ぶことが大切です。

実際に投資を行うとなると、目的や期間などをしっかり検討することになりますし、どのくらい投資元本がマイナスとなっても生活に影響がないか、どのくらいまでなら投資元本がマイナスとなっても気持ち的に耐えられるかをより真剣に考えることとなります。当然生活に余裕がない状態では投資は行えませんが、家計的に精神的に余裕をもってできる範囲が明確になるでしょう。時には損をすることもあるかもしれません。その場合、損失を挽回しようとして却って深みにはまるということがあります。また逆に利益が出た時に欲をかいてしまい、ふたを開けてみたら損失を被っているということもあります。このような経験を通して、ご自身がどのような性格なのかということもわかりますし、それによってどのような金融商品を選ぶのが自分に適しているのかということもわかってきます。

投資を行うとニュースが気になりだしますので、上記で説明した2-1.も同時に学んでいくことになります。漫然とニュースから学んでいくよりも、投資のためにという目的があるとより学ぶ姿勢になり、多く深く学ぶことができると思います。

2‐3.資格試験

これはかなり上級者になりますが、資格試験の勉強をする、という方法もあります。より専門的な知識が身に付きますし、合格して資格を取得できれば、仕事に活用できたり、転職するきっかけとなったりする可能性もあります。様々な資格がありますが、まず始めるには以下の3つが良いでしょう。

・ファイナンシャルプランナー(FP)

人生の夢や目標を叶えるるために総合的な資金計画を立て、経済的な側面から実現に導く方法を「ファイナンシャル・プランニング」といいます。ファイナンシャル・プランニングには、家計にかかわる金融、税制、不動産、住宅ローン、保険、教育資金、年金制度など幅広い知識が必要になります。これらの知識を備え、相談者の夢や目標が叶うように一緒に考え、サポートする専門家がファイナンシャルプランナーです。(日本FP協会ホームページより)

・簿記

日々の企業のお金の出入りや取引を記録し、一定の期間(通常は1年)ごとに決算を行い報告書にまとめる作業を「簿記」といいます。簿記の資格を取れば、経理としての仕事ができるのはもちろんですが、会社のキャッシュフローの予測ができるようになったり、企業の経営状態が分かるようになったりしますので、投資には大いに役立ちます。

・証券アナリスト

証券アナリストとは、企業や業界を対象として市場や経済状況を分析し調査する方のことをいいます。金融機関に所属し、企業や産業に関する様々な情報を入手し、将来のリターンやリスクを予測して投資の対象として価値があるかを分析、評価し、その結果に基づきレポートを作成し、金融商品の投資を考えている顧客に対して助言やサービスを行います。日本証券アナリスト協会所定の教育講座を受講し、それに基づく試験に合格し、一定の要件を満たすことで認定される資格です。

3.学ぶ際のポイント

マネーリテラシーを上げるために学ぶにあたり、重要なことがあります。それは、レベルに合わせて実際に成功している方から学ぶ、ということです。というのは、成功者でなければ分からない領域があるからです。これはどんなことについてもいえることです。

例えば、野球のバッティングを教えてもらうことを考えてみましょう。1度も優勝したことがない少年野球チームの監督とイチローから学ぶ、どちらが説得力があるでしょうか。大リーグでも大活躍されたイチローの方が、経験値が異なりますからアドバイスも説得力があります。

お金のことについても、1億円を稼ぐ方法を教える方が、実際に稼いでいなかったらどうでしょうか。3億円稼いでいる方が説明する1億円を稼ぐ方法と、500万円しか稼いでいない方が説明する1億円を稼ぐ方法、当然内容が異なることはお分かりだと思います。

ただし、「レベルに合わせること」が大事です。現在500万円しか稼いでいない方がいきなり1億円稼ぐ方法を聞いても分からないことが多いかもしれません。1億円に近い金額を稼いでいないと分からないことがあるからです。例えば、最終的に1億円を稼ぐ方法を学ぶ場合、1,000万円を稼ぐ方法、3,000万円を稼ぐ方法、5,000万円を稼ぐ方法とステップを上げていくのが良いでしょう。

おわりに

マネーリテラシーは、私たちがお金と付き合う以上欠かせない重要なスキルです。マネーリテラシーを身に付け向上させることは、思い描くライフプランの実現に大いに役立つでしょう。

今回を含め、5回にわたってマネーリテラシーについてご説明してきましたが、これらは入門編です。マネーリテラシーは知識と経験を積むことで上がっていくものです。マネーリテラシーが低いままでいることのメリットはありません。より豊かな生活のために、マネーリテラシーを上げていっていただければと思います。

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