引っ越し業界には依頼が集中する「繁忙期」と、それ以外の「通常期」が存在します。繁忙期は予約が殺到するため、引っ越し費用の相場が高額になる傾向にあり、週末や午前中はさらに割高となります。そのため、引っ越し費用を抑えたい場合は、時期ごとの相場を把握して、割安なタイミングに見積もりを依頼することが大切です。
今回のコラムでは、時期ごとの費用相場と引っ越し費用が高額になる条件・タイミング、料金を安く抑えるコツを紹介します。
単身・家族の引っ越し費用の平均とは?

引っ越し費用を左右する要因として挙げられるのは、引っ越し距離やオプションサービス、荷物量、引っ越し時期です。基本的に荷物量が少ない単身引っ越しほど料金は安くなり、大型家具や家電、楽器などを運搬する家族引っ越しでは高額となります。ここではまず、引っ越し距離や荷物の量に関わらず、単身引っ越しと家族引っ越しの全体的な平均費用について解説します。
単身引っ越しの平均費用
単身引っ越しの費用相場は、40,000円〜60,000円程度です。距離の短い近距離引っ越しや、荷物が少なく単身引っ越しパックを利用した場合は、30,000円~40,000円に収まることもあります。一方、自転車や楽器、大型家具などの運搬を依頼し、荷物量も多くなると100,000円以上になるケースもあります。
家族引っ越しの平均費用
2人以上の家族の引っ越しでかかる費用相場は、70,000円〜170,000円程度です。家族での引っ越しは荷物量が多くなる傾向にあるため、距離によっては200,000円を超えるケースも少なくありません。引っ越し会社の繁忙期に重なるとさらに割高になるため、荷物の断捨離や引っ越し日程の見直しを検討すると良いでしょう。
引っ越し月ごとの費用相場

次に、1年を通じて引っ越し費用の相場にどのような変化があるのかを解説します。5月〜翌2月の通常期と、3月~4月の繁忙期の引っ越し料金を取り上げていきます。
5月〜翌2月の通常期の相場
5月〜翌2月の通常期には、繁忙期より引っ越し費用は安くなります。5月〜翌2月まで月ごとに相場の大きな変化は見られませんが、人事異動の時期である秋頃にはやや費用相場が高めになる場合もあります。
費用相場は、15km未満の引っ越しで単身が50,000円以内、2人家族が60,000円台です。5人家族でも、たいていは150,000円以内に収まります。通常期に引っ越しを依頼する場合には、これらの金額を目安に見積もりを取ると良いでしょう。ただし、荷物量が多いと費用がかさみます。
3月〜4月の繁忙期の相場
引っ越し会社の繁忙期となる3月〜4月は、通常期と比べて2倍以上の金額差が出るケースがあります。繁忙期は依頼が殺到し、トラックや人手が不足するうえ、長距離・大荷物の引っ越し作業が集中します。そのため、輸送費や人件費が高騰し、引っ越し価格にも反映されるのです。
距離や荷物量に関わらず全体としての平均費用を見ると、繁忙期の単身引っ越しは50,000円~80,000円かかります。通常期は40,000円~60,000円のため、繁忙期の最高値と通常期の最安値を比較すると、最大40,000円の金額差が生じます。
また、2人以上の家族の通常期の引っ越し費用は70,000円~170,000円ですが、繁忙期は100,000円~200,000円です。同様に繁忙期の最高値と通常期の最安値を比較すると、100,000円以上の金額差が生じるケースがあります。
最も費用が安く済む荷物の少ない15km未満の単身引っ越しは、5月以降では40,000円台に収まります。しかし繁忙期には50,000円を超えるケースも少なくありません。家族引っ越しは単身より大きな開きがあり、通常期に15km未満の引っ越しをする2人家族は60,000円台で済む一方、繁忙期は80,000円以上の見積もりを提示される場合があります。
また、世帯人数が増えるにつれて費用の差は大きくなるようです。例えば4人家族で15km未満の引っ越しでは、通常期に90,000円~110,000円ほどかかります。しかし、繁忙期は100,000円~130,000円が相場です。2人家族は20,000円ほどの金額差にとどまるのに対し、4人家族では40,000円程度の金額差が生じます。3月〜4月の費用相場は、通常よりも高くなると覚えておきましょう。
引っ越す曜日・時間帯ごとの費用相場

引っ越し費用は繁忙期・通常期だけではなく、曜日や時間帯によっても若干上下します。費用を抑えたい場合には、曜日や時間帯にも注意したほうが良いでしょう。ここでは引っ越す曜日と時間帯ごとの費用相場について解説します。
平日と土日・祝日の相場
単身や近距離での引っ越しの場合、実は平日と土日・祝日で費用に大きな差はありません。差があるとしても数千円程度なので、わざわざ有給休暇を取得して引っ越し日を調整する必要はないでしょう。
一方で、家族引っ越しでは平日と土日・祝日で数万円程度の差が生まれます。特にゴールデンウィークやシルバーウィークなどの大型連休では、予約が集中するため2割〜3割ほど高額になるケースがあります。連休を使うと引っ越し作業をスムーズに進められますが、見積もり金額によっては有給休暇を取得し、平日の活用を検討しましょう。
時間帯ごとの相場
家族引っ越しの場合、時間帯別の費用相場は午前中が最も高く、次いで午後の早い時間、午後の夕方以降が最も安くなる傾向が見られます。特に朝8時〜9時頃の希望者が多く、他の時間帯よりも2倍〜3倍の見積もりになるケースもあります。
一方で、単身引っ越しでは1日を通じて時間帯と費用相場との間に相関性はほとんど見られません。これは単身引っ越しでは荷物が少なく短時間で終わるケースが多い一方で、家族引っ越しでは数時間の作業が必要になる場合が多いためです。
なお、作業日時を引っ越し会社に一任する「フリー便」は、引っ越し費用が相場を下回るケースが多く、作業時間にこだわらない方は検討してみると良いでしょう。
引っ越し費用が最も割高な条件・タイミングとは?

以上をまとめると、引っ越し費用が相場よりも割高になる条件・タイミングには、以下のような特徴が挙げられます。
- 荷物の多い家族引っ越し
- 3月〜4月の繁忙期の引っ越し
- 土日・祝日または大型連休の依頼
- 午前中の時間指定
他にも、月末月初は賃貸物件の入退去日を設定する方が多いため、予約が集中して費用が高額になる場合があります。大安や一粒万倍日などの縁起の良い日には、新築物件への引っ越しを予定する方が多く、相場よりも高額になる可能性も考えられます。
逆にいえば、以上の条件から外れたタイミングで依頼すれば、引っ越し費用を抑えられるのです。また、見積もりを一括で取り寄せられるサイトを活用すると、より安価な引っ越し会社を選べるので、ぜひ活用してみてください。
引っ越し費用の内訳と決め方

引っ越し費用の見積もりを取る際には、見積もり書の内訳として「基礎運賃」「実費」などの項目が記されているケースがほとんどです。それぞれの費用項目の役割や計算方法を理解しておくと、見積もりの比較や価格交渉にも役立つでしょう。ここからは引っ越し費用の内訳と決まり方を詳しく紹介します。
基本運賃
基礎運賃は、国土交通省が定める「標準引越運送約款」で決められ、時間制または距離制によって求められます。荷物を運ぶ距離が100km以内であれば時間制、100kmを超える場合は距離制が適用されます。
時間制はさらに4時間制と8時間制に分けられ、8時間を超えると1時間ごとに料金が加算されるケースが一般的です。また、利用するトラックの重量ごとに料金の上限と下限が定められ、重量が増えるにつれて料金も増加します。
基礎運賃は引っ越し会社が自由に決められる費用ではないため、どの会社の見積もりでもほぼ同じ料金が請求されます。
下記は基礎運賃の計算表なので、時間や距離ごとの目安としてご活用ください。

引用元:引越料金のしくみ – 近畿運輸局
実費
実費の項目には、荷物の運送費用以外の人件費・梱包資材費などが計上されます。高速道路・有料道路やフェリーの利用料金も加算対象です。荷物量が多いと必要な人手も多くなるため、人件費が増大する傾向にあります。
付帯サービス料金
付帯サービス料金には、オプションサービスとして依頼した作業の費用が含まれます。例えば、エアコンの取り外し・取り付けやピアノ運送、不用品処分、荷物の一時預かりやハウスクリーニングなどを依頼した際に発生します。車やバイクの運送を依頼する場合にも、オプション料金が加算されるケースが多いです。
引っ越し費用を相場より安く抑えるコツ

最後に、引っ越し費用を安く抑えるために効果的な以下のポイントを紹介します。
- 宅配便を活用する
- 単身引っ越しパックを使う
- 一括見積もりを取り寄せる
- 訪問見積もりを依頼する
- 各引っ越し会社の強みをチェックする
- 繁忙期を避ける
- 荷物量を減らす
- 荷造りや荷ほどきを自分でする
- 帰り便を利用する
- 自力で引っ越し作業を行う
少しでも安く引っ越したい方は、ぜひこれらの方法を実践してみてください。
宅配便を活用する
荷物が少ない方は宅配会社の宅配便を利用するのがおすすめです。例えば、ヤマト運輸株式会社が提供する宅急便の最大サイズであれば、3辺合計200cm・30kg以内の荷物を1箱3,720円〜の料金で運送を依頼できます。家具・家電付きの部屋に引っ越したり、引っ越し先で家具・家電を買い替えたりするのであれば最適なサービスです。
また、ミニマリストなど物が少ない暮らしを心がけている方にとっても有効でしょう。
単身引っ越しパックを使う
単身引っ越しパックは、引っ越し会社が指定するコンテナボックスに詰められるだけの荷物を格安料金で運べるサービスです。大きさの規格が統一されたコンテナをトラックに隙間なく搭載して運ぶため、料金を大幅に抑えられるのが特徴です。例えば、日本通運が提供する「引越し単身パックL」の場合、冷蔵庫や薄型テレビ、布団なども詰め込めるボックスを30,800円〜の料金で運送できます。
単身ではなく2人暮らしや3人以上の家族でも利用できるサービスのため、2個〜3個のボックスを申し込んで引っ越す手段もあります。荷物が少なめで宅配便では運べない方におすすめのサービスなので、ぜひ見積もりを依頼してみましょう。
単身引っ越しパックの詳細を知りたい方は「単身引っ越しパックのメリット・デメリットとは?料金相場と費用をできるだけ抑える方法」をご覧ください。
一括見積もりを取り寄せる
引っ越し料金を抑えるには、複数の引っ越し会社からの一括見積もりを取り寄せることも重要です。相見積もりを取ると相場を把握しやすくなり、引っ越し会社との価格交渉にも役立つためです。最近ではWEBサイト上で完結する引っ越し一括見積もりサイトも充実しているので、一度利用してみることをおすすめします。
国内最大級の規模を誇る「引越し侍」では、60社以上の提携引っ越し業者から最適なプランを一括で比較検討することができます。利用者は簡単に概算の見積もり金額をネット上で確認でき、気になる業者があればそのままオンラインで予約手続きも可能です。個人情報の入力は必須ではありません。一方で、正確な荷物の量などを入力すれば、専門スタッフから的確なアドバイスを受けられるなど、きめ細かいサポートも用意されています。国内最大級の一括見積もりサイトで無料見積りをしてみてください。
訪問見積もりを依頼する
引っ越し会社が荷物の量や周辺環境を事前に確認するために行うのが訪問見積もりです。荷物量が多かったり楽器などの特殊な荷物があったりする場合や、エレベーターがなかったり自宅前の道路が狭かったりする場合は、訪問見積もりをしてもらいましょう。当初の見積もりに追加料金が発生する可能性を抑え、計画どおりの引っ越し作業を行いやすくなります。
通路が狭く大型の家電や家具が運べない場合、クレーンなどで荷物の運搬をします。クレーンや特殊作業で、約15,000円~の追加料金が発生する可能性があります。また、自宅前の道路が狭くトラックが駐車できず、近隣の駐車場に停めて荷物を運搬しなければならない場合、かかった駐車場代と人件費が追加されるため注意が必要です。
このような想定外の出費を抑えるために、訪問見積もりを依頼するのがおすすめです。
各引っ越し会社の強みをチェックする
大手や地域密着型など、引っ越し会社によって規模や特徴、得意分野はさまざまです。大手は対応エリアの広さや従業員の教育、充実したサービスなどのメリットがあります。一方、地域密着型のメリットとしては、リーズナブルな価格設定や、段ボールなどの梱包資材を無料で提供してもらえるケースが多い点が挙げられます。
地域密着型の引っ越し会社の場合、価格交渉に応じてもらえることもあるでしょう。このように引っ越し会社ごとにサービス範囲が異なるため、事前に確認するのがおすすめです。
繁忙期を避ける
引っ越し会社には繁忙期や人気のある時間帯が存在します。3月~4月の繁忙期、土日・祝日や大安、月末、午前中といった人気のタイミングや時間帯を指定しないだけでも、費用を削減できる可能性があります。
繁忙期を避け、引っ越し費用を抑えるには、引っ越し依頼が集中しにくい平日の午後やフリー便が狙い目です。
荷物量を減らす
引っ越し費用は荷物量にも左右されるため、運搬する量を減らす方法も検討しましょう。その際に不用品を売却すると、引っ越し費用を抑えられるだけでなく、支払いの足しになる程度の臨時収入を得られるかもしれません。
不用品を売る際には、メルカリやジモティーなどのフリマサイト、トレジャーファクトリーやセカンドストリートなどのリサイクルショップを活用しましょう。
例えば冷蔵庫の買取の場合、大きさや年式によって相場は異なりますが、人気ブランドの冷蔵庫の買取相場は10,000円~20,000円程度です。
また、大型家具は転居先で購入すると、運搬費用より安く済むかもしれません。無理に買い替える必要はありませんが、大型の家具・家電は運搬費用がかさみやすいため、新居で購入するのも選択肢のひとつでしょう。
荷造りや荷ほどきを自分でする
荷造りや荷ほどきを自分ですれば、スタッフの作業が少なくなる分、引っ越し費用を抑えられるかもしれません。
ただし、自分で荷造りをする場合、引っ越し当日までに荷造りを終えられないおそれもあるため、早めに準備しておく必要があります。引っ越し当日にほとんど荷造りが終わっていなかったり、繁忙期の作業だったりする場合は、日程の変更を余儀なくされるケースがあるため、注意しましょう。
また、荷造り込みのプランに変更したり、スタッフに手伝ってもらったりした場合は追加料金が発生します。それであれば、はじめから自分の状況に合わせて、荷造りや荷ほどきをどこまで自分でできそうか考え、引っ越しプランを選んだほうが良いでしょう。
例えば、日本通運は荷造り・荷ほどきを自分でするセルフプラン、荷ほどきを自分でするハーフプラン、すべてスタッフにお願いするフルプランから選べます。
帰り便を利用する
帰り便とは、元々荷台が空の状態で出発地に戻る予定だったトラックを使って荷物を運搬する方法です。例えばAさんが大阪から東京へ引っ越すと、トラックが大阪に戻るとき荷台は空になります。
そこで東京から大阪へ引っ越すBさんが帰り便を利用すれば、引っ越し会社としては効率よく依頼を受注できます。トラックを空の状態で出発地点に戻すだけでは、引っ越し作業の利益は得られないのに人件費やガソリン代はかかってしまうため、引っ越し会社としても帰り便を利用してもらうメリットがあるのです。
ただし、帰り便は通常の料金よりもお得になっているものの、帰りの車両は運行スケジュールが限定的なため、自分の引っ越し日程と合わせるのが難しい場合があります。
また、どの引っ越し会社でも帰り便があるわけではありません。特に全国に支店がある大手の引っ越し会社は、そもそも空便とならないように配車調整するのが通常です。そのため、帰り便は対応エリアが限られた一部の引っ越し会社でしか利用できません。
自力で引っ越し作業を行う
引っ越し会社を利用せずに自分で引っ越し作業をすれば、費用を大幅に削減できる可能性があります。また、自分の都合で作業できるため、自由に引っ越し作業をしやすいでしょう。日程を調整しやすいこともメリットです。
ただし、体力的な負担が大きく、非効率な運搬となりやすい点を考慮すると、引っ越し会社に頼んだほうが作業負担は軽減されます。さらに、部屋の壁紙や床を傷つけないためにシートや布などで部屋を保護する養生をきちんとしないと、運搬の際に壁や床を傷つけるおそれがあります。修繕を求められると余計な費用がかかってしまうため、引っ越し作業がうまくできないと、かえって出費がかさむかもしれません。
おわりに
引っ越し費用の相場は、単身引っ越しの場合で、3月〜4月の繁忙期は50,000円〜80,000円程度、5月〜翌2月の通常期は40,000円〜60,000円程度です。2人以上の家族引っ越しは、3月〜4月の繁忙期は100,000円〜200,000円程度、5月〜翌2月の通常期は70,000円〜170,000円程度が目安となります。
土日・祝日よりも平日、世帯人数次第では午前中よりも午後・夕方のほうが引っ越し費用は安くなる傾向にあるため、これらのタイミングで依頼すると安価で引っ越しができるでしょう。荷物が少ない方は、宅配便や単身引っ越しパックを利用するのもおすすめです。また、引っ越し一括見積もりサイトを利用して、一番安く引っ越しできる会社を比較・検討するのも忘れないようにしましょう。
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